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三戦目

「私ね、霊体だって言ったでしょう。御供え物って気持ちがこもってるの。私はね、その気持ちを食糧に生きてるの。ご先祖様用のかも知れないけどさ。私の存在もこの糧を得て生きてるのよ。」


イタズラする子どもを注意する感覚で言ってしまった。

実体で目に見えるせいか忘れていた。精霊って存在。

確かにこの時代に御供え物とかする高校生って数少ない。

俺の場合じいちゃんの影響が強い。


先祖を大切に日々を過ごす。年上を大事に。そして徳を積む。そう教わって来たのだった。

それが、精霊に懐かれる結果になっていたらしい。


「エリシアごめん。」

「いいの。私ばかりが独占してごめんなさい。」


独占?今独占って言った?

もしかして、一緒に着いて回って御供え物食い散らかしていたって事?


「いつから俺の近くにいた?」

「1年ほど前からかな。」


なるほど。俺の御供え物は1年以上ご先祖様に届いていなかったらしい。

だから初めの挨拶の時、美味しいご飯をありがとうって。


「深い詮索は辞めて。ほら、家帰ってばあちゃん安心させよう。」


納得はいかないが、深く詮索はしないようにする。




帰路に着く。

坂の麓。線路前。

知り合いのパン屋に声かける。


「田辺のおばちゃん、元気?」


この制服にこびり付いた青い血に何か突っ込まれるかなと思いきや、全然見向きもしない。

やはりエリシアの言う通り、ゴブリンの血は世間一般的に目には見えないらしい。


「元気に見えるかい?横断歩道渡った先にも大きなパン屋出来たでしょう?経営が上がったりでね。」


本当になんでもない。いつもの愚痴が始まった。


「元気そうで何よりだよ。」

「食パンなら完売だよ。パンの耳だけ買うのはダメだからね。」

「今日は客としてじゃなくて、街の中危険だから出歩かないでって注意しに来たんだよ!」

「ああ。ラジオで流れてる。不審死が相次ぐってもう怖いわね。新子君は大丈夫かい?」


俺は眉をひそめてしまった。モンスターが暴れ回っているこの現状を知らず、不審死扱いしている。

ホームセンターでも、ほとんどの人がゴブリンの存在を認知していなかった。目に見えて抵抗したのは俺と、叫んだ女性のみ。

目に見えないので抵抗手段がない。殺されても何故目の前に死体が転がっているのか理解出来ていないという話だ。どうすれば良い?

そう一瞬で思考を巡らせて、平静を装う。


「大丈夫。フランスパン1本頂戴。」

「あいよ。」

「また来るよ。」

「たまには綾香(あやか)とも遊んでね。」

「おばちゃん、俺の妹の方が仲良いし。俺もうそんな歳じゃないしさ。」


冗談かましながら笑顔で手を振る。

綾香は幼馴染。クラスは違うから今は特に接点はないのだが小中高と同じ学校で家が近い。昔はよく遊んだが小学校までだ。今では疎遠になっている。

大丈夫かな?モンスターに襲われていないかな?って心配になる。


俺は不安を抱えながら買った物を鞄の中に入れ、チャリを漕ぐ。いくら考えてもモンスターが見える人と見えない人の違いが分からない。


「得武、それも御供えしてくれるのかしら?」

「これは妹の夜食だよ。」

「残念。」



線路超え、坂を登ること10分。坂の上から後ろを振り返ると夕日に照らされた海沿いの街並みが広がっていた。海の上の謎の塔は未だに健在で・・・俺は一瞬自転車を止めた。それに気が付いたエリシアが忠告する。


