暴露 ロミィSide(2)
そのまま学校の廊下を長椅子で飛んで疾走し、校庭に一気に飛び出した。
ルイ兄様とディアーナ姉様の長椅子から、皆の注目が校庭から飛び出してくる私の長椅子に移った。もう一つの長椅子に、この学校の生徒のロミィ・ルクセンハンナが乗っていることに気づいて、皆が大騒ぎを始めた。
「ロミィ・ルクセンハンナ!」
「彼女、ブルクトゥアタだわ!」
私はイボンヌがあんぐりと口を開けて、校庭から私を見上げているのを見つけて、にんまりとした。風を切って校庭の上空を飛ぶのは最高に気持ちが良かった。
してやったりだわ!
私はブルクトゥアタなのよ!
八代ぶりだから、もうそんなの御伽話だと思っていたでしょう?
残念でしたーっ!
何を隠そう、わたくしめが魔法の長椅子の使い手でござる!
私は学校を抜けて、街の方に長椅子を飛ばした。昼間に飛ぶのは最高だ。いつもは昼間に市街を飛ぶなんてしたことがなかった。でも、もうバレたのだ。
かまやしない。
私はそのまま街の大通りや公園や市場の上を飛行した。
大勢の人が「ブルクトゥアタ!」と興奮して叫んでいるのを見て快感を覚えた。
そこにルイ兄様の長椅子が戻ってきた。私たちは並走するように飛行した。ディアーナ姉様は顔にマスクをして顔を隠した状態で、一緒に乗っていた。
「ロミィ、やめるんだ。長椅子を戻そう!何でこんなことをしたんだ!」
ルイ兄様は必死の表情で、私を止めようとしていた。
私はハッとした。そうだ。
――私は一体何をしているのだろう?
私はイボンヌが口をあんぐり開けて私を見つめたことを思い出して、既に目的は達したことを思い出した。目的を達したのはいいが、余計な混乱と大興奮を街に与えた。国中にあっという間に伝わる出来事をしでかしたと思い知った。
――私と兄様だけならまだしも、一緒に乗っているのがエイトレンスのディアーナ姉様なのは非常にまずいわ。注目を集めて、アルベルトが追ってくると、ルイ兄様とディアーナ姉様の結婚に支障が出るから。
「えぇ、本当にごめんなさい。やりすぎたわ。戻ります」
私は反省して城に戻るとルイ兄様に伝えた。ディアーナ姉様はそっと市場の隅におりた。レイトン達がきっとこの市場のどこかにいるのだろう。となると、レイトンとテレサとミラは、人々が大興奮してルイ兄様のことを皇太子と呼んでいることに気づいただろう。3人からディアーナ姉様は話を聞かされるはずだ。
私は色々大丈夫だろうかと心配になった。
だが、もっと心配なことは父だ。このような衝動的な行動を突発的に取るのは、責任ある行動を心がける必要がある皇族にとって命取りになる。常々、民を振り回す行動を慎め、よく考えてから行動せよ、民に対して煽情的な行動を慎めと言い聞かされてきた。
私は今日、とんでもないことをしでかしたかもしれない。
ルクセンハンナ家の末裔の秘密を世の中に暴露したのだ。私たち3兄弟が特別な能力を有することを知らしめてしまったのだ。
ルイ兄様が皇太子だと知って、ディアーナ姉様は引かないだろうか。アルベルトは隣の怪物のようなザックリードハルトに自分の元恋人を奪われたと激怒しやしないだろうか。嫉妬心に駆られて追ってこないだろうか。
――色々まずい気がする……。




