これからの予定。
固い握手を交わしお互い(主にレシアだけだが)を受け入れたリゼルとレシアは国王の部屋に戻り、彼に旅の目的地を伝えた。
「妖精の国か、また随分と大きく出たな」
「うん」
「君達がどういうルートで妖精の国を目指すかは分からないが、きっと長旅になるだろう」
「だろうな、だからこのカードは有難く使わせてもらうよ」
「ああ、君達の役に立つなら、それでいい」
国王は柔らかい笑みを浮かべ言った。
レシアの口から目的地を聞いた時は金なり後ろのシラフネ達も含めを目を見開いて驚いていたが、話を続けていくうちに落ち着きを取り戻し、今となっては魔神討伐の御礼に渡したカードが役に立つと喜んでいる。
「しかし、妖精の国、幻の国か......何か、アテとかこの国の近くにあるだろうという情報はあるのか?」
「あったら苦労しないだろ」
「それもそうだな」
国王の言葉に即座に否定しつつ、一応と、リゼルは確認するようにレシアの方を見たが、彼女の方も首を横に振った。
幻の国は一生かけても辿り着く可能性がない程の文字通り幻の存在だ。情報があれば当然楽にはなるだろうが、そう簡単に情報が手に入るならレシアも何年もかけて旅はしていないだろう。
(そう考えると、ようやく手に入れたであろう幻の国の情報が、違う幻の国の情報だったあの時は、結構堪えたんだろうな。それこそ、普段無表情なレシアが分かりやすく残念がるほどに)
森林の国でのレシアの表情を思い出したリゼルは、一人勝手に納得したように頷き、少し同情の目を彼女へ向ける。
彼の行動はさておき、国王は何か助けになれないかと顎に手を置いて悩んでいると、ふいに、国王の後ろで立つシーアが声を上げた。
「そういえば、そろそろ大感謝祭の時期じゃない?」
「大感謝祭?」
「え、レシアちゃん知らないの!?」
『大感謝祭』という出てきたワードにレシアが首を傾げると、シーアは大袈裟反応する。大袈裟過ぎる気もするが、携帯すら詳しく知らなかったレシアなのだから大感謝祭を知らなくてもしょうがない部分はあるだろう。
不思議そうにするレシアに教えるようにリゼルが口を開いた。
「大感謝祭は平和協定祭とも言われる、魔人大戦の終戦から約500年後に結ばれた平和協定を記念した賢者主催の感謝祭なんだ。簡単に言うと『魔族の人類が仲良くやれる協定作ったから、祭りとして盛り上げて交友深めようよ』ってこと」
「うん......?」
「まあ、開催が5年に1度だからね。生まれてからずっと旅をしているレシアが知らないというのもしゃーないよ。それより、その感謝祭がどうしたんだ?」
説明を聞いてもわからなそう首傾げながら頷くレシアを見て、リゼルは軽く補足と擁護を加えてシーアに話の続きを促す。
「えっと、その感謝祭って色んな国から商人だったり、冒険者だったりが集まるじゃん? 賢者とまでは行かなくても、その人達から話聞けたり情報貰えたりしないかなーって思ってさ」
「つまり、今ここに知っている人はいなくても、人が集まれば、その中に情報を持っている人間がいるかも知れない。って事ですか?」
「そーそー! 私も大感謝祭は毎回行くんだけど、そういう時も冒険者関連だったりそれ以外だったり色んな話が耳に入るからね」
シーアの説明をメイリーが分かりやすく要約し、シーアが「そういう事が言いたかった」と言うように興奮気味に肯定した。
「でも今年はフィルドレアの件の後処理もあるからな。残念だが今回行くのは厳しいぞ」
「そんな〜」
今年も行く気満々だったらしいメイリーがシラフネに残酷な現実を押し付けられ泣き崩れているが、それは置いておく。
情報とは人の言葉から回ってくるものだ。それが真であれ偽であれ、人が増えれば回ってくる情報も当然増える。ならばより多く人が集まる記念祭なら、回ってくる情報の中でリゼル達が求める情報を持つ者がいる可能性も高くなるという事だ。その事を考えていたリゼルも、彼女らの提案には「悪くない」と思っていた。だが、提案には悪くないと思いつつも、リゼルの表情は決して明るくはなかった。
「問題は、開催場所とそこへのルート、そして時期だな?」
「......あぁ」
国王がリゼルの悩みを見抜いているかのように聞き、リゼルもそれに頷く。
大感謝祭の開催場所は毎回変わらず、中央大陸さらに中央、世界の中心点とも言われる場所『大都市グラスフィード』で行われる。
そのグラスフィードに行くには、夏の国から出ている旅行船に乗り、中央大陸の端にある国で下船し、そこから別の移動手段を用いてグラスフィードに向かうことになる。開催時期は1ヶ月後で、距離やルートを考えても到着には十分間に合うが......。
「カードが使えないな......」
そう、問題は乗る旅行船である。今から大感謝祭に間に合うように、乗る旅行船は国王から受け取ったカードが使えるテリープシップではない。無論、テリープシップに乗ってもグラスフィードには向かえるが、快速ではなく各駅のテリープシップでは大感謝祭にはギリギリ間に合わないだろう。
顎に手を置き、考える人のポーズでリゼルがどうにかならないか考えていると、突然何かを思い出したかのように顔を上げた。
「.....あ、いや、ちょっと待て」
「どうした?」
気にかける国王を無視し、リゼルの視線はレシアへと向く。
「レシア、妖精の国って確かエルフの住処だよな?」
「うん。私と一緒に旅してた人もエルフだったし、そこが故郷とも言ってたよ」
「それだ!」
「どれ?」
レシアの証言にリゼルは嬉々とした表情で指を鳴らした。何かを閃き、それに確信が着いたように。
「俺の母方の祖母がハーフエルフなんだよ。で、その人が今住んでる場所がグラスフィードに近い小さな村、マラヤ村って場所なんだ」
「そうなんだ」
「マラヤ村なら、テリープシップでリロルド海港まで出るのが早いだろう」
興奮気味に話すリゼルに、シラフネが船と航路の情報を付け加える。それに対してもリゼルは「そう、それ!」と指を鳴らした。
つまりリゼルの考えはこうだ。
まず、国王から貰ったカードでテリープシップに乗りリロルド海港まで行く→リロルド海港からマラヤ村まで行き、ハーフエルフであるリゼルの祖母から妖精の国の情報を聞く→有益な情報があったら良し。なかったら予定通り大感謝祭に参加して冒険者や商人から情報を手に入れる。
大感謝祭の後のことはまだ何も考えていないが、それに関しては大感謝祭で手に入る情報次第だろう。
「確かに、それなら無駄な金も使うことも少ないだろうし良いだろう」
「だろ?」
「よし、ならテリープシップの予約は、私が無理やりねじ込んでおこう」
「1番早いのだったら明日出発のがあったはずだ。国王、ねじ込むならそれがいいだろう」
「そこまでしてくれなくても......いや、これ逃すと次乗れなくなるのか、じゃあしゃーないな。頼むわ」
「当然だ。君達は国の英雄だからな、君達の旅路には可能な限り協力させて欲しい」
国王とシラフネが権威を振りかざすような物騒な事を言い出し戸惑うリゼルだが、冷静に状況を考え、その厚意に甘える。今は権威のどうこうよりもレシアとの旅路の方が彼にとっては重要なのだ。彼らがそれに協力するというのなら甘んじて受け入れようとリゼルは思った。