「得武。一つ忠告。間違っても塔へ行っちゃダメ。行くならレベルを70以上、上げて行くこと。」

「エリシア、あれ何か分かるの?」

「プライベートダンジョン。魔物の巣窟。誰かの所有物。」

「所有物?」

「私もこっち来てまだ1年くらいしか経ってないから詳しくはわからないわ。あれを建てた悪い子がいるのは確かよ。」


悪い子ねぇ。この世界、思った以上に厄介なものに巻き込まれている気がする。そんな事を考えると思わず身震いをしてしまった。怖い。


でも、1人じゃない。分からない事があるならエリシアに聞けば良いかと感じて・・・少し不安は和らぐのであった。



家の中入り、ばあちゃんに苗木を買えなかった事を伝える。

もちろんゴブリンと戦った事は伏せ、パニックなってたからと誤魔化したが。


「婆ちゃん、今日は外出たらダメだよ。」

「ニュースにもなってるよ。街の不審死かい?物騒になったもんだね。」

「畑仕事も俺やるから今日は家の中にいて。」

「もう終わったよ。得武、ところで今晩何食べたい?」

「料理も俺作るって。腰悪いのに無理するなって。」

「大丈夫。動いてないと不安でね。」

「じゃあ、フランスパン買って来たし、シチューをお願い。」

「わかった」

「得武や、制服。」


ばあちゃんが制服に気がついた。

このゴブリンの血が見えるのだろうか。


「ばあちゃんこれは」

「ところどころ破れとるの。自転車転んだのかい?」


違った。戦闘による傷だった。


「あ、ああ。そんな感じ。」

「縫っておくからのう。気をつけてるんじゃよ。」


その一連のやり取りをエリシアは見ていた。


「得武もお人好しなら家族もそうなのね。」

「そうかな。普通だよ。」


エリシアは嬉しそうだった。そのエリシアに俺の頭で解く事の出来なかった難問を問いかける。


「エリシア、婆ちゃんも、田村のおばちゃんもゴブリンの返り血に気が付かなかった。それってどういうことかな。」

「それは、ゴブリンが見えないって事だよね。」


俺の仮説は現実だった。見えないという事は、攻撃されてもわからないという事。本当に危険だ。

婆ちゃんは決して外に出したらダメだ。

田辺のおばちゃんも、外に出ないでよ。心配だな。


「ゴブリン、見える人と見えない人の違いって何かな?」

「守護霊憑いてたら見えるよね。でも得武の場合は私が危ない事にならないようにリードしていたからね。見えたんだよ。危険だよって伝えているのにゴブリンに突っ込んで行くとは思わなかったけど。」

「だって、助けないと!!」

「あなたは偉いね。」


なんか、いろんな法則があるようで、俺も知らない事がいっぱいだ。

守護霊憑いてたら見えるか。

世の中の人、どれぐらいの人が見えてるんだろう。守護霊憑いてたらって、いっぱい徳を積んでないと憑かないよね。

考えても仕方ない。


一階でシャワーを浴びる。


2階の部屋に行く。

机に向かい、いつも通り勉強を始めようとしていた。


「得武、ちょっと待って」


机の上に堂々と立つエリシア。

小さな体で、頬を思いっきり膨らましていた。

ゆっくり落ち着いて見るのは初めてかも知れない。

ピンクの長い髪。黄色い羽。堀の深いハッキリとした顔立ち。

これが人のサイズなら美人だっただろう。


「待つって、勉強しなきゃいい大学入らないよ。」

「冒険者の基礎を教えます。あなたには生きてもらいたいので。」

「とは言ってもね。俺もう戦闘する気はないんだけど。」

「そうはいきません。モンスターが溢れた以上、戦闘は付きものです。」


突然先生ヅラするエリシアだった。

机の上で腕を組み、俺の参考書を足で踏む。

ページを開けないようにしている。


エリシアの白いワンピースどうなってるんだろう。

どこで買ってるのか。

霊体だから霊力的なもので作られてるのか?


