望まぬ才能
多分、私は才能なんてない。
彼を繋ぎ止める努力が足りなかったから。
我が強すぎたから。
私のやりたいことと、彼のやりたいことが噛み合わないのに。
多分、私は才能なんてない。
大して勉強に打ち込まなかったから。
もっと打ち込むべきものはあったのに。
多分、私には魅力なんてない。
だから、こうして最愛の人が夢中で私の親友を抱いているのを見ることになる。
彼女の甲高いあんな声を聞きたいなんて思ったことはない。
そんなの誰も思わない。
私の最愛の王太子は、子爵の令嬢と愛の行為を熱烈に行っている。
彼女は私の親友。
私は公爵令嬢という身分が取り柄だけのつまらない女。
強すぎる魔力は隠した。
コントロールできない魔力は邪悪なものだから。
私は魔力はあるが、可愛らしい令嬢レベルだと思わせておきたかった。
化け物のような魔力があるなんて、誰にも知られたくなかったのに。
この魔力のおかげで、ブルネットの髪を振り乱して王太子の上で、淫らで魅惑的な様子で幸せそうな笑顔を振りまく親友と、頬を赤らめて喜ぶ彼の顔を見ることができた。
あまりにありふれた裏切りの現場。
そんなありふれた低俗で醜悪な、皆が噂で好む、皆が大好きな下世話でお気楽ありがち展開に、私が遭遇するなんて。
もう。何が言いたいのか分からない。
王太子の護衛たちが、王太子に近づく女性を知らないはずがない。みんな知っていたのかもしれない。
間違いない。ついさっきは、王太子は褐色の髪の侍女も抱いていた。侍女は別邸で王太子と一緒にいた。侍女は可愛いらしい顔をしていて、若々しい体を思いっきり王太子に捧げていた。彼女も王太子が好きなのだ。表向きは、王太子は私を追っていることになっているのを侍女の彼女は知っているはずなのに、彼女の心は王太子のものなのだろう。
こんなのイヤ。
私は王太子と婚約するはずだった。いや、王太子と婚約した人生のパターンもあった。
私を最終的に拒むのは、他国の王女に惹かれたからだと思っていた。でも、最初から裏切られていたのだ。
彼の温かい手と温かい胸。
私は挙式までは彼とはプラトニックのつもりで貫いた。
それが間違いだった?
もう、訳が分からない。
19歳のディアーナ・ブランドン。私は公爵令嬢だ。
私は生きている価値がないのかもしれない。
これからどうやって生きていこう……。
よろよろとバルコニーに近づいた私は、誰かに腕をつかまれた。私より一つ下の18歳のルイだ。ブロンドの髪が風になびき、彼の碧い瞳は私を優しく見つめて「戻ろう」と言った。
どこに?
私はルイのことをよく知らない。
王国の秘密を盗んだ、この美しい若者は私の魔力の強さを知っている。
「最後まで、あがいてみるんだ。君の才能は最高なんだから」
彼は私にそうささやいて、私の唇に自分の唇を重ねようとした。