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「るっるるる~♪」
ダリネは鼻歌をしながら、湖のほとりまで、釣り竿、道具を持ちながら歩いている。
そこでダリネは立ち止まった。
なんと金髪ロングで、女性らしき人物がダリネに裸で背を向けて、衣服を脱ごうとしているではないか。
岩の合間を縫りながら。
ダリネは驚いて、ブッーと鼻血を出しそうになる。
そして自らの手を抑える。
その鼻血の音なのか、ダリネの動きのしぐさを感じ取ったのか、女性らしき人物が感知して、
「何かしら?誰か、そこにいるの!?」
と、後ろを振り返る。
その姿に鼻血をまたブッーとしてしまおうとするダリネだったが、相手の金髪の女性はブラジャーをつけていたので、セーフギリギリ。
「俺です…」
ダリネはしぶしぶ手を挙げながら答えようとする。
しかし、ダリネは気が付いた。
この女性がどこかで見たことがある。
そうアイツだ、アイツではないかと…。
自分が嫌っている人物だと…。
「覗き魔かしら?
いやーね!まあ、私の裸見てもどうしようもないけどね!」
「とりあえず、服着ろ!」
「わかったわよ!」
ダリネは両手で目を隠して、女性に背を向ける。
「服着たわ!こっち見てもいいわよ!」
ダリネが振り返ると、そこには派手な衣装に包まれている女性が立っていた。
だが、非常に見た相手を迷彩させるかのような奇抜な派手さの衣服を着ている女性だ。
しかも髪の毛まで変わっている、お団子を何個も作ってまとめて結わいでいる。
これを見て、ますます、嫌いなアイツだと思うではないか。
そう、つい最近、このあの世をスクープで賑わしている、ラウラン・N・シャルキュリーネ、アイツだ。
「さては、お前はあの歌姫、ラウランだな!」
「そうよ!何か悪いことでもあるの!
この湖、綺麗だから、今、泳ごうとしていたところなのに!」
なるほどと、感心づくが、感心づいちゃダメだとダリネはブンブン首を横に振る。
そして、真顔になる。
「なんでこんなところに来たんだ?
お前の国は確か…」
ダリネは考え言いよどむ。
「アメリカよ!」
きっぱり言い放つラウラン。
なんてこった…。
アメリカ―、世界で一番の歌姫がメフィレスという世界ではあまり知られていない国に来たのだから。
「そうだ、そうだったな!
話戻すが、悪いことはあるさ!
とっとと閻魔大王のところへ出頭しろ!
この奇抜女が!」
「どうしてよ!?
私は閻魔大魔王様の命令でここに来たのよ!」
「は…?」
女性ながらに仁王立ちするラウラン。
*
「どういうことですか?これは?」
ラウランを連れて帰ったダリネは、さっそくセテアにつっこまれる。
セテアもダリネも首を傾げる。
「知らねーよ!
なんか閻魔大魔王が、メフィレスでひっそり暮らしている俺たちのところにこいつを呼んだらしい。」
「こいつとは何よ!」
「ふん!普段の行いが悪いから、自分の国に帰れなくなるんだ!」
「何よ、それちょっと違うわよ、閻魔大魔王様直々に言われたのよ!
さっそく、メフィレスのダリネ・スピネルドのところに行きなさい!って。
それで協力して、自分のことを死へと追いやろうとした、犯人を見つけなさい!って」
そうなのかと、首を縦に降るダリネだったが、納得がいかない!
「ってか、閻魔大魔王、気分屋過ぎるだろう!
よほど、この前の仕返しのことを根に持っているな!」
ダリネが憤慨する。
「あいつ、大柄な男の割には、だいぶ気が小さいな!」
「それで、どうするんでしょうか、ラウランさんを」
困り顔のセテア。
「とりあえず、メフィレス天国役所に相談の電話を入れるしかない!
全く、何、考えているんだ、アイツ!」
両腕を組みながら怒るダリネは閻魔大魔王に対して、憤りを表す。
「あれ、ラウランさーん!どこ行っているんですか~。
もしかして、そこは?」
そんなダリネとは別にラウランが別の場所へと勝手に足を運んだことに気が付くセテア。
「あ、何、この部屋!
ひょっとして、ここに日本人かぶれの人がいるの?
しかもアキハバラが好きそうなオタ…」
妙な物が散らばっていて、汚いダリネの部屋を勝手に見るラウラン。
「ええい!そこは俺の部屋でい!
勝手に見るな!」
「何よ、私が湖のほとりで、着替えているところを覗こうとしたクセに!」
「ダリネ様、まさか、そんな方だったとは」
ジト目のセテアはダリネが何考えて生きているのかわからないという表情だ。
「違うんだ!セテア!」
「こんなところにパソコンが、私の部屋の方がすごいわよ!」
と、ダリネのパソコンを勝手に起動してインターネットに繋いで、検索するではないか!
「やめろ!
お前のグロ部屋なんか見たくもない!」
かつて、ダリネはたまたまラウランのブログを見てしまい、吐き気をしてしまったことを思い出した。
「私の方が勝っているわよ!
どうよ!?
私の全昆虫標本採集と、キモかわいい深海魚ポスターに抱き枕は!」
さっそくラウランは自身のブログに飛び、自分の部屋が写っているところの画像をクリックして拡大する。
そこには妙に暗い部屋の中、想像を絶する昆虫の標本と深海魚のポスターが壁に辺り一面に並べられネオンになって光つくし、愛用の抱き枕の「フウセンデンキウナギ」を喜んで抱いているラウランの姿があった。
なので、自慢気に勝ったと話すラウラン。
ダリネ、吐き気再び…。
セテアまでもが気分が悪くなった。
こんなおてんばで、ダリネ以上の変り者のラウランをこれからどうすれば いいのか。
ダリネたちは不安と絶望の気持ちでいっぱいになってきてしまう。
すると、またピンポーンとインターホンが押された。
覗き穴には案の定…、
「Kよ!出なさいな!ダリネちゃん♡!」
こいつも変わり者であろう、Kが来てくれた。
そして、Kの後ろには2人の男女がいることに、覗き穴から気が付くダリネ。
「まあ、やっと開けてくれたのね♡!」
さっそくダリネに抱きつくK。
こいつはこいつで気色悪いし、ラウランは女でありながら別の意味で気持ち悪いというダブルパンチなダリネ。
さらに顔面蒼白になる…。
「ところで、その人たちは。ぐぼぼぼぼ…」
助けてくれと言わんばかりでダリネは苦しい…。
「天国メフィレス警察署の極秘係ナナルテです。」
「同じくロジェです。」
ナナルテというすごくしっかりしていそうな女性に、ロジェという若い男性。
たぶん、この天国警察が動き出したのは、今、ダリネの部屋にいる変わった女性、ラウランの件でだろう。