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四十八戦目

エリシアに呼ばれ、駆けつけたときにはもうすでに戦闘が終わっていた。


サイクロプスの血の海の上で何故か昼寝をしている咲羅。

抱き抱えるとその血液がべったり服に付着する。

なんか夢に出て来そうだ。


気持ちを切り替えて野崎先生にお礼を言う。


「咲羅を助けていただき、本当にありがとうございました。」


「私もすみません。新子君が心配のあまり、注意がそっちに行き過ぎていて咲羅さんの危険に気がつくのが遅れました。」


「いえいえ、俺が本来しっかり守っておくべきでした。」


帰りの道中は雰囲気が暗かった。


戦闘に参加させたエリシアの責任でもあるが、咲羅も自己責任だと言い切って戦闘参加している。

咲羅は後でお説教だ。


エリシアには非はないと言うのに、当の本人は酷く反省して落ち込みながら歩いている。

アルちゃんは遊び疲れて綾香の背中に。

咲羅は進化中。俺の胸ポケットで寝ている。


無言の空間に耐えかねた野崎先生が思い出したように話題を振ってくる。


「今回の件で私も考えを改めました。新子さんは強いです。特に武器と防具は本当凄いですね。確かにその装備ならレベル低くても関係ないですよね。無双状態です。どこのダンジョンにそんな強い装備が落ちてたんです?」


なんの気なしに聞いてきたのだが、見当違いな事を聞いている。


「いえ、これは俺が作ったんです。」


「作った?つまりハンドメイド!?国宝級を!?」


「またまた国宝級なんて、そんなお立てても何も出ないですよ。誰でも魔力が有れば錬金術出来るでしょう?素材が有れば出来るでしょう。」


「出来ないです。そもそもミスリルの加工は特殊な鍛治職人しか無理な話です。ミスリルって錬金術の限界点とも言われて、加工はもちろん10パーセント混ぜるだけでも砕ける代物です。それを純度90%のミスリルの剣を錬金術で作るってもうデタラメじゃないですか!!」


確かに錬金術でこの純度のミスリルの剣を作ろうと思ったらかなりの魔力を消費したり耐久性が脆くなりやすい。


これだけのミスリルを使っても安定した品質を維持出来たのはゾアルの剣からのレベルアップ、その後の進化のお陰でもある。


「でも嘘じゃないですからね。」


「君のジョブは錬金王だろう。絶対そうだ。生産職の神クラス持ちなら納得いく。」


「違います。我流で極めました。」


「なんでですか!!スキル無しでどう極めたらそんなデタラメな錬金術出来るんですか!!」


「俺も、それだけ必死だったんです。」


熱くなっていた野崎先生が冷静になる。

俺の言葉を飲み込むようにうなづき、ゆっくり言葉を返した。


「そうですか。疑ってすみません。帰ったら、その、私にも装備作って欲しいです。」


どうやら信じてもらえたようだ。


「咲羅を助けてくれたお礼になんでも作ります。」


「私、装備が一着しかないんで、洗濯が大変なんですよね。助かります。」


あれ、待てよ。洗濯が大変だから同じ性能の服が二着あるといいなって話か。

それって俺の武器、防具が信用された訳ではないんだよね。

複雑な気持ちだな。まぁ、スルーしておこうか。


「話変えますけど、ライラさんから何故咲羅がこのような姿になったのか連絡ありませんか?」


「咲羅さんの死因ですか?それがまだ聞けてないんです。いつも連絡を取り合うとき、念話のような魔法で会話するのですが、双方からの魔力供給で初めて周波数が合うといいますか。こちらが念を送っているのは向こうも分かってはいるのですが作戦実行中とかで魔力を返して貰えず繋がらなかったんです。落ち着いたら向こうから念話送ってくれると思うのですが、今度でも良いですか?」


「今度で大丈夫です。よろしくお願いします。」


歩きながら、もう夕暮れ時になっていた。


綾香は川をぼんやりと見ていた。

ボスの去り、橋の掛かった川を振り返りながら黄昏れてるように見える。俺は声を掛ける。


「綾香、どうした?」

「昔さ、と言っても去年までこの川で花火上がってたでしょう。」

「ああ。そうだな。」


8月の行事。年一回、打ち上げ花火が上がってた。

小学生時代の思い出。幼い頃には親に連れられてここに来て、俺、咲羅、綾香と3人で花火を見た。


中学に上がってからは、部活生同士で集まったり、いろいろバラバラな時があったけど、花火終わった後、なんだかんだ言って、ファミレスのジョイフ○に集まってこの3人で食事してたっけ?


