過去へ ディアーナSide(2)
私は自分の勘違いにホッとして、皆に説明した。
「あれは恐竜といって、1億年前ぐらいに地球上にいた、当時の地球の覇者よ」
地動説は1838年にドイツのベッセルが既に証明している。私は皆に化け物の正体を説明した。1867年の私たちはそれなりに知識のある世代だ。
「つまり、ゴビンタン砂漠は今から1億年ぐらい前はジャングルだったのね。過去に戻ると言って私は1億年ぐらい前に戻ってしまったわ。本当は3年前ぐらいに戻るつもりだったの。本当にごめんなさい」
私は皆に謝った。
「いや、最高だよ。ディアーナ、こんな眺めを見ることができるなんて、信じられない幸運だよ」
ルイが目を輝かせて言った。
「そうだな、説明されてやっと分かった。あれが例の絶滅した爬虫類と言うやつなんだな。すごいぞ!」
「えぇ、砂漠が昔はジャングルだったというだけでも、ワクワクします」
「ルイ、帰る前に高速でこの辺りを飛べるか?奴らに捕まらないようにだが」
「もちろんだよ!ダニエル。ロミィ、アダム、そっちの長椅子は大丈夫か?」
4人の大人たちは大興奮だった。私はそっとロミィの肩をつついた。ロミィとアダムは二人で私を振り返り、ニヤッと笑ってくれた。
「最高よ、ディアーナ、正体が分かれば楽しいわ」
「うん!こんなすごい生物が昔は生きていたなんて信じられないよ!」
「あのね、でもあの生き物は私たちを襲って食べるわよ、逃げなければダメよ」
私は大興奮の二人に真剣な表情で説明した。二人は笑った。
「八芒星を書かないと戻れないの。みんな、この辺りを回ったら、あの生物がいないような、そして図が描ける場所を見つけましょう。さっさと戻りましょう」
「分かった!」
「いいぞ!」
皆が口々に賛成してくれた。ロミィの長椅子とルイの長椅子は、私たちを乗せて風を切って高速で飛行した。
最高の気分だった。
そのうち大きな湖を見つけて、私たちはその岸におりた。皆が乗れるほどの岩があり、その上に私は石膏チョークで八芒星を描いた。呪文を唱える前、ルイと私はキスをした。
アルベルト王太子が遠くの恐竜に夢中になっている隙に。
それは、一週間後に挙式が迫った私たちの最後のキスとなったのだ。
呪文を唱えて私が皆を戻したのは、ザックリードハルトの宮殿の庭だった。
私はそこで、息を引き取った。何が起きたのかは分からない。
宮殿の庭が戻った瞬間に、私の目の前は真っ暗になり、私は長椅子から地面に崩れ落ちた。上から何かがはらりと落ちてきたが、それが何だか分からなかった。
「ディアーナ姉様!」
「ディアーナ!」
「嘘だろっ、ディアーナ!」
皆が口々に叫んでいる声が遠くに聞こえて、徐々に聞こえなくなった。
私は頭の中でゴビンタン砂漠に残してきた執事のレイトンとテレサとミラのことを思った。
私がいないと彼らは食料の調達ができない。
――何がなんでもゴビンタン砂漠のアリス・スペンサー邸宅に戻らなければ。
そう思うのに、体は動かず、あたりは真っ暗のままだった。
この感じは3回経験がある。前の人生で踏切で電車に轢かれて死んだ時と、死に戻ったのにマンホールに落ちた時。挙式の1週間前にアルベルト王太子に「結婚できない」と言われて振られて、パーティー会場用木材が落ちてきて死んだ時。
――何が原因で死んだ?
ルイ、ごめんなさい。
レイトン、テレサ、ミラ、誰か3人を救って欲しい。でも、ルイとロミィとアダムは長椅子で砂漠に行って死にかけたんだった。私がいないとみんな死んでしまう。
真っ暗闇の中で、私は万策尽きた。
『時を操る闇の禁書』
闇の禁書だ。そう呼ばれるだけのことはあった。
嫉妬にかられたエミリーに襲われたのかもしれない。あのアルベルト王太子と関係を持っていた侍女に私は恨まれていたかもしれない。
でも、何もかも意識を失う直前に、私はしてはならない事をしたのだと思った。闇の禁書を使った罪で命を失ったのだ。
きっとそうだ。




