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ダリテア・スピアーズ  作者: らーじ
2章
16/73

2-7

ナナルテ、ロジェ、そして魂だけのラウラン、ダリネがやって来たのは、ニューヨークの街中にそびえ立つ屈指の国立病院だった。


 そこにここ、4,5日前から、ラウランの肉体が運ばれていて、集中治療室で懸命に治療を受けている。

 生きるか死ぬかの狭間で。

 集中治療室のドアの前で、ラウランの父親と母親が泣きながら、そして無邪気な年の離れた弟が、元気に蘇る姿のラウランに希望を胸に寄せて待っている。


「―貴方たちはー!?」

 ラウラン一家がナナルテとロジェの存在に気が付く。

「私たちはFGIに所属するものー」

 今のFGI―、連邦捜査局は極秘裏で、天国とのやり取りを認可している唯一の機関だ。


 久々に家族の姿を見て、ラウランはいちおうひと安心する。

「お母さん、ラウランの容態はどうですか?」

 母のルルエがナナルテに泣きながら、寄ってくる。手にはハンカチを持っている。

「それが、まだ一向に回復しなくて、このままだと植物人間状態か、それとも死―」

「お母さん!」

「わかっているわ、ジェーン。でも、私、落ち着かないのよ…」

 ラウランの弟のジェーンは13歳で、年も年もあり、活発でもあり、しっかりした心を持つようになっていた。

「ジェーンこそ、落ち着きなさい。私は今は神に祈るのみだ」

 十字架を手にしていて、お祈りしている姿の大柄な、この男もジャルヌの祖先でもあり、ラウランの父親のターレスだ。


 すると、集中治療室から看護師の1人が現れる。

「あなた達が、FGIのものですね。

 ご家族の方には申し訳ないのですが、FGIのあなた達に容態を確かめさせるために、今一度、お入りくださいー」

「ごめんなさいね、ラウランの家族さん…」

 看護師に案内されたまま、入るナナルテとロジェ。と、霊体のラウランとダリネ。

 そこには人口呼吸器をしたまま、意識も戻らない状態で眠っているとされる、手術台の上にいるラウランの姿があった。


「この通り、以前、何も変わらない状態です。

 背中から凶器で襲われ、傷は心臓までには達してないものの、肺に致命傷なダメージを追っている」

 責任者である、手術衣の医者がラウランの容態を説明する。

「意識は?」

 ロジェが質問する。

「意識も依然と不明のまま」

 医者が匙を投げそうになるほど、やれやれと手を動かす。

「そうですか。ラウランのお母様によると、このままいくと植物人間か、死へと直行するということですね」

「確かにそうだ、もしかしたら、植物人間のままかもしれない。いちおう山場である危機は回避することに成功した、ラウランの身体を特別入院室へと 運び、軟禁状態にするしかない」

 そして、医者は部下である看護師に「このことを家族にも伝えておいてくれ」と頼む。




「こんなこと絶対に許せないわ!

 せっかく絶好調で、もうすぐ億万長者になるところだったのに」

 ラウランは特別入院室へと運び出された自分の身体を見て、憤慨する。

「ねえ、ラウラン、貴方、そういえば、誰かと熱愛が発覚したっていう記事があったわよね?あれ、本当なの?」

「本当よ。まあ、私がハリウッド俳優のゼイラー・ラッテと一夜を共にしただけなのに、大げさにマスコミは言うのね」

「気はあったの?」

「少しはね。まあ、彼は強引だったから、その一夜で覚めたわ」

「誰かに恨みを買った覚えは?」

今度はロジェがメモしながら、質問する。

「もしかしたら、あるかもしれないわ。

 それよりも私を支持してくれる人がたくさんいるから、そんなヤツいても、私の支持力に飲み込まれちゃうわね~!」

それを聞いてあきれ果てるダリネ。

「お前のそういう高飛車なところがアンチに反感買うんじゃね?」

 すぐにラウランはムッとする。

「悪かったわね高飛車で!

 ダメ英雄さん!」

「なんだと、このーっ!」

「まあ、落ち着け」

 ロジェがいつの間にか間に入って、ダリネにデコピンを打つ。

「いてー!」

 しかも、痛い。ダリネの額がなぜかヒリヒリする。霊体なのに。



「私を襲った犯人は少しぼやけているけど、覚えているわ。

大柄で傷のある男だった」

「でしょうね」

「でも、これという証拠がない」

 ロジェがまだメモしながら話す。


「FGIさんたち、さっきからお疲れ様です。

 私は少々気にかかることがありまして」

 ぎくっ、私たちがコソコソしているのがバレそうか?となぜからしくなく、びっくりするナナルテ。

 そこには、ラウランの動かない身体が眠っている近くで、ラウランの一家、代表して、ターレスが立っていた。

「は、なんでしょうか?」

「娘は人気絶頂のときにパパラッチに追いかけ回されていて、そいつが犯人じゃないかと私は睨んでいます」

「パパラッチ…?」

「ラウランの専属の記者とでも言いましょうかね。

 ラウランはあまりこの手の話を私たちにはしませんでしたが、私にはわかります。

 半分以上の新聞の記事にこの男がまたしても載っているんだなーって」

 すると、ターレスが丁度、近くに置いてあった新聞を持ち出し、ラウランが載っている記事の写真に出ているところの端っこの方に指をさす。

 そこにはサングラスをかけていて、いかにもリッチそうな感じの男が写っているではないか。

「あーっ、こいつだ、そういや、ここにも出ているよー!」

 ジェーンが別のラウランの記事を見つけ出しては、二、三か所発見する。

「(ラウラン、この男に面識はある?)」

「(あるわ。こいつ、ノサンっていうパパラッチよ。

 確か、ニューヨークメディア誌の特殊カメラマンで、私のようなアイドルを付け回すのにかなり有名だわ、私が人気絶頂のときもすごい私のこと追いかけ回していたわ!)」

「ありがとう、ターレスさん。

 おかげで、ラウランの回復に一歩繋がりそうだわ」

「本当かい!?」

「ええ、今からこの男について調べてくるわ」

 ターレスが一瞬だけ喜んだが、油断はまだ許せない状況だ。



「というわけで、今から、ニューヨークメディア誌社へと出向かうわ」

「わかった」

 ダリネもラウランも、そしてロジェも頷いて、誰もいないところで、彼らは瞬間移動したのだった。



 まさかのパパラッチ情報をご家族から聴けるとは思っても見なかった。

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