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その後、ラウランの犯行に使われた凶器の包丁は見つかり、ダリネたちが発見した呪術式部屋も実際にすぐに発見され、呪術は解除・施され、証拠は見つかり、問題は解決の方向へと繋がっていった。
ノサンは事件に直接関わっていなかったから書類送検で済み逮捕されなかったが、ルケイマとケイトは直接関与も含めて関わったとして、証拠が見つかった後から、逮捕されることになった。
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「もう未練はないわ…。これで、やっと現世の肉体に戻れるのね」
ダリネの家の近くの湖のほとりにて、ダリネとセテア、メフィレス警察関係のナナルテ、ロジェ、ジロマ、ザハラ、死神Kに、そしてラウラン―。
「そうね、現世に戻った際にこの天国で起きた際の記憶は記憶は少しぼやけるかもしれないけどねえ」
Kが死神なりに説明する。
ラウランを現世と天国の境目で繋がっているアケロン川と言う、日本で言う三途の川へとKはラウランを誘導しようとする。
「みなさん、今までありがとうございます。
私にての問題が解決したため、私の肉体が現世で生きているため、
私、ラウランは天国から現世へと逆戻りして旅立ちます。
騒がしてすみませんでした。そして、お世話様でした。
現世で復帰して元気になった際には、今までと違い、心を入れ替え、再びアイドル活動をしますので、よろしくお願いします」
現世へと戻ろうとするラウランが目の前にいる者たちに別れの挨拶をする。
「まあ、これにて一件落着だな!
なんで俺がアメリカまで行かなければならんかったのか疑問だったが、まあ、いいや」
仰いでいるダリネを見て、Kとザハラは何かあったのかちょっと黙り込んでいたが、お互いにこっそりとダリネには聴こえないように小言で話している。
「バカ英雄って言ってごめんなさいね。
アンタの手もなければ、事件は解決出来なかったんだから」
「ふんだ、知らねえ。まあ、現世に戻っても、アンタの言葉通り、高飛車な言動は控えることだな!」
「ええ、そうするわね!
メフィレスの英雄であり、私の先祖のダリネさん!」
ダリネの態度にちょっとイライラを出しているラウランでも、終始安堵している。
「ラウラン、現世行ってもアイドル活動応援しているわよ」
「ありがとうございます、ナナルテさん」
ナナルテがラウランの肩をポンと叩く。
彼女たち極秘係の行動が事件解明には大きかったからだ。
ラウランは感謝しているのである。
「さあ、アケロン川へ行くわよ。
ラウラン、ついてらっしゃい!」
Kはシルクハットを取り、皆に向かって一礼をして、再びかぶる。
ラウランはKについて行こうとする。
「ダリネ、見ていなさいよ、一味変わった私を見せてやるんだから!」
ダリネに言い残して、Kに連れられ、姿をやがて隠すラウランであった。
「あいつ、今後は目が離せないかもな。
まあ、元気になったときに、コンサート活動を一度見てみるか」
ダリネらしくなく、本人は喜んでいた。
―俺の子孫よ、頑張れ―!
ダリネは消えて行ったラウランにそう思いを残し、皆が解散して、そして、セテアとともに自分の家へと戻るのであった。