六十四戦目
*咲羅視点
昨日は衝撃的だった。
街は普通に営業していたのだ。
由布院には有名どころの宿が腕を競い合っている。その一つ、とある旅館に一泊、特別に泊めてもらう。
エントランスまでの道がもう古き日本の庭園を感じさせる造りになっている。
マイクロバスを止めると、タキシード姿のウエイトレスがお出迎えしてくれて荷物持ってくれたりとかなにから何まで全てやってくれる。
こんなの初めて!!
でも異様な空気を感じる。街の人々に生気がない。まるで操り人形が街を、経済を回しているような感覚。
旅館の従業員達と軍人との会話を思い出す。「本当に倒してくれるんですよね!!私達の家族の仇を取って下さい!!」だとか「私の娘2人、攫われたんです。ダンジョン内で見つけたら助けて下さい!!」とか、悲壮感漂っていた。
旅館のご飯は絶品だった。和食御前。このご時世、何処で取れた野菜だろう。
そもそもこんな上品な味付け今まで食べた事ないわ。
スライムだから味分かるのかって!?
失礼な。スライムにも味覚はあります!!
感覚をオンにしたりオフにしたり出来るのだ。目がついてないのになんで見えるのかって聞いてるのと同じだぞ。
核を取り込む時はもちろんオフで。
そんな回想をしながらダンジョン内を歩く。地面がぬかるんでいる。
そんな中、軍隊は一糸乱れぬ行軍をしている。素晴らしい。
イエラさんとのコミニケーションに不安を感じていたが、軍の中には通訳もいて、対して苦にならなかった。
クレハも通訳出来る。
「私達軍の持っている武器の攻撃力は500。結構凄いでしょう。って言ってます。」
「そうですね。強いですね・・・・」
綾香は相槌をうつ隣で私は思う。
攻撃力、防御力4000の武器防具を持った私達が何を言うか。
地面がぬかるんでいるも何も山林地帯のダンジョンだった。
竹林とか細い背の高い木とかで視界が悪い。
歩きながら五反さんから作戦の内容を明かされる。
「今まで、別府、由布院と攻略が放置されていた理由があります。それは魔族の存在です。」
「魔族!?」
私も驚いたが、綾香も同時に驚いた。
魔物の中でありながら人間の知性を持ち合わせ、異世界最強の種族として君臨していた者。
昨日の従業員達も、近くにそんなチート野郎が住んでいたらそりゃ気力もなくなるだろうな。
むしろ、住んでいるから負けてたまるかという意気込みで営業しているのか。
でも、あの悲壮感は半端ない。
もう魔族をぶっ潰すしかないわ。そしたら皆ハッピー。
でも一体どんな生物なんだろ。
キイチ少年とつい最近話してたばっかりじゃないか。
気になるが、進化してレベル1になった私が対応出来る相手とはとても思えない。
大人しくしておくべきか。レベル上げればいけるかな?
「私達自衛隊のメンツでもその魔族の力には相当手を焼きます。一度、福岡のライラさんが来てくれたのです。」
クレハさんの説明に綾香が反応した。
「ライラさん?めちゃくちゃ強いでしょうあの人。倒せなかったの?」
「倒せないのではなく、逃げられました。ワープゲートを持っています。」
「それ、どんなに追い詰めてもまた逃げられるんじゃ?」
「いえ、別府の地獄めぐりにも魔族の目撃情報があります。予測ではここに繋がってるんです。」
「なるほど。得武達と挟み撃ちしてるんだね。」
「そういうことです。気を引き締めていきましょう!!」
綾香は頷いた。
なるほど。別府のあの灯台の見張りも魔族を警戒しての警備だ。
あのままショートカットで山道を通って由布院に抜けるとまもなく魔族の巣が待ってますという話か。
普通の人なら死亡確定だ。
いけない、物思いにふけっていた。
イエラさん筆頭に軍人30、一列になって行軍していた。
一糸乱れぬ動き。洗練されたというのはこの事だ。
モンスターを発見すると、すぐ、横一列に散開し、特殊な銃を撃ちまくる。モンスターの集団であろうと5秒以上生きている敵は居なかった。
背後からの奇襲にもしっかり対応。
特殊なサバイバルナイフで斬りつけたり投げたりする。
罠探知のスペシャリストもいて、ストップ掛けて止まるスピードも凄い。
徹底したルールが敷かれていた。
でも私、見てるだけじゃつまらない。少しでもレベルは上げておきたい。
気配遮断のスキルを持つモンスター。マンイーターにもしっかり対応するもんだから、私役目がない。
と、思ったら。
木のモンスター、トレントを思いっきり無視して歩いてる。
トレントも木のフリしてやり過ごしてる!!
私は見逃さない。
人型に変形し、ゾアルソードで一刀両断!!
核を即回収!!
