三十九戦目
久しぶりの投稿です。
2章開幕です。
よろしくお願いします。
* 咲羅視点
ライラさんのグループに所属して数日が経った。
基本的に私達はダンジョン攻略をメインに進めていく集団である。
ライラさんのグループが凄いのか、もしくは周りの企業も優秀なのか。
ライフラインは整い、テレビも電話も復旧していた。
多くの地区で避難勧告は解除されて家に帰ってる。
その中でも被害の酷い地区は崩れた家屋を整備してプレハブ小屋を建てている。
私達集団は2日に1度のペースでダンジョンを攻略して行ってる。
ライラさんも凄いが、そのお弟子さん10人も優秀だった。
罠を見分けるプロフェッショナル、防御に特化したプロフェッショナル、回復に特化したプロフェッショナル、鑑定に特化したプロフェッショナル等、様々な個性を活かして攻略よくダンジョン攻略が行われている。
私はただ、与えられたマップをひたすら突き進み、ボスを薙ぎ倒すだけでいいのだ。トラップ発動して死んだり、モンスターに囲まれて死んでいく世の中で安全な攻略が約束されている。本来こんな楽な仕事ではない。
だけど、皆が皆、役割分担に徹していて寂しさがある。
これは自分の仕事、ボス戦は咲羅の仕事。
ボス戦では私以外戦闘しないのだ。
私がどんなに傷付こうが傷つきまいが我関せず。心配もしてくれない。
私まだ16よ。この1週間で私の体は傷だらけ。もうお嫁さんは無理かも。
もし、私が死んだとしても任務失敗として何事もなく撤退するんだろうな。本当、悲しい関係。
こんな事で気を揉んでる事自体私ってまだ子どもなんだと思う。
ライラさんのお弟子さんは皆、職業の限界突破は済ませてるよう。
私も傷付かないよう早く限界突破させたいな。
そして早くライラさんの隣に立ちたい。
どのレベルも平均80になっている。
240もあれば敵はないか?
そうではない。
A級ダンジョンのボスに死に掛けるぐらいだ。
S級ダンジョンになると道中の雑魚にも確実に死ねる。
この前もボス戦で私、死にかけた。
ライラさんには感謝してるけど、お弟子さんにはストレス溜まる事が多々ある。
それぞれ役割があるのはわかるけど、少しぐらい助けてくれてもいいじゃないの!!
ボス戦、私ばっかりしんどいわ!!
もう。このパーティやってられない。
そんな私にもジョブの限界突破の時が来た。これ少しは戦闘が楽になる。
私は北九州のとある港に来ていた。
大分港でも見たあの塔。あれが福岡にもある。
「私、今日はオフの日だと思ってたのですが、ダンジョンですか?」
私はライラさんに質問した。
連日ダンジョンに潜り続けており疲れは肉体的にも精神的にもピークに達していた。出来れば今日は戦闘は避けたい。
それに、今日は可愛いペットを連れている。
先日私の眷属となった、スライムのマルだ。
手のひらサイズで、この弱肉強食の世の中絶対に生きて行けないだろう、か弱い存在だった。
出会いはダンジョン。オオカミのモンスターに食べられる寸前、私が助けたのだ。
その時から私は病んでいた。スライムのマルもこの世界に絶望していた。気持ちがぴったり合い、契約は簡単だった。
マルは心の癒し。
この1週間、私の唯一の友達だった。
そんな弱い存在をダンジョンの中に連れて行くことなんて出来ない。
「心配しないで大丈夫よ。敵は出ないわ。さあ、行きましょう。」
敵が出ないダンジョンってそんなのあるのか?
意味がわからない。
ライラさんって時々理解不能だ。
攻略するダンジョンを選ぶ時の基準とか、人的被害が酷そうな地区を選ぶのかと思っていたがそうではない。
ライラさんの組織に利益があるか、ないかの判断。
私はとんだブラック企業に来てしまったのだ。
泣き言言っても仕方ない。私が決めた道だ。
ダンジョン攻略すれば人々は平和になる。
ここはその最前線。
大人の事情は大人に任せよう。
入ってすぐエレベーターのようなものがあった。転送ボックスという名らしい。
中に入ると様々な行き先が書かれていた。
1階から80階まで。
後、名古屋、千葉、大分の文字。
まさか、このダンジョンって大分と繋がってる?
