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八十四戦目

「そうです。この武器は、私の兄とエリシアの合作です。」


というと2人は驚いた。


「なんだって!?ラウダじゃあらへんしそんな事ってある?」

「ユウタロウ、じゃないとこの生きた武器は説明付かないべ。」

「ナツメ・・・そうだろうけど・・・。」


エリシアのスキルは錬金したアイテムに命を吹き込む。それを知っているという事は本当に知り合いなのだろう。


まさかエリシアの知り合いにこんなダンジョンの奥深くで出会うとは思わなかった。これには驚きだ。

エリシアの知り合いなら敵かどうかは置いといて、まずは話し合いたい。

でも隣を見るとブルーノもレイチェルも不完全燃焼なので、


「で、殺るのかしら?」

「先手はくれてやる。」


と更にやる気満々すぎて、殺意が漲っている。ほっておくと本気でもう一戦構えそうなので私は釘を刺す。


「ブルーノ、レイチェル、武器しまって。今の流れはケンカ売る所じゃないでしょ!!」

「なんだよ咲羅。エリシアの知り合いだから仲間って訳じゃないだろ?戦わせろよ。」

「敵って訳でも無いじゃない。強そうな相手なのは認めるけど、戦ったらダメ!!」

「はい。」


睨みを効かすと渋々と言った感じに戦闘解除した。


「うちの仲間がすみません。」


と、謝罪するとナツメと呼ばれた魔術師は杖を下ろす。


「魔族だから血気盛んじゃろ。わかってるべさ。」

「ははは・・・。ありがとう。あの、多分なんとなく想像つくとは思うけど、エリシアは私達の仲間だよ。今私の兄の・・・なんて言えばいいんだろう・・・えっと・・・パートナーかな?」

「そっか。本当に勇者になりたての頃のラウダだべ。」


ラウダって誰だっけ?どこかで聞いた事あるんだけど・・・。

そう思ってたらユウタロウと呼ばれた斧使いはツッコミを入れた。


「ナツメ、ラウダって言っても分からへんやろ。」

「そうじゃな。懐かしくって知ってるつもりだったべな。反省。」

「アイツは・・・死んだ。わかってんか?」


凄い暗い話になって来たので私は慌てて話題を変えた。


「それで、何故エリシアを知ってるのかしら?」


と切り出すと、思い出したように私に向き合って・・・


「そうだった。2年ほど前までな、アタイら出会ってから10年以上異世界旅したと。でなエリシアは私らの仲間だったんだべ。」


なんとなく想像していた、昔の仲間という奴。わざとらしく相槌を打つ。


「へぇ。そうだったんだ。」

「エリシアの装備って不思議じゃろ?共に成長していく感じ。」


あれ?私はレベルMAXの装備渡されたから共に成長していく感じは理解出来ないけど、不思議なのは分かる。うみたまごで得武兄に寄生した時のあの感覚。あれはたまらない。


「そう、レベルがあるのって不思議よね。攻撃アシストは本気でやばい。」

「攻撃アシストそんな便利な機能が付いてるべさ?」

「そうなの。」

「意外・・・エリシアもパワーアップしてべな。」


この魔術師の女性ナツメさんの訛りが特徴的すぎて最初は違和感だったけど、慣れると親しみが湧いてくる。なんかそのまま仲間として行動を共にしそうになってくる。

でもそれをするにはまず質問しなければいけない事がある。


「待って、普通に私達打ち解けてたけどさ、これは聞かないと・・・貴方達の目的は?マーサの敵?味方?」


魔導師のナツメさんの表情が引き締まる。


「スライムさんはどっちね。」


返答いかんによっては戦闘再開だ。私は内心ドキドキしながら私達を守る準備をする。叡智起動、多重魔術展開してゆっくり答える。


「マーサの敵。」


さあどうくるか!!!


「だろうね。」


ナツメさんはわかっていた。そう頷いている。

そうか、別に警戒してたのは私だけか・・・と思ったら斧使いの男がずっこけた。新喜劇のノリである。


「待て待てちょっと待ってぇ。なんでやねん!!おかしいでしょう。だって貴方、福岡No.1ランカーの咲羅やない?自分の会社になんで敵対しとん?俺らもマーサ倒しに来たんだけどさ。エリシアの仲間だから信用するけどさ。何があってん?」

「うん。話すと長くなるんだけど・・・」


ゾロゾロと、労働囚人達が手を止めてこっちを見てくる。

ここは最下層。見上げれば、360度いろんな階層から多様な角度から囚人達が私を見下ろしている。スポットライトのせいで注目度半端ない。その数100はくだらないだろう。ちょっと怖い。


