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Sheet2:属人化

「今日はダメ元で来たんですが、まさか薔薇筆さんから声をかけてもらえるなんて…もう何と言っていいのか…あ、すみません、自己紹介がまだでした」と言いながら、女性はバッグから名刺ケースを取り出し、三人に名刺を渡した。


 宇和田商事株式会社

 総務

 宇和田 貴美代

 〒xxx-xxxx

 tel.… email…


「宇和田貴美代と申します。」

「宇和田さん、社名と同じですが…」と薔薇筆が尋ねると、「ええ、父の会社です。入社したのは最近ですが…」と貴美代は答えた。

「それで貴美代さん、薔薇筆に会いたかった理由は?」とアキラが尋ねる。

「お店のサイトにあるエクセルのクイズの出題者が薔薇筆さんだったので、エクセルに詳しい方だと思いまして。前任者が作ったファイルが使えなくなったので直して欲しいんです」と言いながら、貴美代はバッグからUSBメモリを取り出した。

「引き継ぎしなかったんですか?」と少し呆れ気味に薔薇筆が聞く。

「実は…公私混同なんですけど、前任者は元カレで破局しちゃったもので」とUSBメモリを弄びながら貴美代は語り始めた。

「前にここに来たとき、一緒にいたのが彼です。クイズのことも彼が教えてくれて、一杯目がタダになるからと誘われました。まだ父の会社に転職して間もない頃から彼の部下として同じ部署で働いていましたが、社長の娘ということを関係なしに接してくれて…私から付き合って欲しいと告白しました。」そこまで話すと貴美代は飲みかけのハイボールで喉を潤した。


「まぁ、元カレのことは置いといて、退職者が作ったマクロが使えなくなる話はよく聞きますね」と薔薇筆は気まずさを払拭しようと話題を変えた。「いわゆる『属人化』ですね。企業によってはマクロを禁止したり、脱エクセルを進めたりしています」

属人化とは、特定の業務が特定の担当者に過度に依存している状態を指し、企業では技術や情報の『標準化』が望ましいとされている。


「ところで、どうしてハキョクしちゃったんですか?」と空気を読まないエルが直球の質問を投げかけた。

「私の二股…というか、本当は二股なんかしてないんです。ただ他の男性と仲良くしているのを勘違いされて喧嘩になって…」と貴美代が説明すると、三人は妙に納得した。先ほどからの薔薇筆への距離の詰め方を見れば、それも頷ける話だった。

「まぁ、破局の経緯はひとまず置いといて、そのファイルを見せてもらったら?脱エクセルするにしても、経費がかかるからすぐには無理でしょ」とアキラが至極真っ当な提案をした。

貴美代からUSBメモリを受け取ったエルは、ノートPCに接続し、ファイルを開いた。

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