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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第18話 登校

「今日一緒に登校しましょう」


 朝起きた時に夢子さんがそう言ったからびっくりだ。


「なんで」

「なんでかな、登校したいと思ったからかな」


 前までよりも距離が縮まっているからなのだろうか。


「じゃあ、家からだったら同居してることがばれるから、待ち合わせするか」

「ええ、それでお願いするわ」


 そして、夢子さんはスマホをいじる。


「ここで待ち合わせましょう」


 それは、この近くにある書店の前だった。

 なるほど。


「ここなら大丈夫そうだな」


 そう俺は頷いた。


「後、一ついいかしら?」

「何だ?」

「変装していくからよろしくお願いするわ」


 変装、変装だと?


「私が学校外で智也君と会ってたらおかしいから」


 驚いた俺に対し彼女はそう返した。

 ……変装した方が目立つ気がするが、それは言わないようにしておこう。


「じゃあ、分かった」

「うん、あとでね」


 そう言って夢子さんは家から出た。

 俺は五分後に出かければいいわけだが、どういった変装をするのだろうか。

 へんてこな変装はしてほしくないが……


 そうこう考えているうちに、家から出る。

 いつもより少し早いからご飯を食べるのも急いで担ってしまった。

 家から出る。

 そこには美羅はいなかった。

 なぜ美羅を警戒するか、

 あいつはサプライズで家に突撃してこようとする奴だ。



 まあ、もし仮にいたとしても、夢子さんが気づくはずだが。


 そして家を出て歩く。家から五分から六分くらい歩くと、書店に着いた。

 着いたのはいいが、そこにいた女性はまさに夢子さんの様相をしていなかった。


 制服姿なのは制服姿だが、サングラスと眼鏡をしている。まさに変質者だ。

 あまりこういう事を言うのもよろしくない気がするが、まさにスーパーモデル気取りのような格好だ。

 夢子さんは美人だ。

 もう少し身長があったらモデルでもおかしくないと思う。だけど、それとこれは違う。


 制服姿にそれは流石に似合っているとは、お世辞でも言えないだろう。


「お待たせ」


 俺はそう言って夢子さんに話しかける。


「待ったよー!! もう!!」


 そう言って背中ぱしぱしと叩いてくる。

 変装中とはいえ、これは本当に夢子さんかと、疑いたくなるレベルだ。

 いや、キャラまで変えているのだろう。


 そんなややこしいことをしてまで。

 同党とし過ぎていてまるで夢子さんでは無い様だ。


 そんなに、自分が前原夢子という人間だとばれたくないのだろうか。


 俺としては堂々と二人で登校したらいいのにと思ってしまう。

 別に夢子さんに男友達がいないわけではないのだから。


「なあ、夢子さん」

「何かしら」


 あ、そこは素なんだ。


「俺は素の夢子さんとしゃべりたいかな」


 変な暴走をしてしまってる夢子さん。

 だが、そんな彼女と喋りたいわけじゃない。


 なんて言うか、夢子さんじゃなくて、別の人と喋ってるみたいなのだ。


「昨日のアニメの話とかしてな」

「でも、素の私になると怖いもの」

「どうしてだ?」

「ここは家じゃないから」

「遊園地でも素のモードはしてなかったが」


 それこそ、美羅に聞こえないように。


「ここでは知り合いもたくさん見かけるから」


 言いたいことは分かる。

 知り合いがいるかもしれない中で、素の根暗な自分を見られるのが嫌なんだな。


「気持ちは分かる」


 俺は一言そう言った。


「じゃあ、半分くらいにしてみないか?」

「え?」

「いつもの夢子さんで、たまたまここで俺と出会った風で行こう」

「分かったわ」

「後、変装露骨すぎるから、少し落とさないか?」


 その言葉に夢子さんは固まった。

 俺、ひょっとしてまずい事でも言ったか?

 いや、まずい事なのだろう。

 きっとこの変装は夢子さん自身自信作だったのではないか。

 そうなると、それにケチつけられた。そりゃ夢子さんの機嫌も悪くなるだろう。


「がんばって変装考えたのに……」


 そう、小さく呟く夢子さん。

 まさに、気分が落ちている。

 それを見て罪悪感を感じた。


 結局変装を解いた夢子さんは、いつもの学校モードで俺に接してくる。


「おはよう、春田君」


 そう元気に言う夢子さん。


「奇遇だね、いつもよりも遅くなったけど春田君に会えるなんて」


 なんか、俺から言っといてなんだけどむずかゆい。

 しかし、今舌の名前で呼び合ってしまうと、親友ではなくともそれに近しい関係性だと思われるだろう。

 だから我慢するべきなのだ。

 少なくとも今は。


「ねえ春田君。土日は何をしてたの?」


 夢子さんも意地悪が過ぎる。

 一緒に遊園地言ってたくせに。


「美羅と遊園地に行ってた」

「そうなの? 実は私もなの。もしかしたら同じ遊園地に行ってたのかもね」


 だけど、少し楽しそうだった。

 それを見たら別にいいかと思ってしまう。


 そして、俺たちの背後を尾行している影が一つ。

 美羅だ。


「美羅?」


 俺は背後を見る。


「やっほー!!」


 美羅が笑顔で手を振る。やはり声をかけるタイミングが見つからなかっただけなのか。


 そして三人での登校した。


「そう言えばさー、今日二人の家にお邪魔していい?」


 そうだ。俺と夢子さんの同居の事は美羅は知っているのだ。


「いいよ」


 夢子さんは笑顔で答える。悪いな、馬鹿な幼馴染のせいで。


「でも、あまり大声で言わないでね。ばれちゃうと大変だから」

「分かっ得tる。周りには漏らさないから」

「ありがとう」


 そして二人は互いに手を交わした。

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