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リゼル対ダイナント。

 デジャブ。二番煎じ。なんて野暮な言い方は程々に。レシアは突き放したはずの、来ないと言っていたはずの青年が自分達を助けに来たことに困惑していた。


「なんで......」

「そりゃ、大好きなヒロインがピンチなら飛んでくるのが主人公ってもんだからね」


 ドヤ顔で訳の分からない言うリゼルに、レシアの困惑は強まる。周りの目も含め、彼女の視線に耐えられなくなったリゼルは後ろ髪を掻きながら答えた。


「今でも自分の行動に合理性があるとは思ってない。なんなら、マジでヤバそうだったらレシアを引きずってでも逃げるつもりだよ。ただ、少なからずレシアの言葉に動かされたのも事実だし、非合理的でも動くだけの理由を見つけさせてくれた馬鹿もいるし、それに応えてもバチは当たらないだろって思っただけ」

「リゼル......ありがとう」

「感謝される程の事じゃないよ。むしろ俺の方がありがとうかも」

「そう? それなら、良かった」


 恐らくレシアはリゼルの感謝の理由をわかっていない。それでもレシアはリゼルが来てくれた事を嬉しく思い、彼が感謝を述べるのなら人の為なれて()()()()と喜ぶ。

 リゼルもまたレシアが理解してない事を把握にしている。それでも良いとも思っている。これは結局リゼルの自己満足でしかないのだから。


「あとお前ら! 勘違いすんなよ! 俺はあくまで、レシアを助けたくて来ただけだ。お前らのことなんざどこでくたばろうとも一切合切興味ないし、今言った通り無理なら途中で逃げるつもりだ。お前らを置いてでもな。勘違いすんなよ!」


 ヒーロー的な登場と感動の再会をぶち壊すような酷い言いようながらも、彼の頬と耳が彼の瞳と同じように赤く染っていた。

 言葉の意味を探ることも無く、それが照れ隠しだとメイリーや冒険者達も気づき、ニヤニヤと笑みを浮かべながら呼応した。そして期待した。彼ならこの魔族を倒してくれるかもしれないと。


「何をヒーロームーブ気取ってるのかな? 君が誰かは知らないけど、ただの人間が一人来たくらいじゃ何も変わらないんだよ!」

「その割にはちゃんと待ってくれてんじゃん。お人好しか?」

「そうだよ! 皆仲良くあの世に行くための最後の時間を与えてやったんだよ! というかアッケナはどうした! こんな侵入者を許すなんて! あいつサボってるんじゃないか?」

「アッケナ? ああ、外にいた監視役の魔族の事? まあ、安心しろ。すぐに再会できる。お前が大したことなければな」

「......殺す!!!」


 リゼル達の青臭いやり取りに腹を立てたらしいダイナントを普段の調子でリゼルは煽る。ついでに外にいた魔族のことも含めて。その煽りに乗っかるようにダイナントは叫びながら小石を投げた。

 リゼルは避けることなく、小石は顔付近で爆ぜる。


「口程にもないな! ヒーローもどき!」

「リゼル!」


 顔面での爆発。やったと確信したように煽るダイナント。爆発の威力を知り、様子を間近で見ていたレシアが不安そうに声を上げる。他の冒険者達も唖然とした。あれだけカッコつけた登場をしておいてあっさり退場なのかと、誰よりもリゼルに期待していた姉妹の2人は絶望すらしていた。

 だが、爆発を受けても直立不動のその後ろ姿を見て、彼らの不安は一瞬にして消え去った。


「攻撃すんのは別にいいんだけどさ、顔はやめろよ。これでも母さんから良い顔貰ったのは自覚してるだからよ。いつか惚れてくれるレシアのためにもこの顔はちゃんと維持したいんよ。あと煙い」


 ふざけたことを言いながら、煙を払い青年は現れた。無傷で。火傷もかすり傷も一切なく。

 ダイナントは驚愕した。賢者でもないただの人間に、自分の魔法に耐えられた事に。すぐに何らかのカラクリがあると理解したが、その疑問を解くよりも先に、彼は感情的に動いた。認められないと。


