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力が戻る ディアーナSide(1)

 玄関の辺りがすごい騒ぎになった。私は涙を拭った。


――ルイたちが帰ってきたのだわ!


 私はベッドから降りて走って階段を駆け降りた。玄関ではダニエルがルイやロミィやアダムを抱きしめていて、私の目の前には信じられない人が立っていた。


「王妃様っ!」


 私を砂漠に追放した張本人が立っていた。フェリクス殿下からは砂漠への追放は取り消されたと聞いていたが、その時にはもう私の体がうまく動かなかったので、今まで家を砂漠から移動できなかったのだ。


「あなた、顔色悪いわよ。ディアーナ。私の可愛い娘になるはずだったのに、今はザックリードハルトの未来の皇后になるのね。おめでとう。残念だけれど、心から祝福するわ」


 動揺する私を王妃は優しく抱きしめた。


「あなた、見る目があるわ。ルイ皇太子は最高よ」


 王妃はそっと私の耳元でささやいた。


「母上、今私の耳に聞こえたのは幻聴でしょうか」

「アルベルト、きっと幻聴よ。さあ、この砂漠のアリス・スペンサー邸宅とやらを見せてちょうだい。フェリクス、案内してくださる?」


「母上、ここは最高なんだよ。ディアーナの知識と魔力で凄い仕組みを実現できているんだ。ほら、家の中は灼熱の砂漠にいるとは思えないほど快適だろう?」


「本当だわ!家も隠されていたから、ルイ皇太子が言わなければ私は全然わからなかったわ。玄関の扉が開いてアルベルトとフェリクスが飛び出してきて初めて家があると分かったのよ」


 ロミィは私にこっそり囁いた。


「アルベルトのお母様は、ルイ兄様を気に入ってくれたのね。良い人のようで良かったわ」


 私とロミィは腕組みをして、アリス・スペンサー邸宅を嵐のような興奮状態で歩き回る王妃の様子を見つめた。


「ジャック、アルベルトのことを面倒見てくれて本当に良かったわ。ありがとう。フェリクス、この浴室はお湯が出るの?砂漠なのに?」


 王妃はフェリクス殿下を質問責めにしていた。私はルイから王妃とどこで会ったか聞いて肝を冷やした。


「禁書は王妃様の協力があって返せたんだ。王妃様は俺が禁書を返すために、博物館の鍵を盗んで禁書室の鍵を開けてくれた。一緒に禁書室の中に入ったんだ。助かったよ。おかげで無事に戻って来れた。軍が来ると教えてくれたのも王妃様だったでしょう?」


 私はうなずいた。

 

 ――どういうことだろう?もう怒ってはいないということか。


 その夜の夕食は、ミラとテレサが張り切ってくれたおかげで素晴らしい食事会になった。フェリクス殿下が寝台列車で都市を回った話で、皆がうっとりとなり、最後はダニエルがピアノを弾いて、アルベルト皇太子はヴァイオリンを弾いた。ロミィが歌って、王妃も一緒に皆で気軽なダンスを楽しんだ。


「シャム猫を父上が預かった?」

「あぁ、皇帝陛下が自ら申し出てくれた。俺が戻ってこない君たちを探しに砂漠に行くと言ったら預かると言ってくれてね。ユーリーは今頃皇帝陛下と一緒にいるはずだ」


 アルベルト王太子のシャム猫のユーリーは、どうやらザックリードハルトの皇帝が面倒を見ているらしい。


 ジャックは絶句していたが、ロミィとアダムはワクワクした表情をしていた。


「帰ったら僕らも飼えるね」

「そうね。イボンヌに威張れるわ」

「いや、君たちが飼うことはない。君たちが帰ったら、俺という立派な飼い主がユーリーの元に戻るんだ。ユーリーは俺の猫だから、君たちが飼うことはない」


「いや、ディアーナも家族になることだし、ユーリーも僕らの家族になるよ」


 その無邪気なアダムの発言に、アルベルト王太子は切ない表情を浮かべた。すかさずロミィがアルベルト王太子に気を使って、「冗談よ。ユーリーは必ずアルベルトの元に戻すわ。でもイボンヌに自慢するチャンスはちょうだい」と言った。


 王妃はその様子をにこやかに楽しそうに眺めていた。


 王妃はアリス・スペンサー邸宅の水道供給方式や、浴室の湯やシャワー、トイレや空調の仕組みに、非常な感銘を受けていた。

 

 私の知識と魔力に感服したと何度も言ってくれて、私は恥ずかしかった。


 最後に部屋割りで皆が悩んだが、私は客間のベッドを魔力でもう一つ増やして解決した。


 こうして、湯に入ってさっぱりした王妃と私は、一緒の部屋で就寝したのだ。本当は私の姑になるはずだった人だ。しかし、別れると決めたら、怒って死のゴビンタン砂漠へ追放命令を出したほど怖い人でもある。


「あなたに本当に謝らなければならないわ。考えなしにゴビンタン砂漠に追放などと命じてしまい、本当に申し訳ありませんでした。謝ります。ごめんなさい。そして、息子の育て方を間違えました。王妃としては、問題に早く介入しなかったことを悔いています。私もダメだった。あなたに謝らなければならないことだらけ」


 王妃は心から私に謝罪してくれた。


「いえいえ。おかげでルイに会えました」


 私の言葉に王妃は残念そうな表情を一瞬した。


「あなたを娘にできるチャンスを失って、本当に残念な思いをしています。でも、自業自得ですから。あなたが幸せになれて、本当に嬉しいと思います。それにルイ皇太子は夫でも婚約者でも最高だと思います」


 私は心からの言葉として受け取った。


「ルイ皇太子に結婚式に招待されたのですよ」

「え?」

「誰も何も言いませんが、明日はあなたとルイ皇太子の結婚式の予定だったのでしょう?無理をする必要はありませんよ。力を使いすぎて参ってしまうというのは、あなたの魔力が大きすぎて、皆が頼ってしまうからなのですよ。あなたは、あなたを一番大切にしなければならないのです」


 私はありがたい言葉にそっと涙を拭った。


「ありがとうございます」


「王妃様。一つ質問がございました。私は王位継承権を持っていないですよね?」

「あら、あなたは持っているわ。お父上はあなたに秘密にしたがったけれどあなたの王位継承権は21位よ。そして、この王位継承権はあなたがザックリードハルトの皇后になろうと存続するわ」


 私はショックで無言になった。





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