四十九戦目
グラウンドに集合した。
○○高校魔術師部隊が予行演習を見せてもらえる事になった。
帰って来た10名プラス20名の部隊が三列になって並んだ。
指揮棒持った司令官が1人、前列中心にいる。
一見吹奏楽部の行進に見えるが。
「第一列用意!!放て!!第二列、準備!!」
「ヤァぁぁあぁぁあ!!」
最前列十人が、杖を高らかに掲げる。
放ったのは防壁か、透明な壁が出来る。
瞬時に最前列から最後尾に回る。
「第二列放て!!大三列準備!!」
次の最前列が杖を高らかに掲げるとーーーー
すごい熱量だった。
巨大な炎の竜巻が巻き起こる。
そして最前列から最後尾へと回る。
「第三列放て!!総員準備!!」
第三列目はまた守りの魔術だった。
透明な壁を補強するように土の壁が出来る。
第三列目は動かない。
「一斉放火!!!」
指揮者の号令と共に、全員が高らかに杖を上空に掲げた。
周囲に悪雲が立ち込める。
その雲には校門を吹き飛ばす超高火力魔法が撃ち込められた!!
あたり一面真っ白になった!!
10連続の落雷だった!!
「我が校の実力です!!」
俺は思わず拍手をしてしまう。
「圧巻の大迫力です。みんな、レベルはいくつ?」
「レベル35の集まりです。」
「それでこの火力は凄い!!」
いや、ロマンを感じた。
だが、問題は山積みだ、
「そうでしょう!!」
皆自慢げだ。
確かに味方を巻き込まない魔法ってのは便利だ。
でも、勿体ない!!
「魔法だけだと効率は悪いよ。この魔法使う時、目の前に敵しかいない状況を想定して魔法撃ってるでしょう。魔物に物理は効かないけど、魔法と物理を混ぜたら凄く効くんだ。例えば地面の土を掘り起こして、竜巻の中に組み込んでしまうとか。」
シーンとしている。実際ピンと来ないのか、舐められてるのか、実力を見せた方が早そうだ。
俺は一歩前に出る。
精霊よ集え!!
アイテムボックスオープン!!
「だから俺は、敵味方識別無しの魔法も場合によってはオススメする。実際やってみるよ。エアロストーム!!」
ただの竜巻を発生させた。
アイテムボックスから地面から吸い上げた土と炎を噴くだけの罠を混ぜておく。
ただの竜巻が、フレアトルネードとなり、さらに巻き上げた土砂が熱で溶けて溶岩になる。
物理の力を借りて、同等以上の術を発生させる。
リーダーが呆然と、独り言のようにつぶやいた。
「ジョブレベル6だよね?なのにこの火力?」
「失礼な!!さっきの戦闘でレベル10になったんだぞ。」
「いやいや、レベル10でもおかしな火力ですし、そもそも一人でやる術じゃないでしょう!!」
リーダーのツッコミ。
その後、魔術師部隊の皆から拍手が巻き起こったのだった。
アイテムとか混ぜたからそんなおかしな話じゃないだろし、MPたくさん込めてるし、精霊からも魔術補佐入ってるからこれだけの威力が叩き出せる。
まぁ、MPをいくら使ってもINTが低ければ威力は低い為、精霊からの補佐は本当にありがたいものなのだ。
精霊に感謝する。
問題に関しては威力問題だけではない。俺の問題提議は続く。
「後、陣形を崩された時の闘い方とか、魔力が切れた時どうするのか?」
「陣形崩されたら、終わりなので乱戦になる時はなるべく固まって円を作り、シールドを貼ります。魔力切れたら終わりなので、一人10本ぐらい魔力回復薬を持ってます。」
「魔力回復薬?」
「これです。」
俺も作った事がある。
エーテルって奴だ。
けど、なんか濁って見える。
質があまり良くないんじゃないかな。
「これ、君たちが作ったの?」
「いえ、理科室に、調合特化部隊がいるのでそちらに任せてます。」
「自分で作れないの?」
「作れないです。」
「そうなんだ!!簡単なのに。」
「いや、難しいですよ。私10個生成したら全て消し炭にする自信あります。」
「消し炭って。」
「それぐらい難しいですよ。」
普通ってそんなもんなのかな?
