六十三戦目
現地到着した。整列して移動をしている。ここは知ってる観光名所でもある。小さい頃親に連れられて来たっけ。
男20人。まさに地獄めぐりをしている。
ここもダンジョン化されて、草の生えてない茶色い山。渓谷のようなステージになっている。
渓谷の下。めちゃくちゃ湯気が出ていて硫黄の匂いがする。
「新子君、アラン少尉は沖縄でのダンジョン攻略数8つと、かなりの実力を誇っている。」
野崎先生はアラン少尉を紹介してくれた。
偉い人なのに、こんな俺みたいな高校生の為に話をしてくれるようだ。
「はっはっは。私はいつもダンジョン攻略してるよ。私は強い。」
「8つも凄いですね!!」
謙遜一切無し。攻略という事はダンジョンマスターの権限は破棄しているという事か?
でもいきなり聞くのは警戒されるよな。
野崎先生は補足する。
「ジョブにも恵まれており、最上級クラスのジョブを保持。レベルも220です。」
220という事は限界突破済み。
人間の限界の100を越えてるという事は何かしらの理由で人間を辞めているという事だ。
「限界突破という事は・・・・大変だったんですね。心中お察しします。」
俺の発言に2人は驚いた!!
「ほう、君は限界突破の方法を知っているという事ですな!!」
「あれ、先生が言ってませんでしたっけ?」
「私はそんな非人道的な提案しませんよ。少なくとも私からの情報ではないですね。」
そうだっけ?隣でエリシアが「キイチ少年からの情報だよ」って補足してくれた。
なるほど。
そんな話をしながら、アルちゃんは声をかけてくる。
「前方1キロ先、泥人形のようなモンスターが渓谷の下に密集。」
なんで分かるんだろう。鼻が効くのかな。こんな硫黄臭いのに。
「気配で分かるだろう!!敵の位置、罠の位置。感じろよ!!」
さすがゾアルの遺伝子。そう思って感心したが、待てよ。気配察知のスキルがあったんだっけ。
つい一昨日、一緒に訓練したのにもう忘れてる。
ーーならこれで。
歩きながら錬金術で硫黄成分入りの爆弾を作った。良く考えたらここ素材の宝庫だぞ。
久しぶりに採取欲が湧いてくるが、今は我慢。通りすがりに目に入ったものしか採取出来なかった。錬金術で剥ぎ取りアイテムボックスへと保管。
その錬成した爆弾の話。すぐ使う訳ではない。アイテムボックスに保管し、1キロ歩いてそれを言われた通り渓谷の谷間に落とす。
ドァぉぉぉゴォおン!!
爆音と共に「ギィヤアア!!!」とモンスターの断末魔が上がる。
モンスターを3体倒した。
<新子得武のレベルが上がりました×35>
久しぶりのレベルアップ!!
この音で気が付かない2人じゃない。
「今の音、新子君がやったのか!?」
「新子君は気配察知のスキルでも持ってるのかね。」
驚く野崎先生に、興味津々のアラン少尉。
「いえ、勘です。」
敵のレベルはまだ100を越えてない。でもレベルはこんなにあがってる。
俺のレベルは一気に45まで上がった。
今まで全然上がらなかったのに。この違いは一体なんだろう。
「やはりね。得武、あなたは装備に経験値を取られてたのよ。」
と言い張るエリシア。
周りに声が聞こえないように声を潜めて返す。
「エリシア、取られていたってどういう事?」
「経験値って、パーティメンバーに分散されるでしょう。貢献した者に1番配当される。」
「ああ。当然だろう?」
「私が装備に命を与えたばっかりに私の装備達が敵をいっぱい倒して得武に経験値が入らなくなったの。得武、お人好しだから敵傷つけるの嫌でしょう?」
その決めつけ嫌だな。その通りなんだけどさ。
「そうだな。その通りだ。」
「いつのまにか装備の方がレベル高くなっちゃってレベル差的にも貢献が装備の方が戦闘に貢献するようになって得武のレベルが上がらなくなった。」
「なるほど。でも装備を全く装備しないのは怖いぞ。」
「なら、今度は装備してみて。レベル45の得武とレベル1の装備達、どちらが経験値を良く貰えるか。常識的に考えてレベル45の得武なんだけど。」
「なるほど。ちょっと装備してみるか。」
「やってみて。」
ミスリルのポロシャツ、ミスリルのチノパン、ミスリルソードとスタンダードな装備。
どれも特性はなく能力は1000程度。
装備していると視界に飛び込んだのは軍人達とアラン少尉の戦闘。敵を発見すると武器に力を入れたように見える。
ーー衝撃が飛んでいった。
まるで、アルちゃんの神おろしみたいな力だ。
敵を次々と吹き飛ばしていく。
「弱い弱い!!サクッとボス倒すぞ。」
随分とやる気のアラン少尉。
「新子君、今の見ました!!最新式の剣は凄いですね。モンスターの魔石を嵌め込んでいるんですよ。ほらこれ。これによってモンスターの力が存分に発揮出来るんです!!これぞ異世界の力と化学が合わさった技術の結晶!!私、もう感激して死んでしまいます!!」
野崎先生は子供のように興奮していた。その隣でエリシアは勝ち誇ったように言う。
「鑑定結果、攻撃力は500の雑魚よ。得武、私達の武器の方が強いわ。」
「エリシア、どんな仕掛けがあるか分からないだろ?少しは謙虚になれって。」
「あら、当然の事実を言っただけよ。」
俺はその武器の持ち手に嵌め込まれた宝石が気になった。
