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八十一戦目

2連続投稿します。

よろしくお願いします。

スライムの姿でも、街中で普通にモンスターが歩いてる為別に目立たない。下手に似せなくても私はこのシルエットでいいかと思いパーカーのフードを深めに被って変装終了。


変質者に見られてもおかしくないとは思うけど、背中には登山にでも行くのか?ってぐらいの大容量リュックを背負って街ぶら歩き。

リュックの中身は大量の「ダンジョン除草剤」につき、怪しい薬剤を持ち歩いている事には変わらない。

私は外見を装うとか人目を避けるとか気にすべき事に集中すると何も出来ないので、いっそ開き直っていろいろ諦めた。

そうしたらこうなったのである。


「咲羅、おまえとうとう人間になるの諦めたんだな。緑色の顔無しが怪しい液体撒いてるぞ。」

「レイチェルうるさい!!この姿の方が楽なのよ!!省エネよ!悪い!?」


地図を見ながらダンジョン化された街から攻略して行く。とは言っても液体をかけるだけだが・・・退屈すぎて欠伸が出る。

「ダンジョン除草剤」なんてもっとマシなネーミングは無かったの?って初めは馬鹿にしていた私だか、これの便利さに空いた口が塞がらない。

まずはその威力・・・

水弾くだろうアスファルトの道路に1平方メートルも満たない範囲で薬剤を撒く。

これでおよそ東京ドーム10個分のエリアのモンスターが魔石に変わる。

ダンジョン攻略がただの作業に成り下がる瞬間である。


その間レイチェルとブルーノ、この2人は大人しく・・・とても暇そうに私に付いて来ている。私に反抗する素振りは見えないし騒動を起こす気配は無い。

何故こんなに大人しく付いて来るのかと言われれば一言では表せられない大変な事があったのだ。

街を回る前・・・拠点から出てすぐに私は白黒はっきりさせる出来事があったのだ。



時を出発の瞬間まで巻き戻す・・・


しばらく身を置くであろうリノの親戚の家をこの魔族2人と共に出た。私はまどろっこしい事が嫌なタイプなので、疑惑があればすぐに解消しなければ気分がモヤモヤするのだ。曲がり角を曲がってすぐにアクションを起こした。


普通に住宅街の路地である。バス停で待ち時間の有効利用ってのもある。

戦闘になったら車通りが面倒だが、私は剣を抜いた。


「それで、やるの?やらないの?正直言ってアンタ達の付いてきた目的って分からない。大人しく捕虜になっているつもりかしら?アンタ達の実力ならいつでも逃げられるわよね。寝込みを襲えば私達をいつでも殺せる。一体何?」


膠着状態が続く。一行に攻撃して来ないし私達は睨み合ったままだった。

沈黙を破ったのはレイチェルだった。


「もう闘う理由がない。」

「何言ってるのよ。私達に対して敵意剥き出しだったじゃない。」

「そりゃ、味方じゃないからな。命ある限り抵抗してやる。」


本当におっかない奴らね。


「なら、殺すの?死んでやるつもりは無いわよ。」


私が戦闘体制に入ると、レイチェルはブルーノにアイコンタクト。しかしブルーノは首を横に振り、代わりに答えた。


「それも無意味。私達には目的がある。それまで死ぬ訳にはいかない。」


目的があるのなら無理に私達と行動を共にする事はないのかな?

そう思って私はそっぽを向いた。


「やるべきことがあるのなら、どこか好きな所に行きなさいよ。私は見ていない。気が付いたら逃げられたって得武兄に言うわ。」


レイチェルは怒る。


「舐めやがって!!一体どういうつもりだ!!」


背中越しにレイチェルの威圧を感じる。振り返らず、そのまま私は答えた。


「解放するって言ってるの。好きにしたらいい。私達の私怨に無理やり付き合わせる程傲慢じゃないわ。」


元々、そのつもりだった。

もしこの魔族を由布院で解放するとどうだろう・・・由布院の住民に迷惑がかかる。

でも、福岡には防衛出来るだけの冒険者が沢山揃っている。


だから魔族2人を自由にして問題はない。

ちょっとぐらい暴れてくれたら私としてはライラ達を困らせる事が出来てラッキーなのだが。


青髪が代わりに答えた。


「私達に帰る場所はない。『クラン=アビス』は私達の居場所だった。今の目的はボスを取り返し、再び『クラン=アビス』を結成する事なんだけど、私達のボス、マーサって奴に捕らえられてるんでしょう?ならお前たちと目的同じじゃない?って思うわ。」


ブルーノの言いたいことってつまり、共通の敵がいるから今は味方って奴?


