ラックは魔王の配下だった
事件から2、3日がたった。現在俺はミュートさんに用意してもらったドラグニル家の一室に居る、ミュートさんは「自由に使ってください」って言ってたけど⋯⋯広いな~、下手したらこの部屋だけで家より大きいかもしれない。The貴族の部屋って感じがする。
外出禁止令が出てるのでできることと言えばミュートさんから貰ったこの世界のことをまとめた本を読んだり、質問がてらリアナとお茶するくらいしかない。
不満がある訳じゃないがさすがに暇だな、ミュートさんはただでさえ忙しい仕事に加え俺を襲ったヴィトレイについて調べてくれたり、エレナさんも一応あれでもメイド長だから自分の仕事はしっかりやってるし、なんかほんとに申し訳ないな。
まぁでも色々わかったこともある、魔族には身分が10階級あって、職の無い人が持つ 0(ヌル)
平民が持つ 1(アインス)、2(ツヴァイ)、3(ドライ)
貴族が持つ 4(フィーア)、5(フンフ)、6(ゼクス)、7(ズィーベン)、8(アハト)
魔王様直属の配下1名のみが持てる 9(ノイン)
最も高いのが魔王様のみが持てる 10(ツェーン)
その中でもドラグニル家は貴族の中では最も高い8の階級に属してるらしい、それにミュートさんは人間とドラゴンのハーフで、どちらかと言うと人間の血を濃く着いでるらしいので人界でも公爵の位を授かってるらしい。
本人は魔族としての階級は親の七光りで、公爵のくらいもその恩恵のおかげで自分の力で得たものでは無いと言っているが、人間と魔族の架け橋なんていう凄い仕事を24歳ながらに完璧に捌ききってるらしい。
エレナさんとリアナは人間だけど代々ドラグニル家に使えてたらしく、幼い頃からメイドとして働いてた分他の人より動きが洗練されてる。
「そういえば恵さん、お嬢様が話したいことがあると言っていたのですが、お時間大丈夫でしょうか」
「大丈夫ですけど、何かあったんですか?」
「色々渡さなきゃならないものがあるらしく、貴重なものなので直接渡したいと」
「分かりました、どこに行けばいいですか?」
「こちらで待っていただいて大丈夫ですよ、直ぐに連れてきますので━━━では失礼します」
リアナは一礼すると部屋をあとにした、それと入れ替わるようにある人が部屋に入ってきた、
「恵君久しぶり、元気してた」
「ラックさん!お久しぶりです、⋯⋯ってそういえばいうどうしてこの前は勝手に居なくなったりしたんですか」
「いやー、せっかくの感動の再会に水を刺したくなかったですし、私あんまり得意じゃないんですよね・・・偉い人って」
「誤魔化さないでくださいよ!心配したんですよ⋯⋯いくら強いと言っても女性ですし俺見たく何があるかわかんないんですから!」
「⋯⋯ご、ごめんなさい」
ボケを全て受け流した後の叱責はさすがに答えたらしく、子犬見たく縮こまった。
「というかどうして入ってこれたの?今は厳重警戒体制になってるから普通は入って来れないはずなんですけど」
「堂々と正門から入ってきたけど、別に何も言われなかったよ」
少なくとも正門近くには10数人の兵士の方たちがいる訳だし、家の中は正門よりも警備を厳重にしてるからそれで怪しまれないなら大丈夫だな。
「今日はお話ついでに良いもの持ってきたよ、えっと⋯⋯はいこれドラグニル家の方に渡してね」
「何ですかこの封筒?」
「君を危ない目に遭わせた奴の情報だよ」
「えっ!?」
そんな重要な物俺に渡さないでよ、無くしたくないし自分で持って行って欲しいんだけど⋯⋯凄い気になる。
「これで外出できるようになるでしょ、そしたら一緒に遊びに行こうよ!」
「遊びに行くのはむしろこっちからお願いしたいんですけど、どうしてヴィトレイのことがわかったんですか?」
「言ってなかったっけ、私情報局で働いてるから人を探すのは得意なんだよ⋯⋯まぁ知り合いにお願いして調べてもらっただけなんだけどね」
最後の方は何を言ってるか聞こえなかったけど、情報局ってどんなところなんだろ?こんなに早くヴィトレイの情報持ってこれるって、しかも俺口頭での説明しかしてないのに⋯⋯
「後ついでにこの手紙も渡して貰っていいかな、そろそろ帰らないといけないし」
「早くないですか、来てからまだ5分くらいしか経ってないですよ」
「今日は元々渡したい物があって来ただけだから、本音を言うならもう少しお話したかったけど⋯⋯余り待たせるのもあれだから」
「誰か待たせてるんですか?」
「そんな感じかな、じゃあ私は帰るけど次会う時までには敬語使わずに話せるようにしといてね⋯⋯友達なのにいつまでも堅苦しい話し方は嫌だからね」
自分ではなるべくフレンドリーに話してたつもりだけど、助けて貰ったりした事もあって無意識にそういう風に喋っちゃってたのかな。日本では相手の顔色伺いながら話すこと多かったし、殆ど目上の人としか話さなかったからな。
「分かった、これでいいよね」
「うん!暇な時に連絡してね!」
片言気味だが嬉しそうに笑いながら部屋を出ていった。
すると入れ替わりでリアナとミュートさんが部屋に入ってきた。
「恵さん、今誰かと話していましたか?」
「ラックと話してましたけどそれがどうかしたんですか?」
「まだ魔道具とか渡してませんでしたよね、今もその話で伺った訳ですし」
「ラックはリアナさんと入れ替わりで部屋に入ってきましたよ、今も部屋から出たら2人が入って来たから廊下ですれ違ったんじゃないですか?」
