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五十二戦目

「ああ。また行き止まりか。」

「本当ね。」


俺たちは行き詰まっていた。

簡単に行ってこのフロアから出られない。


空は見えてるのに。巨大なブロック塀に囲まれて外に出られない。

ブロック塀をよじ登ろうにも結界が張られてて外に出られない仕組みになっている。

そして室内に入るための扉がない。


疲労もそうなのだが度重なる戦闘により、ダメージも重なっている。

あれ?回復薬持ってきてなかったっけ?

そう思いポーチの中身を確認すると、出てくるのは割れたペットボトルの数々。

見事に全滅だった。


先程の水流で、いろんな場所にぶつけペットボトルが破損。中の回復薬が全て水に流されていた。


そんな状況で、敵と戦いながら。3時間も彷徨っていた。


もう疲れを通り越してヘロヘロだ。


本来ここはイルカショウをする場所。こんな袋小路なのは何かある筈だ。

思った矢先の事だった。


「エムル!!なんかレバーあったよ!!」


綾香が叫ぶ。


「レバー!?食糧か!?」

「違う!!装置の方。」

「引いてくれ!」

「オッケー!!」


綾香はレバーを引く。

すると


ゴゴゴゴゴォォォ


勢いよく水が流れていく。


その水槽内の底。側面にドアみたいなのが見える。


誰だこのダンジョンに謎解き要素を加えたやつは。

作った奴絶対ゲーマーだ。


「これで次のステージ行けるね。」

「綾香偉いぞ。ナイスだ。」

「次も頑張るよ。」


水が抜けるまで1時間ぐらい待つ。

完全に水が無くなった事を確認した。

よし、行ける!!


「危険がないか俺が様子見る。少し待っててくれ。」

「わかった。気をつけてね。」


俺は高さ4、5メートルほどの水槽の中に飛び降りる。

パーカー自体にオートシールドの効果がついてるため着地ダメージは入らない筈だが。


(この馬鹿!!罠に無防備に飛び込む奴があるか!!)


脳裏に響く子どもの声。

綾香のリュックから何かが飛び出した。


自由落下する俺より早いスピードで俺に迫る。

俺の首根っこを掴まれた。空いたもう片方の手と足で壁に爪を突き立てて、止まる。


壁に完全に宙吊り状態だった。


「アルちゃんか!?」

「今までエリシアに罠の位置教えて貰ってたよね。そうゆうとこ人任せにしてると、いつか死ぬよ。現に、着地すると、激しい水流に巻き込まれて、一生浮いてこない罠が設置されてたんだから。」


嫌がらせのように凶悪な罠だな。


「ありがとう。助かった。」

「また魔力集め直しだよ。今回は貸しだからね。得武のお兄さん。」


俺は、その罠を回収したい欲に駆られたが。

エリシアがそばにいないので、お借りしているアイテムボックスのスキルが外れてる。

使用不可だ。

回収不可なのだ。


今までだったら発動したトラップごと荒技でアイテムボックスにしまっていたのだが。


エリシアがいないとこんなに苦労するとは。

エリシアには感謝だな。


「大丈夫〜〜!?」


綾香の声が響く。


「地面に凶悪な罠が設置されてたらしいんだ。アルちゃんのおかげで発動させずに済んだ!!」

「だから注意してって言ったでしょう!!アルちゃんありがとう!!」

「……。」


アルちゃん、返事がない。と思ったら顔を真っ赤にして照れていた。


アルちゃんは、床に付かないように壁伝いに移動。扉の側に接近。

綾香は心配そうにこちらを見つめていた。


アルちゃんにぶら下がりながら俺は扉を開け、部屋の中に入る。



「アルちゃん、綾香がダイブいたら、その体制でキャッチ出来るか?」

「勿論出来るぞ。」

「やってくれ」


そこで、綾香から声がかかる。


「エムル!アルちゃん!!2人とも大丈夫!?」

「俺達は大丈夫だ!安心してくれ!!」




「綾香ちゃん、僕の真上に来て。綾香ちゃんを受け止めるから安心して飛び込んで来ていいよ!!」

「私、重たいよ!!大丈夫!?」

「そんな訳ないよ。僕は大丈夫だから。」


アルちゃん。めっちゃ尻尾振ってる。

俺と態度が違うように見えるのは気のせいなのだろうか?


心配そうにキョロキョロと周囲を見渡す綾香。

ダイブ!!

目を閉じていた。


片手で軽々とキャッチしてみせるアルちゃん。


「ありがとう。アルちゃん。」

「偉いでしょう。もっと褒めて〜。」


ゆっくりと扉へ誘導、アルちゃんから俺に綾香を受け取った


「魔力が足りないよ。もう時間みたいだ。バイバイ。」


アルちゃんが光の粒子になり消える。

具現化の時間が終了した。


とはいえ、霊体では存在するので、音沙汰も無くリュックへ戻り寝るのであった。



俺と綾香の降り立った次のステージはお土産売り場だった。

それもやけに広いスペースでショップ店員がいる。


商品棚が所狭しと並んでいる。

ぬいぐるみ、キーフォルダー等だ。


「なんでダンジョンの中にショップ店員がいるの?」


綾香の純粋なツッコミ。


「怪しいな。」


俺達は武器を構えながら近づいた。


「いらっしゃいませ。本日はどのような御用件でしょうか?」

「ここで何してるんだ?」

「受付をしてます。キイチ様とネネ様の仲間に入りたいのですよね。それならここにサインをお願いします。」

「キイチ?ネネ?誰だそれ。ダンジョンマスターか?」

「そうですよ。数日前に流星のように現れた新しい主人です。」


もしかして、新しい主人って人間?

