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★4  大浦樹愛羅

よろしくお願いします。



小学校高学年までは、お母さんは優しくて、若々しくてキレイな自慢の母だった。

だけど、男に結婚をエサに騙され、仕事を失い、借金を背負わされ、変わってしまった。


すぐにお金を貰える仕事といえば夜のお仕事しかなく、

店や客に対する不満を私にぶつけてくるようになった。


中学校の制服も買ってくれなかったので、

小学校の担任の先生が走り回って、お古の制服を用意してくれた。


服を買ってくれなくなり、修学旅行費などの学校積立金を出してくれなかった。

食事を作らなくなり、家事をしないようになった。


電気代と水道代は支払っていたので大丈夫だったけど、

ガス代は支払っていなかったのですぐに止められて、お湯は使えなくなってしまい、

お風呂に入ることが出来なくなってしまった。


すぐに学校で気づかれ、イジメが始まってしまった。

それまで仲が良かった友達から少しずつ距離を置かれ、

すぐにみんないなくなってしまった。


私は堅く、堅くじっと嵐が過ぎ去るのを待つようになった。


だけど、どんなに辛くても学校を休むことは出来なかった。

給食があったから。


家では母が稀に買ってくるパンや弁当しかなかったから。

給食を食べないと死んじゃうから。


先生に相談したけれど、「わかった。他の先生とも相談するよ。」って言ってくれた

けど、そのままなんにも変わらなかった。


私はお母さんが元に戻るように祈ることしか出来なかった。


あまりにも制服が汚れてきたので、同級生から叩かれたりすることはなくなったけれど、

イジメはずっと続いていた。


だれも助けてくれなかったけれど、授業は真面目に聞いていた。

宿題も真面目にしていたので、成績は上位だった。


だけど、体育とか実技が入ると壊滅的にダメだった。

同級生に邪魔をされることもあるし、班行動をさせてもらえないし、

同級生たちの視線を感じると動けなくなってしまうのだ。


3年生になった。クラス替えはあったけれど、なんにも変わらなかった。


ずっと暗闇の中をもがいていた。


だけど、あと1年。

中学校を卒業すれば、アルバイトだって出来る。もう少しの辛抱だ。


5月になって母に恋人が出来た。

ご機嫌になり、パンや弁当をよく買ってくれるようになった。


大雨の日、学校から帰ると、母が留守なのにその恋人がいた。

その男は酔っぱらっていて、薄汚い私を見ると怒りだし、

私を蹴り飛ばし、家から追い出した。


しょうがないので、公園で1時間ほど雨宿りしたあと、

母が帰った頃合いで家に帰った。


母が激高した!

「アタシの恋人に色目を使いやがって!出て行け!」

「そんなことしてないよ!」


罵詈雑言を浴びせられ、殴られ、蹴られた私は泣きながら出て行った。

灯りを見つけて、そこで雨宿りすることにする。


でも雨宿りしてなんになるのかな?

お金なんて1円もないのに!

どこにも行く当てなんてないのに!

誰も助けてくれないのに!


絶望のあまり、立っていることすら出来なくなってしまった。


「・・・大浦さん、そのままだと死んじゃうよ。」

ためらいがちな男の声が聞こえた。


「・・・もうイヤ、誰でもいい。たすけて。」

「・・・俺の家に来るか?この弁当ならあげるし・・・」


「・・・お願いします。」

断ることなんて考えもしなかった。

今を変えることが出来るならなんだってよかった。


家に着くとお風呂に案内された。

湯船にはお湯がもう張られてあったけど、まずはシャワーで髪の毛を徹底的に洗った。

その後は体を隅々まで・・・


久しぶりのお風呂は冷え切っていた心と体を少し暖めてくれた。

幸せを感じたけれど、空腹が我慢出来なくなったので上がることにした。

用意されていたパジャマを着て、丁寧に髪を乾かした。


ようやく助けてくれた人に思いが飛んだ。

大浦さんって呼びかけられたけれど、誰なんだろう?


中学校の関係者なら助けてくれるハズなんてないし・・・

小学校での友達なんかには変わりすぎた私は分からないだろう・・・


「同じクラスの大庭権助だ。」

同じクラスの男の子だった!全然知らないから、悪意を向けられたことはないハズ。


「ハラヘったから、まずは晩ご飯を食べようか。」

そっけなく言っているが、私の前には暖められたコンビニ弁当、お味噌汁、お茶が

用意されていて、彼の前にはカップラーメンがぽつんと置かれていた。


「あの、ホントに・・・」

「うん?カップラーメンも欲しいならあげるけど・・・」


「いえ、ありがとう。いただきます。」

間違えていないか尋ねようとしたら、カップラーメンも欲しいと誤解されてしまった。


食べ終わるとコンビニスイーツを半分こにしてくれた。

「・・・ありがとう。美味しいです。」

久しぶりに普通に、大切に、接してもらったから涙がこぼれてしまった。


彼は私が泣き止むまでじっと待ってくれた。

「早くしろ!」「泣くな、うっとうしい!」

家でも、学校でもそんな罵声を浴びせられたのに・・・


泣き止むと事情を聴いてくれた。

そして、私が震えているのを見ると、もう休むように優しく言ってくれた。


「なんで、彼は助けてくれたのかな?」

「これって夢じゃないのかな?」

「どうして?」

・・・



また明日投稿します。


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