「街ボロボロだし、ここでは花火見れないのかなって思ってたらなんか悲しくなっちゃって。」


町が復興するまで当分の間花火は無理だろう。

早くて来年。でもダンジョンが、モンスターが来年ぐらいに無くなっているのだろうか?



「大丈夫だよ。モンスターがいなくなれば街は元通りになる。俺がなんとかする。」


「本当に?なんとかするって、咲羅ちゃんもちゃんと元の人間に戻すんだよ。街も元通りにして咲羅ちゃんもエムルがどうにかするの?どうやって?」


「その為に情報集めたりしてるんだろ?絶対に元通りになる。大丈夫だ。」


「エムル、嘘ついたら嫌だよ。絶対にまた3人で花火見ようね。」


泣きそうな顔が笑顔になった。

俺と綾香、手を繋いでゆっくり歩き出す。

それを見ていた人がいた。


「2人は付き合ってるんですか!?」


野崎先生が優しく笑ってる。俺の心臓が跳ね上がる。


いや、状況的にそう見えてもおかしくないけど!!待って勘違いだから!!


「野崎先生、そんなんじゃありません!ただの幼馴染です!!」

「あのぅ。野崎先生、幼馴染ならではの事で!その…。」


声が重なって何がなんだか分からない事なっていた。

俺も動揺。綾香はもじもじとうつむく。


「手を握って仲良しですね。見せつけられて私も顔から火を吹きそうです。」


いや、誤解だって!!


「あっ!!その!!これは!!」

「えっ!そんなはずは!あれ!?」


手を同時に離す。そしてお互い明後日の方向を見て


「綾香、ごめん。」

「エムル、ごめん。」


不意に謝罪が重なるのであった。


「いちゃついてないで早く帰りますよ。2人とも。」


野崎先生が俺たちを呼ぶ。


「すみません。」


誤解は晴れそうになかった。


「2人とも、あの河童の言ってた事はどう捉えてるんです?」


突然に野崎先生から打ち明けられた。

いやきっと、この話題を持ちかけるタイミングを伺っていたのだろう。


「あのボスは元々幽霊で、何者かにモンスターにされたって事ですよね。」


咄嗟に俺は、話を要約する。

野崎先生は続ける。


「そうですよ。私はこう見えて異世界にいました。」

「ええ。綾香より伺っております。」

「異世界にはグールパウダーといって、人を魔物にする粉があります。ですが、幽霊を魔物にするアイテムや魔法なんて聞いた事ありません。」


野崎先生の発言にエリシアは初めてポツリ、「死人遣い(ネクロマンサー)」と呟いた。

当然野崎先生には聞こえないので俺が代弁。


「ネクロマンサーってご存知ですか!?」


「なんと!!その可能性は考えていなかった!!つまり新子君の解釈は、何千人のネクロマンサー達が日本各地で起こしたテロだと言いたいのですか!!」


「いや、先生、そこまで飛躍しないで下さい。俺、異世界人が何千人もいたら正直気持ち悪いです。」


「私達がいた異世界では、ネクロマンサーは10万人に1人ぐらいの少数でした。その適正がある人でもあまりの魔力消費の高さに挫折する人も多数存在します。レアな職業っていっていいでしょう。私は違う路線で考えてます。」


「それはなんですか?」


「神々の暴動。まず、この街では港に変な塔、いわゆるダンジョンが出現した事が事の発端と言えます。私たちの仲間からの証言でも、何者かが異世界のダンジョンを地球に作ったと証言があります。ダンジョンを作成出来るのは神、もしくは、錬金術を極めた錬金王しか無理です。錬金王でも日本全国に一斉にダンジョンを出現させるのは無理です。」


また出てきた錬金王。でも錬金王ってダンジョン作成出来るんだ。

もし、俺が仮に錬金王のジョブ持ちだったら変な疑いを持たれていた事だろう。持ってなくて良かった。


話に戻ろう。疑問をぶつける。


「その仲間は神を見たって事ですか?神ならダンジョン作成するその目的は?」


「知りません。あくまで憶測です。ですが、あまりにもシステム化され過ぎてます。魔物を倒すと経験値を取得して異世界と同じようにレベルが上がる。そんなの錬金王でも異世界のシステムを地球に適応させるなんて無理。考えられない事じゃないですか。」


