八十三戦目
逆円錐の1番底の底。最下層に来たと思ったのだが、まだ下に通じる非常階段みたいなのが見える。
学校やビルの中でよく見かける緑色で非常口って光ってるあれが見える。
追跡者は一向に現れない。
この広場で一網打尽に出来たらいいんだけど。
そんな事を考えるとトラップに気がつくのが遅れた。
突然・・・ライブ会場のスポットライトのように私目掛けてライトが当たる。
『侵入者発見、繰り返す、侵入者発見。シャッターを閉じます。モンスターを流出します気を付けてください。』
そんなアナウンスが流れた。
罠は発動!!「ガラガラガラ・・・」と階段、廊下、通路・・・出口に繋がる通路は全て広場はシャッターで締め切られてしまった。
続いて何が起こるのだろうと不安を感じていると、空から降ってくるモンスター達。見ると、獅子顔、銀獅子、虎頭、ミーアキャット顔、アルパカ顔。
そんなモンスターで広場は埋め尽くされた。
ここのモンスターの共通点。顔から下が人。一瞬頭だけ着ぐるみなのかなと思ってしまう。
雑魚がいっぱい出てくるな!!と怒りたくなるが相手のレベルは150。雑魚ではない。
そんな高レベルの相手にどこまでやれるか?
武器に強化を施すアーティファクトレベル2発動!!
アーティファクトってなんだろうって考えた事がある。
魔道具。それも特別な。魔女スキルからの派生で使えるのであるならそれに応じたスキルだろう。
元々は魔女の七つ道具のみに使用可能だった。七つ道具って?どこにあるのか不明だが。そんな話より今は目の前の敵だ!!
アーティファクトレベル2にプラスして、純粋に肉体強化魔法でステータスアップ。私は駆けた!!
それを6人に分身してさらに衝撃波を飛ばす。
周囲に集まる虎、獅子は両断した。だが圧倒的な数のモンスターがここに集っている。私が斬り捨てたモンスター達を冷酷な眼差しで踏み越えて銀獅子4頭が私を襲うが・・・その剣は私に掠りすらしない。ゆっくりすぎて止まって見える。
紙一重に躱すと衝撃波を纏って斬りつけた!!
銀獅子は硬かった。両断までには至らない。
背後のアルパカが杖を振り上げた。すると銀獅子の致命傷がまるで何も無かったかのように回復している。
私は追撃しようと剣を構えると・・・気配を感じて横に飛んだ。頬を矢が掠める。
ミーアキャットの顔は高台に登り、私達に向けて弓の弦に矢をあてがい・・・放つ!!刀で弾くのが辛い。何故なら銀獅子の追撃が来るからだ。
一撃で仕留めきれなかったら回復魔法で全快される。
そうしてる間にもっと大量のモンスターが頭上から降って来る。キリが無い。
そう思って叡智起動した。正直剣でちまちま斬ってると日が暮れてしまうので魔法頼りだ。ゆっくりしてられない!!魔法陣をこの広場全体に展開する。
「ホーリージャッジメント!!」
その魔法陣・・・私の魔力を吸収し具現化した。
この攻撃は光。焼き切る事を趣旨に置いている。
その威力は込める魔力に比例する。広場を埋め尽くす光の柱。聖なる炎に鉄をも溶かす。
全て倒したかに見えた。魔石だけが地面に転がる。が・・・
しかしモンスター召喚の罠は続く。空から無限に降りてくるモンスター達。
「レイチェル、ブルーノ、ちょっと手伝って。」
「なんか、弱っちくてやる気が出ない。」
「全て私に任せないで!しんどいわ!!」
ブルーノのスキル、魔術反転。
アルパカの回復魔法がライフを削るものとなる。
弓の攻撃が下に落ちる。
レイチェルの血の代償。
血液がゲートを開き、剣が飛ぶ。
「対、集団に強いのね。」
MPを半分消費した私に対して、涼しい顔でスキルを行使するレイチェル。
よく私はこんな化け物に喧嘩して勝てたわね。と呆気に取られる。気の緩みは戦闘時において死を意味する。
私は危険を察知して私は飛んで避けた。それはレイチェル、ブルーノも同じ。
突然、巨大なクリスタルが落ちてきた。地面に大きな地割れを起こす。
そのクリスタルにヒビが入った。落ちてきた衝撃ではない。中からの攻撃だ。出てくるのは、ファンタジーでよく見るキメラの集大成・・・
「ヒュドラか。人はなんて合成獣を作りやがる。」
レイチェルがそう言って睨みつけた。このモンスターは緑、赤、白の三つのヘビのような首を持ち、身体は獅子のごとく存在する。確実にこのダンジョンボスだ。
ブルーノは解説する。
「緑の顔から毒を吐き赤の顔から灼熱の炎を吐く。白の顔は、溶解液と、回復魔法だ。咲羅、相手出来るか?」
確か炭鉱労働者達は「コイツには勝てない」って言っていた。鑑定スキルは無いけれど敵わない敵では無さそうだ。
私は剣を構えた。
「余裕!!」
言った瞬間、追跡者の動きがあった。
意識が分散してとてもめんどくさい!!
