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四十五戦目

動きは俊敏だった。

修復中の橋の周りを飛び回り俺たちを撹乱する。

そのスピードを持って綾香に槍を振りかぶる。


対して綾香は冷静に盾と槍を構えている。

綾香に衝撃!!


盾を構えたまま微動だにしない綾香。

対する河童は派手にぶっ飛んだ。


「お前!!何をした!!」

「何もしてないよ。ただ盾を構えてただけ。」

「構えてだけ?舐めるな!お前、許さない!!」


俺にはもう目に追えないスピードになっていた。

俺はもう綾香の背後で棒立ち状態だった。

アイツの目は赤く光り、スピードに乗せ繰り出される連撃!!しなる緑色の筋肉!!


カツン。


音は虚しく響き、河童は転倒していた。


「よっこいしょ!!」


転倒した河童の甲羅の上に盾を置いたように見える。

随分とゆっくりしたモーションだが。


バァァアアギギィィィ!!!!


甲羅粉砕!!!


「ピィィィィギィヤアア!!」


白目剥いて沈黙。

両手を万歳して気を失ってしまった。


河童の下、建てたばかりの橋に亀裂が走ってる。


「綾香、お疲れ様。」

「エムルごめん!!折角建てた橋に亀裂を付けてしまった。」

「俺の方こそすまん。この程度の衝撃に耐えられない様じゃすぐ壊れるよな。作り直すわ。土をダンジョン製にする。」

「怒ってないんだ。」

「耐久性の問題に気付けた。ありがとう!!」


そのやりとりを見た冬月先生は悶絶する。


「なんでレベル100がこんな無様に倒れてるの?盾を置いただけで甲羅粉砕!?後、何?橋の心配!?」


その声に反応するように遠くから


「冬月先生!!大丈夫ですか!今魔物の叫び声が聞こえましたよ!!」


男の声がする。

ピクリと、咲羅が反応した。一種の拒否反応だろうか。


「ああ、野崎先生ね。こっちこっち!!」


綾香、満面の笑みで野崎先生に手を振る。

その真下に河童の残骸。


「た、た、田辺さん!!そ、その足元!!モンスターいます!!気をつけてください!!」

「先生!!気絶してるだけなんで大丈夫ですよ!!無害です!!」

「気絶してるって生きてるんですか!?息の根を止めます!!どいてください!!」


魔力を込める野崎先生。

その手に強力な魔力が宿る。


俺は二次災害に備えた。

咲羅もモゾモゾと動き出す。

綾香は食い下がった。


「別にそこまでしなくてもいいでしょう。」


綾香?若干切れてる?

野崎先生から河童を守るように盾を構えたのだった。

その距離10メートル。


「公害ですよ!!フロストノヴァ!!」


空間を瞬間的に凍らす魔術だ。

この魔術の利点は盾とか甲羅とか防御無視なところ。味方は無傷で敵だけ冷凍出来るところだ。

綾香の顔が歪む。手を振り上げた。


「ホーリーフィールド!!」


透明な壁が発生!!大きなシャボン玉のように河童の周りを包み込む。


「田辺さん!!何モンスター守ってるんですか!!」

「先生もなんで勝手に魔法使ってるんですか!!無駄な殺傷は禁止です!」


透明な壁につつまれて中の河童は生きている。

凍りもせずに、血色も悪くない。完全に魔力影響の圏外にいる。


「田辺さん、そのモンスター守って、どうするのです?」


野崎先生は痛いところを突いてくる。


「それは……。」


あれ?考えてなかったって顔してる。

ノリ的に無駄な殺生は嫌ですって感じだったもんな。


「それは?」


俺は綾香の耳元で囁いた。


俺と綾香にはミッションがある。一つは咲羅がどうしてスライムの姿に追いやられたのか。

もう一つはこの世界の疑問、物理攻撃が効かないこのモンスター達は一体なんなのか?


「じょ、情報を聞き出します。」


雑魚モンスターを問い詰めるよりボスモンスターを問い詰めた方が良い情報が得られるのは常識だ。


野崎先生の眉が上がる。


「新子君の入れ知恵ですね!!ダメです!危険……ふがぁ!!」


最後まで言い終わらずに、咲羅が飛び出した!!