男はぐるりと周囲を見渡して、


「長いならええよ。聞かんとく。」


と軽いノリで返してくる。

そういえば、結構年上なんだけど、敵だと思って思いっきりタメ口聞いていた。さすがにまずいよね。


「えっと・・・。落ち着いた場所で追々話します。」

「今更敬語は要らんよ。冒険者ってそういうもんだし。」

「そう・・・。」


話をしていると上層階から人の話声が聞こえる。


「モンスターじゃなくて咲羅?」「咲羅だって?福岡No.1の?」「マジかよ、見た目スライムじゃないかよ。」「マーサを裏切ったんだってよ。」「さっきキメラ相手にワンサイドゲームだったぞ。」「強さが異次元かっ!!」

そんな労働囚人達の驚きの声だ。


「ユウタロウ。悠長に話してる時間はないべさ。こんなに人目に晒されるとは思わなかったべ。潜伏がバレるてぇ。」

「わかってる!!俺も囚人達皆を敵に回したくない。忍んでた意味があらへん。」


この2人は実力がありながら何を怖気づいてるのか・・・?

囚人達に見られたからこそ、これは皆を巻き込むチャンスじゃない?


そう思って私は叫んだ。


「アンタ達!!労働囚人達!!私はマーサの敵です!!よってこのダンジョンからモンスターを無くし、解放します!!敵対する奴はかかって来なさい!!敵対しないのなら、マーサの居場所を教えて!!必ず貴方達の安全を約束します!!」


2人はビックリして私を見た。『お忍びって言ったよね、何してくれてるの?』って言いたげなのは分かるが、私はコソコソ動くのが苦手だ。どうせならみんなを巻き込んだ方が動きやすい。


「マーサなら塔にいる!!」「憎きマーサをぶっ殺せ!!」「マーサは独裁者だ!!法律もクソもない!!」「やっちまえ!!」


無理矢理働かされていた囚人だけあって恨みが強いらしい。大いに沸き立った。「ぶっ潰せ!!」と、その盛り上がりように私ら逆に引くレベル。


この盛り上がりよう・・・死んだものとされた福岡No.1がマーサを倒しに来た。そのネームバリューから恐怖というしがらみから解放されたのだろう!!


「みんな!!ありがとう!!」


失礼のないよう。ちゃんと咲羅の形状を維持して頭を下げる。

塔と言えばやはりあそこしかない。

私がアイツに囚われた場所。あの塔。


「マジかよ!!みんな巻き込んじまった。」


斧使いは警戒しながらも武器を直す。

魔術師は笑ってる。


「囚人達みんな味方でいいんじゃろ?ユウタロウ、逃げる必要ある?」

「無い。」


その2人に私は声を掛ける。


「マーサの居場所はわかったし。このダンジョンには用無しね。ダンジョンのコア潰すから黙ってついて来て。」


私の言葉の意味を理解していない様子。魔導師が質問・・・


「コアを潰す?」

「ええそうよ。」

「ダンジョンマスターはマーサだべ。マーサはここには居ない。無理だっぺ。」

「出来るの!!いいから着いて来て!!」

「えっ?ええ?」

「えっと、私は新子咲羅。青髪がブルーノ、赤髪がレイチェル。この2人は魔族よ。貴方達の名は?」


「本当に魔族かよ。」と顔を引き攣らせる斧使いの男、対して気にしてないのは魔術師の女性・・・自己紹介をする。


「私は米澤 ナツメ、こっちが、丹原ユウタロウ」

「2人ともよろしくね。」

「『よろしくね』って、まだ仲間になるなんて言って無いべ。」

「打倒マーサ!!協力関係よ。細かい事は気にしない。」


と言ってナツメさんの手を引っ張り私は非常を降りる。


「ああ。予定が台無しだべ。」

「もう今更だろ。」


諦めの域に入るユウタロウさん。ナツメさんの後ろをめんどくさそうに歩いていた。


「着いてくるならダラダラ着いて来るな。」


とレイチェルにキレられる。


「おいおい、魔族の2人・・・戦意丸出しなんだが大丈夫だろうな・・・。」

「ユウタロウさん、この2人らいつもの事だからすぐ慣れるわよ。」

「慣れるってなんやねん!!本当おっかねぇな。気が休まらねぇよ!!」


突っ込むユウタロウさんに、レイチェルは釘を刺す。


「そもそも敵地なんだから気を抜くなよ。」

「いやいや、モンスター以上に、お前らに警戒しないといけないとかどんだけ神経の無駄遣いやねん!!・・・もう胃が痛いわ。」


特殊な門が見えて来た。本来ならここがボス部屋だが、ボスならさっき倒した。無人だった。

幹部の1人ぐらいいてもいいだろうに。内心残念におもう。


ボス部屋を真っ直ぐ進み、更に隠し部屋のような場所に出る。

ゲームならダンジョン攻略特典に宝箱が貰えますって感じだろうが、生憎そんなものはない。あるのはコアだけ。

私は思い出す・・・初めてダンジョン攻略をしたあのダンジョン。大分市内城址公園のダンジョンだ。


ボス倒した後、このコアに触れたら、入り口に飛ばされたっけ?


