2-1
深く茂る森の中、逃げ切る女。
「はあはあ、もうイヤ、こんな生活…」
女は息をちらしながらも、それでも走り続ける。
なぜなら、後を追う男がいるから。
しかも、その男がにたりと喜んでいる顔で、襲おうとするではないか。
そして、女の走った先は残念ながら、行き止まりだった。
引き返すことができない。
「さあ、今宵は、最高のパーティーを始めよう、ラウラン」
迫りくる男が女にだんだん近寄る。
そして、手元からやがて包丁を出す。
その夜、女は悶絶しながら、命を絶やそうとする…。
*
「ダリネ様、聞いていますか?」
「ふぇっ?」
熱中してパソコンの美少女ゲームをプレイするダリネ。
そこで、セテアがちょっと激怒。
「“ふえっ?”じゃないですよ!
今、テレビですごい報道されていて、天国でも騒がしている問題があるんですよ」
「興味ないね!」
「なんです、そのどうでもいい発言は!」
「だって、アマネちゃんとあともう一歩で結ばれるところだもん!」
ダリネがきゃっきゃっうふふでパソコンの画面の前でうっとりして喜んでいる。
「もう!そんなことよりも、社会現象になるかもですよ~!」
セテアがダリネを一生懸命に自分の方に顔を向かせる。
「へ?」
「テレビや新聞、天国のメディアでは、今や、連日で、アメリカ一番の歌姫・ラウラン・N・シャルキュリーネが謎の失踪して、昨日の夜、肉体が見つかり、天国で魂が届いていないということで、大盛り上がりですよ!」
「ほほう!ふんっ!」
ダリネが頷くが、しばらくしたら、そっぽを向いて、怒った態度を示す。
「あれ、どうしたんです?」
「前に言っただろう、こいつ、女のクセに化粧が派手でケバくてダンスとかもすべて気持ち悪くて嫌いだと!」
きっぱりと言い放つ、ダリネ。
「そういや、言いましたね」
「うーん、でも、天国に魂が逝っていないということは、地獄逝きかもな!」
「それが、閻魔大魔王様たち閻魔艇館庁が天国逝きの判を押したそうです。
それなのに、行方不明とは、一体」
「知るか!
きっと、あんな化け物女が勝手に好き好んで地獄逝き選んだんだろう!」
余計に憤慨する、ダリネ。
「天国界一の歌姫リリラさんも心配していますよ~!」
「なんであんなに可愛い子がケバいヤツの肩を持つのか、理解するのかわからん!」
すると、つけているテレビからでも、天国特化記者が大きな声で閻魔艇館に駆け寄っていてラウランのことを報道しているではないか。
「もう頭にきた!
俺は釣りに出かける!さらば!」
ダリネはすぐさま、リモコンでテレビの電源を切り、自分の美少女ゲーム をプレイしていたパソコンも切った。
そして釣りに出かける、準備を瞬時にする。
「さあて、出発だ~!」
釣り道具を右手に持って、左手で揺らすダリネ。
「ああ、ダリネ様ったら、まったく…。
でも、怒らせたからどうしよう…」
セテアはため息をついた。