表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/91

ご挨拶。

「魔神妃フィルドレアには勝てない。少なくとも、この国では無理だ」


 国王が語り出す。彼が知る魔神妃の秘密を。


「魔神妃フィルドレアが使う魔法は『液体を操る魔法』だ」

「液体? 水だけじゃないってこと?」

「そうだ。そしてそれは自身が作り出したもの以外も操れる。お前達にかけた技もその一つだ」


 フィルドレアの魔法は水を始めとする、あらゆる液体を自在に操る魔法である。その魔法の技量は長い年月と大戦時代を生きた経験から自身の魔力が付与されていれば、他者の体内の液体だろうと操ることが出来るレベルまで至っている。


「そして、あいつの『液体を操る魔法』は水場においては圧倒的な効力を発揮する。恐らくこの国を狙ったのもそれが理由だろう。この国で、あの魔神に勝てるものなど、存在するはずがない。それこそ、賢者レベルでなければ......」


 だから行かせたくなかった。と、顔を抑え嘆くように国王は呟いた。

 国王の言葉を真に受けレシアの表情にも不安が募る。今からでも行くべきでは? 疑問を抱き、それに答えを示すかのように彼女は鎌を握り立ち上がった。


「意外と、そうでもないようですよ」


 静かに外の2人を眺めていたシラフネが、不意に呟いた。顔で悲壮感を物語る国王と、今にも動き出しそうなレシアと対象的に彼女は冷静だった。或いは希望を見出していたのかもしれない。自分の代わりに戦う、あの青年(リゼル)に。


-------------------------


 静かに見つめ合ったままタイミングを図る2人。そんな中、先に動いたのは魔神の方だった。


肉体の水分を (アクアリズ・)支配する呪い(リューク)


 フィルドレアはリゼルに手を向ける。レシアやシラフネ達にしたように。瞬間、リゼルの体内で、血液や水分が操れ、締め付けられるような感覚が襲う......はずだった。


「!?」


 突然、フィルドレアが弾かれるように跳ねた。何が起きたのか、自分の腕と目の前の人間を交互に見て、事態を理解する。


「ふーん、恵まれてるのね。あなた」

「可愛い彼女に出会えるくらいにはな」

「やかましいわね。そういう事じゃないのよ」


 ふざけた態度で返すリゼルを見つめたままフィルドレアは呆れたようにため息を吐く。

 フィルドレアが使ったのは、対面したレシアやシラフネが突然悶え苦しみ出したあの現象と同じものである。あれは、フィルドレアの魔力によって操作された液体が付着し、彼女達の体内の血液や水分を内側から操作した技である。

 リゼルもレシア達同様、風の魔法でフィルドレアを吹き飛ばした時に彼女の魔力が付与された液体が付着している。リゼルも魔法の対象のはずだった。だが、リゼルは生まれながらに持つ魔力に対する耐性とそれを底上げする絶対的な魔力によって、フィルドレアの魔法を防いでいた。


「勘違いしない事ね。今の技は私に挑戦する権利があるかを確かめるもの。防いだからと言って貴方が私に勝てるわけじゃないのよ」

「御託はいいから早くしてくれ。それとも遺言か? それはそれで聞かせる相手間違えてんぞ」

「生意気ッ!!」


 リゼルに煽られ、フィルドレアは乗っかるように手を広げ魔法を発動した。今までのような小技ではなく、規模大きく派手な技。


「これならどう? 貴方に止められるかしら?」

「あほくさ」


 愉悦に浸ったような満面の笑みで、勝ちを確信したようなドヤ顔でフィルドレアは笑い叫ぶ。

 フィルドレアは魔神の城よりも高く、国の面積よりも明らかに広く巨大な津波を発生させたのだ。


「おいおいなんだありゃ!」

「何が起きてるんだ......」


 城を挟んだ街の方でも、フィルドレアが作り出した巨大なら津波が認識された。


「皆さん! 避難を......」

「避難ってどこに?!」

「どうやってあれから逃げるんだよ!」

「誰か何とかしろよ!!」

「せめて娘だけでも......!」

「この国はもう終わりだ......魔神に逆らったのが間違いだったんだ......」


 津波を確認した冒険者や住人達は阿鼻叫喚した。

 国王の娘が津波から逃げるよう指示を出し、何人かはどこに逃げ場があるんだと抗議する。また1人のどうするんだ。と他人任せに嘆き、1人の母は子供だけでも逃がそうと走り、そして1人の冒険者は武器を落とし絶望した。


「まさか、ここまでとは......」

「希望は、ないのか......!」


 街よりも間近の魔神の城内で津波を見ていた国王は、まさに災害である魔神の力に言葉を失った。

 シラフネは無意識に刀を握り、リゼルへと見出していた希望が暗闇の中へ消えて行くのを感じた。


「リゼル!」


 レシアは、鎌を握り今にも飛び出そうな勢いで身を乗り出し、不安げな表情と声で青年の名を叫んだ。その声が届いたのか否か、リゼルは振り返り「まだ逃げてなかったのかよ......」小さく零した。

 白髪を靡かせる彼女と目が合うと、リゼルはキザったらしいウィンクと共に聞こえないような小さな声で「大丈夫」呟き、指を鳴らした。

 刹那、魔神の城よりも高く国を飲み込むほどの巨大な津波は、一瞬にして()()した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