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三十七戦目

家の外見は小さな小屋だった。


中に入ると想像も出来ないほど広く、東京ドームが入るんじゃ無いかというぐらい広がっていた。

まるで日本庭園のようなエリアで、席に座ると自動でお茶が出てきた。

なんというシステム。

至る所に自動掃除ロボットが動いていた。

俺たちの話をする。

勇者の話も聞く。


話はこうだった。

魔王との戦い。

志半ばに魔王に敗れる。その際に勇者は精霊界に魔王を連れ込んだ。

精霊界ゾフ。

そこで3年間ぶっ通しで戦闘に明け暮れた。

勇者は精霊達の力を借り、禁忌の魔術を生み出した。

惑星を滅ぼすほどの魔法は神から忌み嫌われる。

それを承知で、精霊界ゾフごと魔王を消滅させた。

案の定勇者はあの世でもお尋ね者となった。

各惑星の神から討伐命令が出され、勇者は逃げ彷徨いながらこの精霊界ゼラへ辿りつく。

神々からの刺客を倒しながら1000年の時が経った。


「あれ?エリシアって二年前に別れたって言ってなかったっけ?」

「ここは魂の世界だぞ。時間の流れが違うのは当たり前じゃないか。」

「なるほど。」


エリシアは目を潤ませながら勇者に抱きついた。


「ラウダ様。会いたかったです!!」

「エリシア、改めて久しぶりだね。元気だったかい?」

「私、心配だったんです。心配だったんですからね!!」


一通り泣いた後、本題に移る。


「ラウダさん、あの、元の世界に帰る方法なのですが。」

「得武さん。君ならわかるだろう?この空間がなんなのか。」

「はい。」

「元の世界に帰りたいのであれば俺を殺せばいい。」

「それは嫌です。友達は殺せません。」

「君はおかしな事を言うな。」

「なので錬金術で帰る術を編み出そうと思います。知ってる知識を教えてください。」

「なるほど。そういう事か。君の錬金術の知識は随分と科学的じゃないか。」

「ええ。ラウダさんの錬金術はやけに魔法理論に基いている。」

「そうだ。よく気がついたな。」

「力を合わせれば賢者の石の開発が出来ます。ここにある素材で作れます。」

「その理論を聞こうか。」


俺は理論を説明する。


「ハッハッハッハ!!これは愉快だ。地球の神をも出し抜ける。」

「地球の神?」

「お前達は地球の神の陰謀によってここに連れて来られた。これを殺すまで帰って来れないシステムを根本的にぶち破るのだ。これほど愉快な話はない。」

「そうですか?では協力してくれますか?」

「何年かかるかわからないぞ。」

「1000年経とうが地球では2年程度ですよね。余裕です。」

「本当に面白いな。乗った!!」


俺とラウダは意気投合するのであった。


俺はラウダの指導の元、魔法の理論からまず学ぶ事になった。

魔法理論を応用した錬金術。

学ぶと共に精霊魔術を利用した錬金術を覚える。

何日も経過する。



綾香さんは最初はその環境に戸惑いつつも、エリシアと共に山菜を取りに行く。

最初の1週間は山菜ばかり食べていたが、それ以降からはお肉もちゃんと出てくるようになった。

なんの肉だろう?


