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失恋した俺は俺にだけ弱い内面を見せてくれるクラスのマドンナと同居をする――これは完璧な彼女を救うための物語  作者: 有原優


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第十一話 遭遇

 コーヒーカップの後、メリーゴーランドに行き乗った。


 そして、次に乗るアトラクションを探している途中に美羅がとある乗り物を指さした。


「あれに乗りたい!!」


 そうハイテンションに言う美羅。そこにあったのはバイキングと言われる乗り物だった。

 そう、バイキングとはジェットコースター並みに恐ろしい乗り物だ。

 船を模した乗り物が、どんどんと振られて行き最終的には半周近くの角度を振られる恐ろしい乗り物なのだ。


「美羅、一人で乗ってこい」


 俺は静かに言った。

 前原さんを乗せるわけには行かないし、俺も乗りたくない。

 乗ったらさいご、掃くと思うからだ。


「えー、智也も乗ろうよ、前原さんも」

「私は遠慮するよ」


 流石の前原さんもこれは断ったみたいだ。

 一応俺の方からも、美羅は断られて気を病むような人間じゃないとは伝えていたが、その成果が早速出たようだ。

 あんな乗り物よほどの絶叫マシン好きじゃなかったら乗らないだろう。


 さらに驚いたのは、その一番最前列に乗ったという事だ。

 一番前、つまり、一番揺れる場所だ。つまり一番ハードの場所だ。

 美羅は化け物だと、再確認した。


 美羅が乗ってる姿を見て、前原さんは「すごいね」と呟いた。


「長谷部さんっていつもあんな感じなの?」

「ああ、いつもああだ」


 女っぽくないと言ったら怒られるかもしれないが、かなり性格は男に酔っている。


「長谷部さんの事は好きじゃないの?」

「あいつはただの友達だよ」


 女としては見れていない。

 女として見る訳がない。


「そう、幸原さんは?」

「幸原さんの事は好きだ。嫌われたみたいだけどな」

「私が仲を取り直してあげるよ」

「いや、いい。これは俺が解決しなければならない問題なんだから」


 それにこればかりは前原さんに頼るわけには行かない。

 俺自身で出来る事を探らなければ。


 そして前を見るとさらに高度あ歯がっているみたいだ。

 乗ったことがないから、今美羅が体験しているのはどういう感じなのかは分からない。しかし、体験したくないのは当然の気持ちとしてある。


 そして、上から「うわああああ」「きゃああああ」「ひゃああああ」などと美羅の叫び声が聞こえてくる。楽しそうで何よりだ。


「ねえ、春田君」

「どうした?」

「私って笑えてるのかないつも」

「というと?」

「私怖いの。私の笑顔が作り笑顔になってないかって」


 ああ、そういう事か。


「前原さんはいつもら笑ってるときは本心で楽しい時なの?」

「うん、と。半々かな」

「半々というと?」

「私は、楽しい時も楽しくないと気にも笑ってるから。でも、今考えてみたらどちらも同じ笑い方なの」

「俺は作り笑顔でもいいと思うよ。それで前原さんが楽しいなら」

「そ」


 そして前原さんはふふと笑った。これは作り笑顔ではなさそうだ。


「私、ルームメイトを募集する時に言われたことがあるの。ルームメイトの前では隠さないように努力しなさいって。それ上手く行っている気がするわ」

「それは誰から……?」

「それよりも見て、あれ凄いわよね」


 話をそらされた。

 今のも『失言』だったのだろうか。


「ああ」


 俺は頷いた。

 その後ご飯を食べに行く、はずだったがその時にある人影に気が付いた。


 あれは幸原さん?

 見間違いじゃなかったらレストランの横を歩いていた人、幸原さんに見える。

 美羅と前原さんは気が付いていなかったみたいだが。

 ……まさか彼女もここにきているのか?

