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魔神討伐の報酬。

 翌日。リゼル達は王宮にて、最初に来た時のように、テーブルを1つ挟み国王と向かい合って座っていた。国王の子達も最初の時のように、国王の後ろに立っている。

 今にも面倒事を頼みそうな雰囲気だが、今更彼らに頼る面倒事などない。それが分かるように国王は気軽に話し出した。


「まずは改めて、国を救ってくれて事に心からの感謝を。ありがとう」

「1回言えば十分だって」

「君にとってはそうかもしれないが、国王(わたし)にとっては一生忘れることなく、ずっと言い続けねばならないことなのだよ」

「面倒くさいな。まあいいや、今日の話はそれがメインじゃないだろ?」


 リゼルの問いかけに頷き、国王は本題に入る。


「まずはこれを」

「これは、なに?」

「報酬だ。今回の依頼のな」


 国王は懐から2つの布袋をテーブルに置いた。レシアが中身を確認すると中に入っていたのは金である。数枚の銀貨である。


「これは君達が特別ではなく、今回の戦いに参加してくれた冒険者全員に渡している」


 リゼルもレシアも、なんなら他の冒険者のほとんども気にしていなかったが、魔神とその配下との戦いは国王が出した"依頼"だった。結果的にも勝利を得れたのだから報酬を出すのは当然だろう。


「全員に出したのか? 太っ腹だな、大丈夫なのか?」

「依頼者として当然の事だからな。それに一部冒険者はこの報酬金を国の復興に当ててくれている。ありがたいものだ」

「それ言い出すと、俺らもそうしなきゃ行けない雰囲気あるだろ」

「強制はしないさ。君達は特にね」


 魔神の討伐から3日が経ち国の方も安定してきている。元より被害が甚大というほどでもなかったが、それ以上に、冒険者達が復興に協力している事が大きかった。彼らの中には城で戦った者もおり、そうでなくとも、フィルドレアに操られた魔族や魔獣から国を守った者がほとんどだ。その中には当然死亡者もいる。元奴隷だった者もや1回目から付き合った者も。彼らの働きが報酬に見合うものなのは間違いないだろう。それでも彼らは口を揃えて「()()()魔神を倒してくれたから」と言っては、自分達の役割は国の復興のためにあるかのように働いている。報酬を国のために使っているのだ。

 やはりそれを聞くと金の使い方には悩まされてしまうが。


「君の要望通り、魔神妃フィルドレアの討伐はシラフネがしたということになっている。だが、何人かは本当の討伐者は違うと気づいているようだがね」

「俺だって分からなきゃなんでもいいよ」


 今回の戦いにおいて、リゼルは「自分が魔神妃フィルドレアを討伐した事を公表しないで欲しい」と国王に頼んでいた。彼の性格とその意図を汲み取った国王は、リゼルの要望通り、討伐者をシラフネへと置き換えて公表したのだった。とはいえ国王自身が口にした通り、実際はシラフネが討伐した訳じゃないという事は既にバレている。それでも問い詰められる事がないというのは、国王が気づいてそうな相手に口止め料を払ったからだ。当然その事はリゼル達には知らせていない。


「さて、ここからが本題だ」


 コホンッと咳払いをし、真面目な表情で国王は話し始める。


「君達は国を救ってくれた英雄だ。君らがいなければこの平和は訪れなかっただろう」

「その時は大人しく賢者呼べ」

「それでもだ。君達はこの戦いにおける最大の功労者、ならば我々は君達に最大限の恩返しのもまた当然の事だろう?」

「......具体的には?」

「君らの旅路に有利になるものを渡したいと思う」


 そう言った国王は後ろで佇むシラフネに声をかける。すると、シラフネは国王の机に置かれていた2枚のカードを渡した。

 「これは?」とリゼルが問うよりも早く、国王はドヤ顔で答えた。


「テリープシップAランクルームの無料利用券だ。しかも使用期限、行き先制限、回数制限なしのな」

「......マジ?」

「マジ」


 国王の言葉にリゼルは思わず目を見開いた。レシアすらも本物かと確かめるように何度もカードを確認している。2人の様子が予想通りだったのか、国王の表情からいやらしい笑みが溢れた。


 テリープシップとは、ここ夏の国から出ている豪華客船である。他の船とは違い、目的地への旅行船ではなく、電車のように各地を回りながら旅行客を運ぶ船である。

 航路の範囲が大きいだけあって、利用料は当然高い。船内ではC、B、A、Sと4段階に利用出来る部屋が分かれており、1番下のCランクルームですら冒険者よりも安定して稼げる普通の社会人が、数年貯金してようやく3ヶ所回れる程度だ。Aランクルームともなれば冒険者が一生かけて稼いでも利用する事は叶わないだろう。1大企業の社長の護衛依頼等であれば話は別だが、仮にそういう依頼が来るとしたら相応のレベルの冒険者のみだ。リゼル達のような知名度の低い冒険者の元に流れてくることはほぼほぼない。

 そのAランクルームの永久無料利用券だ。そこらの国家予算よりも価値があると言っても過言ではない程の価値がこのカードにはある。

 ちなみにSランクルームはもはや値段の問題ではない。賢者などの世界でも特別な立場の者のみが利用出来る特別な部屋だ。


「国王、お前本当にいいのか? こんな、俺らみたいな普通の冒険者なんかに...... 正直、魔神一体討伐した程度じゃ全然足らないと思うレベルなんだが、本当に良いのか?」


 リゼルとてこのカードの価値は十二分に理解している。故に、リゼルにしては珍しいほど狼狽え、不安視していた。

 到底金で買えるものではない。もしオークションにでも出せば国1つ買えるかもしれない値段で落札されても何らおかしくない。そのレベルの物だ。受け取ったら賢者になれとでも言われるのではないかと、不安にすら思っていた。だが国王にそんな思惑はない。国王はリゼルとレシアを真っ直ぐ見つめ、ただ純粋に感謝の気持ちを、感情の籠った優しい声で伝えた。


「確かに懸賞金などの観点で見れば、魔神一体じゃ足りないだろうな。だがな、世間的には足りなかろうと、国の王(わたし)としては、この国を救ってくれたその事実だけで、君達にそれを渡す価値は充分あると思っている」

「おじさん......」

「おじさん言うな」


 リゼルのボケに国王は素早くツッコミを入れる。

 感動シーンかと思えば平然とムードをぶち壊すクソがこの男である。ある意味彼らしいとは言えるかもしれないが、だとしてもだろう。空気を読んだ上でやっているのだから余計タチが悪い。最悪な野郎だ。


「まあいい。それよりもだ」

「賢者にはならねぇぞ」

「......君達にひとつ、聞きたいことがあってな」


 まだ警戒心があるのか、それともボケが恐らく前者だろうリゼルは、国王の言葉にカードを仕舞いながら反応する。

 リゼルの言動を無視して、国王は疑問を投げた。リゼルがずっと聞けず、レシアがずっと話し出せずにいた、核心たる疑問。


「君達の、旅の目的地はどこなんだい?」

リゼル達は豪華客船の無料利用券(永久)を手に入れた。

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