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突然、自分の家に来た刑事と思われる二人に戸惑うダリネ。
「あ、あの、警察さん、俺を逮捕しに来たんすか?」
と、目の前にいる二人に質問を投げつける。
「いいえ、違うわ。この件について、貴方は関係あるの。いわば、事情聴取に近い感じかしらね?」
この質問に背丈が高く、水色パーマ髪の女性刑事である、ナナルテがきっぱり。
「事情聴取?もしかしたら、場合によっちゃ逮捕されるかもしれないんだろう?」
ダリネが眉を寄せるが、内心は冷汗をかいている。
「いいえ、違うわ。ここでは部が悪いわ。
ダリネにラウラン、貴方はメフィレス天国警察署に来てもらいます。そこのセテアさんだっけ、貴方は自分の家の中で見守っていてね」
それでダリネの頭にはハテナというマークで一気に頭がいっぱいになってしまった。
「待ってください、ダリネ様は悪いことをしたんでしょうか?それだけでも、私に聞かせてください!」
セテアが慌てて、話に割り込む。
「ダリネは悪いことはしていない。が、悪いことをしているとしたら、こいつの過去だ」
出会って少しの間、無口だったロジェが口を開く。
「そ、それは…」
セテアは戸惑った。
確かにダリネにはいろいろと前科がある。
国家繁栄のために、700以上の人間を殺したという事実は変わらない。
それに、ダリネにはいろいろと謎が多い。
ダリネといつも暮らす場所が一緒なセテア自身もそう思う。
「ダリネ様!」
「大丈夫よ、セテアちゃん♡ ダリネは無事に戻って来るわ。少々、時間かかるかもしれないけど」
Kがセテアを落ち着かせる。が、それでもセテアは困り、まるで片方の翼をもぎ取られた感覚だ。
「ちょっと、ダリネ(こいつ)は何か悪そうなことしていそうだけど、私は自国アメリカに戻すつもりでしょ?」
自己主張の激しいラウランがこの場を制す。
「まあ、それも天国警察で話しましょう~!」
ナナルテがラウランに向かってウィンクする。
ラウランはそのナナルテの態度にイラつく。
「これだから、メフィレス人は…!!」
「…、ダリネも来い!」
ロジェに手首を掴まれ、強引に連れ去られるダリネ。
こいつの腕力が意外とあって、離せられない。
「ダリネさまあああああああーーーーーーー!!!」
セテアが寂しそうに叫びながらも、刑事と死神とアイドルと、呼ばれた歴史上の英雄はこの場から消え去った。
*
ここはメフィレス天国警察署。
メフィレスは中間の人口を誇る国で、他国とー、主にヨーロッパとのやり取りが盛んだ。
このメフィレス天国警察署もその管轄の一つだ。
とは言いつつも、天国、もはや、地獄との繋がりと、それに関する事件や事故の解明に今日も忙しい。
「そうか、メフィレスを救ったとされる、あの伝説の英雄ダリネード・スピネルドか。30年ぶりに会ったな。俺のこと、覚えているか」
ナナルテたちの上司である警部補の髭面の男性が、たばこを吸いつつ、灰皿にそれをつぶしあてる。
「忘れた!」
ダリネの一言にその警部補が驚くと、すぐさまにがっかりする。
「覚えとらんのか!
俺はジロマ。ジロマ・タクカだっ!!」
「そんな30年前のことなんて、すぐ忘れるって!」
ふんっと、そっぽを向くダリネ。
「さあて、ラウランは別の取調室で話している。
すぐさま、逢わせるが。」
ジロマはタバコを吸うのやめて、両手を組む。
「お前、大昔、ジャルヌ・S・タルクと裏でこっそり契りを交わしただろう?」
その一言で、ダリネは知られたくもない過去が、この中年によってまた暴かれる。
「そ、そんな、俺は…、俺は…、あのときは、しょうがなかったんだ!!」
ダリネは眼帯を抑える。
目がくらくらする。
思い出したくもない、ダリネの過去の一つが暴かれようとする。