「じゃあ、陣形崩れた時の対策とかも考えないとだね。俺は、いざとなったらお札使ってる。」
「お札?」
「神木という名の魔力伝導率の高い素材を使った紙です。和紙に近い手触りだね。これに、使いたい魔法の魔法陣を墨汁で描き、暇な時、魔力を込める。」
魔術師部隊の皆が固唾を飲んで見守っている。
「胸ポケに入れてたら、非常時に勝手に発動します。あらかじめ魔力を込めてるので、魔力消費は無しです。」
「おお!!凄い!!」
「100枚あるからみんなで分けて。後、そのエーテルはあまり意味ないから、こっちのエーテル使ってよ。」
俺はアイテムボックスから1番ランクの低いエーテルを取り出す。
「エメラルドグリーン!!」
「濁りなし!この純度何!?」
「さ、最高品質だわ!!」
大喜びだった。
一応、持ってるだけで、オートシステムで使用されるのだが、黙っておこう。
俺は、理科室に向かった。
「こんにちは。あれ?だんご汁手伝ってくれた人。」
びっくりしたようにコチラを見て、視線を逸らす女子学生。
「そうです。美味しいご飯、ありがとうございます。」
と、モジモジと俺から距離を取る。
あれ?なんか避けられてる?
「ちょっと、咲羅さんのお兄さん。うちの友達イジメないで貰えます?」
横から声がした。ちょっと気の強そうな子がまた1人。
「済まない。って、君もだんご汁の時いた。」
「そうです。私達戦闘出来ないんで、取って来て貰った素材を主に加工してます。」
「咲羅の友達?」
微妙な間があった。
「友達というか。2日目に、モンスターの脅威から救ってくれた。」
「なるほど。妹がお世話になりました。」
「いや、お世話になったのこっちだから、最後まで話聞いて!?」
1人は部屋の隅っこまで行ってしまった。
「君たち2人で調合してるの?」
「ええ。」
「私の名前は山本衣瑠夏モノマネ師です。そちらの隅っこにいる子は町田華毱染物師です。こんなジョブじゃ戦闘無理です!!」
なんか勝手にジョブ暴露して、非戦闘宣言してる。
「君たちの調合なんだけど、素材をダメにしてる!!」
「突然現れてなんて事いうのよ!!兄妹揃って失礼ね!!」
まぁ、突然現れてダメ出しされたら怒るのも当然だ。
だけど、言わないといけない事。より良い薬品の為、心を鬼にして言おう。
「先程、魔術部隊の持ってたエーテルを見たんだけど、あれじゃ効果出ないよね。」
女子生徒、もうかおが真っ赤だった。
「これでも野崎先生からは良い出来って褒められてるんです!!」
「まぁ、これを見てくれ。」
アイテムボックスからエーテルを取り出す。
それを見て、表情が一転する。
「何これ!!やっばっ!!別次元だ。」
「そう。この品質を目指してくれ。」
「多分、元々の素材の品質のせいよ。」
現実逃避を始めてる。
「いや、俺の作ったエーテルもそこに置いてあるのと同じ品質の魔草だぞ。品質はむしろ良い部類に入ると思うけど。」
「衣瑠夏ちゃん。素材集めグループは精鋭部隊よ緒方君達の鑑定待ちグループがちゃんと選んで持って来てるんだから素材のせいにしちゃダメ。」
「ごめん。」
素材集めグループなんていたんだ。
というか、鑑定待ち、そんなにいるんだ。
「準備はいいか?今からやってみせるぞ。」
「はい。」
「熱を加え過ぎたらダメ。合わせるタイミングも大事。ちゃんと濾過を忘れない。その工程を素早く一気にこなす!!」
「おお!!早っ!!凄い。エメラルドグリーン!!私!やってみる!!」
強気な女の子、衣瑠夏ちゃんの挑戦。
同じ魔草、魔溶土、聖水を合成。
俺のやってる事を見事に再現してしまった。
「出来るじゃないか!!」
「見よ!!モノマネ師の力!!ってあれ?力が抜ける。気持ち悪いぃぃ。」
「MP切れだな。作ったエーテルを飲め。」
一口飲むと元気になった。
「凄い効き目。」
お茶を飲んだかのように安心した表情を見せた。
「私もやってみる。」
町田さんも、やってみるが、上手くいかない。
俺の時間の倍はかかってる。
「あれ?少しは良くなったと思ったんだけど。」
「煮詰め過ぎ。後、もっと手早く。」
ネクストチャレンジ。
「はい。これは?」
「濾過が足りない。」
サードチャレンジ。
「はい!これは?」
「だいぶ良くなった。後、もっと一瞬で作れれば最高品質になる」
