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七十九戦目

咲羅は電話を切った。ばあちゃんの件などまだ話す事はいろいろあるのだがLINEにしよう。今しなければならない事をしよう。俺が福岡に潜入を果たしたらやろうと考えていた事だ。


「皆にお願いがある。決戦までに準備がいる。皆の装備を強化したい。2日時間をくれ。」


そう。決戦までに装備を整えなければならない。今のままの装備では絶対に勝てない。勝てるとすれば奴が度肝を抜かすほどのアイテムを用意する事だろう。

俺の醍醐味といえばラウダに教え込まれたこの錬金術の技術にある。出し惜しみはしないと心に決めている。やるなら徹底的にだ!!


綾香はわかってたとばかりに頷いて・・・


「うん。いいけど私達はその間どうしよう。」


と悩む。


「あまり目立つ行動はして欲しくないけど、やって欲しい事がある。」


と返すとリノさんが食いついた。


「何?それは私でも出来る事?」


「もちろん。まず、ダンジョン除草剤で保有ダンジョンの数を少なくして戦闘能力を削る。次に潜伏場所を割り出す。次に逃げる経路の確保かな。仲間も欲しい。つまり・・・ラウダに対する反乱分子はこっち側に連れ込んで欲しいのだけど・・・。」


というと、冬月先生が俺の意図を汲み取った。


「なるほど。新子君が言いたい事はわかった。とりあえず2グループに分かれましょうか。マーサの潜伏場所を探るチームとダンジョン除草剤を撒くチーム。逃げる経路の確保や反乱分子集めはやりながら考えましょう。臨機応変に。」


その二つのグループだと、比較的にマーサに狙われやすいチームが出来てしまう。それは・・・


「ダンジョン除草剤部隊は出来るだけ咲羅と離れないでくれ。」


と対策を組む。冬月先生をはじめ、なんで咲羅さん?ってイマイチピンと来てないようだ。


「危険な役割っていうのはわかる。でもどうして?綾香さんじゃダメなの?」

「咲羅は猿達と契約を結んでる。いざとなったらレベル200の猿達が皆を助ける。」


コクリと頷く咲羅。


「そう、30匹の猿達が・・・って得武兄、そんな危険な事は私一人でやるわ。情報収集はどうするの?冬月先生とリノ2人でもし戦闘になった時やばいでしょう?綾香ちゃんも必要よ。」

「そうだな。」


ふと綾香は声を上げた。

「そういえばリノちゃんって、職業(ジョブ)何?どんなスキルを使えるの?」

「私のジョブは真贋士。嘘を見抜く能力よ。」


咲羅も綾香も驚く。


「え!?それって凄いスキルなんじゃないの!?」

「諜報部員の鏡のようなスキル!!」


嬉しそうに、でも恥ずかしそうにはにかみながら


「戦闘には何も役に立たないスキル。」


と謙遜するリノさん。それに冬月先生が補足した。


「咲羅さん、綾香さんが学校去ってから学校が少し荒れたの。リノさんがその能力でいいやつ、悪いやつ選り分けてくれてね。学校に悪い人がたまるのを防げたの。」


 俺はそれを聞いて思わず「軽く武勇伝じゃないか。」と呟くとリノさんは恥ずかそうに「まぁね。」と笑う。冬月先生の話は続く・・・


「だから私、リノちゃんの2人で情報収集しようと思う。大丈夫かしら?」


冬月先生の案だともし戦闘になった時に抵抗が出来ない。

かと言って咲羅をそのメンバーに加えるとなると適性という点で心配になる。情報収集ってキャラじゃないし・・・。情報収集の最中に変身が解けてスライムになったら怪しすぎて目立ってしまう。


「トラブルになった時の戦力が心配だ。後1人、他に適任者はいないだろうか・・・」


と言うと綾香が挙手した。


「私も付いて行くよ。さすがにレイチェルとブルーノさんと先生とリノちゃんの組み合わせって1番あり得ないし。」


綾香は魔族2人とリノさんペアが組む事想定したんだな。

確かに1番あり得ない。裏切る事は無いとは思うが、信用出来てない以上万が一がある。場合によっては味方に殺される未来が想定される。


ああ、でも確かに魔族2人は咲羅に手綱を握ってもらっていた方が良い気がする。


「そうだな。情報収集組は冬月先生、リノさん、綾香で問題無いと思う。冬月先生、回る地区とかお任せしていいですか?」


「ええ。大丈夫よ。鑑定あるし、危険な場所には行かないって約束するわ。」


「ありがとうございます。頼もしいです。残ったメンバーはは咲羅、ブルーノ、レイチェルの3人だな。ダンジョンを潰して行って貰いたい。」


待ってましたとばかりにピクリと反応する咲羅。


「別に1人で平気だけど。まぁ頑張るわ。」


咲羅の言葉に反応するレイチェル。


「は?ふざけるな!!1人で平気なら1人で行け!!私達は私達で別のダンジョンを潰す。」

「いいわね。どちらが多くのダンジョンを早く効率的に攻略出来たか勝負よ。」

「望むところだ!!」


なんかこの2人、勘違いしてないか?