ブラハム様からゾアルの魔石が欲しいと言われた。

渡すとその魔石がいつのまにか仔犬に変わっていた。


いつの日かエリシアの身長が大きくなった。何が起こったのだろう。

どうやら大精霊に進化したらしい。

おめでとう。

その日を境にご先祖様とエリシアはあまり俺たちの前にあまり姿を現さなくなった。

元々精霊体質なので人間界に戻るのは大精霊になれば容易だそうだ。

とはいえ1週間に一度は俺の顔を見にくるらしいが俺が忙しくてそもそも会ってられない。


今度、どんな原理で行き来しているのか聞いてみよう。

研究は続く。

多分1年は過ぎただろう。

綾香に言われた事がある。


「得武、このまま一緒にここで生活しない?」

「みんなに会えなくていいのか?」

「両親に会えないのは寂しいけど、幸せよ。」

「大丈夫。帰る術はある。」

「帰ったらまた、混乱の毎日だよ。いいの?」

「すぐに元の生活に戻すよ。大丈夫だ。」

「エムルがやってくれるんだ。期待してる。」


生活は慣れたもんだった。

綾香の武器も防具も成長限界だった為2回ほど進化させて置いた。

放置してると綾香が寂しがるため、夕方1時間はゆっくり会話を楽しむ時間を作った。


いろんな話を聞いた。

今のジョブも限界突破したらしくレベル140あるそうだ。

セカンドジョブを得るためには一度人間を捨てる必要があるらしい。

綾香は一度、ヴァンパイアになりかけたらしい。その経験があったからすんなり行ったようだ。


研究は進む。


3年過ぎた頃だった。

俺が錬金術をマスターした。

その理論を基に錬金術を施す。


「得武。よく頑張ったね。」

「ラウダさん、本当にありがとうございます。ラウダさんの協力がなくても帰る魔術は完成出来そうです。」

「で、どうするんだい?賢者の石を作ろうと思ったらSSSランクの魔石が必要だ。」

「賢者の石は必要ありません。転移の巻物で十分でしょう。」

「なんと!!お前には本当に驚かされるな。」

「エリシアは行き来してるじゃないですか。その理論を研究しました。」

「なるほど。後少しだな。」


ラウダに励まされた。

本当に俺は周りの人に恵まれている。

俺ほど良い環境に恵まれた人は他にいるのだろうか。

皆の好意に涙が出てくる。



更に半年。最終段階であった。

俺は素材集めに没頭していた。

洞窟に篭る。森林地帯を横切る。草原を歩く。

どんなに遠くまで行っても転移のアイテムで拠点へは一瞬で帰宅出来る。

綾香と素材集めの冒険の日々を楽しんでいた。

羊型のモンスターが出る。


「エムル。私からはぐれたらダメよ。」

「アヤちゃん、俺そんなに弱くないって。俺は子どもか!!」


綾香も本当に強くなった。

守りだけでなく、武器も鍛えて相当強くなる。

フェンシングの技だけでなく、槍術までも免許皆伝だ。

なんと言っても盾が凄い。

盾固有スキル、衝撃反射が必殺技と化していた。


「この魔物倒すのに、ブラハム様とエリシアさんと1週間かかったのよ。」

「この羊ってよくご飯の時出てきた。」

「そうなの!お肉の成分に眠くなる魔力が含まれてるから特殊なハーブで煮るの。ここの精霊達に教えてもらったんだ。」


雑談しながら余裕の戦闘。

まだ30体ほどの群れがいる。

精霊達の力を集結。ボウガンを撃つ!!

一瞬で200発を超えるボウガンが放たれ、羊達の群れは殲滅された。

今回は毒は一切使ってない。


「だろ?」

「だろってかっこ付けないでいいでしょう。精霊達のおかげでしょう!?」

「まぁな。」


Sランク級のモンスターを倒したというのに俺のレベルは相変わらず上がらない。

俺が根本的に戦闘に参加してないかららしいが、本当に困ったもんだ。

そして、綾香の隣に擦り付いてくる一匹の犬がいる。

ゾアルの魔石を基に新たな精霊を生み出したらしい。

将来強くなるらしいのだが。


「アルちゃん。どうしたの?」


精霊と言われても一匹の犬だ。

まだ幼い精霊で小さく、綾香のリュックの中がお気に入りの寝床になっていた。

よく鼻が効く。いつも突然、SSSランクの素材を嗅ぎ分けて見つけてくれるのだから本当に助かっている。

そのアルちゃんが何かに反応して飛び出した。

またお宝か?

尻尾振って見つめる先。吠える先。遠くに花畑を荒らす人影を見た。


「人間だね。」

「アヤちゃんどうする?声掛ける?」

「そうだね。ラフレシアに苦戦してるみたいだからね。」


4人組だった。

姿はぼろぼろ。体制も整ってないが、なんとかなりそうなぐらいの実力は持っていた。


恐らく俺たちと同じくSランクダンジョンをクリアしてやって来たのだろう。

連戦できっと疲れている事だろう。


「その花に炎属性の攻撃は効きません。物理攻撃が弱点なんです!」


そのパーティに割って入る綾香。

ラフレシアの飲み込んでくる花びらを盾で防ぎ、逆に盾が花びらに噛み付いていく。

噛みちぎる。

相変わらずグロイ。

よく見たら犬の精霊、アルちゃんもラフレシアの茎に噛み付いていた。


みるみるうちに枯れていく。

俺も通りすがりにラフレシアを斬り伏せていく。


「大丈夫でしたか?」


俺たちは4人組に声をかけた。

瞬間、先頭の男に斬られる。

模倣剣術で即座に反応する。


「精霊王ラウダだ!戦闘準備!!」


俺の精霊達を操る様子を見てラウダさんと勘違いしたのだろう。全力で仕留めに来る。


「恩を仇で返すか。仕方ない野郎だ。」


ボウガンを100発放ってみる。

奴らは結界を張り、俺の技を完封。そこそこ、腕は立つようだ。

綾香が俺の目の前に立つ。盾を構えて、


「聖域発動!!」


4人組を閉じ込めるように結界を張った。


「綾香、ありがとう。」

「一旦撤退しましょう!」

「そうだな。」


転移の巻物を起動。それと同時に座標を記憶。

拠点に戻りラウダに報告した。

ラウダは困った顔をしていた。


「何年かに1度来るんだよ。困った話だよな。」

「なんかラウダさんの事知ってるらしいんだけど。」

「まぁ、俺は他の星では有名だからな。すここは戦場になるだろう。すまん、戦いに巻き込んで。」

「俺たちに手伝える事はあるか?」

「ラフレシアぐらいに苦戦してるようじゃすぐ終わるさ。観戦するか?」

「しない。でも、殺すのか?」

「当然だ。」


俺は正直ラウダに殺しをして欲しくないと思っていた。過去はどうあれ、本人自体も人殺しは好きなタイプじゃない。

襲われて仕方なく戦っているだけなのだ。その運命を少しでも変えたい。

ラウダにもっと人を好きになって欲しいとも思う。


「ちょっと俺に任せてくれないか?」


俺はそんな提案をした。


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