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仲のいい幼なじみでした

一瞬目の前が真っ白になったと思ったら、今度は周りが薄暗くなった。いきなり明るい場所から暗い場所に移ったせいで視界がはっきりしないが、少しずつ目が慣れてくるとそこには2、3人の女性と鎧を着た人が数人たっている。

床を見るとレンガの床に魔法陣的な物が描いてありその上に座ってる形で転移したらしい。


「お待ちしていました、宮下恵様で間違いありませんでしょうか」

「は、はい、合ってます」

「良かった、成功したのですね。申し遅れました、私はミュート・ドラグニルと申します。混乱してる中申し訳ないのですが色々お話しなければいけない事があるので応接室まで着いてきて頂けますか」

「分かりました⋯⋯うわっ!」


立ち上がろうとすると足に思うように力が入らずそのまま後ろに転びそうになってしまう。


やばい、体に力が入らない。中途半端に立ったからこれ頭打つかも。


覚悟を決めて目を瞑るとふわっとした感触が背中を覆い支えてくれた。


「大丈夫ですか」

「あ⋯⋯ありがとうございます、助かりま⋯⋯ってちょっと!?」

「どうかしましたか?」


メイド服を着ている女の人が体を使って支えてくれたらしい、背中に柔らかい感触がしたがそんな事を考える暇もなく何故かお姫様抱っこをされている。


首傾げて「はい?」ってこっちみてるけどなんでお姫様抱っこされてるの?しかも女の人に軽々持たれてるんだけど、俺60キロ位はある筈なんだけどな⋯⋯


「安心してください、私そこそこ力に自信はありますし、宮下様も転移直後でお疲れだと思いますからこのままお運び致します」

「いや、ちょっと待ってください!」

「ご心配には及びません、なんの問題もなく運んでみせますので」

「宮下様お気持ちは察しますが少しの間我慢しては頂けないでしょうか、今の宮下様は転移の反動で体力を殆ど使い果てしてますから、余り無理はしない方が良いかと」


とは言ってもこのメイドさん控えめに言っても胸が大きいから、さっきからずっと当たってるんだけど。でもメイドさんの顔を見る限り放してくれそうにないし、⋯⋯こうなったら心を無にして円周率でも数えていよう。


「じゃ、じゃあお願いします」

「はい、任されました!」


そうして応接室まで運ばれているとふと気づいたのだが、この建物相当大きいのかもしれない、天井まで5m以上は有りそうだし廊下も100メートルなんてもんじゃないぐらい長い、もしかしてここってお城とかなんじゃないのかな。


「着きましたよ」


だいたい5分くらい運ばれたのかな、ドアも日本の戸より一回りくらい大きいな。

因みに心を無にして円周率を数えるなんて出来るわけがなかった⋯⋯

俺は大きなソファに座らせて貰ったが、最後まで補助をしてもらった。介護を受ける人ってこんな気分なのかな⋯⋯

正直体はちゃんと動けるレベルには回復したけど言っても聞いて貰えそうになかったのでそのままにしておいた。


部屋の中にはミュートさんと俺を担いでいた人を含めた2人のメイド服の人だけが残り、他の人は部屋の外へ出ていった。


「改めまして、人界と魔界の仲介を任されております、ミュート・ドラグニルと申します。こっちのよく仕事をサボるのがメイド長のエレナでさっきまで宮下様を抱えていたのがリアナと言います」

「酷い、お嬢様ったら私のことをそんな風に思ってたなんて・・・これは心の傷を癒す為に1日ほど休暇を貰わないと」

「そういう所です!!真面目に仕事しなさい」

「宮下様、この2人のことは気にしなくて大丈夫ですので。それと申し遅れました、ドラグニル家専属メイドのリアナです、何か困ったことがあったら遠慮なく申しつけください」


ミュートさんとエレナさんがコント的な事を繰り広げてる横で淡々と挨拶するリアナさん、この3人仲がいいんだろうな。

それにしてもリアナさんはさっきと随分雰囲気が違うな、さっきはこっちの話も聞かずにお姫様抱っこして来るおてんばな人かと思ったら、今は凄い真面目な感じだ。というか思い出したら恥ずかしくなってきた。


「ありがとうございます、自分は宮下恵って言います。その、宮下様はむず痒いので(けい)って呼んでください」

「分かりました、ではそのようにさせていただきます。それとそこの2人はいつまでやってるんですか、話が進みません」


いつまで経ってもふざけ合ってる2人に呆れたのか頭にキレイなチョップを入れる、2人とも「いたっ!」「ひゃっ!」と痛がっている。⋯⋯正直いって自業自得としか言えない。

チョップした本人は2人を置いてティーカップとポット取りに行ってるし、メイドさんがこんなことして大丈夫なのかな?