「私はボスに集中したいから2人は追跡者に警戒を。」
「了解!!」
正直、福岡社畜時代からボス戦担当の私から言わせてみれば、タイマンで負けるわけがない。
しかし私はボスに完全に集中出来ないでいる。
なんせ、ボス一体を相手するより追跡者1人の方が強いのだ。
最悪、猿達を眷属召喚するつもりなのだが。気配を辿るブルーノが笑う。
「結局よく見える席に移動しただけらしいわね。」
「事を起こすつもりはないみたいだな。立ってても暇だし加勢するぞ。
そう言って加勢してくるブルーノとレイチェル。私はビックリして
「ちゃんと見張ってないと不意打ち食らうって!!」
と怒るが私のいう事を聞かない。
「見てるの暇だし。」
「襲ってきてから対応すればいい。」
また勝手に!!そう思ったら2人は動き出す。
二手に分かれて両サイドからヒュドラを攻める。ヒュドラの灼熱のブレスは懐に潜り込むように紙一重で躱すと・・・
レイチェルの蹴りでヒュドラを宙に浮かす。首は空を向き、ブレスは無害にも空へ空撃ちする。
「レイチェル、ナイスパス!!」
飛ばされた先にはブルーノがいてブルーノも蹴り返す。
見た目は少女のような可愛らしい見た目なもので、ボール遊びをしているような見た目なのだしテンションなのだが、蹴っているものがとんでもなくおっかない巨体なのだ。
魔族2人にボコられるダンジョンボスって可哀想かも。
「ゲート!!」
無数のナイフがヒュドラを襲う。八つ裂きという表現が優しく感じるほど無残な状況だった。
ボロボロの状態にしてブルーノへ蹴り返す。
飛んできたその巨体をブルーノが接近で斬る。爪が肉を抉っていく。そしてまたレイチェルへ・・・
レイチェルがスキルでナイフを出し、穴だらけにする。
完全にお怒りのヒュドラだった。
ブレスを吐く!!そんなモーションを確認した。
「危ない!!」
「あら?そうかしら。」
余裕のブルーノ。何故ならそのブレスは物理的におかしな方向に飛んでいき、弧を描き、ブーメランのようにヒュドラの身体を焼く!!
ブルーノのカウンターマジックだった。これはブレスのコントロールすら奪えるのだ。
「咲羅!!」
ブルーノの蹴りが、ボスモンスターをこちらに飛ばす。
留めを刺せという意味。
背中にエアロブースト・・・つまり魔法の爆発によるジェットスタートで迎え撃つ。空中コンボだ。
「豪気百花繚乱!!」
この技の真価はただの連続攻撃じゃない。
基本の8つの型に分かれている。
斬りを中心にする剣技。突きを中心にする剣技。払いを中心にする剣技。蹴り技を交えた剣技。投げ技を交えた剣技。カウンターを軸に置く剣技。大技で一刀両断する事主体の剣技。
その八つの型が変幻自在。状況に合わせて無限に変化する。
それも考えるよりも早く高速で繰り出される事で1秒に100もの剣線が飛ぶ。
魔力と気を混ぜ呪撃もプラス。真っ黒にインパクトを残している。
ラスト。
投げ技で地面に叩き付ける。
「ネオグラビトン!!」
100倍の重量を添えて・・・
沈黙。ボスモンスターどころか、雑魚モンスターすら出てこない。
ヒュドラの三つの首が白目を剥いている。しばらくすると魔石に変わった。
福岡の社畜時代の苦労と比較して、ボス攻略のあまりの簡単さに笑いが込み上げてくる。
「アンタ達がいるとランクAダンジョンのボスがワンサイドゲームね。」
私の声を受けて爪の手入れをしながら返すブルーノ。
「感謝しなよ。」
レイチェルも緊張した様子でストレッチしている。皆意識しているのだ。追跡者の次の行動に。私は声を張り上げた。
「ねぇ、見てるんでしょ?出てくるなら今じゃないかしら?」
追跡者に対して呼びかける。私は気を引き締めた。どんな化け物が現れるのかと期待をしたのだが・・・
出てくるのは人間だった。
1人は斧を持った男。1人は僧侶?魔術師?