「あなたは雑念が強い!」

「いや、それほどでも。」

「褒めてない!」


勉強は無理なら気が済むまで付き合った方がいいよな。

あれ、エリシア睨んでる。

ゴホンと咳払いし続けるエリシア


「で、錬金術なんだけど。その前にステータス出して。」

「えっと、ステータス?」

「ステータスオープンって言うの」

「ラノベの世界?」


エリシアが睨んでる。

おとなしく、ステータスオープンって心の中で唱える。

目の前にステータスが現れた。



新子 得武

精霊の理解者 レベル2


HP 17

MP 22


STR 2

VIT 2

INT 7

MD 3

DEX 2

AGE 2

LUK3


空中にこの文字が浮かび出ている。


あれ?レベル上がったのになんかあまりステータスに変化がない。


職業(ジョブ)の文字に触れて。そして精霊の加護にスキル振る。」


精霊の理解者をタップするとそこに文字が派生

スキルが一つ。

精霊の加護がある。スキルポイントが2ある為、そのスキルにポイント全振り。


精霊の加護レベル3

詳細

精霊からいろいろな恩恵が貰える。


よくわからん。


「スキルに関しては取り返しが付かないから慎重にスキルポイント振ってね。」


と言っても後の祭りだ。

まあまだレベル2なんだし、今後期待で。


「これで魔力譲渡の交換率が上がった。続いて錬金術ね。」


エリシアさん、今なんて言った?

独り言辞めてください。


「同じようにして。」


突然、エリシアに身体のコントロールを奪われた。

短剣を鞄から取り出すと、魔力を通す。

すると2本の包丁に元通り。

また魔力を通す。

長い短剣に姿を変えた。


「口で言っても微妙だから身体乗っ取っちゃった。ごめんね。」


軽く言わないでください。

俺って霊媒体質なんだろうか。

不安になってくる。


えっと見よう見真似でやって見るが。

あれ?出来た。


包丁が二本。

なるほど。質量は変わってない。


合成して一本の短剣に…。

いや待て、質量は変わらないのならイメージ次第で形が変わるとか?

刀のイメージ。

刃渡りの長いものが出来たが、耐久性が弱そうだ。


「なんか応用までしてるし。」

「なんか楽しい。あの砥石使って切れ味良くした魔法、あれは何?。」

「理論的に言ったら、砥石使って時間かけて研ぎます。その研ぐっていう行為を錬金術で一瞬でやってしまう。」


理論ってあったんだ。

説明はイマイチピンと来ないがイメージが大事だって事は分かった。

一階の台所から砥石を持って二階へ上がる。


「こうか?」

「なんか説明しなくても出来てるし。」

「なんか、時短してくれる画期的な技?みたいな感覚で合ってる?」


俺の質問にエリシアは首を傾げた。


「錬金術は錬金術よ。変な事言わないの。」


俺は錬金術を理解していないらしい。

まあ当たり前だ。

こんな異世界の技術、一瞬でマスター出来たら異世界人に失礼だ。


「他にもまだ錬金術あるか?」

「次に薬草を調合します。アイテムボックスオープン!」

目の前に葉っぱと青いキノコ、蜂蜜が置いてある。

「調合します」

この組み合わせ、なんか見覚えが。


「一気に全部ほ調合しません。一つずつ少しずつ。」


またもエリシアに身体のコントロールを奪われる。

青いキノコと葉っぱを持つ。

後、俺の愛用の空のマグカップ。

その2種が光る。

要点。煮溶かして一つにしましたって感じ。

そのエキスがマグカップにたまる。

蜂蜜もダマにならないよう熱で煮溶かして一つにする感じ。


「よし出来た。回復薬ぅ。」


良からぬ発想をした。

まさか回復薬グレー○?


「回復薬スーパー。そして私の力で命を吹き込みます。」


なんかよくわからない事してるけど、とりあえず名前被らなくてよかった。


「こんな感じかな。得武もやって見て。」


なんでもない事なんだろうけど、エリシアのアイテムボックスから回復薬の素材を机に上に並べて貰う。

要点は熱で煮溶かす作業を一瞬で終わらす事。

後、受け入れ先はペットボトルの中でいいや。


「嘘!調合が一瞬で!成功率とかどうなってるの?本とかないよね。」


エリシア驚いてる。

調合の書なんて物があるんだ。

異世界って楽しそうだね。

回復薬スーパーで2リットルペットボトルを満タンにする。

そしてふと思う。

葡萄ジュース。これ一瞬で赤ワインにならないか?