2人は「見てない」と答え、直ぐに部屋の前にいた兵士に確認するがリアナが出入りしてる以外には人を入れてないと答えた。
これなんかまずいことになる気がする、大事になる前に早く封筒と手紙渡さないと。
「あの、これラックから預かったんですけど」
「恵さんこれはラックさん本人から渡されたもので間違えないですよね?」
「そ、そうですけど何か問題があるんですか」
「いえ、むしろ問題が無くなりました⋯⋯危うく指名手配する所でした」
手紙の封蝋を確認すると目を丸くして直ぐに手紙を読んだ、と思いきや一瞬青ざめたが今はほっとしている。
今の数秒で何があったんだ、顔芸大会出られるくらい顔色変わってたぞ。そして封蝋を見せてくるしそういえばどこかで見たことあるような⋯⋯
「この家紋見覚えありませんか?」
「確か本で見た気が⋯⋯合った、えっとこれは魔王様の家紋と同じですね⋯⋯魔王様!」
「えぇ⋯⋯正直に言いますとラックさんの事を恵さんを襲った連中の仲間だと思っていたんですよ。妙にタイミング良く現れますし、この家に侵入できるくらいの実力者となるとそうはいませんから。ですが全くの勘違いでどうやら魔王様の配下だった様です」
「何で魔王様が配下をよこすんですか?俺と関わり無いはずですよね」
「最初攫われた時に私が助けを求めまして、国賓である恵さんにもしもの事があれば最悪この国が亡びますから、万が一にと思いまして」
「滅びるってそんな大袈裟な⋯⋯」
「大袈裟なら良かったんですけどね⋯⋯えぇ本当に」
すっごい遠く見てる!目に光がないんだけど、俺ってどういう存在なの!?それとも異世界の人ってこの世界だとそんなに重要な人なの?待って頭痛くなってきた⋯⋯
「でもそれならどうしてラックなんですか?あいつ仕事は情報局って言ってましたよ」
「その情報局を作ったのが魔王様なんですよ⋯⋯あぁ言い忘れてましたけど今回該当するのはライラ様ですから、他の魔王様は関係ないですからね」
ライラ様ってあれだよね、【世界】の2つ名持ってて、魔王のまとめ役的な人だよね。じゃあラックって魔王の配下だったんだ、どうりで強いわけだよ。
「こちらの封筒の内容も情報局が関わってるとなればおおよその見当はつきますね、それと近々優秀な傍付きのメイドを1人よこすそうです⋯⋯はぁ⋯⋯ライラ様がメイドを⋯⋯失礼があったら私の首が飛ばされそうなんですけど」
⋯⋯なんでだろものすごく疲れた表情してるよ、安心してというよりは一難去ってまた一難って感じがする。最後の方なんか言ってたけど聞かなかったことにしよう。
「でもこれでようやく警戒態勢が解けるじゃないですか、家中の空気がヒリついてたのでようやく落ち着けますね」
「そうですよ、お嬢様もこれで少しは休めるんですから今のうちに羽を伸ばしておきましょうよ!」
「そうですね、明日1日くらいは休んでショッピングにでも行くことにします」
今まで黙っていたリアナもさすがにまずいと思ったのかフォローに入り必死に励ましている。その甲斐あって多少は元気を取り戻した。
「本題を忘れてました、魔道具の用意ができたので持ってきたんですよ」
ミュートは思い出したかのように本来の要件について話し始める。持ってきたいくつかの魔道具の説明を簡単に済ませる。
通信機等の日本にありそうな物やアイテムボックス等の見たこともないような凄い物までくれた。
その中でもアイテムボックスが1番凄かった。指輪の形をしていて身につけると頭の中に情報が流れてきた、今アイテムボックス内にある物らしい。出したいと思う物を思い浮かべると出すことができ、仕舞いたい場合はそれに触れることでしまうことが出来る。それに使わない時は指輪が透明になり手に着けている感触も無くなる。
「アイテムボックスは本来持ち主の魔力の量に寄って容量が変わるのですが、それは持ち主の魔力の量に関わらず一定の容量まで入れられる物なので安心してお使いください」
「ありがとうございます、こんな便利なもの頂いてしまって、それと明日出かけてきても大丈夫ですか?この前は街を見れませんでしたしラックと遊びに行く約束したので」
「それは構いませんが、ラックさんとは1度顔合わせをしておきたいので来て貰えるよう頼んで貰えませんか」
「分かりました、明日にでも伝えておきますね」
要件を伝え終わると「時間も遅いのでこれで」と部屋を去っていった⋯⋯俺もそろそろ寝ようかな。と寝巻きに着替えようとするとポケットから紙が出てきた。
「なんだこれ?えっと『恵君へ⋯⋯魔道通信機貰ったら連絡してね!絶対だよ!』、なんて都合のいいタイミングなんだ⋯⋯でも今日はもう遅いし寝てるだろうから明日にでも連絡入れよう」
そうして寝巻きに着替えそうそうに布団に着いた。
━━ 一方その頃ラックは ━━
「連絡まだかな~そろそろ貰った頃だよね!」
鼻歌を歌いながら来る事の無い恵からの連絡を一晩中待っていた。
「早く来ないかな~」
本文に入れなかったので補足なのですが、2つ名は魔王+1名のみ持つ称号とでも思ってください。
主にその人の特徴を2つ名にしました。
だとした【世界】って何と思うかもしれませんが今後書いていくので待っててください(滅茶苦茶後になると思います)。
それとラックの事そこまで書けなくてすみませんでした。
次こそ書いてみせますって言いたかったんですが、私の頭の中でできてる話の構造的に次は無理かもです。
でも話には出します!!
何とか頑張ってみますが期待はしないでください。