ダンジョンクリアされたって事だよな。


「会ってみたいな。」

「それはサインしてからでお願いします。」


サインって、なんか嫌な予感しかしない。


「これ、野崎先生も持ってた主従契約書じゃない?」

「なんだそれ。」

「署名するだけで、野崎先生の能力の一部を使う事が出来るだったっけな。でも、書面、全て読まないと、知らず知らずに不平等な契約になってしまうって聞いた事がある。」

「誰に?」

「ライラさんだっけ?」


綾香と話した結果、サインは危険と判断した。


「サインは無理だ。」


「じゃあ魔獣達の餌になりたいのか!」


「極端だな。せめて出口に案内とかないのか?」


「出口なぞそもそも存在しない。出たら我々の存在が外へ漏れてしまう。お前達はもう、死あるのみ!!」


ショップ店員さん、すごい犬歯だった。

売り場のある、ぬいぐるみが全て動き出し、巨大化。

みんな翼の生えた吸血鬼の姿をとる。


「タウント!!」


綾香が魔物を引きつけた!!

10体全ての吸血鬼のモンスターが綾香に集中した。


「なるほど。防御力の高いジョブの人間かしら。モンスターの意識を自分に集中させるスキルって事ね。でもこれならどうかしら!!」


何!綾香のタウントが効いてない!?

受付嬢は冷静に分析を始め、早々に手を打って来た。

地面から出てくるゾンビ、その数50。

どれもレベル100を越えている。

あの受付嬢が召喚してるのだろうか。


乱戦になる前に俺はボウガンを手に取り速射10本。

受付嬢の頭が吹っ飛ぶのを確認した。

でも安心は出来ない。


「こんなにいっぱい引き付けられない!!」

「引き付けなくていい!!俺は大丈夫だ!綾香、自分の事を対処しろ!!」


突然沸いたゾンビにより、四方八方を取り囲まれる。

召喚者を倒したところでコイツらは消えない。

俺も綾香も白兵戦を余儀なくされる。


俺は壁に背をつけ、向かってくる敵を剣で攻撃。

距離があるなら、剣を、形状変化させて槍に。

更に距離があるのなら、ボウガンで迎撃する。


一体一体冷静に対処する。


でも凄いのは綾香だ。

俺が冷静に対応出来るのは9割がたモンスターの敵意が綾香に向いている。

タウントの凄いところだ。

更に言うなら綾香は咲羅を抱きながら、スキルを展開している!!


「盾スキル解放!!なんでもいいから守って!!」


盾の形状が変化する。

パンが焼けて膨れ上がるように巨大化。綾香達を包み込む。

球体になったかと思えば、なんか横にブレードが生えて来る。

急に回転し始めた!!

飛び出したブレードがバッサリと敵を両断していく。


綾香、凄いな。


盾スキルはそれだけじゃない。

俺にも何かしらのスキルの効果が乗った。

防御力アップしているのは間違いないが。


ここまで白兵戦が続くとオートシールドを突破して被弾してしまう。

それでも全然ダメージを受けないのはやはり防御力アップのおかげか?

いやでも、モンスターに噛みつかれたり、腕を引っ張られてしまっている。HPに1ミリの変化も無いのは明らかにおかしい。


疑問に思いながらゾンビの首を斬り飛ばす。


(得武の馬鹿野郎!!綾香のステータス画面をよく見てみろ!!)


アルちゃんに怒鳴られ、ステータス画面を開いて見る。

すると、おかしな事が起こった。

俺がダメージ受けると。綾香のHPが少しずつだが減る。


そういえば、騎士のスキルにダメージを肩代わりするスキルがあると聞いた事がある。

まさにそれだ。


「綾香!!今すぐスキルを解け!!」


乱戦で聞こえやしない。いや、綾香の性格なら聞こえないふりをしているのか?

今は微量でしか減っていかないHPだが、これが1時間、2時間続いたらどうなる?

いずれ死ぬ。

綾香から間違いなく死ぬ!!


「得武!もうダメージ食らうな!!」

「分かってる!!分かってるけど!!」


敵が多い!!敵がしぶとい!!どうにもできない。

毒を出すか?

いや、毒はアイテムボックスの中だ。

一旦魔法禁止の罠を解除しないといけない。


「精霊よ!!我に力を!!」


錬金術でダンジョンの壁を素材に矢を6本製作。

精霊から矢に速度強化のエンチャントに貫通も付与。ついでに爆砕と追尾も。ボウガン6連射した!!


ゾンビ6体の心臓を射抜く。

更に貫通、吸血鬼6体の頭に被弾。刺さってそのまま爆発した。

これで12体。俺が倒しただけでも17体。


綾香も結構倒してるからそろそろ戦闘も終わるだろう。

館内放送のようにスピーカーから声が響いた。


『あらお疲れ様です。ゾンビ狩り楽しいですか?それなら50体追加しときます。後、ゾンビって生き返るって知ってましたか?』


殺したはずの受付嬢の声だった。

地面から更に追加でゾンビが現れる。

首のないゾンビも立ち上がる。


まさに混沌。


モンスターなら核があるはず。

それを壊せばゾンビといえども死ぬはず。

効率よく倒せばまだ勝機はある!!


そんな希望を打ち消すかのようにアナウンスは続く。


『皆さん、核をお探しでしょうか?残念ながらありませんよ。モンスターじゃないですから。人間です。人間にちょっと力を与えただけなんです。』


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