「なるほど。」


「すみません、情報が少なくて悪魔で憶測でものを言ってしまいました。ですが、モンスターの素材が幽霊だって事は当然恐ろしい事です。」


「つまり先生は何を言いたいのです?」


「もし、名だたる戦国武将達がモンスター化していたら、軍を為していたら、太刀打ち出来る人なんているんですか?」


それは第二次戦国時代の出来上がり。

現代科学とモンスター化した武人達の衝突が始まる予感。


「今、鳥肌立ちました。マジで怖いです。」


「あくまで可能性の話です。でも気をつけて下さいね。」


野崎先生に忠告された。


「はい。」


会話が一旦終わるのを見て綾香は口を挟む。


「私と咲羅ちゃん、初日に出会ったモンスターの事。レベル20ほどの鬼だったんだけど、言葉を話したの。あの時にピンと来ればよかった。同じレベル20の鬼でも武器の扱い方とか特徴違うでしょう?みんな落武者だったんだ。」


戦国時代の武人がモンスターにいたという裏付けを聞かされてしまった。

でもこればかりは身に覚えがある。


「確かに、癖とかあるよな。」


同じモンスターにも戦い方にさまざまな癖があるのだ。


「野崎先生の話から纏めるに、道理はともかく、ダンジョンが幽霊集めてモンスターを産み出してるから、一刻も早くダンジョンを潰して回らないとだよね。」


「そうなるよな。つまりやる事は咲羅がやろうとしてた事と変わらないって事だよな。」


「そうね。頑張って、日本にダンジョンゼロ化計画進めていこう。」


綾香がそう纏めるとエリシアが待ったをかける。


「待って、あの先生の話が本当なら、神かどうかは知らないけど、そのダンジョン作成者を潰さない事には、根絶やしにしたところで新しいダンジョンが次々と出来てしまうわよ。」


「確かに。」


俺も綾香も反論は出来ない。


「落ち込まないで、ごめんごめん。でもほら、潰してるうちにダンジョン作成者に出会えるかもしれないね。」


「そうだよね。」


俺も綾香もうなづいた。



話してるともう日は暮れて夜が来た。

いつの間にこんなに歩いたのだろうか、学校は目の前だった。



突然に野崎先生は悲鳴を上げた!!


「な、な、な!!なんですかこれは!!!学校の前になんでこんな農園が!!?」


野崎先生の視線の先には雑草なのか食糧なのかよくわからないぐらいに青々と生い茂った緑の一角スペース。

俺の自信作、新子農園がそこにあった。


昨日までここは瓦礫の山だった。

それが、今日、広い敷地に、沢山の収穫物が実った農園が出来ていた。


ラウダ達と一緒にいるときに開発したものを今回使わせてもらった。

最高級の土と魔力を込めた土を混ぜ、早く良いものが成る品種の種を植えた。

逞しい生命力と繁殖力で暴れに暴れてる。

ネギなんて、背丈を超え、竹かっ!!ってぐらいに成長している。トマトなんて、一株にどれだけ実をつけるのってぐらい実を結ぶ。それもサイズがお化け級だ。

ジャングルと化していた。


それも、じっくり見たら目に見える速度で植物が成長し続けている。


「俺が4時間前に作ったんです。食糧問題が深刻だったじゃないですか。」


「どう考えても1人の力じゃ1日2日程度じゃ畑に出来ない規模ですよね。しかも、たった4時間程度で収穫出来る速度で成長する種ってどんなマジックですか!!その種ってもう魔物ですよね。生きてますよね!!」


下手したら先生、魔法で滅ぼしてしまいそうだ。

そうなる前に収穫しなければ!!

そう思い立っての行動だった。


「アイテムボックス収納!!またアイテムボックスオープン!!」


畑が一瞬で丸裸に。

それがまた一瞬で種が蒔かれ、水も撒く。


「今の一体何ですか!!アイテムボックス!?異世界でも使える人って限られてるのに!!」


やってしまった!!

