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十三戦目

「エリシア。ゾアルはまた今日も強くなって戻ってくる。その時太刀打ち出来るのか?死んだら元も子もないのだぞ。」

「でも嫌なものは嫌。私の大切な思い出なんだもん。絆なの。一生墓まで持って行く。」

「強がりを言って。」

「大体得武も悪いよ!!絶対開けないでって言ったじゃない!なんで無許可で開けちゃうの!?」


矛先が俺に来た!

必死に言い訳を考える。ご先祖様の命令で・・・。これは他人のせいにしているから火に油。理由を説明してはっきり断れば良い話。


俺にエリシアのプライバシーを除きたいという欲望があったのだ。下心が無かったかと言われたらそれはYESだ。俺が悪い。

じゃあ素直に謝ろう。


「エリシアごめんなさい。」

「せっかく仲良くなったと思ったのに。知らない。」


エリシアは窓の外、飛んで出て行ってしまう。


「待ってくれ、エリシア!!」


俺は立ち上がる。

が、婆ちゃんを操ってるご先祖様に肩を掴まれた。


「外にはモンスターが化け物どもがうろついておる。手ぶらでどうする?武器ぐらい持っていけ。ゾアルの短剣も直して行け。」


言われるまま、折れ曲がったゾアルの短剣に魔力を通す。錬金術により俺の魔改造を加えて新生ゾアルの短剣が誕生した。


その短剣に加えてボウガンを腰に装着。

回復薬、毒薬、解毒を鞄に詰める。


「お主は戦闘センスがないからの。これは祝福だ。」


ゾアルの短剣が光る。短剣に何かスキルが誕生したようだ。

続いて俺の服が光る。服にまでご先祖様の祝福を授かる。


「わしの戦闘センスをインプットさせておいた。お主が動くより、コイツらアイテムの方がよっぽどセンスが良いわ。お主は気ままに構えておれ。」

「なんかよく分からないけど、ご先祖様ありがとう!!」


俺はご先祖様に背を向けて家を後にする・・・


「エリシアはあのいつもの神社に向かっておる!!線路渡って左のじゃ!!」


背後からアドバイスが聞こえたのだった。


俺は庭に停めてある自転車に乗りエリシアの跡を追う。

風を切って坂を下る。夜明け前の少し冷たい空気は新緑の香り脳に届ける。目を擦りながら自然と意識は覚醒していく。

その景色は、朝焼けと共にグラデーションとなって薄暗い闇を押し上げていく。

大分港に浮かぶ巨大な塔が右から昇る光によってキラキラと反射してその存在感を存分にアピールしていた。



まずは目の前の事に集中しろ!!と意識を払う。

何故なら線路へ続く坂道の公道のど真ん中をモンスター達が徘徊しているのだから。

片手運転。片手にボウガン。

恰幅の良い蛙の顔した二足歩行のモンスター歩いている。

ボウガンはまるで意志を持ったかのように勝手に動いて矢を放つのだ。


<新子ボウガンのレベルが上がりました>


またもや武器のレベルが上がる。

レベルが上がるにつれて攻撃力が5ずつアップ。

最初攻撃力25だったのが10分後にはレベル10を超え、攻撃力75。

何故それが確認出来るか?ステータスオープンと言うと目の前にタッチパネルのような電子掲示板(?)が出現する。そこに装備の欄もあり、素手で長押しすると装備の詳細が見れるのだ。

アイテムウインドウを開きっぱなしにすればどれぐらいのペースでレベルが上がっているかが分かるという訳だ。


まさにオートマティック・・・敵はボウガン様のご意志によって狩っていく。

レベル15にて、レベル限界に到達。

クラスチェンジが可能となった。アイテムウインドウから新たに出現したクラスチェンジのポップをタッチする。


<新魔鋼ボウガンになりました。攻撃力 60>


アナウンスが頭の中で響く。ボウガン様の戦意は止まらない。オートマティックに狩り続け、能力の上昇具合はレベル1上がる事に攻撃力7カウントされていく。

自転車に乗り、ボウガン一撃では倒せない敵がいた。

そいつは鬼のようだった。


時代劇の主人公のように刀を地面に平行に保ち・・・俺に刃を向けた。突進して切り掛かって来る!!

思わぬ衝撃に自転車から投げ出され、俺は地面を転がる。


ダメージはない。そもそも回復薬が発動した形跡もない。

何故だ?

鬼のモンスターは俺に切り掛かってくる!!

やばい、回避が間に合わない!!そう思った瞬間だった。


パーカーからエネルギーシールドが出て奴の刀の受け止めた。

赤と黄色の波紋が壁となって刀を受け止める。そのシールドを突破しようと鬼は前のめりになった。「パキッ!!」と音を立てて刀の刃が俺は。

俺はゾアルの短剣の鞘から抜刀した。瞬間に俺の身体は勝手に動く・・・鬼の首を刎ねていた!!


