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新しい世界 ディアーナSide(2)

 私の皇太子妃の部屋は、6年前は普段は誰にも使われていない客間だったらしい。私は石膏チョウークで八芒星を描いて護符を持っていた。


「準備できたわよ」


 八芒星の中に置かれた2つの長椅子に駆け寄った。1つの長椅子にはロミィとアダムが乗り、もう1つにはルイが載っていた。私はルイに抱きつくようにして乗った。私たち4人は顔を見合わせて頷きあった。


「レディア、プレテリタ!ビアノス……」

 

 目を開けると、元の部屋より少し違った内装の部屋の中にいたが、広さは全く同じ部屋だ。


「うまく行ったように思う」


 ルイがそう言いながら長椅子を動かして、八芒星の外に長椅子を置いた。ロミィとアダムもそうした。私たちは部屋の外に出た。あとはロミィとアダムが走るのを追った。みんなが無言で走っていると、廊下の向こうから一人のすらりとした美しい女性が歩いてきた。


「あら、あなたたちは?……ルイ!もしかしてアダム?ロミィ?もしかしてブルクトゥアタの力を使ってやってきたの?」

「違うわ。でも6年後から来たのよ、お母様」

「お母様、会いたかった」


 ロミィもアダムもルイも泣きながら女性を抱きしめた。女性はもう一人見知らぬ私が立っていることに気づいた。


「どなたかしら?」

「母上、お久しぶりです。昨日エイトレンスのブランドン公爵家のディアーナ嬢と結婚したんだよ。母上に会って欲しかったんだ。俺の最愛の人だよ、ディアーナだ」

「初めまして、ルイの妻となりました、ディアーナと申します」


 ルイたちの母ということはザックリードハルトの皇后にあたる。


「おめでとう、ルイ、ディアーナさん」

「あの……お義母様、これから手洗いとうがいとマスクを徹底してくださいね」

「今回は、ディアーナの魔力で過去に戻って来れたんだ。母上は1ヶ月後の1861年3月4日に亡くなってしまったんだ。僕らにとっては6年ぶりに母上に会ったことになる」


 皇后は口に手を当てて真っ青な顔になり、涙を流して泣いた。


「皇帝陛下から伝言がございます。『みな立派に成長しているから安心して欲しい』と」


 嬉しいような切ないような表情を浮かべた皇后は、私に何度も頷いて3人の子供たちを見つめていた。


 私は固く抱き合う4人をしばらく家族水入らずにして上げようと、皆から離れた。そして元の客間だった部屋に戻って床の上に八芒星を描いた。そして、3人が戻ってくるのを長椅子に腰掛けて待っていた。


 やがて、ルイ、ロミィ、アダムが晴れ晴れとした表情で戻ってきた。


「ちゃんと会えてきちんとお別れができたの」

「ちなみに、母上はディアーナが言ってくれた、手洗い、うがい、マスクを心がけてくれるそうだよ。ありがとう」

「僕もあの時はちゃんとお別れできなかったから、またお母様とお話できてとても嬉しかった」


 私はうんうんと頷きながら聞いて、ルイの長椅子に乗った。2つの長椅子はぴたりと八芒星の真ん中に着地して、私は呪文を唱えた。


「スビトーアデム」


 無事に皇太子妃になった私のために準備された部屋に戻ってきていた。私たちは固く抱き合った。成功した。最初の目的を達したのだ。


 皇帝に結果を伝えるために、ロミィとアダムは走り始めた。


「あれ?母上との別の記憶が蘇ったぞ」

「本当だわっ!」

「すごいっ!」


 3人が叫んで、笑いながらこちらにまた戻ってきた。


「ディアーナ、母上は手洗いとうがいとマスクを徹底して、さらに4年も生きてくれていたんだよ。亡くなったのが6年前から2年前に変わった。さらにたくさんの思い出ができている!」

「本当だわ、ディアーナ。信じられないわ」


 私はどういうことか分からず、3人が大喜びで飛び跳ねている姿を見つめた。


 ――早く亡くなる運命は変えられないけれど、一緒に過ごす時間を伸ばせたの?


 私も嬉しくなり、3人が喜ぶ輪に入って一緒に笑い合って飛び跳ねた。


 私たちの出会いは無駄ではなかったのだ。あのゴビンタン砂漠に移動した日、私は自分の力を振り絞って3人を灼熱の砂漠からアリス・スペンサー邸宅の冷房が効いた部屋に連れ込んだ。


 私はルイに2回命を助けられた。エミリーの裏切りを知った時に生きている価値がないと思い込んでしまったとき。それから自分の力の限界を超えて力を使ってしまったとき。


 私が最初に出会った日に3人を放っておいたら、熱中症で死んでしまうところだったと思う。私は3人を助けた。そして、そこまで危険な目に会いながらも3兄妹が会いたがった、亡くなった母に合わせた。


 私は自分を曝け出して自分自身のままでいることができる人だけでなく、私の命を助けてくれたり、私の人生を想像を超えて豊かにしてくれる人たちを見つけたようだ。


 人生の新しい世界が開いたのだ。




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