宝石じゃない。あれは魔石だ。大きい魔石、雑魚モンスターの魔石じゃあんな大きさにはならない。
「アラン少尉、一体なんの魔石を嵌め込んでいるんですか?」
「レッドドラゴンだよ。倒すの苦労したな。」
「うわっ。なんか凄そう。」
自然と感想が漏れてしまう。その反応にアラン少尉は笑顔だった。その流れでアラン少尉から・・・
「新子君、今度は私からいいかい?私が教えたのだから君もいろいろ教えてくれ。」
「教えるって何をです?」
「君はダンジョンマスターですか?」
やはり、俺は疑われている。
下手な嘘は自滅にしかならない。
「一つ攻略しましたが、ダンジョンは破棄しました。」
「ほう。力を得られるのに何故。」
「地域住民にとって害になるからです。」
「ハッハッハ!!そりゃそうだ正解だよ。」
アラン少尉も安心したように笑う。そこで野崎先生は呆れたように言った。
「アラン少尉、言ったじゃないですか。私からも報告しましたが、害のある人じゃありません。ちょっと錬金術が出来る少年なんです。」
歩いてると、渓谷の下に降りていく道しか残されていなかった。
行こうとしてアルちゃんは吠える。
「得武。渓谷の下はモンスターだらけだ。注意しろ。」
いや、ごめんなさい。彼は警告してるだけなのだが子犬が吠えてるようにしか見えないのだ。
「うん。分かってる。」
「本当にわかってるのか?その微笑ましい物を見る顔辞めろ。回復薬の数の確認とかこまめにしてアイテムボックスからすぐ補充しろよ。アイテムボックス使えるよな。」
「うん。大丈夫だ。」
「ダメだ。わかってない人の顔してる。」
俺とアルちゃんのやり取りを見てエリシアはニヤリ。
「いいコンビになって来たんじゃないの?」
「エリシア、茶化すなって。」
返事するアルちゃん嫌そうだった。そんなやりとりを小さな声でしてたのだが、ピクリとアラン少尉は反応する。
「独り言ですか?」
聞かれてしまった。アラン少尉には精霊は見えない。俺独り言が激しい変な奴だと思われた。
「あ、はい。俺は考えてることが口に出ちゃうんですよね。うっかり。ははっ。」
ははって、笑い事じゃない!!
「君の頭の中、楽しそうですね!!」
「あ、ありがとうございます・・・・」
ショックだ!!アラン少尉から100%絶対変人に思われた!!
そのショックを抱えながら渓谷へと降りていく。足取りは重い。
足場が不安定で、急斜面を降りていく。足を滑らせてモンスターの餌食になる人も多いだろう。
やっとの思いで降りた瞬間、モンスターの巣かと思うぐらいの密集度。ハーピー、クレイジートレント、クレイスネイクモンスターに捕まった。
「鳥と枯れ木と土のヘビ。レベル95」
エリシア、そんな可愛そうな事言わないであげてください。
俺からすれば雑魚じゃないので。
というか、この数冗談言ってられる数じゃないぞ!!
軍人達は一斉に剣を抜いた。衝撃波が走る!!
30匹はいただろう。モンスターは一撃で魔石と化す。
コイツらは人の皮を被った悪魔か!?どちらが侵略者かわかったもんじゃない。
軍人達の振る舞いにより危険地帯など初めからなかったかのように静まり帰った。
この渓谷、結構モンスターの巣みたいだ。基本的にアラン少尉、もしくは軍隊が動く。戦力的に充実していて基本的に俺は何もしなくてもいいのだが俺も経験値は欲しい。戦闘に参加させて貰う。
土の中に身体を顰め隠れているモンスターがいる。
サンドワームだ。
本来、地中に身を潜めて、近くを通りかかった人を丸呑みにするモンスターだ。
いくら軍人達のレベルが高くても不意に丸呑みにされたら命はない。
「新子少年、前に出過ぎると危ないです。」
気を使ってくれた。でも出ないと先に倒されるんです。貴方に。
「前方5メール先、地中にモンスターです。」
わざとらしく宣言して戦う。宣言しなくてもわかっていたよね。
「なんと!!それは本当か?」
あれ?気付いてなかったオチ?軍隊の索敵担当さん?ちゃんと機能してます?
「あ、俺やるんで、任せて下さい。」
錬金術で地面を固め、モンスターを拘束する。
ダンジョンの土で槍を作る。それを地面を固め、固定したモンスターに向けて突き刺していく。貫いていく。
驚いたモンスターは暴れ出すも、地面を固めたお陰で身動きが取れない。
モンスターの心臓部に達するとその槍の魔力が暴走すらように作られている。ようは自爆だ。体内で大爆発を起こす。
<新子得武はレベルが上がった×10>
だいぶ格上だったらしい。
錬金術でもゴリ押しが出来る。
出てきた魔石をアイテムボックスに入れる。野崎先生は驚いて頭を抱えてる。
「本当にいたのか。軍の索敵隊が見つけ切らなかった敵を難なく発見、しかも無傷で倒してる。」
アラン少尉は終始ご機嫌だった。
「君は随分と不思議だね。レベルいくつだい?」
「今、55になりました。」
「ハッハッハ。君はジョークが上手い。」
アラン少尉は本気で冗談と思ってるらしい。野崎先生は隣で呟く。
「55でこの強さ。レベルMAXになったらどうなるか気になりますね。新子君、やはり、ボス戦には絶対参加しないようにお願いします。なんせここのボスはーー。」
あれ?野崎先生、肝心のところで突風が吹きよく聞こえなかった。なんて言ったのだろう?