「私を恨んでるんじゃないの?」


「馬鹿なのね、私達は侵略者よ。負けたら当然死を意味する。そのぐらいの覚悟は持ち合わせているわ。負けた私達を奴隷にする訳でも無く生かしているお前たちの甘さには到底理解出来ないし。恨む理由はない。」


あっさりした性格で助かるわ。


「じゃあ、協力関係って認識で間違いないのよね。」

「そうだな。」

「でも、アンタ達の性格からして指示を受けて素直に動くとは思えないわ。」

「ええ。私もレイチェルもウチのボス以外に指示されるの大っ嫌い。私達は私達で好きにやらせてもらうわ。」

「あ、そう。どうぞご勝手に。でも私の仲間に手を出したら本気で許さないからね。」

「私達をキレさせなければだけどね。昨日のチャラいアイツらは殺しそうになったけど。」


ああ、ヤンキー達の事ね。船に乗る前にブルーノ達を口説くから私が突っ込みがてらヤンキーを蹴って海に落としたんだっけ?

やはり海ぽちゃしてなかったらヤンキー達死んでたわ。私は頭を下げた。


「あれは空気を読まないアイツらが悪い。私の子分が調子乗ってごめんなさい。」

「あら、謝れるんだ。」

「協力関係なのにいつまでもギスギスしてても仕方ないでしょう?」

「計算かよ。」

「そう。」


そんなやり取りをしているとバスが到着する。


「これからバスに乗るから騒ぎだけは起こさないようにお願いね。」


そう言ってバスに乗り込んだ。



そんな出来事があって、今に至る。絶対的な信頼には至らないけど、背後から突然襲われない程度には協力関係にはなったのかなと思う。


冬月先生が纏めたマップを片っ端から片付けていく。


でも攻略出来るのはレベル80までのダンジョンまで。D級ダンジョンまでだ。


ブルーノとレイチェルが話している。


「ダンジョン攻略がこんなに楽なんて怖いわね。」

「ダンジョン製作の苦労が台無しだ。ダンジョンの制作者に謝れって言いたくなるアイテムね。ダンジョンをまるで雑草扱いだし。」


我慢我慢、アイツら得武兄の作ったアイテムをディスってる。

我慢我慢。私、耐えるのよ。


「あのモヤシ、こんなもの創れるなら結構強いのかしら?」

「はぁ?ブルーノ目にゴミが入ってんじゃないの?ただの生産職でしょ。近付いてワンパン終了よ。」

「そうかしらね。」


なんかうるさいな。

仲良く任務を終えるのだ。・・・って・・・


「ねぇ、次得武兄の悪口言ったら刺すよ。」


と釘を刺してしまった。

黙った。沈黙が続く・・・かと思いきや、10秒後には笑い出す2人。

・・・何がおかしい!?

そう思って睨んだらレイチェルがボソリと呟く。


「・・・・・・。お前ブラコンか?」

「!!!」


得武兄はその・・・えっと・・・。守ってあげないと心配な存在というか・・・。好きっていうか・・・。なんでも私のわがままを聞いてくれるから頼ってしまうというか・・・


「赤くなったぞ。」

「うるさい。」

「どこがそんなにいいんだ?」

「なんでもないって!!」

「虫も殺さないような甘甘野郎のどこがーー」


あっ悪口。そう思ったらつい反射で剣を抜いてしまった。峰打ちだが、鳩尾を突く。


「モヤシでも甘ちゃんでも、頼れば何とかしてくれるんだよ。好きで悪いか!!」


もう口聞いてやるもんかと、薬を撒く作業に集中した。


「うわっ野蛮人・・・」


「今のはレイチェルが悪い。あんただってボスの事悪く言われたら怒るでしょう。」

「うん、怒る。家族だもん。」

「それ以上に好きだからでしょ。」


レイチェルの顔が赤くなる。


「まぁね。」


レイチェルやブルーノ・・・魔族は悪だと思っていたのだが、こんな2人にも家族や仲間がいて、好きな人がいる。人間と同じように感情持って生活している。


考えないようにしてた・・・私達がこの魔族の家族を二つに分断したって事実。

いっそ、一緒に軍隊に引き渡して、マーサの所で奴隷になってた方が家族一緒で良かったのかな。なんて考えると悲しくなる。


ブルーノとレイチェル。自由意思を持って行動して貰っているけど本当の理想は家族と一緒にいる事。もし、引き渡したとして・・・家族みんなといた方が楽しいのは間違いないけどマーサの奴隷。そこに自分の選択権利はない。

自由って何?生きるって難しい。


「ねぇ、レイチェルはボスを助けたらどうするの?告白とか?」

「なんでだよ!!何もしないし・・・というか家族って言ってるだろ!!じゃあ咲羅はスライムの姿から人間に戻ったら兄貴には何かするのか?」


しばらく考えて・・・。特に普通の生活を送っている姿しか想像出来なかった。


「うーん。別に。ありがとうって言う。」

「いや、言うだろうけど、そうじゃない!!告白とかは?」

「なんで?しないよ!!恥ずかしい。」


家帰ったら得武兄は私のものだし。改めて告白する必要ってある?


