表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

そのイナゴが入った虫かごには、何故かおふだが貼ってあった

 教室に入って来た唄枝奏を見て、園上ヒナは思わず吹き出してしまった。唄枝は外見も言動も子供っぽい。そんな彼女が何故か虫かごを抱えていたからだ。

 「奏! あんた登校途中で昆虫採集して来たの? なに? 小学校の宿題?」

 嬉々として園上はそうからかった。しかし、唄枝は真剣そうな顔で返す。

 「しっ あまり騒いじゃ駄目。とっても危険なんだから。盗まれないようにこうして持って来たの」

 なんだこの反応は?

 と、首を傾げて虫かごを見てみて園枝は気付く。なんでかおふだが貼ってある。何が入っているのかと覗いてみると、イナゴが一匹。

 「危険? このイナゴが?」

 「そう」

 と、言いながら唄枝は席に着く。

 「このイナゴは、なんと蟲毒で生き残ったイナゴなの」

 は? と、それに園上。

 「どうして蟲毒なんかやったのよ?」

 「もちろん、それは悪の秘密結社に対抗する為だよ」

 

 悪の秘密結社。

 

 最近流行っている都市伝説だ。悪の秘密結社が結成されて、この世を支配しようとしているという。もちろん信じている人など滅多にいない。

 

 「闇の力に対抗するには闇の力だよ。だからあたしは蟲毒を行ったんだよ」

 唄枝はそう語る。

 信じてやがる。

 「闇は闇でも、ちょっと方向性が違う気がするけど……」

 園上はちょっと引いていた。

 「蛇、犬、狐、蜥蜴、蝦蟇、蟷螂、蜈蚣、蝗を部屋に入れて、そして生き残ったのがこいつだったんだよ(参考文献:日本の呪い 小松 和彦 光文社 133ページ)」

 その説明を聞いて「へ?」と園上は思う。

 「ちょっと待って怖いんだけど?」

 「そりゃ怖いよ、蟲毒だもん」

 「いや、そうじゃなくて、そのメンツで生き残ったのがイナゴなの?」

 「イナゴだよ」

 多分、それは地球のイナゴではない。

 思わず席を離す。

 「……で、そのイナゴをあなたはどうするつもり?」

 「分からないよ」

 「はい?」

 「本に書いてなかったんだよ」

 「何よ、それは?」と、園上はツッコミを入れた。

 「んー 取り敢えず、“悪の秘密結社を倒して”ってお願いしておいたのだけど」

 「はー」

 くだらない、と園上は思う。どうやら本気にするだけ損のようだ。

 

 しかしだ。

 なんと次の日、そのイナゴは盗まれてしまっていたのだった。唄枝は「悪の秘密結社が盗んだんだよ!」と言い張っていた。園上は「はいはい」と特に気にしていなかったのだが、彼女は知らなかった。やがてそのイナゴを素体として悪の秘密結社によって生み出された改造人間が、自らを生み出した結社に反旗を翻す事を。

仕事が忙しかったので、今週は短めにしようと思ったところで、「そういや1000文字以内の企画が行われていたな」って思い出したので参加してみました。

でも、1000文字以内って難しいですね。


因みに、蟲毒で生き残った生物に何をするのかは本当によく分からないみたいです。

小松和彦って学者さんが書いていました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