「今日のダンジョンアタックは控えてくれ。攻略対象は街だ。モンスタータウンになってる地区にこのアイテムを撒く。」


俺はアイテムボックスからダンジョン除草剤を何本も取り出す。


「うわっ。得武兄それつまらない。楽してダンジョン攻略とか本気でないし。もっと楽しいのがいいわ・・・。レイチェルの目を見てよ。このやる気のない目を。」


うわっ!!レイチェル凄い険しい顔してるぞ。そんな・・・「お前のせいでやる気ゼロ」みたいな顔でこっちを見るのはやめてくれ。殺気で殺される。


「おいおい、そんなにテンションが下がらないでくれよ。」


咲羅に至ってはそのテンションの下がりようは半端なく、擬態が解け、肌の色がスライムになっている。足なんてとろけて半分無くなっている。


「だって・・・。」


な、なんかすまん。妥協点を探そう・・・


「新装備が出来たら、アイテムでは除去出来ないダンジョンを攻略するからな。それまで我慢してくれ。」

「はーい。」

「それじゃ、作戦は決まったし、各自解散という事で・・・」


言いかけて・・・。

綾香が、疑問を上げる。


「エムルに危険が起きた時は誰が助けるの?」

「その時はキイチ兄妹を呼ぶ。それにラウダだっている。」

「そうだったね。うんわかったわ。」


綾香の合意を得て、作戦執行となった。



作戦が始まると寂しいもので、俺の周りにはエリシアとアルちゃん・・・つまり精霊しかいない。さっきまで賑やかだったのが嘘のようだ。


俺は父にばあちゃんの容態を事細かに文書にし、LINEで送信。

凄い驚いた反応だったが、歳が歳だけに納得の様子。むしろ、「モンスターに襲われて死んだんじゃないかって思っててた。得武、おまえが守ってくれたんだな。ありがとう」なんて文章が来るもんだから。


守らなかったから危篤なんだよって思って悔しさが込み上げた。


ラウダを倒す。

俺の知識だけでは勇者マーサに勝つための武器、防具、アイテムを作成するのは難しい。

ならば錬金術の師匠に意見を伺うべきだと思う。

俺は師匠を召喚する為、魔力を帯びた名刺を取り出し起動の準備に取り掛かる。


「って得武!!アンタ何ラウダを呼ぼうとしてるの!?何故今!?もっといいタイミングあるんじゃないの!?」


エリシアはからストップがかかる。


「なんだよ。逆にいいタイミングってなんだよ!!」

「呼ぶなら普通戦闘中でしょう!?なんで前回同様に平常時に召喚しようとしてるのよ!?呼べる回数は後2回。ちょっとは考えなさいよ!!」

「いいんだ。錬金術についてアドバイスを聞きたいんだ。」

「いやいや。錬金術なら私も出来るし、一緒に考えましょう?ラウダさんは戦闘時以外呼んじゃダメ。」

「いや、ラウダしか分からない事なんだ。」


俺が駄々をこねるとイライラしてるのかエリシアの口調に棘が出る。


「とか言って、得武はラウダさんを戦闘に参加させる気無いんじゃないの!?」

「そんなの当たり前だろ!?ラウダは戦闘を誰よりも嫌っている。本当はみんなと仲良く笑いたいんだ。」

「え・・・・・・?」


エリシアは衝撃を受けたように目を丸くする。


「俺は向こうの世界の時間で5年ラウダと寝食を共にした。だから分かるんだよ。何を望んで何が嫌いか。友達に嫌いな事をして欲しくないと思うのは間違いなのか?」

「待って、私知らなかった・・・。私の知ってるラウダさんって誰よりも先頭に立って敵陣に突っ込んで行く姿しか知らない。常に敵を倒し、悪を成敗する。」

「それは自分がやらなければ誰かがやらないとダメだからだ。嫌な事を買ってやっていたんだよ。それに、ラウダは自分の事でいっぱいだ。俺たちの為に戦闘なんか繰り広げたらラウダを狙う奴等に居場所がバレる危険だってある。ならラウダの迷惑も考えて行動すべきだと思う。」

