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水際の美少女。

要るか要らないかで言われたら多分要らない回。でも書きたいから書きました。

 本を借りべく図書室にやってきたリゼル。屋外船頭にあるプールデッキに対して図書室は屋内の船尾にあり、移動には少し時間がかかった。レシアを待たせるのも悪いと、本はすぐに選んで借りて、すぐに戻ろうと考えていたリゼルだったが、その考えも図書室の規模を目の当たりにして揺らいでしまう。


「すげぇな......豪華客船とはいえ、ここまでか......」


 リゼルは図書室内を見渡し感嘆の声を漏らした。ズラリと並べられた本棚は文字通り圧巻だった。部屋の広さも船内3階分程度はあるだろう。パンフレットのレビューや船内図を事前に読んでいた見てはいたが、それでも驚きを隠し切れない規模だった。


「ナニカ、オ探シデスカ?」


 本棚を眺めていると、リゼルの元に一体の()()()()がやってきた。そう、この豪華客船では飲食店を含め一部施設の接客対応に人工知能ロボットを導入しているのだ。

 リゼルはロボットから渡されたタブレットで借りたい本を選ぶ。端末を返却すると、ロボットは「今ゴ用意シマス。少々オ待チ下サイ」と言いながら本棚の方へ向かった。リゼルは棚に並べられた本を見て回りながらそれを待つ。

 人工知能ロボットの導入は現代ではそこまで珍しいものではない。してる所はしている。それは言い換えれば、ロボットの有用性を十分に証明していることにもなる。今回のリゼルのような接客対応をスムーズに行うには最適だろう。また、ロボットを導入することで、その施設の人員を他に回せる事にある。


「乗せる客が多くなれば、その分面倒事や対応することも多くなるからな。無駄な苦労を減らせる所で減らすってのは実にいい事だと思うわ」


 合理性効率厨のリゼルは感心したように言葉を漏らしていた。


「んで、現代のこれを成り立たせたのが『時代を変えた科学者ジン・テクスチャ』か......」


 呟いた言葉の先には『ジン・テクスチャの全て』と題名に書かれた分厚い本があった。リゼルがその本を手に取ろうとした所で、先程のロボットが戻ってくる。


「オ待タセシマシタ」

「さんきゅ」

「ソチラモ、貸出書籍ニ加エマスカ?」


 ロボットは聞いた。器用にも彼の感情を探っていた。その事にリゼルは僅かに目を見開き、その言葉に乗るように本を重ねた。


「折角だし読もうかな。いいもん見せてもらったし」


 受付へ向かう途中で目の止まった本を手に取ってはロボットに乗せ、最終的には10冊以上の本を借りてリゼルは図書室を後にした。


-------------------------


「はぁぁぁぁ......」


 本を持って船頭に戻ってきたリゼルは、目の前の光景に深いため息をついた。ピアスを多く開けた金髪の男と肩に小さな刺青の入った茶髪の男、そしてスキンヘッドの男。見知らぬ3人の男が、レシアを囲んでいたのだ。男達からは下心の透けた下衆な笑みが伺える。


「なぁ嬢ちゃん、暇してるなら俺らと一緒に遊ばない?」

「この子めっちゃ可愛いじゃん。大当たりでしょ」

「ここじゃ暑いっしょ。あっちの日陰行かね?」


 聞こえてくる会話の内容からも疑いようないだろう。ナンパと言うやつだ。レシアが、ナンパされていたのだ。その事にリゼルは頭を抱えた。


「はぁ......」


 そしてもう一度ため息をつくリゼル。本選びに時間をかけすぎたのが悪かっただろうか、普通にナンパする奴が悪いだろと、誰の責任か問題へと思考が向く。


(というか、この船に乗ってるのって一大企業の社長とかの豪邸か、それに雇われた冒険者くらいだろ? そういう輩でもナンパとかするんか。逆に金あるから故の女遊びか......)


