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乙女の真心 ディアーナSide

 少し気温がやわらいで、爽やかな風が舞い込む。


 8月から9月中旬までに収穫されるミラベルを入れた美味しいタルトを私は頬張りながら、ザクリードハルトの宮殿の広いテラスでお茶を飲んでいる。花が咲き誇る庭園は美しい眺めだった。秋の紅葉も少しずつ進んでいる。


 テレサとミラもすぐそばにいる。レイトンはエイトレンスのブランドン公爵家の筆頭執事であるために、ブランドン公爵家に戻った。父と元気にやっていると聞く。近況を伝え合うテレグラフをしたばかりだ。


 季節は夏から秋に移り、まもなくリンゴの収穫が始まる。1867年6月20日、死に戻った私は自分を幸せにするために運命を変えようとした。あの秋の紅葉の中を自転車で帰った日のことを懐かしく思う。その季節がようやく巡ってきた。


 私の環境は劇的に良くなった。大逆転だ。最愛の夫、ルイ皇太子と一緒のベッドで眠り、毎朝起きると、ブロンドヘアをくしゃくしゃにした18歳の彼が私の隣で静かに穏やかに眠っている。


 彼を起こさないようにそっとおきだして、朝刊と読みかけの本を片手に、自分で淹れたコーヒーを飲みながら朝の静かな時間を楽しむのが日課だ。


 前回の人生の記憶から、シャーロック・ホームズの短編が世に出るまではあと15年ほど待たなければならないと分かっている。長編ならば30年あまり待つことになる。イングランドはビクトリア女王の時代で、まさに輝かしい発展を遂げている途中だ。そこから少し距離がある場所で、夫のルイや皇帝である義父や、義妹のロミィ、義弟のアダムや参謀ダニエルと共に私は賑やかに心穏やかな日々を送っている。


 砂漠のアリス・スペンサー邸宅はそのまま維持されている。結婚式の後、一度皆で集まって星空を見ながら音楽やダンスを楽しんだ。


 エミリー・ブレンジャー子爵はアルベルトにこっぴどく拒絶されて意気消沈していると聞く。アルベルトのしつこかった恋は無事に成仏して、彼は自分自身の人生計画に元気に前向きに取り組んでいる。



 夫と私の力についてだが、知ってしまった以上はチリの壊滅的な被害の前に何かできないかと、8代ぶりに現れた魔法の長椅子の乗り手である夫と、ロミィとアダムと共に注意を促す大きな横断幕を掲げてその地域を飛行して、人々に注意喚起をすることを始めている。効果があるかは分からないが、私は何かせざるを得ないタイプだ。救えるかどうかは分からないが、続けようと思う。


 私はつい数ヶ月前まで、自分のバケモノのような魔力は恥ずかしいもので、隠すものだと考えていた。だが、その考えは間違っていた。持っているもの全てを持って本気で立ち向かう瞬間が人生にはあるのだ。私たちが持っている力は何一つ恥ずかしいものはない。


 不幸で生きているのが辛くなる時がこれからもあるかもしれない。でも、すぐ近くに逆転できるチャンスやヒントが隠れているかもしれないと知った。


 爽やかな秋の涼しい風が私とテレサとミラの周りに舞う。


 悲しくて生きている価値などないと思った季節が、本当にやってきた。私はあのショックを生き延びて、信じられないような幸せを手に入れた。


 魔術大学から帰ってきたハンサムな夫が庭園の向こうから手を振っているのを見つけて、私は立ち上がった。彼は手にりんごを持っているようだ。私の最愛の人は煌めく瞳で私を見つめて、輝くような笑顔を私に向けている。夫が最初に言ってくれた言葉を思い出した。


「最後まであがいてみるんだ。君の才能は最高なんだから」


 テラスには色んな花が植えられている。その一つに皇帝ダリアがある。花言葉は「乙女の真心」だ。11月下旬頃から咲く。見上げるほどの高さに咲き、淡いピンクの花を咲かせる。11月が楽しみだ。


 全ての季節が今や私には幸せの季節だ。





       完








お読みいただきまして本当にありがとうございました!たくさんの皆様のお読みいただきまして本当にありがとうございました!感謝申し上げます。

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