「頭も魔力も追いつかないです。」
「でも短期間で凄い!!」
あまりにも町田華毬を誉めるから、山本衣瑠夏が怒ってる。
「私は一発よ。褒めてよ。」
突然言われておれはキョトンとしてると町田さんが代弁する。
「スキル使ったでしょ。反則です。」
「スキルは反則なんだね。ってそんな訳あるかい!!」
衣瑠夏は町田さんにデコピンをした。
2人は笑った。
呼吸を落ち着けて、思い出したように町田さんは声を出す。
「新子君のその装備、どうなってるんですか!ただの服に見えるのにとても強そうです。」
「これはな。金属のミスリルを糸状にまで細く加工してパーカーやジーパンを作ってるんだ。特殊なスキルがいるぞ。」
「やりたい!!」
「まずは金属を糸にするのに凄い魔力を持っていかれるから、ブロンズインゴットから加工しよう。」
一通りやり方を見せる。
錬金術でブロンズインゴットを分解、糸に加工。
そして、パーカーに加工。
そしてダークメタルで染色。
「おお!!凄い。普段着が防具に。」
「まるで防弾チョッキだね。」
2人はそれぞれ驚きの声を上げる。
「これをやってみてほしい。」
いうと、最初に名乗りをあげるのは衣瑠夏さんの方だった。
「やってみるわ。モノマネ師発動!!」
一瞬で俺と全く同じ事をやってのける。
そしてエーテルをごくりと飲み干す。
「モノマネ師、強いな。」
「エーテルとの相性も抜群ね。」
「エーテル飲み過ぎて死ぬなよ。」
「新子君。どんどん加工して見せてよ。10個まで登録出来るんだから。全て吸収してやる!!」
モノマネ師って強くないか?別に俺の錬金術を真似しなくても、
「いや、それ、野崎先生の魔法モノマネしたらとんでもない事出来るだろ。何が非戦闘員だよ。」
「嫌よ。敵嫌い。」
なんか深い理由がありそうだ。
今日は深く突っ込むのは辞めておこう。
俺は、回復薬スーパー、万能薬、エリクサー、ブロンズソード、アイアンソード、リモート爆弾、痺れナイフ、眠りナイフ、魔法のお札の作り方を教え、教室を後にした。
その日は夜も更けて来たので綾香とエリシアと一緒に学校を出る。
アルちゃんも咲羅も気持ちよさそうに眠っている。
「エムル、どうしたの?もう帰るでしょう?」
「たった数日で見知った町がめちゃくちゃになってしまったなと思ってな。モンスターが居なくなったとはいえ復活には時間がかかる。だから綾香は先に帰ってくれ。」
その言葉にエリシアは反応する。
「まさか、瓦礫を撤去して行こうっていうの?」
「ああ。そうした方がいいと思うんだ。」
「無茶苦茶よ。キリがないわ。実際、工事が始まってる地域があるぐらいだから違う人に任せておいていいと思うわ。」
言い切るエリシア。それに同意する綾香。
「エムルの負担が半端ないよ。辞めた方がいい。」
「それって、撤去だけで何兆円かかるんだろうな。俺は早く見知った町が元に戻って欲しい。魔力が続く限り撤去して行こうと思う。」
「だってさ綾香。どうする?」
「分かった。一緒に付き合うよ。変なところこだわるんだから。」
「あなた達本当、お人好しね。ボランティアもいいとこだわ。」
俺たちは一通り学校の周辺を綺麗にした。
学校の周辺は割と倒壊が酷い区域だか、西に進むにつれて被害は少ない。
整備して行く途中、勢い余って築100年越えの家屋を分解しそうになって、家主と思いっきり目が合った。
後で綾香にめちゃくちゃ怒られたのである。
南に向かえば駅がある。
そこのショッピングモールは被害無しで本当に良かった。
駅の線路沿いを歩いて帰る。
線路のレールがめちゃくちゃじゃないか。
整備しながら歩いて行く。
「エムルって本当MP無限よね。」
「MP 0とMP全快を繰り返したら嫌でも上がるぞ。」
エリシアと出会った時の事を思い出す。
無我夢中で錬金術に走っていたらいつのまにかMPが増えていて。
「いや、私はいいわ。」
子どもの頃から良く歩いていた線路沿いの道。
見知った家屋はもうない。
何故突然モンスターが溢れたのかは知らないが、もう過去には戻れない。
それはダンジョンを無くせば良いのか。
もし、ダンジョンを産み出す術等があるのなら根本的にその技術者をどうにかしなければならない。