絶対俺、怪しまれた。


「先生、この畑を差し上げます。代わりにこのスキルの事は黙ってて下さい。」


「言いませんよ。異世界ではアイテムボックス持ちを巡って戦争が起きた事もあるんです。得武さんも気軽にスキルは使わないように頼みます。でもこの畑は貰います。」


あれ?貰うんだ。


「了解です。では、この畑の説明をします。土が特殊です。種を植えたら普通の種を使っても24時間以内に収穫出来ます。食料問題の足しにして下さい。」


「なんかいろいろ凄い技術が使われてそうですね。ありがとう。さっそく手の空いてる人に管理を任せる事にします。」


「よろしくお願いします!!」


俺たちは学校へ足を運んだ。


「田辺さん、忙しくなる前にあなたにも言っておかないといけない事があります。」


校門をくぐると、野崎先生は思い出したかのように声を掛けた。

その改まった声に綾香はかしこまる。


「な、なんでしょう。」


「あなたは確かに強くなった。敵なんていないって思ってないですか?」


鋭いツッコミにビックリする綾香。

確かに地球において綾香にダメージを与えるような敵に出会っていない。

防御力に関しては無敵のものを持っている。

だが、俺達は一切慢心なんかしていない。

精霊界ゾフでさんざん苦しい目にあっているからだ。


「いえ、私なんかまだまだです。咲羅ちゃんや先生みたいに攻撃力なんて無いですし。防御にしても、受けきれない攻撃なんて一杯あります。」」


「とてもレベル100クラスをワンパンした者の言葉とは思えないですね。」


「でも本当です。」


「それを聞いて少し安心しました。咲羅さんみたいに福岡のダンジョン攻略部隊に入るとか言わないで下さいね。近くの人間が死地に行くのは辛いです。」


「安心して下さい。私戦闘は嫌いなんです。周りの人間が困ってる時だけ盾を広げて守るんです。」


「そうですか。私の杞憂は戦闘に関してだけではありません。異世界冒険した私からの忠告です。あなた達より強い異世界人はいっぱいいますし魔王クラスだって存在します。ダンジョン攻略、モンスター退治に関して決して自分達だけで解決しようとしないでください。もっと私たち大人を頼ってください。」



なんて忠告された。

でも、本当に俺たちを思っての事だと気付いてなんか嬉しかった。


「分かりました。ご心配ありがとうございます。」


「敵はモンスターだけではありません。君たちの不思議な技術を狙う組織とか出てくる事もあります。私達は先生として、また、1人の大人として味方になります。良い意見も出します。悪い大人に利用されないように手を組む相手等、間違えないように頼みます。」


これは綾香に言った言葉でもあるが、俺にも言っている言葉だろう。

身が引き締まる。



俺たちはグラウンドを抜け、校内へと入る。

職員室へ入る。

職員室の中も以前のような様子はない。

まず、校長先生、教頭先生が不在で、いろんな業種の大人達が各々資料をまとめたり機材のチェックをしていた。


入ってすぐだった。


「ご苦労様です野崎先生。」


冬月先生が声を掛ける。


「なんか変化は?」


「不審なダンジョンを発見しました。」


不審なダンジョン!?

ダンジョンはどこも不審だろう。

ツッコミはせずそのまま話を聞く。


「どこですか!?」


「海沿いです。」


「なんだって!?ダンジョン攻略されたエリアじゃないですか!!早く討伐隊を組まないといけません!!せっかく安全エリアとして認定して、一般人を生活圏に戻しているというのに!!」


「待って下さい。討伐隊は組みましたし攻略済みです!!ドンキー6人組が今さっき、ダンジョンボス討伐に成功しました!!」


先生達のやり取りに俺もドキッとしたが、安心した。

ボスを討伐したという事はもうモンスターは出ない。安全だ。


タブレットを取り出しGoogl○マップのようなアプリを出す。

俺も便乗して見せてもらった。

赤い点が私達人間らしいのだが、6人とは言わず、もっとたくさんの点が我が学校に向けて歩を進めていた。


野崎先生は安堵の顔をするが同時に不思議そうな顔もする。


「あのヤンキー達、そんなに強かったのか?レベルも低く、集まったとしても最低ランクのダンジョンボスでも倒せるだけの実力はなかったはずですが。」


「まぁ、咲羅さんの第一弟子みたいなもんですからそれなりには強かったですが。突然強くなったようです。」


「ダンジョンボス攻略出来るレベルにまで!?突然に!?なんかスキルがパワーアップしたとか!?あり得ないです。でも事実なんですよね。」


「もちろん我が校生徒の魔道士部隊の後押しもありながらですが。強い装備が手に入ったようです。快挙です。」


そういえば思い出す。ヤンキー達に絡まれた時の事。

俺が元々の装備を分解してしまい装備を作り直してあげたのだった。

俺の仕業だ!!


