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それは私、小野崎ルエ、が中学生の頃だった。
私はなんとなく絵画が好きで入った美術部でこんな大参事が繰り広げるとは夢にも思わなかった。
同じ美術部員たちはグループをすでに作っていて、当時は茶髪の少女―、榎間奈津美もその部に在籍していて、目立った存在であった。
もはや絵を描くというより部に遊びに来ている方が正解だった。
「おい、とぼけんなよ!何しているんだよ!」
やがて、放課後、榎間及び美術部員たちは私を体育館裏に呼び出す。
榎間は私の襟をつかんで怒っている。
もしかしたら、日頃のストレス解消で私に八つ当たりをしたいのだろうと思った。
「やっちゃいなよ!」
そして、殴る蹴るの暴行。
私がアザだらけになったら逃げる始末。
私は誰にも、特に教員に悟られないようにこっそりと家へと帰宅する。
こんな毎日の日々が何度も続いていた…。
「あら、ルエ、どうしたの!?」
母親が私の異変に気が付く。
「なんでもないよ、お母さん」
「なんでもないわけないでしょ!
さては、あんた学校でイジメを受けていているわね」
母親に釘を刺されたのでしょうがなく、しぶしぶと頷く私。
その翌日。
「ええ、小野崎の保護者から連絡が入った。小野崎が学校でイジメを受けているようだが、心当たりのあるヤツが挙手しろ!」
担任が教卓の前で大声で叫ぶ。
「小野崎、お前はわかっているんだよな、誰にいじめられたのか」
しょうがない、担任の手を借りて、榎間を追い詰めるか。
「はい、私は榎間さんにイジメを受けていました」
私はきっぱりと言い放つ。
周りは同様を隠せなくザワザワと騒ぐ。
「だそうだ、榎間、実際はどうなんだ」
「知りません!私、やっていません!」
榎間奈津美がキリッとした態度で自分の身の潔白を証明する。
「そうだ、えのまちゃんがそんなことするわけないだろー!」
榎間と付き合っているとされる男子が私に野次を飛ばす。
「やっていないそうだ。
残念だなあ、小野崎」
榎間といい、この担任といい、クラスメイトといい、ふざけている。
どいつもこいつも憎き存在である。
「お前、先生にちくっただろ~!」
放課後、体育館裏で、またしても榎間たちに呼び出されて、殴る蹴るの暴行を繰り返される始末。
もうこんな地獄のような日々はごめんだ…。
「お母さん、酷いよ~!
なんで私が苛められていたことを勝手に担任に言うのー?」
家に着いたときに私は問いただす。
「ごめんね、ルエ。貴方のためだと思ってやったことが逆に傷ついた結果になったわけね」
「酷い!もう知らない!」
私は二階の自分の部屋へと行こうとする。
「ルエ、これからは学校へ行かずに不登校しなさい!
勉強も私たちが教えてやるわ~!」
「お母さん…」
私はお母さんの言うとおり、中学校に行かなくて不登校になった。
もちろん、中学の卒業式にも出なくて…。
でも、家族たちの教えもあり、高校は志望校へと合格。
しかし、またしても悪夢が待っているとは思いもよらなかった…。