「だろ!!一緒だ。」

「レイチェルは血、繋がってないのに。」

「うるさいな。」


そんな馬鹿話をしながら更に7ヶ所ぐらい薬品を撒いた。




夜も更けてきた。


「お前、何してる?」


一瞬私に声を掛けたのかと思った。でもその矛先は私ではない。スーツ姿にビジネスカバン。サラリーマンかなと思ったが、その下に首元まであるパワードスーツを着込んでる。

ライラさん所の職員だ。それも幹部。その男が見つめる先は・・・


「溝口さん!!俺達もう懲り懲りなんだよ!!」


また建設業だろうか、6人ぐらいでその溝口と呼んだライラさん所の幹部に掴みかかる。


「俺達医者だ。なのになんで土木関係の仕事を強制的やらされないとダメなんだよ!!モンスターが消えた今、怖くねぇ。自由にやらせてもらう。」

「という事はマーサ様を裏切るつもりですか?」

「ああ、困ってる人の味方だからな。お前たちのやり方はせこいんだよ!!ポーションあるから、万能薬があるから医者は要らない?ポーション、最安値で10万するだろ?住民の誰が手に届くんだよ。」

「その分稼げばいい。その為に数多くの職業を割り振ってあげてるでしょう。」

「働く自由はどこ行った?お前らのやってる事は支配だ。あまりにも人権を侵害しすぎてる。」

「じゃあ、モンスター溢れたこの世界で法が貴方達の命を守るというのですか?総理大臣が守ってくれるのですか?そうじゃない。俺達が魔物の脅威から守ってあげてる。本来なら自分の身は自分で守るのが普通。命を救って貰ってるんだから俺達に労働で返すのは当たり前の事じゃないか?」

「それをふざけるなと言ってる。休みなし、16時間労働?過労死させる気か?」

「じゃあ、私達の代わりに戦ってくれますか?」

「そんな話をしてるんじゃねぇ!!自由に仕事させろ!!休みを寄越せ!!」


今にも暴動になりそうな勢いだった。


そうだ!これがマーサとライラのやり方なんだ。

私は思い出す。会社に所属している時もこんな事があった。


勤務したての頃、私は慈善で街のダンジョンを無くして回っているのかと思っていた。

しかし、助けた難民に適当に仕事を割り振って奴隷のように労働させたりしているのが当時の現状だった。その時は、「こんな世の中だから、少しでも多くの力が必要だ。みんな手を取り合おう」と言って馬鹿げた労働を正当化させていた。

安定化した今、その理論は通用しない。

だからダンジョンを利用してダンジョンマスターとなり、その地域をモンスターで支配したのだ。


私もその悪政の一端を担っていたと考えると虫酸が走る。


「反抗するなら炭鉱送りにするぞ。」

「やって見ろ!!こんなんでも皆レベル100だぞ。」


一瞬だった。

6人の土木関係の人らが吹き飛ばされた。蹴り技だった。

さすがライラさんの幹部。限界突破は余裕でしているのだろう。

静かに6人を縛り上げると面倒臭そうに担いで行く。一体どこに連れて行くのだろう・・・あ、いや炭鉱なんだろうけどさ。後着いて行ったら根城とか行けるのかな?


「あいつ、強そうだな。一丁私ばぶっ倒して・・・」


レイチェルの口を私は手で押さえた。


「ダメ。後を着いていく。その後なら倒していい。」


と告げ視線は溝口さんへ・・・。細い男が縄に縛られ束になった6人の男を軽々と軽々と引きずって行く様子を見てると物理的に違和感でしかないのだが見守る。

とあるコインパーキング内の黒い車に乗せると、エンジンをふかす。


やばい、車を出されると撒かれる!!


私は車の背後から猛ダッシュ・・・躊躇なく車の屋根の部分、ルーフの上に飛び乗ると・・・


「お前たち、早く天井の上に。」


とブルーノ、レイチェルに手招きする。


「なるほど・・・咲羅、やっぱりおまえ、楽しいわ。」

「咲羅、お前って奴は・・・」


と何故かレイチェルとブルーノに呆れられるのであった。


車の上で何度も振り落とされそうになりながら、路上を走る。

感想を一言で言えば、寒かったかな。

通行人に何度2度見されたか分からないし、写メを何回撮られたか分からないが、奇跡的に車の中の幹部にはバレずに北九州市へ入って行く・・・


広い駐車場に停めると騒動起こした6人を刑務所に運び込んでいく。


「3人も天井部分に乗せて・・・中の人間によくバレなかったな。」


とレイチェルは笑う。それに対してブルーノが評価、


「運転が上手だったわ。急発進、急ブレーキが無かっただけまだイージーだわ。」

「ハイハイ無駄口はいいから。行くわよ。」


そう会話を切り上げさせ、刑務所に私達は潜入した。

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