 彼らの行動原理を想像しただけでため息が着きそうになる。これは無駄な思考だろう。


「ごめんなさい、私、人待ってるから」

「誰? 女の子? ならその子も一緒に遊ぼうぜ」

「ううん、違う」

「男? 誰だか知らないけど俺らの方が絶対楽しい思いさせてやれるよ」


 そう言って金髪の男の手がレシアを掴もうとした時、ようやくリゼルが動き出す。


「や、お待たせ」

「リゼル、おかえり」

「ん」


 リゼルは手を伸ばした男からレシアを遮るように割って入り、無駄に高いその身長と羽織っていた上着で彼女を隠す。ローブがあれば肌も含めて全身隠せたかもしれないが、部屋に置いてきてしまったのでしょうがない。


「なんだガキ」

「おい、邪魔すんなよ」

「てめぇ、その女の連れか?」


 ナンパを邪魔された不快感からか男達が唸るような低い声で言いながら、リゼルを睨みつける。対するリゼルは、レシアを隠したままゆっくり振り返る。一瞬だけ彼女の手を握る様子を見せつけては、すぐさま隠しアピールも忘れない。その一瞬が見えた茶髪の男の1人が舌打ちをすると、リゼルは男顎を突き出すようにして向き直った。


「そうですけど、何か用ですか?」


 相手が何人だろうと、ナンパ慣れした男達だろうと物怖じせず、リゼルは至極冷静に言葉を返した。声色と態度と、男達よりも高い身長から見下すような形になってしまった。その事でまた男達の怒りを逆撫でるのだが、まあいいだろう。


「てめぇが、この女の連れだァ? 釣り合ってねぇんだ......よ......」


 言いながら男達は物色するようにリゼルの全身鑑定する。視線が顔の辺り行ったところで彼らの言葉が詰まった。そして、男達は顔を合わせた。


「おい、こいつ思ったより面良いぞ」

「背も高ぇしな」

「美男美女かよ! ふざけやがって!」


 3人の男達はリゼルについてぶつぶつと文句を言っている。内容としては褒めているのか妬んでいるのか分からないものだが。彼らの小声すらも僅かながらに聞こえているリゼルは、小さくため息をついた。


「あの、まだ何か用ありますか?」


 このまま待つのは時間の無駄だとリゼルから言葉を投げる。男達はリゼルの言葉に再び彼の方を向く。敵意は見えるがこれ以上絡んだり厄介事になる気配は既に無くなっていた。


「けっ! 見せつけやがって! そんな可愛い彼女がいるなら大事にしまってろってんだ!」


 茶髪の男が吐き捨てるように言っては、最後に盛大な舌打ちをして返し去っていった。ナンパ撃退、という事でいいだろう。呆れか安堵かリゼルは小さく肩を下ろした。


「あの人達、なに?」

「(レシア、自分がナンパされてた自覚ないのか......ほんとに、色々大丈夫か?)......さぁ? なんだったんだろうね」


 自分に起きた事を理解してない様子のレシアに合わせるように、リゼルは言葉を返す。がその直後、青年は言葉を失い固まった。目の前の美少女の姿に、釘付けにされてしまったのだ。

 結ばず下ろされた長い白髪と、小柄ながらもスタイルは良く肌も綺麗な体。それに合わせた白い水着が神がかっている。夏の国では着ていなかったが、上に白く透明なレースのような水着も羽織っており色気もある。そして何より顔が良い。可愛い。


「リゼル?」

「......」


 返事がない。ただのしかばねのようだ。いや、どちらかと言うと案山子だろうか。


「リゼル、大丈夫?」

「......あ、あぁ、ごめん、ぼーっとしてた」


 体を揺さぶられようやく意識が戻ってきたリゼル。これほどの美少女が水際で1人で居たなら声にかけるのは仕方ないだろうと、ナンパ男達への同情を考えながらリゼルは軽く頭を叩く。


「大丈夫? 熱中症?」

「大体そうかも。というかごめん、もう1回熱中症って言って貰える? 次はゆっくり、一文字一文字丁寧に」

「なんで?」

「うそごめんなんでもないわすれて」


 己の邪な感情を払うように頭を振り、リゼルは落としていた本を拾う。このままレシアと向き合って話していたら本当に熱中症になってしまうかもしれないと、逃げるように彼は踵を返した。


「んじゃ、俺は本読んでるから。またさっきみたいなのが来たら呼んで。そうじゃなくてもなんか用があれば声掛けてくれていいよ。それじゃ」


 無駄に早口で答えるリゼル。ナンパを撃退した美青年も実態はただのチェリーボーイという訳だ。


「リゼルは、プール良いの?」

「良いよ。インドア派だし」

「そう? わかった」


 視線は向けず、少しズレたような言い訳を残して彼は日陰のベンチへと歩き出した。その後ろ姿を少し寂しそうに見送りつつ、レシアもまた自分が楽しむプールの方へ飛び込んだ。

旅彼世界ではジン・テクスチャともう1人有名な偉人がいますが、その2人の話はどこかで書く予定です。どこで書くかは未定。

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