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20/21

★21 女神 

よろしくお願いします。


金曜日の夜、皐月に会いに行った。

こんな時間に会いにいったことは無かったので、皐月は不安そうだった。


「皐月、TDLで俺のこと好きだって言ってくれたよね・・・」

俺の表情を見て、皐月の顔がゆがんだ。もう分かっちゃったみたいだ。


「ゴメンなさい!俺は樹愛羅が好きなんだ。」

胸が痛い。


「・・・ズルいよ。一緒に暮らすなんて!

ちゃんとしたら、あんなに可愛いなんて!

あんなに健気だなんて!

・・・もう二度とゴンちゃんのこと好きだなんて言わないから!

ゴンちゃんより、もっといい人見つけてやるんだから!

樹愛羅よりもっと、もっといい女になって、絶対に後悔させてやるんだから!」


俺の目を見て強がる皐月が愛おしかった。でも恋ではなかった。


・・・大切な幼なじみ、親友を無くしてしまった。

だけど、樹愛羅との絆を切ること、それだけはイヤだった。


「お帰り!・・・ゴンちゃん、どうしたの?」

笑顔で出迎えてくれた樹愛羅だけど、俺の赤い目を見て心配してくれた。


「うん、皐月にゴメンなさいって謝って来たよ。」

「えっ・・・」


「樹愛羅、好きだ。」

「わ、私なんかでいいの?わた」

樹愛羅が自分を蔑もうとするのを遮った。


「樹愛羅がいいんだ。樹愛羅じゃなきゃ、ダメなんだ。」

「あ、ありがとう。」

喜びの涙を流している樹愛羅を抱きしめた。


「樹愛羅、好きだ。」

「ゴンちゃんが好き!大好き!」


・・・


2回戦の相手は第1シード校で、春の市大会をぶっちぎりで優勝した強豪私学だった。


サッカー部員全員が樹愛羅とハイタッチして、意気揚々とグラウンドに向かった。


向こうの方が、体がデカい上にスピードがあって、テクニックも凄かった。


だけど、全員が球際に食らいつき、体を寄せて頑張ったら、

なんとか両者無得点で前半が終わった。


前半は全員で守備ばかりしていたけど、

後半始まってすぐに俺は敵ゴールに向かって突進した。


上手いところに縦パスが来た!手を伸ばして敵ディフェンダーを弾き、体を入れた。


ゴールキーパーが少し前に出ていたので、思いっきり右足を振り抜いた。

ゴールの右上にボールが吸い込まれ、ネットをゆらした!


味方が、応援に来ていた家族や友達、樹愛羅が歓喜していた!

俺は思いっきりジャンプして、樹愛羅に向かってガッツポーズをした!


敵の猛攻が始まった。前半とは全く気迫が違った。

俺たちの方が運動量は少ないはずなのに、先にへばっていく。


だけど、ゴール近くに11人が集まって必死で守っていた。


後3分で後半終了という時間になって、相手にコーナーキックを渡してしまった。

ニアに鋭く蹴られたボールに、敵が頭から飛び込んでゴールネットを揺らされてしまった。


「守りきるぞ!」

みんなで声をかけあって、自陣でバックパスを繋ぐ。


PK戦にしたくない敵チームが襲いかかってきた!


俺と例の後輩が敵ゴールに向かって走り出した。

もう一度、カウンターで獲るぞ!


敵ディフェンダーが2人ずつで、俺たちを挟み込もうとする。

苦しい!もう限界だ!


「ゴンちゃん、がんばれ~」

樹愛羅の声が聞こえた!


顔を上げ、腿を上げた!

敵ディフェンダーより半歩前に出た!


前に落ちたボールに足を思いっきり伸ばしてトラップして

敵ディフェンダーをほんの1歩、置き去りにした!やった!


ゴールキーパーの位置を確認し、右足を振り抜いた!


俺のシュートは敵ディフェンダーのスライディングに阻まれると、

こぼれ球は敵のボールとなり、カウンターでゴールを決められてしまうと同時に、

試合終了のホイッスルが鳴り響いた。


「また、やられたかと思ったよ。市大会の初戦でこんなにビビるとはね。」

敵ディフェンダーが握手を求めてきた。


「こっちには勝利の女神がいるけど、ここまでだったみたいだ。」

お互い笑顔で握手を交した。


「ゴンちゃ~ん!」

大きく手を振っている笑顔の樹愛羅に向かって小さく手を振った。

「なに、あの子、お前の彼女?可愛いじゃん!」


「ふっ、試合には負けたけど、勝負に勝った!」

「ええ、なにそれ!」


「次も頑張って!」

「おう!」

右手をあげると、バチッとハイタッチされた。痛すぎた・・・


味方のベンチに戻るとみんな笑顔だった。

「ゴン先輩、惜しかったですね!」

「もう少しだったのに!」


監督がパンパンと手を鳴らした。

「みんな、よく頑張ったな。正直、10対0くらいかなって思っていたんだ。

でも、ホント、勝ったときのコメント考えちゃったよ!

3年生の5人は特に頑張ってくれた。

今日が最後になってしまったけど、みんな卒業までサッカー部員だからな。

じゃあ、お疲れさま。」


みんなでワイワイ言いながらベンチの外へ出たら、

家族や友達が待ち構えていて、大きな拍手をくれた。


笑顔の樹愛羅が褒めてくれた。

「みんな、お疲れ様。もう少しだったね、惜しかったね。

でも、みんな凄くかっこよかったよ。」


「樹愛羅先輩のお陰ッス!

先輩の応援がなけりゃ、10対0だって監督、言ってたッス!」

部員みんなが笑顔で頷いていた。


「え~、みんなが頑張ったからだよ~」

「みんな、女神様に~敬礼!」

みんなでビシッと敬礼すると、はにかみながら樹愛羅も敬礼を返してくれた。


しばらくして解散し、樹愛羅と二人っきりになると、

俺のスマホの受信音が鳴り続けた!なになになに、なんなの?

恐る恐るラインを開いてみると、俺じゃなく樹愛羅へのメッセージが溢れていた。


『サッカー部の試合が終わったなら、今すぐ、バスケ部の応援に来て。市立体育館ね。』

『剣道部の試合がもうすぐ始まるんだ。樹愛羅ちゃん、武道館に来てください!どうか助けて!』

『陸上大会絶賛開催中だよ。早く来て来て!樹愛羅だけでいいよ!』


『水泳大会もうすぐ決勝なんだ。女神様のご来場を心待ちにしています!』

『助けて樹愛羅!樹愛羅がいないと負けちゃう!』

俺をねぎらう言葉はないのか!


『ゴンちゃん、お疲れ。女子テニス部は今から団体戦よ。樹愛羅とすぐに来て!』


「樹愛羅、女子テニス部の応援に行こう!」

俺が手を差し伸べると、樹愛羅は花のような笑顔で頷いて、手を繋いでくれた。


女神の仕事は終わらない!


読んでくれてありがとうございます。

面白ければ評価をお願いします。

一応、これで終わりです。


が、明日、最後に彼のお話を少しだけ。


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