第16話 悪ふざけ
その後夕食はファミレスですることとなった。
俺は、パスタを頼み、美羅はハンバーグとソーセージ。前原さんはドリアを頼んでいた。
そこで俺たちは様々な遊園地の思い出話をした。
勿論観覧車の時と同じように、互いにそれぞれしか知らない事を話すことも多々あったが、それでも、盛り上がった。
「ねえ、二人って一緒に暮らしてるの?」
その会話の途中で美羅がふとそう俺たちに訊いた。
その言葉に俺たちはびっくりした。少なくとも俺はびっくりした。
まさかこのタイミングで、その疑問を投げかけられるとは思っていなかった。
勿論俺は美羅が同居してることを把握している事を、既に知っている。
だからこそ、俺はすぐにその驚きを飲み込めた。
しかし、前原さんは唖然としている。
「どうしてそう思うの?」
静かな声で前原さんは言う。
「だって二人が同じ家に入って行ったから」
美羅の顔を見る。やはり案の定にやにやとしている。
今日一日ため込んでいたネタをようやく使えるもんな。
しかし、すっかり忘れていた。そこまで揺さぶりをかけていなかったのに、まさかこのタイミングで使うとは。
俺は前原さんの事をじっと見る。
色々と考え込んでいるらしい。
「どうなの?」
ここは俺も前原さんを支えなければ。
「別に一緒に住んでないよ」
俺はそう返した。
美羅は少しとぼけたような顔を見せた。
『知ってるくせに』とでも言いたげな表情だ。
仕方ねえだろ。前原さんを守るにはこうするしかないんだよ。
「うん、一緒に住んでないよ。あの日はたまたま泊まりに来ただけ」
前原さん、流石にそれは無茶が過ぎないか?
「えー」
じっと見て来る。
「それじゃあ、恋仲ってこと?」
その言葉に対して前原さんは何も答えない。
頼む、否定してくれ。
そして、暫くの沈黙の後「違うよ」と、答えた。
その声は静かだった。
前原さんは俯き始めた。
流石に見てられない。
「お前さ」
俺は美羅の腕をつかむ。
「知ってるんだろ。もう、俺たちが同居していること」
「え?」
「お前、言ってたじゃないか、知ってるって既に」
美羅は唇を尖らせる。
「前原さん、こいつ最初から知ってたんだよ。そのくせ揺さぶるために言ってるんだよ」
「なんて言っちゃうのさ」
「仕方ねえだろ」
これ以上話をややこしくするわけにか行かないし。
「分かったよ。最初から全部知ってました。これで十分?」
半ギレのように言う。
もっといたぶりたかったのだろう。
こういう時の美羅は小悪魔だ。
「ああ」
「ふん」
そう言って美羅はパスタをすする。
そしてファミレスを出ると、すぐに俺たちは別れる。
今度こそだ。
もう時刻は20時近くなっている。
「じゃあ、今日は楽しかったよ。じゃあね」
「うんじゃあね」
「じゃあな」
そして俺と前原さんは同じように帰る。
「それでさっきのどういう意味かしら」
「それは実は、最初からばれてたんだよ。あの、遊園地に誘われた時点でな」
「そういう事……」
「すまんな。俺が家に入るタイミングでばれてたみたいだ」
「いいよ。そんなのいつかばれる事だし、きっと口外しないでしょ」
「ああ、美羅にはくぎをしっかりとさしておくから安心してくれ」
「うん」
そして家に入った。