「ちょっと楽しくなってきた。」

「ちょっと待ってどこ行くの?」


持って来たのはスーパーで売ってるなんでもない葡萄果汁100%ジュース。


願うのは5年熟成ワイン。

魔力を通す。

一通り紙パックが光り。光りが収まる。

そして。

あれ?力が入らない。

頭痛いし気持ち悪い。

いや、頭激痛だし。背中痛い。足痙攣してる。


「MP不足だって。難しい調合になればなるほどMP使うし失敗率も上がるから気をつけて。MPほら、補充して。」


エリシアの指先が光り、俺の中に入ってくる。

すると抜けた力が再び入るようになる。


「今のエリシアの力?」

「というより、あなたのスキル精霊の加護の恩恵かしら。じゃないとこんな頻繁に力の譲渡なんて出来ないし、身体も乗っ取れない。」


なるほど。精霊の加護、スキルレベルを上げるほど霊媒体質になるらしい。

気をつけよう。


意識は葡萄ジュースへと向かう。

匂いは酸っぱい。

あれ?熟し過ぎた?

舐めてみる。

あ、これ。お酢だ。赤ワインビネガーだ。

何がダメだった考える。


「とりあえず元に戻して見よう。」

「得武、そろそろ精霊魔術について教えようと思うんだけど。」


そんなエリシアの声を聞いた気がする。

一瞬で赤ワインビネガーを葡萄ジュースへ戻す。


ステータスオープン。


新子 得武 レベル2

精霊の理解者


HP 17

MP 4/22


STR 2

VIT 2

INT 7

MD 3

DEX 2

AGE 2

LUK3


なるほど。

500ミリ程度のビネガーをジュースに戻すのにMPが18使うのか。


「エリシア、いろいろ試したい。手伝ってくれるか?」

「得武?」

「MPを分けて欲しい。」

「私のMPも有限だからちゃんとご飯、御供えしてね。」


エリシアはご飯でMPを回復しているのか。

なるほど。


そんな事を片手間で考え、意識は実験へ。気がつけば夢中になっていた。失敗ばかりだったが、何故こうなったのか考えるのが楽しかった。

これから一日中実験に付き合わされるとはエリシアは思ってもいないのだった。


得武は家中のものを片っ端から分解し、ノートにメモとり、新しい何かを作り上げるの繰り返しをしていくのであった。


錬金術に夢中になっていて時間が経つのを忘れていた。

オオカミの遠吠えにより俺の意識は現実に戻された。夜、時間は23時を迎えていた。もう寝る時間なのだが、今夜はいつにも増してオオカミの遠吠えがやたらと響く。大分は決して都会だと胸を張って言えるほど都市開発が進んでいるわけではないが、こんなオオカミの遠吠えが響くほど田舎ではない。これは間違いなくモンスターで間違いないだろう。


という事は外は危険だと言う事を意味する。


俺はふと妹、咲羅の事を思います。俺は無事に家に帰り着いたから家に守られているものの咲羅はまだ、家に帰り着いてない。

こんな世界になったのだ。学校で何かあったのは想像に容易いしモンスターを掻い潜り簡単に家に帰って来れるとは思わない。でもさすがに、いつも傍にいた双子の妹がこんな時間まで家に帰って来ないのは心配する。


まさか死んでしまったのではないかって・・・。

LINEの返信はないか確認するのだが、スマホは圏外になっていた。部屋のテレビもつけるが、電波が入らない。


情報が断たれた。モンスターが溢れて初めての夜がもうすでに始まっているのであった。


咲羅まさかモンスターに殺されてはいないよな・・・。


次話から妹、咲羅の視点に入ります。

兄、得武はエリシアとの出会いにより無双モードに入りましたが普通はこんな楽じゃない。

その混乱っぷりをご覧下さい。



こちらも覗いて頂けたら幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n2498ih/


エルフの少女に転移した俺は神子として崇められる。無自覚に無理難題を解決する内に現実世界でも無双(大暴れ)する。


・・・タイトル通りの展開です。

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