「えーっと、皆さん仲が良いんですね」

「まぁ、私たち幼なじみですし。私だけ私だけ年がひとつ上ですけど」

「そうなんですか、道理で」


エレナさんの言葉で納得した、3人の仲の良さは傍から見ても良すぎるくらいだ。とても主人とメイドとは思えない会話だったからな。


「気を取り直して、本題に入りたいのですが創造神様から何かお聞きになりましたか?」

「1年くらい好きに過ごしてみませんかと言われたくらいです」

「そうですか、詳しいことを話しますと、この世界は色々とお祭り事が有るのですがそれに対して素直な感想を求めたいのですが、色々と問題があって難しいんですよね」

「⋯⋯問題と言うのは?」

「魔界に住む魔人族は縦社会が何より重要視されていて、上の人に失礼を働こうものなら人生が最悪終わったりします。人族に関してもこういう命令を出す人は大体が貴族だったりして、答えるのは普通の人ですから適当なことは言えないんですよね」


心做しか言葉が重いような気がする。

どこの世界も長い物には巻かれなくちゃいけないのか、てかさっきも言ってたけどやっぱり魔人族って居るんだ。

⋯⋯今度会ってみたいな


「ですので異世界の人に白羽の矢が経った訳なんですよね」

「ですのでって間どうなったんですか、そんな気軽に異世界に関わってもいいものなんですか!?」

「えぇ、特に問題は無いですよ。そんな頻繁には呼べませんが何十年かに一度の頻度で招待しますし、主に繁栄目的で」

「もしかしてこの世界って勇者とか魔王とかっているんですか?」

「いますよ」


恐る恐る聞いてみると、何だそんな事かみたいな感じで軽く答えて来た。魔王って恐怖の大王的なあれじゃないの?なんでそんなに軽く答えられるの?


難しい顔して考え事をしていたら、見透かされてたような返答が帰ってきた。


「正確には魔王様はいますよ、勇者様は寿命でお亡くなりになりました、それと勘違いされてるようなのですが魔王様と言ってもそちらの世界の書物のような残虐な方では無いですよ。確かに恐れている人もいるのは確かですが、それ以上に崇拝されたりすることの方が多いですよ」


さっきまでの思いしゃべり方とは違って生き生きとしている。


「ライラ様は、魔界だけではなく世界を纏めあげたり、人と魔族の共存に力を入れて下さってますね。デザイア様は恵さんの世界の魔王に1番似てるかもしれませんね、主に魔界の統治を行っていたりします。ネロ様は我が道を進むかっこいい魔王様ですね。フィレント様は全てのものを愛し全てのものに愛される正に女神の様な魔王様です」


魔王って4人もいるんだ、普通ひとりじゃないのかな?

それにしてもミュートさんすごい魔王のこと知ってるんだな⋯⋯とても着いていけないや。



「お嬢様、恵様が引かれてますよ」

「えっ!?何でですか?」

「本気で言ってます?異世界人である恵様からしたら魔王様は見ず知らずの人なのですよ、そんな人の事を饒舌に褒めちぎってたら話にもついていけなくなりますよ」

「す、すみません」

「いえ、魔王様が素晴らしい人ってことは分かりましたし、とても勉強になりました」

「ですよね、魔王様は素晴らしいんですよ。今度魔王様の勇姿や功績を書いた本を持っていきますね」

「お嬢様!!本題の続きを!」

「はっ!はい」


リアナさんの気迫に気圧されたのか、落ち着いてなんなら縮こまってすらいる。


「こっちの世界では主にのんびり過ごしていただいて、たまにお祭り事に参加していただいて正直な感想を言ってもらえればそれで十分ですので。特に皆の前で何かをするようなことは無いので、安心してください。」


要約するとのんびり過ごしつつお祭りを楽しみましょうってことなのかな、俺としてはありがたいけど良いのかな⋯⋯そんなに幸せになって、あれ?何で幸せになっちゃダメなんて思ったんだろう、まぁ⋯⋯いいか、