突如、違和感に襲われた。それは得武兄から貰った装備から。刀、防具がカタカタと震えるのだ。
どういう事?今までこんな事なかったのに。
不安を感じながら私は考える。
武器、防具にはエリシアのスキルが入っている。命が吹き込まれているのだ。
その武器、防具達がどんなに私が戦おうと動いても私の言う事を聞いてくれないのだ。抵抗するかのように重い。そして動かない。まるで戦いたくないと言っているように・・・。
「アンタ達、強そうね。」
レイチェルが舌舐めずりをする。はしたない。
出て来た人間の2人のうち、前方の男性が警戒しながらボソリと呟く。
「魔族が、3人。どうしてこんな所にいる?」
2人じゃなくて3人?えっと、ブルーノ、レイチェル、あと一人、誰?私?
「えっとね、勘違いしてるわ。私は人間よ。」
「どこがやねん!!鏡見てみい!!どう見ても魔族だろ!!」
「変身が下手なのは認める。待って、ちゃんと形作る。」
そう言って私は私の姿形をしっかり作る。
「ほらね。」
「『ほらね』じゃないだろ!!」
そのやりとりを見てブルーノ、レイチェルは笑ってる。
「そこ笑うな!!」
私は突っ込んで、少し後退りする。
剣が動かないのだ。本気でやばい。抵抗しないで良い子だから。警戒しながら男性は訊ねる。
「お前ら、ここで一体何してる。」
「ダンジョン攻略よ。」
私は正直に答えた。すると疑問そうに私を見た。
「アホちゃうか?そんな嘘、通用せぇへん。ダンジョンマスターはこのダンジョンにはおらん。」
「いいのよ。ここのダンジョンのコアに用がある。」
「やっぱり魔族特有のスキルでコアを操作する気やな。モンスターフローでも起こすつもりか?」
モンスターフロー?聞いた事のない単語にぽけーっとしていると。「ダンジョンからモンスターが溢れ、街にモンスターが出現する事。」とブルーノから補足を受ける。
なるほど。「仮に魔族だとして、すでに街はモンスターで溢れてますけどする意味ある?」って聞きたくなる。
「私は魔族じゃない。そっちの2人と同類にしないで!!」
「やっぱり怪しいねんな。ほな、まどろっこしい腹の探り合いは辞めて一戦やりまっか?」
そのギャップにビックリした。別に武器を構えていた訳ではないのに、次の瞬間には隣にいて斧を大スウィング!!
ブルーノが対応するが、攻撃が重たい!!あろう事かブルーノの吹き飛ばした。壁にぶち当たり、漫画のように壁にめり込む。
「ブルーノの仇!!」
レイチェルがキレた!!いや、ブルーノは死んでない。そんなツッコミを入れた所で止まるような性格でもなくレイチェルのスキル発動!!
斧使いの男の足元に影が伸び、敵を拘束する。そのように見えた。
斧使いは地面に斧を叩き付けると砕けた破片がまるでショットガンのようにレイチェルを襲う。
レイチェルの体は陽炎のように、攻撃はすり抜けていく。だが、魔族2人のスイッチが入ったのは間違いない。
「待ってブルーノ、レイチェル、敵じゃないかも。この子たちが訴えかけてる。」
私はその戦闘の間に割って入った。この子達というのはこの装備達の事である。私が動くと同時に斧使いの後方にいた女性も前に出て斧使いを止める。
「ユウタロウ、ストップだべ。この子の武器から懐かしい香りがする。」
「香り?」
「ええ。装備にレベルがあるっぺ。」
独特な口調の冒険者2人である。
「なんやねんナツメ。豊穣の女神じゃあるまいし、まるでアイツが作った装備みたいじゃねぇか。」
ユウタロウと呼ばれた斧使いの言葉からなんと豊穣の女神というフレーズを聞く。このスキルはエリシア特有のスキルだった。
「エリシアを知ってるの!?」
私は訊くと、冒険者2人は驚いた。
「エリシアだと!?」
「あの子は仲間だべ。」
どういう事!?
ここでエリシアの元仲間の登場です。
このユウタロウ、ナツメの目的とは。敵なのか味方なのか?次回に続きます。