 どうしよう。幸原さんの顔を見たら、好きだという気持ちがあふれ出てしまう。


「どうしたの?」


 美羅が訊いてくる。俺はそれに対し「何でもない」と答えた。

 今知られるわけには行かない。いや、知られたくないのだ。美羅が茶化すから。

 それにあれが幸原さんだと確定したわけではない。


 とりあえずは遊園地をメインにしたい。俺の事に対して気を遣わせたくない。


 そして中に入り――


「ご飯何を頼む?」


 美羅が訊いてくる。俺はそれに対し、「スパゲッティかな」と答える。

 前原さんはオムライスだ。


 美羅はハンバーグを頼んだ。黒毛和牛の。


「美羅だけえげつなくないか?」

「そう? 私これくらい普通だけど」

「いや、高いだろ」


 俺と前原さんの食べ物は両方とも950円だが、美羅の黒毛和牛ハンバーグは1600円もする。かなりお高めの料理だ。


「だってバイトしてるんだもん」

「そうでした」

「私バイトしてないんだよね」


 ふと前原さんが言う。


「私もやるべきなのかな」


 そう、首をかしげた。


「バイト出来そうだもんね」

「そうかな?」

「バイト案外面白いよ。やろうよ一緒に」

「えっと、考えておく」


 そう前原さんは結論付けを後に回す。

 それがいいと思う。


「どーしたの?」

「え?」


 急だったからびっくりした。


「心ここにあらずみたいな顔をしてるけど」


 ばれていた。実はずっと会話を聞きながら幸原さんの事を考え続けていたのだ。


「そうだな、俺もバイトしてないな」

「怪しいな」


 美羅はじっと俺の目を見る。

 前原さんはそんな光景をじっと見ている。興味深そうに。


 俺は前原さんを見る。


「前原さんに助け求めてるの?」

「ああ」


 俺はきっぱりと言い放った。


「長谷部さんやめなさい」


 そう前原さんが言い放つと、美羅は「ちぇ」と唇を尖らせた。

 それを見て前原さんは笑った。


 そして料理が届いた。


「長谷部さん、料理凄いね」

「うん。だって、沢山食べないと」


 そう言って美羅はハンバーグをナイフで切りフォークで刺し、口に入れる。


「熱」

「当たり前だろ」


 俺は、呆れたように言う。

 ジュージューとまだ音が鳴っているのに。熱くないわけがない。

 それを見て前原さんがまた微笑む。


 作り笑顔じゃない笑顔を試してるのだろうか。さっきから笑顔を出すことが多い。

 だが、確かに段々と作り物感は薄れて行っている。

 そして俺たちはご飯をもぐもぐと食べ続けた。


 そして、ご飯を食べ終わろうとするときに、美羅がトイレに行った、


「ねえ、さっきの幸原さんがいたからよね」


 俺はびくっとする。


「気づいていたのか」

「ええ、本当に幸原さんかどうかは分からなかったわ。でも、今の春田君の反応で気が付いた」

「ばれてしまっては仕方ないな」


 俺はため息をついた。


「確かに俺は幸原さんの姿を見て動揺している」

「私に何か出来る事はないかしら」


 やはり前原さんはそう言うと思っていた。


「大丈夫。俺はこれは一人でやり遂げたいんだ。前原さんは素直に遊園地を楽しんでくれていたらいい」

「春田君こそ、私達に気を使ってないかしら」


 俺が気を遣っている?

 どういう事だ。


「春田君は、私が相談に乗ることを批判してるわ。でも、私が前に言った通り楽しくないわけじゃないのよ。だから、私は貴方を手助けしてあげたいの。これって行けない事かしら」


 確かに。俺は前原さんの辛さを分かっているつもりでいた。でも、俺は前原さんを思っていた以上に丁重に扱っていたのかもしれない。

 それも丁重すぎるくらいに。

 確かに失礼だ。失礼過ぎる。


「分かった。協力頼むよ」

「ええ」


 そして俺たちは握手を交わした。

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