<ソードオブゾアルのレベルが上がりました>×10


攻撃力が40だったのが90まで跳ね上がる。


<新子のパーカーのレベルが上がりました>×3


これも防御力が×7 つまり86

回復薬の出番は無し。

ノーダメージだ。

目的地に着くまでに10度戦闘を繰り返したが俺のレベルは上がる事は無かった。

代わりに何故か、武器や防具のレベルが上がるのだ。



 ・・・・・・・・・・・・



エリシアの気配を辿っていくと線路の先の神社に着く。以前、エリシアとここに来た時エリシアはここでの思い出を語ってくれたっけ?「御供物を食べている」って罰当たりな思い出だったけど。


神社の周りを一周する。するとすぐに見つかった。

エリシアはお地蔵さんの隣に腰掛けていた。泣いていたのか目が赤い。顔も赤い。


「何よ。なんで来たのよ!!」


視線は下を向いたまま、ノールックで罵倒する。


「さっきはごめん。我ながらデリカシーがなかった。」

「どうせ先祖様の方が大事なんでしょう!!」

「ご先祖様に言われたからって理由だけじゃない。エリシアのアイテムボックスの中、俺も興味があったんだ。」

「最低!!」

「わかってる。本当に悪かった。人として酷い事をした。」

「私はどうでもいいからこんな事したんでしょう!?」

「違う!!エリシアも大事だ。」


目を合わせてくれなかった。俯いてるままだ。


「本当・・・?」

「本当だ。」

「信じるよ。もう裏切らないでね。」

「勿論だ。」


エリシアは恥ずかしそうにソッポを向く。

辺りはすっかり明るくなってしまった。誰もいない神社にエリシアと2人、無言が続く。

無言を破ったのはエリシアだった。


「私は今もまだ勇者を想ってる。引いたでしょう?」

「引くってなんで?大事な人ぐらい誰でもいる。」

「もともとは私たちは他人。あなたは強くなった。強い先祖様もいる。私は用無しでしょう。」


用無しって。俺、そんな考えした事ないのにな。


「今さら出会いを無かった事になんて出来ない。帰って来て欲しい。」

「私、弱いよ。いいの?」

「強い、弱いの話じゃないって。エリシアを信頼しての事だ。それに別れるにしてもあんな別れ方は嫌だ。」


エリシアは黙り込んでしまった。

ポロポロ涙を流している。


「昔ね私、いや、私たちだね。魔王戦で勇者を死なせちゃったの。勇者は好きだった。でも得武みたいにみんなから愛されてた。片想いだった。最後も私は守られてばっかりで何も出来なかった。」


俺は黙って頷く。


「今回のゾアル戦、私は魔王戦を思い出して怖くなった。本気出せなかった。結局私は得武に護られた。私の価値って一体なんなのよ。精霊って何?霊体で、何も出来やしない。人を護るべき存在なのにね。結局、相手の強さを見誤り、アイテムを出し惜しみゾアルに完敗。場外に吹っ飛ばして戦闘棄権。情けない。」

「そんな事ない。」


首を振る。


「でも、追ってきてくれてありがとう。最後まで付き合うから。得武、死なないでね。」

「当たり前だ。」

「仲直り。私のプライベート見た罰。パンを買いなさい!」

「え?」

「私はパンが食べたい!これで許してあげる。」


この非常事態な時にやってるパン屋なんてあるだろうか?


「線路前のね。ここに来る前パンの香りがした。絶対に焼いてる。」


田辺のおばちゃんのか!!絶対って随分な自信だな。


「焼いて無かったら諦めてくれよ。」

「間違いなく焼いてるからいくわよ!!」


問答無用だった。




走って数分。

田辺ベーカリーはまさに、今日もパンを焼いていた!!!

なんで!?

こんな状況でなんでパン焼けるの!?

営業前なので勝手に裏口から入る。


「田辺のおばちゃん、久しぶり。元気にしてる!」


と、声を掛けて固まった。

いつも夫婦二人でパンを焼いている。

でも従業員が増えていた。

スライム二匹。

緑色のオークが一匹。

手が6個ある鬼が一匹。

パンを手伝っている。

なんで!!?


「なんか最近、パン作りが思った以上に上手くいってね。こんなご時世なのにおかしいでしょう!!ボランティアでパンを焼いて配って回ってるのよ。今、食糧難でしょう?」


あれ?田辺ご夫婦、化け物達が見えてないのか。

焼き上がったパンが、緑色のオークが釜から出している。

絵的に衝撃過ぎて話が入って来ない。

その光景をご夫婦が不思議そうに見ていた。


不思議な現象はまだ起こる。この光景は初めてだった。

店の中にゴブリンが湧いた。黒い霧が集まり、突然産み落とされる。

こんなの家にいても安全じゃないじゃないか!!