「そう・・・。得武はラウダさんの為にそこまで考えてたんだね。偉いね。」

「だから、今呼ぶぞ。」

「うん!!呼んで!!」


名刺に魔力を通した。名刺から召喚陣が発生し黒い光が充満する。その魔力の渦は人の姿を創り次第にラウダになる。


ラウダは目を開ける。


「ラウダ久しぶり!!元気だったか?」


と俺がフレンドリーに声を掛けるとラウダは少し戸惑っていた。

エリシアが、わざとらしく髪型を整え服装を正す。上目遣いでラウダを見る。やはり、ラウダが好きなのは変わらないのだろう。


ラウダの表情は真剣そのものだった。ラウダの戸惑ったわけ・・・


「得武、元気そうで良かった。ブラハム殿のご冥福をお祈りします。おまえはまた変なタイミングで呼ぶな。倒して欲しいのはマーサだろう?何故俺をマーサにぶつけない?」

「これは俺たちの問題だし、俺はおまえに戦闘なんてして欲しく無いんだよ。」

「そういうもんか。それで?呼んだ理由は。」

「マーサを倒す!!その為の装備を整えたい。錬金術の知識を貸してくれ!!」

「得武、お前は俺に変な気を遣いやがって・・・。札が無くなってここぞって時に俺を召喚出来なくても知らないからな!!というかお前が死んだら俺悲しむからな!!」

「死なないように、最強の装備を作る!!」

「わかった。わかった。それで、何から取り掛かる?」


最強の武器と言ってもまずマーサの力がどれほどなのか、ラウダにも知って貰わない事には対策が出来ない。


「一旦情報共有しよう。話はそれからだ。」


と言ってラウダの額に手を当てる。


情報共有とは・・・俺は精霊の理解者から精霊魔術師にクラスチェンジしてからいろいろ出来る事が増えた。MPが爆上がりしたのとINTが強くなったのもある。だがそれだけじゃない。