<レベルが上がりました>×14
新子 咲羅
スライムジェネラル レベル15
スキルポイント180
HP 1010
MP 1680
STR 540
VIT 820
INT 1100
MD 920
DEX 800
AGE 760
LUK120
スキル
体力増強、暴食、素早強化、毒攻撃、毒耐性。
麻痺攻撃、麻痺耐性。第六感。
眷属召喚。呪撃。
ステータスオープンって言葉に出来るなんて最高。自分でステータス確認出来る。
レベル15とは思えない。
だか、進化3段階目なのでレベル1の時からステータスは高かった。
でも、まだまだ人間、咲羅より弱い。
スキルポイントがたくさんある。振ってみよう。
あれ?あれれ?一切振れないんだけど。どうなってるの?モンスターだから?スキルポイントは人間の特権?
ならなんでポイントあるのよ!!
よし、ポイントはもう過去のもの。忘れよう。
眷属召喚と呪撃って、うみたま○のダンジョンのあのボスの核?
ちょっと試して見よう。
次のトレントに向けて呪撃!!!
剣が光りの粒子になって空に伸びた。
そのまま振り下ろされる力の暴力!!
3体まとめて斬り伏せた!!
真っ二つに切れ、断面から黒い煙を上げる。
その断面、腐敗が始まった。
うわっこれ核食べるの躊躇われる!!
そう思いながら食べていく。
<レベルが上がりました>×20
レベル90代のモンスター倒してるのにレベルが上がりにくい。
3段階進化もすれば能力もそこそこある。次のレベルまでの必要経験値が高いのだ。
「綾香ちゃん、トレントに気をつけて。たくさんいるから・・・・綾香ちゃん?」
周囲に気配がない。
そもそも人の気配がない。私はスライムになっても気を読んだり操ったりする武術的なものに長けてると思っていた。
一切感じないのだが。
いや、人の気配がしないっておかしいでしょう!!
だって軍人30人いるんだよ!!
私は迷った?むしろ迷わされた?誰に?
そりゃ魔族にでしょう。
トレントって何?森のモンスター。
私、炙り出された?
確かにトレントの存在に気がついたのは私だけだった。気付かずスルーがむしろ正解か?
いやいや、そんな訳はない。むしろ正解でしょう。
迷わされてるのは綾香達で、私だけ正解の道を行ったという事で大丈夫かも。その先にいる敵ってやっぱり・・・・魔族?
そう気付いた瞬間、森が全てトレントに変わる。
遅いかかるレベル95のモンスター達。
「なんでレベル100前後の敵ばかりに縁があるのかしら?」
人型のシルエットを作る。
パーカー装備、ジーパン装備のスライム。目と鼻は無し。
剣さえ握られれば良し!!
トレント達が木の幹や根を私の方へと伸ばして捕らえにかかる。
スローモーションのように感じた。
剣をそっと当てる。ただそれだけの事で木の幹を両断する。
切れ味が良すぎるのだ。
「綾香ちゃんどこ!?」
木が邪魔で前が見えない。
邪魔なので両断していく。
ついでに核を回収していく。
何十体か倒した後だった。どこからか甘い蜜の香りがする。
気持ちが落ち着く香りだった。
数メートル先ににトランポリンほどの大きな花があった、花の中央、蜜が滴り落ちていた。
私は蔓をのぼる。蜜は目の前だった。
ーーがさっ!!!
突然暗闇が訪れた。
どうやら花に食べられたらしい。
なんか酸っぱい液まで出て来てるし、もううざい!!
思いっきり斬り飛ばしていた。
「あーあ、蜜、食べたかったな。」
そんな事をぼやきながら微塵切りになった花のモンスターの核を回収。
「ただのスライムじゃないわね。何者?」
風伝いにそんな言葉を投げかけられた。周囲に姿はない。どこにいるのだろう?
「そうね。客観的に見て剣を振り回すスライムって怪奇現象よね。」
「剣を振り回すスライムさん。あなた、トレント達を薙ぎ倒して行くから強いのかと思ったら、食虫植物の典型的な罠に引っ掛かるし、すごいのか凄くないのかよく分からないモンスターね。」
「見てたのなら注意してくれてもいいじゃないの?」
「あら、私の配下に弱い奴は必要なくってよ。殺されるのならそれで良し。でもあなた、よそ者だけど良い線してるわね。合格よ。」
「合格?ありがとう。何をくれるの?」
「配下にしてあげる。『クラン=アビス』の仲間入りよ。光栄に思いなさい。」
とりあえず、成り行きで会話してるけど、この声の主が魔族な事はわかる。
そして、私をただのはぐれたモンスター、スライムだと思っているのだろう。
「とりあえず、姿を見せてくれないかしら。」
試しに言ってみたのだが、本当に呼びかけに応じてくれるとは思わなかった。角の生えた悪魔が現れた。悪魔と言ったら可哀想そう。見た目は角の生えた女性。目は赤く、尻尾は生えてる。