触れないように最大限警戒しながらリュックからペットボトルを取り出し、中身の液体・・・除草剤を撒く。


「凄い!!ダンジョンコアが溶けていくべや。」

「おい、ダンジョン特有のモヤっとした感じが無くなってんな。」

「まるで・・・ダンジョンマスターになる権利を放棄した時の感覚に似てるべ。」


その通りです。


「嘘だろ!!キメラが魔石に変わった!!」「これって、私たちを監視するモンスターが居なくなったって事!?」「やった!!!俺たちは自由だ!!」と囚人達は思い思いに喜び、中には涙を流す者もいた。私はヒーローになった気分になって満足感に浸る。


「咲羅、今何した?」


私はペットボトルの薬剤を指差して・・・


「この液体はダンジョンコアを溶かしてダンジョンを無効化します。」

「そんな便利なアイテム聞いた事ないぞ。どこで買える?」

「買える訳ないじゃない。ウチの兄貴が発明したわ。」

「お前の兄貴すげぇな。」

「でしょう!!」

「ダンジョン攻略ってこの事を言ってだんだな。疑問が今解けた。」

「そう、目的は達成したわ。今日は帰るけどアンタ達はどうするの?エリシアに会う?」

「会う。」

「じゃあ私達の家に案内しないとだね。」


地下都市はモンスターの脅威から解放された。働かされていた囚人達はそれぞれ作業を辞めて地上を目指す。そしたら200人ほどの大行列となった。

階段とか、非常梯子とか、密集している。マナーに沿ってキチンと一列になって進んでいるのを見ると日本人らしいなと思う。


ダンジョン攻略の解放感からナツメとユウタロウと自然と話が弾む。


ナツメとユウタロウは岡山に住んでいた。マーサの戦争のお相手である。マーサの偵察の為、この敵地に命を顧みず潜伏したのだと言う。


事の始まりは突然だった。マーサとは事あるたびにネット上で意見交換する仲であったが、県全体からモンスターを排除し、生活基盤が整ったタイミングを見計らって一方的な要求をして来たのだ。「今まで助言をいろいろして来たんだからダンジョンマスターの権利を寄越せ」と・・・。

断ると戦争を吹っかけて来た。


そもそもナツメ達はダンジョンマスターなんてなってなかった。岡山でどんな出来事があったのかは割愛するけど、市長の息子が10個ダンジョンを所持し、総合管理をしている。


ダンジョンのモンスターを操って、道路整備、農業推進、建築県境を封鎖するユニークボスモンスターの討伐を進めているらしい。

ダンジョンマスターの力の使い方も正しく使えば人の役にたつのだ。


マーサに対して「助言も何も、情報交換してただけだろ」ってナツメは切れる。

戦争が本格的になる前にマーサと話が出来たら良いとも思ってるみたいだが・・・。どちらかといえば暗殺する気満々な気がする。


何故、マーサがダンジョンに執着するのかは知らない。

でも裏がある。絶対に。

地上に上がる。



今まで圏外だった為黙っていたスマホが震える。その内訳はLINEの通知8件だ。3件冬月先生、5件得武兄だった。


そうだよね、今深夜だもんね心配するよ。終電あるかな?