じっとしていられないって感じだったもんな。

10メートルの距離を一瞬で詰めた。顔に覆い被さり窒息状態にしている。


さぁ、今のうちに情報を聞き出してくれと咲羅は言っているようだ。


「さあ河童さん。起きて。」


結界内を揺らすと河童が起き上がる。


「何が起こったのら?」


戦闘モードが外れた河童の声は随分と高音域だった。


「河童さん。なんでこの川でボスやってたの?」


綾香は問い掛ける。

背後で、不安げな声を上げる冬月先生の声を無視して声をかける。


河童は一瞬ビックリしたように俺たちを見たが、状況を悟り大人しくなった。


「私は気付いたらここでボスやってたの。好きで川に住んでた訳じゃない。」

「誰にボスにさせられたの?」

「分からない。」


このクラスでもまだ幹部ですらないのか。少し残念だ。


綾香は質問を変える。


「じゃあ。あなたは一体誰?自己紹介してほしい。」


河童はゆっくりと思い出すように言葉を紡いだ。


「私は1580年産まれ。幸せな幼少期を過ごしていたわ。9歳の時親と一緒に火炙りの刑で殺された。両親は何故か喜んで死んで行ったけど、私は殺した幕府の人間が憎かった。随分と長いこと幽霊になってこの地上を彷徨ってたわ。ある日突然、光りに包まれ、ここでボスやってたわ。」


450年も前の人だ。しかも9歳の時に亡くなった。

時代背景的にキリシタン大名の時代か?

火炙りの刑って、9歳の子供にやる事か!?

可哀想すぎる!!


「辛い人生だったな!!もう、怖い奴なんていないからな。」


俺は、シャボン玉状の結界に侵入、河童の頭を撫でる。


「エムル、なんであなたが泣いてるのよ。私も泣きたいのに。」


綾香は結界を解き、ぎゅっと抱きしめる。


「お前達。私はモンスターだぞ!!お前らの敵だぞ。」

「敵はいないぞ。お前は自由だ。」


俺は回復薬を振りかけた。

河童の甲羅は完全復活を遂げた。


後ろで、「何やってるの!!敵に塩送ってるし!!あれ拷問はどうした!?」と冬月先生は騒いでる。

綾香は冬月先生に問い掛ける。


「この話を聞いて、先生は悲しくないのですか!!9歳ですよ!こんな可愛い子に拷問なんて私、無理です!!」


「ちょっと待って!!450歳!私達よりだいぶ年上だし、今の話、そんな感情移入する事あった!?あれ!?なんで解放する流れになってるの!?野放しにしてたら人いっぱい死んじゃうでしょ!」


「先生の血は何色ですか!!私は悲しいです!!」


「私、おかしい事言ってる!?」


綾香と2人討論してる間に俺は河童の背中を押した。

立ち上がる河童に耳打ち。


「河童、上流に行けば水は綺麗なはず。このまま上流へと向かえ。」


「わかった。でも私の産まれ育った場所だからここの川汚いの我慢出来ない。」


「わかった、わかったから。この闘いが落ち着いたら川綺麗にするから。もう、行ってくれ。野崎先生がお前に危害を加えてしまう。」


「本当に逃してくれるのか!!お兄ちゃんありがとう!!バイバイ。」


河童、解放。キョロキョロと周りを見渡す。

ふと咲羅と目があった。

じっと、吸い込まれるように瞳を見つめていた。

それも数秒、すぐ動き出す。


「何か話をしてたのか?」

「秘密だよ。またね。」

「おう。達者でな。」

「バイバイ!!」


川の上流へと泳いで行く。


<アクエリア斉藤がボスの権限を破棄しました。大分のエリアのボス攻略の一定数を超えました。大分エリアのダンジョンの難易度が下がります。>


ここにいる皆の動きがピタリと止まった。

全員がこの声を耳にしたのだろう。


<新子得武は水の下級精霊からの好感度が上がりました。>


このアナウンスは俺だけのようだ。

なんの利点があるのだろう?


気にせず俺は橋を完成まで持っていく。



「野崎先生、ボスがいなくなりましたけどどうします?一旦拠点に戻りますか?。」


「せっかく来たことですし、今やらなければならないタスクも大方片付きました。この川の横断を邪魔するボスはいなくなりましたが隣のエリアには敵がたくさんいます。とりあえず、攻略してから学校帰ります。冬月先生は拠点に帰っててください。」


「分かりました。このエリアのボスはレベル80のサイクロプスです。徘徊型なので、背後からの攻撃に気をつけてください。」


野崎先生の参戦を聞いた。

元異世界人の実力を間近に見れるのだ。


橋の完成は間近。


「野崎先生、置いて行きますよ!!」


綾香がジャンプして向こう岸へと渡る。


「え!!いつの間に橋完成してるんですか!!待ってください。新子君はレベル低いんですからあなたは学校に帰るんです!!」


装備が整ってるから死なないですよ。なんて言っても見た目はパーカーとジーパンなので全然強そうに見えないのだ。


「邪魔しないですし、死んだら自己責任なので、お気遣いなく。」


「気にしますって!!待て、橋渡ったらダメです!!」


無視して橋を渡った。


橋を渡ってしまえば、モンスターの巣窟である。


危険が及ばないよう、咲羅を一旦エリシアに預ける。


すると、綾香の隣にいたアルちゃんがひょこっとエリシアの方へと歩き出す。


思い存分暴れてくれって意味だろうか。




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