執事服の凄いメイド
「⋯⋯ん⋯⋯重い」
部屋に朝日が差し込み意識が徐々にハッキリしていく。
するとお腹の上辺りに不自然な重さを感じる、まだ寝覚めで眼が開けられず何が起こってるのか理解できない。
とりあえず眼を擦って起きようと試みる。
お⋯⋯重い⋯⋯もうちょっと寝てたいんだけど、う~ん誰かいるのかな⋯⋯ダメだ2度寝しよ。
「恵くんお~き~て!」
「⋯⋯後⋯⋯⋯⋯」
「2度寝しないでよ⋯⋯こうなったら」
パチンとと指を鳴らすとみるみる眠気が引いていき、重かった瞼も嘘のように軽くなる。
眼を開くとそこには俺に馬乗りしてるラックがいた。
少し頬を膨らませて怒っているようにも見える。
「おはよう」
「うん、おはよう⋯⋯じゃなくて何で昨日連絡くれなかったのさ、通信機貰ったら電話してって書いといたじゃん!」
「で、でも気づいた時夜遅かったし迷惑になるかもだから明日の方がいいかなって」
「いや⋯⋯恵くんの考えが正しいのは分かってるんだけど、それじゃあ連絡を待って一睡もしてない僕はどうなるのさ」
一睡もしてないのか、何か悪いことしてないのに悪いことしてるような気分になってきた。
ていうか何でそんなに楽しみにしてるんだろう?話すことなんていつでも出来るのに。
「因みに聞きたいんだけど何で朝まで起きてたの?」
「⋯⋯待ってる時間が楽しかったから」
「⋯⋯」
「だって友達と夜に話してから寝たかったんだもん、普段は仕事でしか使わないし憧れがあってもいいじゃん」
ムキになって言い訳をするラックを可哀想な目で見つつ、取り敢えず「退いてくれない」と言うが頑なに退こうとしない。
「本当は朝直ぐに電話してから今日会えるか聞こうと思ってたんだ。だからそんなに拗ねないでよ」
「えっ!それほんと!ならすぐ遊びに行こうよ」
「ま、待って。朝食くらい食べさせて」
連絡すると言ったことが嬉しかったのかまだ7時位にもかかわらず外に連れ出そうとする。
抵抗するもズルズルとドア前まで引きずられてしまう。
え、力強!そこそこ抵抗してるのに引っ張られてるんだけど。
嬉しいのはわかったからもう少し待って、せめて朝ごはん食べさせて。
「失礼します、誠に申し訳ないのですが御手を話して頂けますか」
ドアを開け執事服に身を包んだ白髪の美形がラックの手を振りほどいた。
「お名前を伺ってもよろしいですか」
「人に名前を尋ねるならまず自分から名乗ったらどうだい」
「それは失礼しました。私はエスティームと申します、本日より宮下様の専属メイドをする事になりましたエスティームと申します、以後お見知りおきを」
「ご丁寧にどうも、私はラックと言います。恵くんの友達です!」
専属メイドと名乗ったエスティームに対して友達の部分をやけに強調するラック、そして執事服を着てるのにメイドと言った事に動揺する恵。
・・・あれどう見ても執事だよね、なんでメイド?
もしかして昨日魔王様がよこすって言ってたメイドさんなのかな?
やばいすごい気になる。
「本日宮下様宛のお客様のご訪問は無かったはずですが、お話を聞かせてもらってもよろしいでしょうか」
「待って下さい、ラックはその⋯⋯俺が呼んだんですよ、今日会う約束をしようとしたら近くに来てたみたいで上がってもらったんですよ。朝早かったのでミュートさんには後で伝えようと思っていたので」
「そうなのですね。ラック様先程は大変失礼しました」
我ながら苦しい言い訳だ。
多分バレてるけど俺の顔を立ててくれてるんだろうな。
「謝るのは私の方だよ、浮かれてて周りが見えなくなってたよ。ほんとにごめんなさい」
「それでエスティームさんはどうしてここに?」
「私は宮下様へのご挨拶と朝食の用意が出来ましたのでそのお声掛けに」
「じゃあ今から向かいますね」
「承知しました。ラック様は朝食の間応接室に居てもらってもよろしいでしょうか、ミュート様がラック様がお越しになったら応接室に来てもらうように仰っていましたので」
「分かったよ、じゃあ恵くんまた後でね」
ラックが手を振りエスティームさんについて行って応接室に行く。俺は寝巻きから着替えて直ぐに朝食を取り、ラックが戻って来るまで部屋でのんびりとしていた。
するとエスティームさんがドアをノックして部屋に入ってきた。
「先程はちゃんとご挨拶出来ずに申し訳ありません。改めまして、ライラ様から【忠誠】の2つ名と9(ノイン)の階級を授かっており、宮下様の身の回りのお世話をさせて頂くエスティームと申します。以後エスティとお呼びください」
「宮下恵と言います。俺の事は恵って呼んでください」
惚れ惚れするほど綺麗な挨拶だ、一つ一つの動作にキレがあり見てて清々しい気分になる。
あれ?そういえば今9(ノイン)って言ってたよな、それって確か魔王様直属の配下1名だけに与えられるはずだったはず。
しかも2つ名って魔王様以外は1人しか名乗ることを許されてないって事は、エスティさんひょっとしてミュートさんより偉いんじゃないの?
「エスティさんってライラ様の配下の中で一番偉い人で間違い無いですよね?」
「はい、階級・実力・忠誠心に置きましては誰にも負けないと自負しておりますのでその認識で間違いないかと」
やっぱり本人だ。
ライラ様は何でこんなすごい人を俺なんかに付けたんだろ?
国賓扱いにしてもやりすぎな気がする。
「それとメイドなのに何で執事の服を来てるんですか?」
「普段はメイド服で過ごしているのですが外に出る時は何かあってもいいように動きやすい執事服を着るようにしているのですが、お好みでしたらメイド服に着替えましょうか?」
「そ⋯⋯それはその内お願いします」
執事服ですら直視できないほど綺麗なのにメイド服に着替えられたら気絶する自信がある。
⋯⋯でも見てみたいな。
その後も世間話程度の話をしているとラックが戻って来て無事出かけられるようになった。
ミュートさんは朝エスティさんが挨拶しに行った時に驚きのあまり体調を悪くしラックとの話が終わるや否や倒れたらしい。
ただでさえ身分の高い自分より階級が上の人がメイドとして来たのだから気の毒としか言えない。
「ほら恵くん早く遊びに行こうよ!」
「わかったから落ち着いて、エスティさん後のことよろしくお願いします」
「承知しました。それでは行ってらっしゃいませ」
次はラックとのショッピングです。
それと投稿は週1~2を目標としてますが、忙しかったら2週で1~2話の投稿になるかもです。