★6 大浦樹愛羅②
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朝7時に目が覚めた。体調は良くなっていた。
まだ、大庭くんは起きていないみたいなので、しばらく布団の暖かさを楽しんだ。
8時に大庭くんが起きてきた。
「ああ、おはよう。朝ご飯はパンと牛乳とオレンジジュースな。」
「・・・ありがとう。いただきます。」
挨拶をしてくれた!朝ご飯をくれる!ちゃんとお礼を言わないと!
「これからどうするの?すぐ家に帰る?まず、お母さんに電話してみる?」
「・・・電話してみます。」
大庭くんはサッカー部で、今日の練習は休んでくれるらしい。
スマホで連絡したらすぐに返信があってそれを見た大庭くんは憂鬱そうだった。
どうかしたのかな?
9時にお母さんに電話をかけた。
「どこにいるの!」
「あの、友達のと・・・」
「良かったじゃないか!もう帰ってくるんじゃないよ!
電話ももうしてくるな!お前なんかアタシの娘じゃない!帰って来るな!
二度と顔、見せんな!」
大きな声で罵られて、すぐに切られた。
「お母さん・・・」
もうお母さんとは会えない。やっぱり私は捨てられたんだ!
「・・・大浦さん。」
「お願いです!ここに置いてください!何でもします!お願いです!」
心配してくれた大庭くんに対して、言葉が溢れた。
「・・・親に相談してみるよ。」
「・・・うん。」
大庭くんが札幌にいるお母さんに電話をかけると、微笑ましい会話から始まった。
愛されているんだ、いいな・・・
だけど、私の面倒を見たいと伝えると、ひどく叱られていた。
当たり前だよね、中学生が中学生の面倒を見るってありえないよね・・・
だけど、大庭くんのお父さんはやってみろって言ってくれた。
お父さんにすっごく信頼されているんだ、うらやましいな・・・
その上、10万円も余分にくれた!すごい!ホントにいいのかな?
お父さんの了解をもらうと、すぐに私の服を買いに出かけた。
「悪いけど、なるべく安いヤツで下着が4セット、上着は2セットな。」
結構下着が高くて、併せて3万円も使ってしまった。
その後、美容院に連れて行かれた。
「もう、ばっさりと切っちゃって。この子に似合う髪型にしてください。」
それだけ言うと、彼は店を出て行った。
ホントにバッサリと切られてしまった。
イヤなモノが見えないように切らなかった前髪が、眉毛のずっと上まで無くなってしまった。
全てが鮮やかに見えた。
大庭くんが来た!どうかな?緊張する!
「・・・衝撃だよ!すっごく可愛いよ。」
可愛い!初めて言われた!ホントに可愛いって言った?
「・・・ホントに?」
「ホントにホント。」
「・・・ホントにホント、ですか?」
「マジ、可愛い!」
「・・・ありがと。」
「お、おう。せっかくだから、下を向かないで。胸を張ろう。」
大庭くんは優しく微笑んでくれた。
・・・大庭くん。私にも優しくって、背が高くて、笑顔がステキ。
薄いオレンジのシャツにアイボリーのチノパンが似合っていた。
夕方には大庭くんの親友の2人が家にやって来た。
木幡皐月さんと丹内翔真くんだ。2人とも同じクラスらしい。
がんばって「こんにちは!」って挨拶して微笑んだら、滅茶苦茶ビックリされた。
3回もハモっていたし。
それから私のイジメを止めさせるための相談が始まったんだけど、
そんなのはすぐに終わって、3人で冗談ばっかり言っていた。
すっごくわかり合えているみたいでうらやましかった。
話が全て終わると、木幡さんが大庭くんに声を掛けた。どうしたんだろう?
大庭くんと木幡さんが帰って来た。
暗い表情の大庭くんはため息を一つついた。どうしたんだろう?
さっきまでの楽しそうな雰囲気は霧散していた。
「昨日の夕方、西宮北口で鳩岡愛梨沙と仙石龍聖が待ち合わせしていた。
出会うと手を繋いで、何度もキスしていた。」
うそっ!鳩岡さんは大庭くんの彼女で、仙石くんは親友だって・・・
「ホント。じゃなかったら、今、二人もここにいる。」
「・・・ゴンちゃん、大丈夫なの?」
木幡さんは自分が裏切られたかのような表情になっていた。
「ありがと、皐月。世界で一番不幸だって絶望していたら、大浦さんと出会っちゃって。
なんか、絶望するのが馬鹿らしくなった。」
「ゴメンなさい。」
私が謝ると、大庭くんは苦笑して慌てて否定した。
「いやいやいや、絶望感が吹っ飛んで、助かっているんだよ。」
「・・・何か出来ることはあるか?」
丹内くんが言うと、木幡さんも頷いた。
「仕返しはしたいから、今からやり方を考える。できたら、協力してくれるかな?」
大庭くんは丹内くん、木幡さんだけでなく、私にもお願いしてくれた。
日曜日には2人で私の文房具とか、食材とかを買いに行った。
昨日はなんとも思わなかったけれど、今日はこれってデートだって思って
1人赤面していた私を大庭くんは心配してくれた。
夕食は私に任せてもらった。
あんまり料理はしたことなかったけれど、レシピどおりに作ったら結構美味しくできた。
大庭くんも美味しいって言ってくれて嬉しかった。
私は何を話せばいいか分からないし、話すネタもないし、恥ずかしいしで、
大庭くんに話しかけることは出来なかった。
だけど、時々大庭くんを見てしまうと、彼はスマホをじーっと見ていた。
夜9時になると大庭くんは大きなため息をついて、丹内くんと木幡さんに電話を掛けた。
ひどく悲しそうだった。だけど、私は慰める言葉を持っていなかった・・・
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