だとしたらこのダンジョンって一体何?
80階へと上がってる。
「ライラさん、このダンジョンって一体なんなの?」
「安心して。ダンジョンマスターは私の仲間だから。」
つまり、ダンジョンマスターの権限により意図的に今日はダンジョンからモンスターが出ないように設定されている。
そんな事があっていいのだろうか?
「仲間?どうしてダンジョンを破棄しなかったの?」
「街中にあるダンジョンは人の生活の邪魔になるから駆除する必要があるわ。でもこのダンジョンは全くと言って人の生活の邪魔になってないわ。今後、ビジネスとして、また戦力増強の為にこう言ったダンジョンは取っておくの。」
「戦力増強の為?」
「ここの21階にモンスタートラップの罠があるの。それを利用した最速レベル上げとかおすすめよ。」
「私には分かりません。ダンジョンは全て排除すべきです。高齢者の中には魔力に馴染めず身体に異変が起きてる者もいます。何故とっておくのか分からないわ。」
「大人にはいろんな事情があるのよ。戦争の道具にもなるかもね。」
「なら尚更無い方がいいじゃないですか!!」
「こんなものが出回った以上、もう無かった事には出来ないのよ。一生付き合っていかなきゃダメ。」
「私は、ダンジョンがなかった世界に戻したい。」
「そうね。将来、あなたがそうしなさい。」
最上階へと上がる。
ダンジョン内、ボス部屋の向こうに案内された。
通るとそこにダンジョンマスターの姿が。
金髪、灼眼の男が椅子に座っていた。オーラが凄い。
持っている魔力だけで圧倒される。
これがライラさんの仲間。組織のボス。
なんだろう。次元が違う。
まるでドラゴンと対峙している気分になる。
「今日は可愛い女の子なんだ。いらっしゃい。」
声もすごく好青年だった。笑顔も満点。実力もきっと私の倍以上。
ボスが前線立てば早いのに。
「ライラさん。この方がボス?」
「そうよ。勇者のマーサよ。」
「ライラ、勇者ってやめてくれ、大学生の時の話だろう?恥ずかしい。」
そうか、異世界で魔王を倒したんだ。
だから強く感じるんだ。
でもこの男。なんかオーラが凄く澱んでいる。魔力が歪んでいる。
いろんなモンスターの魔力を混ぜて詰め込みました。そんなオーラを感じる。
作り物の強さ。なんか怖い。
ポケットに入っていたスライムのマルがブルりと震えた。
コイツ、やばい奴だ。
「あなたは一体何者?勇者ってこんなに歪んでるの?」
「歪んでる?君には俺がどう見えてるのかな。」
「私には人には見えません。ドラゴンかモンスターに見えます。」
「これは勘のいいお嬢さんだね。」
私と勇者の間に入るライラさん。
「マーサ。今日は限界突破の訓練をして欲しいの。変に脅さないで欲しいわ。」
「ライラはこの子のスキル、ステータスを知っているのかい?」
「ええ。大体は。今後期待の新人よ。」
「固有スキルに上級スキルまで持ってるよ!テンション上がるね。」
「マーサ、あなたもしかして?」
「この子の場合俺達の事信用しないかも知れない。その場合プランBで行く。」
「そういう事ね。」
さっきから嫌な予感が鳴り止まない。
ここから全力で離れないといけないのに私はこの場から離れられないでいた。
「ライラさん、そういう事ってどういう事ですか?」
「咲羅ちゃん、あなたはマーサに特別に認められたって事よ。」
「さっきから嫌な予感が止まらないんですけど、一体私、どうなっちゃうんですか?」
私の嫌な予感って当たるのだ。いい意味でも悪い意味でも。
勇者か立ち上がる。
ゆっくりと私の目の前にくる。
「それは俺から説明しよう。これから咲羅さん、あなたの限界突破をするんだ。でも、お願いがあるんだ。俺達は倒さなければならない存在がいる。地球上の悪だ。それを倒すのに絶対的に協力するって誓って欲しい。絶対裏切らないと。」
何故か私の手に魔術の紋章が浮かび上がる。
なるほど、これではいと言ったら魔術が働いて一生奴隷生活になるって話だ。
私の勘がそう言ってる。
「嫌な予感がする。先に言ってください。じゃないと誓えないです。」
「ダメだ。機密情報なんだ。先に誓ってくれ。」
「それは、ダンジョンを個人的に利用している事と関係ありますか?人を沢山殺めている事と関係ありますか?」
勇者の機嫌が悪くなる。
答えは沈黙だった。
「そこまでしなければ勝てない相手なんですか?」
「全ては人類の為。」
目が嘘つきの目だ。
私は首を振る。
すると突然右手が痛んだ。紋章が燃えるように熱い。
パーティ申請の時契約書にサインしたっけ?