「それと、こちらで暮らす間の生活は当家が責任を持ちますので遠慮なく言ってください。住む家に関してはドラグニル家に住んでもらう形になります、防犯上1番安全だと判断しましたのでこのような形を取らせていただきました。金銭面的な補助につきましては月に大金貨1枚をの銀貨及び小金貨を送らせて頂きます」

「そんなにですか!」

「えぇ、大切なお客様ですから。創造神様からも丁重に扱うように言われてますし」

「えっと、そんなに驚くような金額何ですか?」


エレナさんの驚きからするに大金なのは間違いないだろうけどいまいちピンと来ないな。


「この世界の常識などについては明日にでも詳しく書かれた本を用意しますが、大体銅貨1枚でヒャクエン?と同じ価値らしいですよ。そこから10枚ごとに銀貨、小金貨、金貨、大金貨、白金貨と単価が上がっていきます」


えっと、銅貨が100円だから大金貨は大体100万円位か⋯⋯ひゃ!100万円!!いくらなんでも多すぎでしょ、そんな大金貰ってどうしろって言うんだ、しかも毎月って、どこにそんなお金があるんだよ。



「そんなに貰えませんよ、だって100万円ですよ!」

「そのヒャクマンエン?が何かは分かりませんがこれくらい当然ですよ、何不自由無く過ごしてもらうには少し足りないかもしれないので、足りなくなったら遠慮なく言ってください。ドラグニル家はお金だけはありますから」

「いやいや、お嬢様はお金持ちだから一般の金銭感覚が無いんですよ。普通は一月に金貨4枚もあればそれなりに裕福に過ごせますからね」

「エレナは何を言ってるんですか!右も左も分からない世界にいきなり放り込まれたのですよ、誰に頼っていいかなんて分からない今信用できるのはお金だけですよ!お金なんていくら持ってても困ることはありませんから、持っておくに越したことはないんです!」

「はぁ⋯⋯」

「という訳なので遠慮なく貰ってください」


エレナさんとリアナさんを見ると諦めて下さいと言わんばかりのジェスチャーで返してくる。

この世界に来てわかったことがある⋯⋯諦めは肝心なんだなって。


「それじゃあこれから買い物にでも言ってきてください。色々必要な物もあると思いますし、街を見てくればどんな世界なのか少しは分かると思いますから。その間にこちらは先程言ったこの世界の常識を異世界の人に分かりやすくまとめた本を用意しておきますから」

「ほんとですか!実は街を早く見て回りたいと思ってたんですよ、異世界の食べ物とか道具に凄く興味があったので楽しみです」

「それは良かったです、夕食は6時半頃になるのでそれまでには戻ってきてくださいね。それと護衛を付けるので、それまでは敷地の外に出ないようにしてくださいね」

「なら、少し庭を見ていても良いですか?」

「えぇ、庭なら問題ないので大丈夫ですよ」


早く外の景色を見てみたいな、色んな人も見てみたいし楽しみだな。

早速外に行きますか、庭限定だけど。


俺は足早に応接室を後にして外に向かった。


「リアナ貴方に護衛をお願いしたいのだけれど良いかしら?お金も持って行ってもらいたいし」

「分かりました、準備してまいります。」


そのままリアナも応接室を後にして残ったのはミュートとエレナの2人だけになった。


「あんな純粋そうな人を騙していいのかしら」

「騙してるわけじゃないでしょ、一応は全部事実なんだから」

「いくらライラ様の命令とはいえ真実をほとんど話さないのはどうかと思うのよ」

「ミューの言いたいことは分かるけど仕方ないことだよ、私たちは事前にたくさん相談して結果この依頼を受けることにしたんだから。別に悪い事をしてるわけじゃない、ただ魔王様の役に立ちたいだけなんだから」

「わかってるの、でも!」

「辛くなったらまた私に愚痴っても良いから、自分を追い詰めるようなことはしないでね」

「うん」


最後少しだけ不穏な空気にしましたが、問題ありません!

この2人は至って安全です。

別に恵を何かの生贄にしたりだとか殺したりなんてことは一切ないので安心してください。

あくまでこの転移には危なくない黒幕(魔王)がいるだけですので心配せずに見守ってください。

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