★2 汚物のようないじめられっ子を拾った!
よろしくお願いします。評価ありがとうございます。
絶望していても腹は減るんだな。
育ち盛りの体では絶望するために飯を食べる必要があるのか・・・
幼なじみの親がやっていて、しょっちゅう食べに行っている皐月食堂へ向かったが、
この大雨で臨時休業だった。
そういや、幼なじみの木幡皐月からそういうライン届いていたわ。
家にはカップラーメンしかないので、コンビニに向かった。
コンビニに入ろうとすると、この土砂降りの中、傘も差さず走ってきた人がいた。
その人は店に入らず、雨宿りに来たようだが俺の中学校の制服を着ている女の子だった!
同じクラスの大浦樹愛羅だ!濡れ鼠になっていた。
樹愛羅はクラス中どころか、恐らく学校中からイジメられている。
なぜなら不潔だから。
前髪はほぼ鼻が隠れるくらい、後ろ髪は肩甲骨くらいまでボサボサに伸びていた。
恐らく洗髪していないので、髪全体が油ギッシュにテカっていた。
セーラー服は全体的に汚れていて、その肩にはフケが大量に付いていて、
なんとなく臭かった。
これも恐らくだが、貧乏だから1年の時から買い換えていないので、
セーラー服が短く下着が少し見えていて、そのシャツはかなり黄ばんでいた。
後は修学旅行なんかの積立金も支払っていないようで、よく先生に呼び出されていた。
彼女の机に触れてしまうと鬼ごっこが始まってしまい、大騒ぎだった。
あ~、龍聖が主犯だったな。小学生かよ!
汚物と思われているので、直接的な攻撃はされていないが、
大体無視されていて、時に龍聖や不良の女に強烈な罵詈雑言を浴びせられていた。
いつも猫背で下を向いていて、当然だけど、触れるなオーラを全開にしていた。
先生たちはイジメに触れることはなく、授業中に当てたりすることもなかった。
俺は一切関わったことがなかった。イジメを傍観していたとも言うが・・・
龍聖には「もう止めたら?」って言ったことはあったような・・・
弁当やパンを買って帰ろうと店外に出て、左を見てみれば
樹愛羅はじっとうずくまっていた。誰かと待ち合わせとかではなさそうだ。
俺には関係ないし、第一、樹愛羅だしな・・・
傘を広げて歩き始めたが、死んだら寝覚めが悪いよなって気が猛烈にしてきた。
「・・・大浦さん、そのままだと死んじゃうよ。」
「・・・もうイヤ、誰でもいい。たすけて。」
「・・・俺の家に来るか?この弁当ならあげるし・・・」
「・・・お願いします。」
樹愛羅はユラっと立ちあがった。怖い!ホラー映画みたいだ!
傘に入るように促したが、肩をふれあう気には全くなれなかった。
お互い反対の肩がビショビショになりながら歩いた。
アイツらはぴったりくっついていたのに、俺は一体何してんだろ・・・
家に着くと樹愛羅を風呂に直行させた。
俺はまずは着替えて、母親の部屋を物色してパジャマを見つけた。
「タオルな。パジャマがあったから、これを着てくれ。」
風呂に向かって大きな声を出した。
「・・・ありがとう。」
「あと洗濯するから。」
「・・・はい。」
洗濯機にセーラー服、下着を放り込んで乾燥をセットに動かした。
俺の洗濯物は後だ。一緒に洗濯とか無理!
下着を触って動揺したとすれば、汚すぎるからだ!
セーラー服がしわしわとか、ちょっぴんぴんになっても知ったことか!
1時間後、樹愛羅が髪を乾かしてからリビングに入ってきた。
ちゃんと髪と体を洗ったようで、よく知ったシャンプーなんかの匂いがした。
ほっとした。嫌悪感を現さず、話が出来そうだ。
「あの・・・助けてくれてありがとうございます。それで・・・」
「同じクラスの大庭権助だ。」
「えっ!同じクラス!」
下しか向いていないし、関わらないようにしていたから、
俺のことはやっぱり知らなかったみたい。
「ああ。ハラヘったから、まずは晩ご飯を食べようか。」
樹愛羅は自分の目の前にある弁当と味噌汁を見た。
そして、俺の前にあるカップラーメンを見た。
「あの、ホントに・・・」
「うん?カップラーメンも欲しいならあげるけど・・・」
「いえ、ありがとう。いただきます。」
ちゃんと手を合わせて弁当を食べ始めた。
食べ終わると買っていたコンビニスイーツを半分に切り分けて、
オレンジジュースも用意した。
「・・・ありがとう。美味しいです。」
樹愛羅は涙をこぼしていた・・・
「えっと、俺の父親が札幌に転勤になったら、
母親が札幌なら行くってなって、今は俺一人暮らしなんだ。
今日はこの家で寝ていくか?モチロン、部屋は別にするよ。」
「・・・お願いします。」
「もしよかったら事情を教えてくれる?」
「・・・私、母と二人暮らしなんですけど、母に恋人が出来て・・・
家に帰ったら、その男しかいなくて、その・・・乱暴されそうになって逃げ出したの。
しばらくして家に帰ったら、母が、
「アタシの恋人に色目を使いやがって!出て行け!」
って追い出されて・・・」
この雨の中を追い出すって、マジかよ?なんて親だ!
じゃあ、かなり長い間、雨に濡れていたのか!
そういや、少し震えているな・・・
体温計を差し出して測ってみたら38度を超えていた!
解熱剤を飲ませて空いている部屋に布団を敷いて休ませた。
マジか・・・比べたら、俺の絶望って絶望じゃないよね。
まだ21時だったので、勇気を振り絞って愛梨沙に電話してみた。
「愛梨沙、何しているの?」
「うん?宿題が終わったところだよ~、ゴンちゃんは?」
「家に帰ってきてコンビニ弁当を食べ終わったところ。」
電話からヒットソングが小さく聞こえた。カラオケ店にいるのかな?それとも・・・
「雨に当たったからちょっと寒気がしてさ、明日の予定は朝か昼に連絡していいかな?」
「うん・・・いいよ・・・じゃあね。」
なんか色っぽい声だったような・・・速攻で切られたな。
まだ龍聖と一緒で、イチャイチャしてるってことか、くそっ!
くやしくって枕を涙でぬらしてしまった。
また明日投稿します。
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