契約違反?いや、そんな文面なんも書いて無かったよ。
「嫌。私、どうなるの?」
勇者マーサは私に何かする気満々だった。
私は右手の痛みを堪えて後ろに後ずさる。
背後にライラさんがいた。
「どうなるって?あなたは余計な詮索をしすぎました。ちょっとお仕置きが必要ですね。石になって半年ぐらい眠っててもらいましょう。全てを忘れて、無人島に転がしてあげます。」
アサシンスキルが来る!!
幻影刃で相殺。私は横に転がった。
叡智により、契約魔術の解除の魔術を解析。右手の契約を破棄する。
左にはライラさん。一対一で対戦しても勝てる見込みはゼロに近い。
右には勇者、マーサ。
肌の色がだんだんと緑色に変化する。姿形が大きくなる。
その身体はまさにドラゴンのような形状をしていた。
無理。無理無理無理。
逃げよう!でもどうやって?
考えてる最中にも勇者は私にスキルを使ってきた。
なんのスキルだろうか。
頭がボーっとする。
「抵抗しないでいいのよ。ゆっくり力を抜いて。」
ライラさんの声を聴いてたらダメだ!!
このスキルに囚われていたらダメだ。なんのスキルか分からないけど、何かしなければ!!
私は剣を振り上げ、剣技を発動する!!
<精神耐性のレベルが上がりました。>
<精神耐性のレベルが上がりました。>
アナウンスが流れる。
剣技は発動しない!!
何故?
ステータスを見ると。
剣聖のスキルがすっかりなくなっていた。
「嘘だ!!」
「嘘でも夢でもない。現実よ。受け入れなさい。」
エアロブースト発動!!
それも出ない!何故?
賢者のスキルが奪われた!!
アーティストレベル4を発動し切り掛かる!!
バランスを崩し、私は思いっきり転倒した。
これも奪うの!!なんで!?
そうか。このスキル使われてる最中にスキルで応戦したらダメなんだ。
奪われるんだ。
スキル以外の攻撃で仕留めないとダメだったんだ。
なんか腹立つ!!
「許さない!私のスキルを返せ!!私の苦労をなんだと思ってんのよ!!」
私は立ち上がり三メートル以上になるそのドラゴンに斬りかかる。抵抗はなかった。尻尾を切り飛ばす。
勇者の手に捉えられた。
スキル無しでは逃れられない。
「これでもスキル無しか凄い力だ。私の糧になってくれてありがとう。」
凄い魔力。意識もどんどん遠くなっていく。
思った瞬間にいろんなものが失っていく。スキルも力もレベルも、記憶も。
涙が溢れる。
「嫌。奪わないで。」
「君はもう、ガラクタだ。記憶もスキルも全て失って無人島でやり直すんだ。」
「私の全て返して!!スキルも、剣の能力も、記憶も!!」
「じゃあ、何故私に歯向かおうとしたんだ?」
「やり方が許せなかった。人を殺して何が人類の為よ!!」
「やり方を選んでる時間はない。咲羅よ。もう一度聞く。絶対裏切らないと誓え!今誓えばスキルも記憶も全て返してやる!!限界突破も行う!特別なポジションまで与える!」
「要らない!!死んでも誓うもんか!!」
手から刀が落ちた。
スキルは全て奪われた。
記憶もどんどん失われていく。
もう拾う気力もない。この力にあがらう力もない。体が文字通り石になって行く。
(兄ちゃん、元気かな。綾香ちゃん、ちゃんと家で元気にやってるかな。あの2人には絶対に合わせてはいけない。私がなんとかしないといけないんだ)
最後の悪あがき。
魔女の血スキルレベル25で覚えた眷属スキルを使っていた。
霊魂転送。
私のポケットに入っていたスライムに魂を移したのだった。
「マーサ。なんで子どもってこんなに強情なのかしら。あの子なら優秀な奴隷になったはずなのに。残念。」
「優秀過ぎても反逆が面倒だからな。この結果で上等じゃないのか?」
「そうね。どう?強くなった?」
「ああ。それなら最高の気分だ。今の俺なら日本統一が出来そうだ。」
「調子に乗らないで。東京の勇者は雲の上の存在よ。アイツのクランと戦争起きたらまだ勝てない。戦力が足りないわ。」
聞いててむしゃくしゃする。
スライムの私は石像になった新子咲羅の胸ポケットから飛び出した。
ライラの腕を思いっきり噛みついた!!
