21話 囮作戦〜子供達アメーバを救いだせ!〜
始界教聖書 第1章 救世主の軌跡
『罠の闘争
相手を罠にはめたつもりであっても、決して油断してはならない。なぜなら、敵も同様に罠を張っているからだ。…』
俺達は、子供達をさらったサナダムシが逃げていった方向へと急ぐ。すると、奴の姿が見えてきた。
「よし。見えてきたな。」
「はい。主人様。速攻捕縛しましょ。」
すると、移動していたサナダムシは止まり、柔毛の下へと潜っていった。
「あいつ。あそこで消えたぞ。」
「ならば、もう少し進んだら、柔毛の下へと潜りましょ!そこの影から観察し、隙を見て、子供達アメーバを救出しましょう。」
「分かった。それで行こう!」
そうして、俺達はアメリアが指し示したポイントから柔毛の下へと飛び込む。もし、『飛行恐怖耐性』が無かったらと考えると怖かったが、今の自分には、『飛行恐怖耐性』があるので、当然余裕である。俺とアメリアは、しっかりと着地し、柔毛の物陰から様子を確認する。すると、そこには、3匹のサナダムシがいた。もちろん1匹は、子供達を拐ったサナダムシだ。そして2匹目は、どこかで見たことがあるようなサナダムシでなぜか分からないが、輪っかを尻尾の部分に作っている。特筆すべきなのは、3匹目だ。その長さは、おそらく通常の2倍はある。また、そのサナダムシには、今まで見てきたものと異なり、上部に黒線が左右に入っている。すると、何やら話しをしだした。俺達は、柔毛に聞き耳を立てて、様子を確認した。まあ、柔毛に聞き耳を立てても『respond』が敵判定して、頭の中に聞こえるから関係ないんだけど。
『お嬢さま。こちらに最高級のIP物質。満足頂けるかと。』と2匹目のサナダムシが言い、輪っかになっている部分を黒線入りのサナダムシに差し出す。
『最高級のIP物質』?一体何だと思い、発言しているサナダムシを見る。輪っかには、何かがはまっていたということか?と考えていると、俺はある事実に気がついてしまった。あいつは、俺の首を絞めたサナダムシか。そう思うと、突然に俺の体は、震え出した。すると、アメリアが俺の頭を優しく撫で始め、
「主人様。安心して下さい。私がついています。」
それは、アメリアが言うように安心し、落ち着くもので、
俺の体の震えは、止まった。
「ありがとう。アメリア。落ち着くよ。」
「はい。私は主人様の『執事』です。主人様の心をケアするのも、私の執事ですから。」
とアメリアと話し、俺の心が休まった所で事態は動く。
『なにも、な―い。』と黒線入りサナダムシは、片言の日本語で語る。
『しかし、お嬢さま。』と言い、そのサナダムシは、輪っかの部分へ身体を寄せる。しかし、当然であるが、そこには何もない。すると、驚くべきことに、そのサナダムシは、
『お嬢さま。私を差し出します。』
『そー。じゃ、えんりょなく!』と言い、黒色線があるサナダムシは、自分の体の後方を俺を殺しかけたサナダムシに巻きつけた、すると、
『まっずーい。でも、そこそこ、おいしい。』
『満足頂けましたなら、幸いです。』そう言うと、彼はその場に倒れ込んだ。俺はその様子を見て、恐怖した。きっといつもの自分なら、そんな事を思わずに逆に好奇心をそそられるのだろうが、今回は違う。同じ生物同士ですら、吸収行動をするのだから、もし違う生物すなわちアメーバの子供達だったら。と考えずにはいられなかった。それは、俺が見たくない最悪のバットエンドだ。しかし、まだ俺らが追いかけたサナダムシは、黒線付きサナダムシに差し出していない。生贄になる前に救い出さねば!と自分の心を奮い立たせて、アメリアに言う!