そんな事を考えながらLINEを開くと・・・


『港待機組、軍に捕まったらしい。偵察部隊が来てるから気を付けて欲しい。ひと段落着いたら電話くれ。』


短い文ではあるが衝撃的な内容だった。

その船の近くにいる私達、門司港は陸路で徒歩15分圏内だ。今にも寄り道して解放しに行きたい気持ちになった。


「咲羅、今はスマホ、しまった方が良いべ。」


でも行く事は出来そうになかった。銃を構えて私達を包囲する人達。そう・・・地上で待ち受けていたのは軍隊だった。

中央に立つのは・・・。会いたくなかった、アラン少尉だ。


「炭鉱が襲われてると連絡が来てピンと来た。やはり貴方だった。大人しく捕まって貰えると助かるんだ。」


・・・誰が捕まってやるもんか!!かえって闘志を燃やす私。


「アラン少尉、嫌です。なんでマーサ達に肩入れするのですか?軍人は市民に優しくあるべきじゃないですか?」


正論を述べ、敵意を剥き出しにして睨んだ。


「その理由は単純だよ。君が重要危険人物に指定された。市民の安全の為、君を拘束する。」

「マーサが勝手に言ってるだけでしょう?マーサは何しようとしてるのか知ってる?戦争よ。止めないの?」

「魔物に支配された国を解放すると言ってる。これは聖戦だよ。」

「絶対嘘でしょう。理由を付けて能力の搾取をしようとしてるだけじゃない!!軍隊はマーサ個人の言いなりなのね。」

「協力関係だ!!」

「そう。わかった。じゃあ次の質問。野崎先生とクレハちゃんはどうしたの?」

「しばらく軍の施設に拘束させてもらってる。」

「そう。この囚人達もそうするの?」

「脱走囚だろう?そうだ。」

「本気でマーサの犬ね。」

「国の為だ。」

「マーサにいいように使われてるだけでしょう。」

「なんとでも言え。利害関係は一致している。」


囚人達がどよめいている。

「脱走がバレたぞ。やばい」「そもそも私は脱走する気なかったのよ。そこのスライムにそそのかされて。」「俺たちは軍人に捕まるんだ。もう終わりだ!!」


など悲鳴を上げている。聞けば聞くほど我が身可愛さで喚いている。本気で助ける気が失せるぞ。


「貴方達!!私は約束を違えたりしないわ。最優先で逃してあげる。」


そんな中、ナツメが耳打ちする。


「咲羅よ。私達が足止めするべさ。皆と一緒に逃げるべな。」


それはブルーノとレイチェルが黙ってないでしょう。

アラン少尉、イエラさんの後ろに、魔族が見える。

間違いなくレイチェル達のボスだ。大分で会った時はいなかったのに今いる。いつ合流したのか・・・。


「逃げないわよ。私アイツに怒ってるもん。ナツメさんとユウタロウさんにお願いがあるんだけど。」


と切り出すと神妙な顔になる。


「なんや?」

「どうしたべさ。」

「助けた囚人達を安全な場所に案内して欲しい。私達には因縁があるから離れられない。特にレイチェルとブルーノが。」


「なるほど」と納得する2人。


「わかったべ。」

「引き受けた。」


ナツメさんとユウタロウさんは下がる。


「待って、この子も連れて行って欲しい。私の眷属だから。」


と眷属召喚でアクエリアを呼ぶ。アクエリアはご挨拶。


「マスターはまた知らない人巻き込んでる。どうもマスターが厄介事巻き込んで、すみません。」

「河童とな!?」

「頭に皿、背中に甲羅があるモンスターです。河童じゃないと思うけど・・・。案内させていただく水の妖魔、アクエリアです。よろしくお願いします。」

「よろしくお願いします。魔族だけでなくユニークモンスターも仲間にしてるべな。ダンジョンマスターでも無いのにこれだけのモンスターを仲間にするなんて、咲羅は魔王になれるべや。」

「いや、なる気はありませんけど・・・」


私は苦笑いするとナツメさんは切り上げた。


「そろそろ時間じゃな。じゃあ御武運を」


とナツメさんから魔法の気配がした。

すると2人と囚人達の気配が全て消えたのだ!!なんて魔法なのだろうか。


「逃すか!!」と言わんばかりに発泡してくる軍隊だが、私はスキル、[叡智]を使用し魔術障壁を展開し攻撃を阻む。

逃走の邪魔はさせない!!


「ブルーノ、レイチェル、アンタら誰やるの?」

「男にするわ!!」

「女だ!!」


ブルーノがアラン少尉、レイチェルはイエラさん。

ブルーノにアラン少尉は荷が重いだろう。というか、アラン少尉、私はコイツを殴りたいのに。そこ代われって言いたい。

というか、クラン=アビスのボスを説得するんじゃなかったのかよ。

不意にそのボスに首輪のような物が見えた。


ああ、あれが隷属の首輪。強制的に命令を聞かせるマジックアイテム。あれをどうにかするにはリーダーをどうにかするしかない。

そう・・・問題なのはアラン少尉。本気で勝てるんだろうか?いや多分無理。そう思ってスキル、叡智から最適な魔法をチョイスする。


エンゼルフェザー発動!!


これは支援魔法だ。全ステータスを2倍にする魔法だが、これをレイチェルとブルーノにかける。


「私が魔族3人の相手と兵士20人・・・」


多い。私の相手、多いよ!!荷が重いなと思ってるとドSな発言をレイチェルから聞く。


「咲羅、クラン=アビスの皆に傷つけたらキレるからな。」

「はぁ!?レイチェル何言ってるの!?この状況で手加減しろってか!!ふざけるな!!」


というと笑いそれぞれの対戦相手に向かって行った。


私の相手は人数ばかりが多いし私は・・・どちらかといえば1対1が得意なんだけどな・・・。無理する意味は分からないし、こっちもフル戦力でやらせてもらおう。

戦争始め!!


「眷属召喚!!来い!!カルンデ、キイチ、ネネ!!」


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