「調子に乗るなこのスライム!!消し炭にしてやろうか!!」
小さな体でしがみついていたが振り解かれる。
壁に叩きつけられた。
スライムのこの子じゃレベルが低い。
私は衝撃でしばらく動けなかった。
痛い、苦しい。悲しい。
ライラさん、私信じていたのに。
残念で仕方なかった。こんな化け物と裏で通じてたなんて。
一緒に世のため人の為に頑張っていたのによりによって金の為に、武力や権力の為だったなんて。
戦争がどうかとも言っていた。勇者同士、戦争が始まるとでもいうのか。本当、迷惑な話だ。
スライムの私になんて殺す価値もないのか、私には見向きもしない。
石像になった私が運ばれて行く。奥の部屋へと消えていった。
広いボス部屋にスライムの私、ただ1人残された。
さあ、これからどうしよう。
私はしばらく動けないでいた。
兄ちゃんに、または綾香にこの事を伝えなければいけない。
けれど、私はモンスター。声すら出すことが出来ない。
会った瞬間殺されるのではないだろうか。
でも、綾香には眷属の紋章がある。きっとわかってくれるだろう。
私の足は遅かった。
エレベーターに乗り、大分行きを起動する。
小さな体の私には、それはもう大冒険だった。
外に出ると、海に飛び込んだ。
泳いで海岸へと渡る。
道路にはまだほとんど車は通ってないがきをつけながら移動する。
1日は経過しただろうか。
昼夜関係なく足をすすめた。
吸い込まれるように我が家へ。
16年間育って来た我が屋へ。
裏庭から侵入する。
リビングで座る兄ちゃんの姿。
「咲羅、帰ってくるのは知ってたよ。おかえり。よく頑張ったな。」
なんで?私スライムだよ。どうして私が咲羅だって分かるんだよ。
出迎えて抱きしめてくれた。
「腹減ってるだろう。ばあちゃんが用意してくれたご飯がある何か食べるか?」
私はいつまでも腹減りキャラじゃありません。
本当兄ちゃんは変わってないんだから。
目の前に用意してくれた。
ご飯粒を少々かじる。
「おい、泣いてるのか?何があったんだよ。教えてくれるか?」
声がないから伝えようがない。
ただただ、この甘えられる環境が懐かしくて私。
夢中で食べた。スライムだから味なんてそんな感じられなかったけれど食べまくった。
安心すると眠くなって来た。
モンスターが湧き出てこんな安心する事なんてしばらくなかった。常に戦闘の真っ只中にいた。
安心出来る幸せ。私は本来、戦闘なんてしたくなかった。
1週間前、出会った男の子と吸血鬼の女の子の2人の事を思い出す。
自分がモンスターの姿になって身に染みて分かる境遇。
モンスターになるのがどれだけ惨めか。それを守ってくれる事がどれだけありがたいのか。
吸血鬼の女の子を殺さなくて本当に良かったと思う。
私はただ、眠りについていた。
大体週一ペースで投稿します。
行けたら週二行きたいです。