「アメリア。いつでも奴らに襲い掛かれる準備をしておけ!」
「分かりました。主人様。」
そういう問いかけを終えると、再び、黒線付きサナダムシが話し出し、
『きみ、なにか、さしだせるの、あーる?』
『はい。』
すると、その蛇のトグロのように巻かれた後方部分が徐々に開いていく、すると、アメーバの子供達の泣き声が聞こえ出す。
「いくぞ!」と覚悟を決めて言う、しかし、その声に反対する機械音が聞こえる。
「いや、待ってください。」
覚悟を決めたのにと思ったが、『respond』が言う事だ。従う価値はあるだろう。少し不満気に、
「何だ?『respond』!」
「はい。作戦がある。囮作戦。」
「囮作戦?一体どんな?」
「はい。まず、アメリアが敵に襲いかかり、あの2匹の囮になり、逃げる。おそらく、お腹が空いているサナダムシには、アメーバは魅力的に写るでしょう。だから、必ず囮になれるはずです。そのすきに、貴方が子供達の所にいき、『respond』を使って、移送させます。そしたら、逃げて下さい。」
「なるほど。俺的には、二つ問題点がある。一つ目は、『respond』できるか問題。二つ目は、アメリアに負担がでかいという点だ。」
「はい。『respond』は、短距離ならできます。しかし、貴方とアメリアは逃げてください。みんながいた所まで。そうすれば、おそらくアイツも倒せる。」
「分かった。ところでアメリア。アメリアは、大丈夫そうか?」
「はい。主人様。私は『執事』です。仕事に無理は存在しません。必ずやり遂げます。」
「分かった。絶対に死ぬなよ!」
「分かっています。私は『執事』!仕事に抜かりはないのです。主人様。」
「頼むぞ!アメリア。」
と話し終えると、向こうも『子供達アメーバ(くいもの)』の話しが終わったらしく、話が始まった。
『そんななきごえが、して、まずそうなもの。くわせるき?おいし〜いものしか、たべたくない。はやくすててきて。』
捨てるのか?よし、NOリスクであのでかいサナダムシとの戦闘を避けれる。これは、こちら側にチャンスが回ってきたというものだ!待っていろよ!子供達。もう怖いのは、お終いだからな。と思っていると、
『ならば、私がお嬢さまの変わりに吸いましょう。』といい、再び泣いている子供達を再び、包み込み始めたのだ。
「くらーい。」
「こわいよー」
その声を聞いた瞬間俺の頭が考えるより先に行動していた。
「返せ!アメーバ達をっ!」と凄まじい怒号と共に子供達が隠されているトグロが巻かれた部分へと走り出す。
「主人様。お待ち下さい。」というアメリアの音が聞こえたが、今の俺に届く事はない。全力で駆け抜ける。だが、視界の前に、子供を吸おうとしているサナダムシが、急速に身体を伸ばし、トグロとなっていた部分が解除され俺に襲いかかる。まずい。ぶつかる!と思ったが、俺は子供達の姿が見えて、これはチャンスだと思い、躊躇なく突き進む。すると、上空に俺の『敏腕執事』の気配と共に、
「主人様。行きますよ!必ず助けて上げてっ!」と聞こえると目の前から、ベシンという力強い音が鳴り響く。そのおかげで、俺の視界には、子供達のみが写る。本当は、アメリアにサンキューと一言声かけたかったが、今はそれどころではない!俺は、俺にしか出来ない事。つまり、アメーバの子供達を救う!という任務を成し遂げなければならない。全力で突き進む。
「必ず。必ず。助ける!」と叫びながら、トグロだった部分へ入り込んだ。そこには、震えているが、全員なんの傷もない子供達の姿があった。涙ながらに
「ぞくちょーさま。ありがとう。」
「たすけてくれて!ありがとう。」
俺は、その言葉に怒りで燃え上がった核は、穏やかになる。しかし、次の瞬間アメリアが攻撃したのだろう。べチンという縄音が遠くから聞こえる。どうやら、アメリアは、黒線付きサナダムシをうまく誘き寄せる事に成功したらしい。だが、今は緊急事態である事には変わりは無い。だから、俺は、
「respond!」と大声で子供達アメーバに向けて叫ぶ!
「了解。」
子供達は、光に包まれ始めた。次の瞬間、子供達の姿は消えた。良かった。子供達をなんとか安全な場所に戻せて!だが、この戦場は、そんなに落ち着いている暇はない。次の瞬間、俺を真っ直ぐ伸びていた後方部が包み込む。
『私の獲物を!よくもっ!お前吸う!』という言葉が、頭に響く。だが、俺は知っている。こいつらのようなサナダムシが弱い事を!俺は右手に持つ深紅の剣を振り上げる。
「消え去れ!侵入者!」と言い、全力で降り下ろす。すると、そのトグロは、完全に切れ、視界が開く。だが、『お嬢さま?』の部下なのだろう。流石は、手練れ。頭部側の切断した部分から、急速に身体が再生し始めた。その伸びる勢いに俺は、後方へと吹き飛ばされた。それと同時にimmunity sword改を落としてしまった。また、柔毛にぶつかったのだろう全身が痛い。おもわず
「痛い!」と叫ぶ。
すると、左手から声が聞こえ、
「内出血、上皮部の損傷を確認。『recover』と言えば、治る。」
俺は即座に「『recover』」と叫ぶ。すると、全身の痛みがひいていき、俺は立ち上がる。
『なぜ!お前立てる?』
「なぜか。それは、俺には仲間と言える者達がいるからだ!」
と言うと、再び「immunity sword改」と言い、そいつの頭部を目指して、仮足を出すイメージをして突き進む!