情報共有魔法なんて出来るようになった。これはイメージを魔力に乗せて相手に伝える魔法だ。


ラウダの脳裏にはブラハム様が俺に見せてくれた戦闘の様子が映画のワンシーンのように上映されている事だろう。


それは10秒にも満たない時間だった。ラウダは頷いて・・・


「なるほど。コイツを倒すとなると得武と咲羅、綾香の3人ではしんどいぞ。」

「レイチェルとブルーノという魔族もいる。キイチやネネもいる。」

「数が多ければいいってもんじゃないぞ。皆が皆武器、防具を最強の仕上げてもかすり傷が精一杯だろう。」

「じゃあどうすればいい?」

「得武特製のポイズンを解禁しろ。」

「あれは・・・」

「環境問題とかエコな事言ってる場合じゃないだろ。これは戦争だ。あいつには毒を使って初めて効率的にダメージが通る。そう思ってくれ。咲羅を元の姿に戻したいんだろ?」

「ああ。もちろんだ。マーサをぶっ飛ばしてこの福岡の地を解放したい。」

「それなら手段を選ぶな。」

「わかった。」

「助言だが、戦争の混乱に便乗して倒すのがベストだろう。」

「俺もそう思う。」


ラウダから説明が入る。


「まず、装備がすぐ壊れたら話にならない。不壊属性を付けよう。錬金王にしか作れないと言われた技法だ。ジョブ無しがやるのは相当無理な話だと思うが、得武やれるか?」

「やるよ。」

「後、全ての防具にスキルドレイン、マインドコントロール無効を付ける。石化はおまえのオート万能薬がある。後は、どれほど武器、防具の潜在能力を増やせるかだな。」

「なるほど。」

「後、素材だが、俺のアイテムボックスにあるのを存分に使え。サービスだ。」

「いいのか!!」

「当たり前だ。エリシア、お前のアイテムボックスの中にも素材あるなら協力してやれ。」


にっこりうなづくエリシア。


「ラウダの言う事ならいいよ。なんでも使って。」


少しは気を使えと言っていそうだが・・・気にしても仕方ない。存分にやらせてもらおう。

さっそく作業に取り掛かる。


「ところで、一体何人分作る気だ?」

「まずは5人分かな。」

「まずはって事はまだまだ沢山必要なのか。」

「まぁな。」

「一丁頑張るか。」

「おう。」


「得武、お前の考える防具って本当服だよな。」

「この時代、重そうな鎧とか着る人いないだろう。軽くて丈夫、それが一番。」

「俺は異世界でそんな発想はなかったな・・・。」

「それは異世界に住んでたからだろ?俺はこの環境だからこの発想になったんだよ。」

「ミスリルのような金属を糸に加工して・・・布に編み込み、服に仕立てる技法が?考える事がぶっ飛んでるぞ。」

「それを言ったらラウダの技術だろ。俺のイメージを軽々と形にするとか一体なんだよ。」

「人生経験の差だ。」

「マジかよ!!」


いろんな事言い合いながら、俺たちは笑った。こんな事言うのはおかしいかもしれないが楽しかった。

俺は思い出す・・・精霊界で開発に明け暮れていた時の事を。俺とラウダなら出来ない事はない。いや、ラウダが異常なだけなんだが。

そう思って作業に戻る。

咲羅と綾香の武器防具進化は順調に進んでいた。この2人の武器防具に関してはベースがある為、進化素材さえ錬成してしまえば後は一瞬で合成出来てしまう。

後作るのは俺、レイチェル、ブルーノの武器防具。


と・・・その前に


「武器防具ばっかり向き合ってると疲れるな。ラウダ、息抜きをしよう。」


と言って調合素材を取り出した。


「息抜きっておまえ、調合の事かよ。」

「ああ。精霊が沢山集まってくる薬品を開発しようと思うんだが・・・。」

「楽しそうだな。エリシアのアイテムボックスと共有させて貰っている。俺のアイテムボックスから材料は好きなだけ持っていけ。」

「サンキュー!!」

「じゃあ俺も、魔導具みたいなの作ってやるか。」

「ラウダが作ってくれるのか?」

「ああ。楽しいぞ。聖域って言ってな、空間魔法の一種だ。半径1キロメートルを聖域化し、外部の攻撃を一切遮断する。」

「ん?防御魔法にしては半径1キロってやたら広くないか?」

「続きがあってな。聖域に侵入したものに、敵味方関係なくレベル1にする。」

「楽しそうな魔導具だな。」

「ラウダを誘い込んでやれ。レベル1000の奴がレベル1になったら雑魚の極みだぞ。」

「なんだそのチート魔導具は。」

「まぁ、誘い込むまでが大変なんだけどな。」


そんな事言いながら2人で魔導具の製作にハマり込む。

何時間経っただろうか。俺の調合は10回の失敗を経て、黄金比を産み出した。後は量産するだけなんだが・・・


突然にうみたま○受付嬢が現れた。とはいえ、魔力が安定しないのかコウモリのままだ。


「おっと!!本当にいつもビックリするな!!」

「いつも楽しいリアクション、ありがとうございます。ですが緊急事態の為、いつもの冗談は抜きにします。」

「緊急事態・・・?」

「はい。お婆様の様態が深刻です。このまま目を覚ます事はないでしょう。貴方への選択肢は3つ、1、コールドスリープで植物人間のままキープ。2、ゾンビとしてキイチ様の配下に加わる、3、延命治療を辞めて安楽死。」

「待て待て、そんなに立て続けに言われても気持ちが追い付かない。待って。ばあちゃんは死ぬのか!?」

「まだ死んでません。ですが、決断を早くお願いします。延命治療でもどのくらい生きてくれるかわからないですので。」

「済まない、皆と相談させてくれ。だからしばらく延命治療を続けてくれ。」

「分かりました。」


去っていく。


エリシアから心配そうに声をかけられた。


「得武、大丈夫?休憩しよ。」

「大丈夫だ。休んでられない。ちょっと電話する。」


俺は親父に電話した。


「親父、ちょっといいか?」

「なんだ。」

「LINEで、ばあちゃんの容態は知ってるよな。」

「ああ。衝撃だったけどな。」

「知り合いの医療現場から電話があって、ばあちゃん、『もう二度と目を覚ます事はない』って言われたんだ。」


返事に少し間が空いた。返ってきた声は、絞り出すような震えた声だった。


「そうか。残念だ。」

「今、出来る事は三つ。一、コールドスリープの状態でキープ。二つ目はゾンビ化させて不死の力を得る。三つ目は安楽死。」

「ばあちゃんは十分に生きた。モンスターが溢れかえった世界で、本当によく生き残ってくれたと思う。でも、ばあちゃんはゾンビになってまで生き延びたいとは思って無いだろう。」

「そうだよな。ゾンビになったら、この世界で順応して生きて行かなければならない。モンスターと戦闘しなければならない。」

「そうだ。何がおばあちゃんの幸せなのかよく考えよう。それまでコールドスリープで。皆で集まって話合ってから決めよう。」

「父さんはいつこっちに戻って来れる?」

「今すぐには行けないが、1週間以内にこっちの問題を片付ける。」

「わかった。ありがとう。」

「得武、絶対にマーサに手を出すな。アイツは・・・」

「父さん、またな。」


説教になり始めたので俺はLINEを切る。


皆と話し合い。皆で決める。

多分、皆の意見は分かる。安楽死だろう・・・


「得武、休めよ。」

「得武、顔が真っ白よ。」


ラウダとエリシアの2人から心配された。いや、寝ていたはずのアルちゃんまで


「得武、休むのも仕事だぞ。」


と心配する。


「やるよ。時間が惜しい。」

「後で休めば良かったって嘆いても知らないぞ。」


錬金を再開した。作る内容は決まってる。それぞれの武器はどの方向に持って行くか決まってる。

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