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歩いていくと、先にはほそぼそとした村が見えてくる。
「ダリネ様、あれがたぶんクレアリア村ですよ!」
「そうだな!」
ダリネはさっき、空中浮遊して失敗したときに出来た頭のたんこぶがヒリヒリしていて抑えている状態である。
とうとうダリネたちはクレアリア村らしき第1階層の住民が集まる住処へとたどり着く。
寂れていて空しい雰囲気を漂わせるというのが伝わる。
「お前たちは何者だ!」
と、やはり、その村に来たからには、見張りであるか門番らしき男一人に入る前に立ちふさがれる。
その男はさきほどの老兵たちよりも若く筋肉質で黒の銅の鎧、兜などを身に纏っていた。
「俺はダリネで、こっちは相棒のセテア」
いちおう、その男に自己紹介するダリネ。
「お前たちも古代マニアの一人か?
見に尽くすと良いが…、とりあえず、ここのクレアリア村の住民たちの迷惑にかからないように!」
男は手持ちの槍で脅す割には、ダリネたちを古代マニアと勘違いして注意警戒を促す。
「いや、違う、俺たちはここに暮らしているユアっていう人物に呼ばれて来たんだが」
すると、男はその発言を聞くと、顔と態度をやや斜め90度変える。
「ユア様…、皇女様に呼ばれただと?ああ、そういうことか」
「そうだ、というわけで入らせてくれ」
ユアという女はやはり只者ではなかった。
ダリネたちはここの村にとって重要な役目を持つ皇女というのがはっきりわかった。
「先ほどは無礼で申し訳なかった。
俺は村の門番兵を勤めるクローザだ」
ダリネに頭を下げるクローザ。
そして、後から、金髪とショートカットで見た目は17、18歳ぐらいでメイド姿の少女がこちらに寄って来る。
「やっと参りに来たのですね。
ダリネ様、いや、先のメフィレスを統一した英雄様。
私は皇女ユア様の世話する侍女のセツカです。よろしくお願いします」
今度はセツカがスカートを広げ、挨拶をする。
「セツカ、この者たちのことをよろしく頼む」
「はい、わかりました。クローザさんこそ、今日もクレアリアを見張っていてください」
セツカが言うと、それを促すクローザは元の場所へと戻った。
「ユア様のところまで案内します」
ダリネたちを皇女のところまで連れて行こうとするセツカ。
その際に通り過ぎるときには、草花などの植物はちゃんとしっかり生えていて、これがあのユアが言っていた状況とはなんだか少し違うという違和感をダリネは思った。
そして、気になったのが、子供もいるが、年がいった老人や老婆などが畑仕事をしたり一緒に会話をしたりする姿などが多く見受けられることに、ダリネは気が付いた。
「なあ、このクレアリア村の人口構成はどうなっているんだ?
やたら年寄りが見受けられるけどな」
「はい、ここのクレアリアは若い人などはほとんど転生してしまい、残るはこの世界構成を何も知らない無邪気な子供、そして老人たちは居心地がいいと言って転生をしない者たちで成り立っています」
「なるほど、いわゆる、俺たちの住む第3階層で例えると、田舎の村みたいなもんだな」
「はい、そうですね」
「ダリネ様、その例えはちょっと…」
セテアがセツカに聴こえないぐらいの小声で、ダリネに否定をする。
「あ、天使みたいなお兄ちゃんだ~!」
「本当だ~!」
子供たちがそんなセテアの方に駆け寄ってくる。
おそらくはセテアの美貌に惹かれたのだろう。
「もう、みんな、今日はダメよ。
この人たちはユア様に呼ばれた大事なお客様なんだから」
セツカが寄ってくる子供たちに注意をする。
「そうか、ユア様に用があるんだね~!」
子供たちはダリネたちから離れ、いつもの毎日を過ごすことになった。
「さて、あちらが、ユア様が住む蒼巫殿になります」
15分ぐらい歩いたダリネたちはセツカに案内された方に目を見通す。
そこには全体が蒼い霧に包まれ、二匹の龍の銅像と屋根に設置されている。
瓦、壁などは古代紋様が記されているが、しっかりした素材で作られているのがわかる。
神秘的な建物が伺わされる。
普段からおんぼろなダリネの家とは正反対である。
「クレアリア村へようこそ、ダリネさん。
わたくしがここの村を治める皇女ユア・アムネイ」
そこには見た目が13、14ぐらいで、青い髪を束ねて銀のカンザシに長い衣を着た、いかにも巫女という風貌を持つ少女が扇子を持ち現れた。
(この少女こそがあの手紙の差出人のユアか…!!)
ダリネたちはすぐさまにこの少女の存在に精神的にも何もかも圧倒された。