「消えろ!貴様は俺の『仲間達』を殺そうとした!お前に生きる資格などない。」
と叫び、頭の上部からジグザグに刀を振り下ろしていく!すると、
『☆¥€○☆$…』となんて言っているかは、分からなかったが苦しんでいる事が分かる音共に、サナダムシが目の前に転がった。
「よし!倒したか?」
「はい。倒しまし…」と言いかけた所に、凄まじい轟音が響き渡る。一体なと思った瞬間、目の前に人生最悪の映像が写る。そこには、口から血を出しており、腹部が貫通している『アメリア』が現れた。俺はそのアメリアの姿を見て、慌てて
「『recover』!」と叫ぶ。すると、
「主人様。お逃げ下さい。あのサナダムシは、」
と言った瞬間アメリアは足から体が持ちあがり、次の瞬間その部分が急速に成長し、あっという間にアメリアの頭部以外全身を巻き尽くした。すると、片言の日本語と共に、
『すばしこかったけど、うまそうな、しろだま。』と言う声が聞こえる。
「アメリア。貴様っ!消え失せろ!」
と言い、『immunity sword改』を振り上げようとする。しかし、その剣は、持ちあがらない。不思議に思い、その剣を見ると、鞘の部分に何かが巻きついていたのだ。それに気がついた時には、もう遅かった。『immunity sword改』は、抜け落ち、俺の右手にヘチマのツルのようにドンドンと白く細長いものが巻きついてきた。それと同時に、後方から俺の両足と左手そして首に右手と同様巻きついた。
「なっなんで?どうして?」
『それは、こうほうに、からだが、あったから。からだ、でかいから、とーぜん!うまそーな、えものを、のがさないから』
と言う忌まわしき物体の音が聞こえる!すると、アメリアが
「主人様ぁ。くそっ。貴様。どけ!」
しかし、当然その言葉で退いてくれるはずはない。俺はこの間に抜け出す方法を考える。そういえば、immunity sword改なら断ち切れたと思い、
「immunity sword改」と叫ぶ。すると、アメリアも俺に見習ってか、
「私も出し惜しみはしていられない!『変幻自在』。」と叫ぶ。だが、無惨にも、剣が出ないところか、アメリアの姿も変わらない。
「なんで?」
『ふっふー。それは、わたしの、まわりでは、わざはつうようしない。』
「貴様。よくもっ。」と大声で言う、すると不思議そうに
『どうして、そんなに、さけぶの?まずいめしは、キライ』
俺は、即座に
「貴様が俺らを殺そうとしてるからだ!」と怒号をあげる!すると、何か思いついたのか、黒線サナダムシの声が聞こえる。
『そーなの?そんなかおで、みられている、じょうたいで、たべたくない。だから、ト・ク・べ・ツ、あるじー?の方、あるじー?かそこの白いやつ。どっちかはすわない。だからにがすから、すわないほうは、きえて。しょくじのじゃまだから。』
「主人様。私は生き恥。どうか、私をここで殺めて下さい。これは、『執事』としての当然の義務ですから。ですが、最後にこれだけは、言わせて下さい。吉雄様といれて良かった。」
と言われたが、俺の答えは、すぐに決まった。もう今の俺には、勝つ術は思い浮かばない。かといって、技はアイツに封じられている。だから、もうこうするしかない。俺は何度も死にかけた身だ。後悔はあるが、本当の仲間の為に死ねるなら、悪くない人生だ。
「アメリア、今まで、ありがとう。楽しかったよ。」
という俺の言い方に何かを察したのか。焦った口調で、
「あ、主人様?そっそこから先はなにも言わないで下さい。私がここで、主人様のかわ…」
と言いかけた瞬間、俺はアメリアの言葉を遮る。そう、これから死ぬ俺が君から一番聞きたくない言葉だからだ。だからこそ、記憶の断片に鮮明に刻み込むように、俺ははっきりと明確に、
「アメリアを逃せ!俺一人で頼む!」
「わかっーた。き・え・て?」
と言いそいつは、俺の『執事』を解放した。
「主人様。どうして、どうして。私を見捨ててくださらないのですか?ねえー。主人様。主人様!…死ね。てめぇー。主人様を離せ!」と涙を流しながら、彼女は縄を振るう。
俺はその姿を見て、思う。すまない。アメリア。俺が弱いがために君に苦しい思いをさせて。と思っていると無惨にもサナダムシは『うるさーい。』と言い、アメリアに向けて、自分の身体を伸ばし、後方へと押しやり、吹き飛ばす。
「アメリア。」と叫んだ。だが、その声を遮るかのようにサナダムシは、楽しそうに話し出す。
『この、ひたりてにあるの、まずそー。』
と言い、俺でも驚くくらいきれいに腕からきれいに外すと、吸収が開始したのだろう。奴が、
『お、お、おいし〜い。こんなにおいしいの、うまれて、はじめーて、ほんと、うまれてきてよかった。』
と言う最後の音が聞こえるとともに、俺の意識は、深い闇の底へと消えていった。
ここで、サイreは終了?いえいえそんなことはありません。きちんと、ヨッシーには、幸せになってもらわないとね。だけど、ここまで慕ってくれる人がいると良いよね。また、現実のサナダムシがサナダムシ同士を吸うということは、無さそうです。