「でも一体誰が出撃を許可したのです?ダンジョン攻略なんて少なくとも規定のレベルを満たした人、もしくは自衛隊しか任せられないってみんなで決めたルールがあるじゃないですか!!」


「それは……」


言い淀む冬月先生の後ろにいたリノさんが間に割って入った。


「すみません、私が許可を出しました!!」


「リノさん!!死人が出たらどうしてたんですか!!」


野崎先生の責任追求にリノさんは涙目で食い下がる。


「すぐ行動しなければ住民達に被害が出ます!!私もどうすればいいか分からなかったんです!!先生達が出て行ってすぐの出来事で連絡も繋がらないですし、学校のみんなに意見聞いて、みんなで話会って決めたんです。あのお兄さん達6人組が、命を覚悟して出て行ってくれたんです!!」


明らかに2人はヒートアップしている。

このままでは収拾がつかないのではないかと危惧した瞬間だった。

冬月先生が間に入る。


「野崎先生!!実際死人が出なかったのでいいじゃないですか!!あのヤンキーたちも一応二十歳越えてますし私達教師がそこまで責任負う必要はあるんですか!?リノ。連絡が付かない不具合はすみませんでした。私のレベル不足と魔力の扱いに慣れてない事にあります。」


野崎先生はバツが悪そうにそっぽを向く。

リノさんは涙を拭きながら冬月先生に向き合い、


「勝手な判断で人を動かしてしまいました。死者が出たらと思うと悔やんでも悔やみ切れません。」


と深々と頭を下げたのだった。


「僕からもすみません。責任とかいろいろ考えたら頭に血が昇りました。次からは人を動かす前にちゃんと報告し下さいね。」


「野崎先生、すみません。」


どうやら仲直りしたようだ。


そこへ、


「失礼します。魔術師部隊、戻りました!!」


合唱部かな?そう勘違いしてしまいそうなメンバーだった。

女子生徒10人が元気よく扉から顔を出す。


その後ろからドスの効かせた重低音が聞こえる。


「やさぐれ特攻隊、帰りやした!!」


変に髪をかきあげたり、顔を飛ばしたり各々ドヤ顔で登場するヤンキー6人組。

俺と目が会い、俺は苦笑い。


「あ!兄貴ぃぃい!!いたんですか!!」


決めポーズからの直立不動。

綺麗に整列し始めた。


ヤンキー達の反応に先生達、綾香、女生徒達から「兄貴?」とか「兄貴って呼ばせてるの!?」とか、様々な疑問な視線が俺を突き刺す。


辞めて、俺も好きで兄貴って呼ばれてる訳じゃないし。

さて、どうしたらヤンキーたちとこの関係終わらせられるのだろうか?

そして皆にどう説明しようか。


「兄貴いぃ!!この武器やばいです!!」

「なんですか!!なんで武器防具のレベルが上がるんすか!!どんなシステムになってるんすか!!」


弁明させないほど、ヤンキー達が俺に質問攻めしてくる。

それを聞いてピンと来た綾香がジト目で俺を見る。


「ちょっとお借りします!!!」


手を引っ張られ、職員室の外に連れ出される。

何故かエリシアも一緒に。


「異世界の技術が外部に漏れると悪いから、極力技術提供は控えめにしようと言ってなかったかな?お二人さん。」


「待て、これには理由が。」


エリシアにも鋭い視線が。


「じぃー」

「綾香、これはその。得武が錬金術使うからつい癖で、魂継ぎを……。」


「ついじゃないって!!今更武器防具返してなんて言えないし、我が校の戦力、インフラ確定だよ。悪用されたらどうするの!!」


「すみません。」

「ごめんなさい。」


謝罪が重なる。


「次は気をつけてね。」


綾香が扉をキープしていた。

握力を弱めると職員室の扉が開け放たれた。

集まってくる野郎ども。


「兄貴。レベル10離れた相手にワンパンで倒せるんです。なんですかこの武器は!!」

「俺なんて、心臓にサソリの尻尾が刺さって。なのにノーダメージだったんだ。」

「オートバリアがあるからな。状態異常にならなくて良かったな。」



野郎どもが喜んでいる。

防具のお陰で死ななかっただけでも良かった。


「もう兄貴、最高です!!」


「えっと、おまえ達の事はわかったから、後ろの女子部隊って何してたんだ?一緒にダンジョン潜ってたんだろ?魔術部隊って言ってたよな。」


「えっとそれは……」


ヤンキー達が説明しかけて、その後ろから女生徒達が声を上げた。


「実際見た方が早いかも知れないわ。私達、今からグラウンドで集団演習するの。一緒に来る?」


「是非見たい!!」



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