俺は咄嗟にボウガンを構えた。


突然にそれは起こった。

鬼の包丁による斬撃。

死体を丸呑みするスライム。


従業員による華麗なる連携プレイ。

鬼はゴブリンを刺した包丁を綺麗に洗い、再び食材を切り始めた。

化け物でも田辺家守ってくれてるんだね。ありがたい。

これを放置して大丈夫かという疑問が残るが。


俺は店の周りをキョロキョロ見渡す。

幼馴染の姿が見えないや。

いつも朝早くから手伝っているのに。いないってどういう事?死んでたらどうしよう。

聞きたい。

両親の心の傷抉ってしまう。

勇気を振り絞って訊いて見た。


「綾香さんって、生きてます?」


俺の声は震えていた。頼む、何も言わないでくれ。


「もちろん生きてるわよ。学校で匿って貰ってるらしいわ。今街中も危ないしね。帰って来るより学校に居た方が安全らしいわよ。」


安心した。


「そうですか。」

「得武君、妹さんから何も聞いてないの?電話来なかった?」

「咲羅も生きてるのか!?」

「なんでも学校で大活躍らしいよ。」


なんかよかった〜。

力が抜けるのを感じる。


「得武君、良かったらパン、いっぱい持っていって。小麦粉の在庫無くなるまで続けるから。明日も食べに来るんだよ。

「ありがとうございます!!」


無料で貰ってしまった。

それにしても良い情報を聞いた。咲羅も綾香さんも生きてるって知れて正直嬉しかった。

俺はパンの袋を抱きしめ、外にでる。

自転車に跨り、


「得武、アイテムボックスに空きがあるからさ、ちょっと使ってよ。持ったままだと危ないでしょう?」

「えっ、大丈夫なのか?」

「プライベートボックスは開けちゃダメ。約束を守るなら大丈夫。」

「ありがとう!!」

「自分が使う分ぐらい自分で採取しなさいよ。帰ったら使い方教えてあげるからね。」

「ああ。よろしくお願いします。」

「じゃあ、質問ある?」

「一ついいか?」

「何?」


田辺家の疑問を一つぶつけた。


「化け物ってパン作れたっけ?」

「作れる訳ないでしょう!!あの家が特殊なのよ!」

「そっか。じゃあ、化け物って、家の中でも湧く?」

「ええ湧くわよ。一応地区全体がダンジョン化してるからね。ダンジョン化を解除しない限りは至るところで湧くわよ。」


俺は頭が真っ白になった。

もし、家の中で化け物が湧いたら!

何のために婆ちゃんを家に閉じ込めていたか分からない。


「大変だ!急いで帰らないと!!!」

「得武の家は大丈夫!!ご先祖様の魔力で守られてるから魔物侵入出来ないし、生まれない。人工的なセーフティエリア。」

「そうなのか?」

「私、今まで嘘言った事がある?」

「疑って悪かった。」

「ゆっくり帰ろう。」



得武はこの時知らなかった。

家に帰ると地獄の特訓が待っている事。

洞窟のダンジョンに籠らされ何日もの間レベル上げさせられる事を。

そしてゾアルとの戦いはダンジョンの奥地にて再開されるのであった。



ステータス


新子 得武 レベル6

精霊の理解者


HP 60+6

MP 135+350


STR 7

VIT 7

INT 14

MD 12

DEX 7

AGE 8

LUK10




精霊の守護レベル6

レベルを上げる毎に精霊の力の還元率が上がる。仲間になる精霊の数が増える。精霊魔術を使う時、より遠くにいる精霊に呼びかけて魔法を使える。

守護精霊のスキルを一つ装備出来る。


錬金術補正レベル2

錬金術が失敗しなくなる。レベルが上がる事で魔力が濃い物まで分解、錬成、属性や特殊なスキルが付与出来る様になる。

錬成出来る大きさもアップ。離れた場所から錬成できる。


錬金時鑑定レベル1

一度錬金術使ったものに対し、鑑定を行う。

知る事で分解、合成しやすくなる。

レベルが上がるにつれて、魔力が濃いものまで見る事が出来る。


魔力成長補正レベル3

MPの成長を促す。

MP 0になった時の疲労感、悪酔いを軽減。


物理耐性レベル2

物理ダメージを2%カット。


精神耐性レベル3

精神ダメージを3%カット。


精霊魔術レベル1

レベルを上げる毎に威力が増す。

レベル及び集めた精霊の数により異次元の世界から、召喚獣、悪魔、天使を呼ぶ事が出来る。


ゾアルソードレベル11

攻撃力90 スキル 模倣剣術


新魔鋼ボウガンレベル12

攻撃力137 スキル模倣射撃


新子パーカーレベル4

斬防御力86 打撃防御力31魔力25 スキル オートシールド


新子ジーパン レベル1

防御力70 打撃防御力10 毒耐性10 精神耐性10

次話から妹、咲羅の視点に入ります。


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