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「ということで、私たちはこれで失礼します」
「何かあったら、そっちのクレアリア村に俺たちが来て連絡するからな!」
夕日が沈む時間、クレアリア村の住民たちがダリネたちを見ている中、住民の代表であるユアが頭を下げる。
「ダリネさんたち、わざわざどうもありがとうございます。
また来てください。連絡待っていますね!」
「じゃあな。もうクレアリア村の居場所がわかったから、次、来るときは空中浮遊で来るかもしれないからな!」
と、ダリネたちはジャンプして、クレアリア村を去る。
「ユア様の使命に従ってくれたからよかった…」
クローザはこっそりと小声で言う。
それが聴こえたセツカも内心ホットしている。
仕える皇女ユアはおとなしい外見や丁寧な言葉遣いに似合わず意外と自己中でワガママなところがあるからだ。
後世紀の人間…しかも後の自国を統一したことがある英雄王がこんなワガママな皇女の使命を受け入れてくれたものだからだ。
やはり少し反抗した態度を取ったが、あの英雄がすんなりと話が進んで了解してくれてよかった。
ユアの父親である国王ジデが転生して600年経つが、どこぞにいるジデ国王もユアの現状を見ていたら嬉しいだろうかと、ユアの方は今はこの天界にはいない父に思いを馳せた。
*
再び、ここは第2メフィレス階層、ダリネ家―。
「えっ、それは皇女の大袈裟な嘘で、実は自分の史実を基づいて書いた小説の著者のことが今どうしているか知りたいという依頼だったのか!?」
朝、ダリネ家に日課として訪れるようになったリパヌも、ダリネたちの昨日の出来事を聞いて、なんだか拍子抜けしてしまった。
「だろぉ、なんかがっかりするよな。
いくらユアっていう娘が歴史上人物だとしても、依頼が依頼だしなあ」
ダリネはうんざりしてやる気がない態度を見せる。
「ダリネ様、もしかして依頼放置するんじゃないでしょうね?」
丁度、朝のご飯を作っていたセテアがその会話のやりとりを聞いていて、やがてドドッとダリネの方に迫る。
「お前まさか…」
「そうです、私もユアさんと同じナッデさんの消息が気になります。
もし放置したら…!」
と、セテアが怖い顔で、持っている料理中に使っていた包丁をキラーンと光らせては上に上げようとするではないか。
「ひいいいい、依頼なんか放置しない!絶対しない!
依頼遂行するぞ!」
「ああ、そうだな…」
セテアの迫真の態度を見て、ダリネがリパヌに近寄る。
(こんな顔をするセテア、初めて見た…!!)
リパヌまでもがビビってしまった。
*
昼になると、リパヌは毎度のごとく仕事へと戻っていった。
今度は交通警備員の仕事を辞めて、コンビニのバイトのレジ打ちになった。
交通警備員はなんでも、今の期間はメフィレス近郊で直すところが無いということで、同じ東メフィレス駅の15分歩いたところの10年以上経っているやや人気を保っているコンビニのバイトにリパヌは勤務していることになる。
セテアの方は1日家を空けた家事、特に掃除で忙しいので、ここはダリネ一人で、ユアの依頼調査に進んだ。
「ダリネ様、まずはメフィレス第3区役所に訪ねてはいかがでしょうか?」
忙しい間に口を開いたセテアの言う通り、ダリネはメフィレス第3区役所へと足を運んだ。