 ダイナントは石の数を増やした。両手で握れる目一杯の数の小石。それを全部リゼルへと投げる。またもリゼルは一切の防御行動を取らずその小石と爆発を受けた。

 無防備で受けたら無事では済まないと、誰が見てもわかる爆発。それですら、リゼルはただ「煙たい」と愚痴を零すだけだった。


「なんなんだよこいつ......」


 ようやく口にしたダイナントの疑問は彼だけのものではなかった。リゼルの後ろに守られている冒険者達ですら、レシアですら「何故」と疑問を抱いた。


 リゼルは並の魔法使いを凌駕するほどの絶大な魔力を持つ。溢れんばかりのその魔力は、魔力による肉体強化を行わずとも、防壁のように常に彼を身を守っている。この防壁を破るには相応の魔力量か魔力濃度を持つ攻撃、或いは実体のある物理的な攻撃しかない。中途半端な魔力の魔法では彼に傷一つつけることは出来ないのだ。

 当然ながらダイナントはその事を知らない。


「舐めやがって!」


 ピキりと眉間に筋を浮かべるほど苛立ったダイナントは再び多くの小石を投げた。ただそれはリゼルへ向けてではない。彼の背後にいる奴隷や冒険者達へだった。

 その事に気づいたメイリー達冒険者が防御を取ろうとする。遅れて唱え始めた魔法や咄嗟に走り出した前衛職もまず間に合わないだろう。

 焦りながらも丁寧に唱えられる詠唱を聞きながらリゼルは静かに手を突き出した。その瞬間、投げられた小石が彼の手に引き寄せられた。全て。奴隷や冒険者達に接触しそうになった小石も全て。勢いよくリゼルの元へ引き寄せられ、小石同士がぶつかり爆ぜる。


「ケホケホッ。お前さ、やることがせこいんだよ」


 ダイナントの策にリゼルは呆れたように呟いた。

 彼が使ったのは風属性の中級魔法だ。本来は対象を吹き飛ばす魔法だが、リゼルは風の流れを逆転させ自身に引き寄せられるように発動した。

 魔法の扱い方もそうだが、詠唱を始めた自分達よりも先に魔法を発動させた事にメイリーやシーアは驚いていた。


「無詠唱かよ!」

「小声で早口に詠唱しただけかもしれんよ」

「ふざけるな! これならどうだ!」


 もはや気取った口調すら崩れたダイナントは指先を天井に向けて「ボンッ!」と呟いた。直後、天井の一部が破裂し、雪崩のように崩れてきた。


「全員生き埋めだ!」

「はいはい」

(今のが詠唱か? 魔族なら無詠唱でもおかしくはないだろうけど。それよりこの魔法は設置型でも使えるのか。事前に発動条件を満たしておけばいつでも使えるタイプ。流石に発動するための有効範囲はあるだろうけど......まあ、なんでもいいか)


 ダイナントの魔法を考察しながらリゼルは、地面から丸太のような極太い土を作り出し、天井をおしかえす。さらに、その丸太土を流すように天井を補強した。アフターケアも完璧である。だが、ダイナントもリゼルが容易に対応するのを読んだいたのか、ダイナントは彼の視線をかいくぐり、懐に飛び込んでいた。

 ダイナントの爆発の魔法は触れた物を爆弾に変換するよりも、直接触れて爆発させた方が威力は高い。

 無詠唱で魔法を扱う魔法使いに接近するのはリスクが高い。それでも通常の火力ではダメージは入らず、何より自身のプライドを傷つけたこの男(リゼル)に対する殺意がそのリスクを承知の上で彼を動かした。


「死ねぇ!」


 ダイナントはリゼルに触れ、叫びながら爆発を起こす。その威力は、今日1番とも言っていい程の大火力だった......だが。


「男からのボディータッチは求めてないんだよなぁ」


 彼は無傷だった。直接触れた高火力の爆発でも、リゼルの魔力の防壁を打ち破ることは出来なかった。


「なんなんだよ......なんなんだよお前は!」


 後退りながらダイナントは嘆いた。

 ダイナントの出せる最大火力すらリゼルには通用しない。万策尽きたようにダイナントは壁に背をつけ「来るな!」と指を向ける。


「一歩でも近づいてみろ! そこの奴隷達を爆発してやる!」

「ここに来て小物臭い台詞吐くなよ。最後くら」

「全員死んじまえ!!!」


 リゼルが言い終えるよりも先に、一歩も動くこともなく、ダイナントは魔法を起動した。宣言通り、奴隷達全員爆発した。爆風の中から聞こえる悲鳴は奴隷からかそれとも冒険者達の者か、ダイナントからすればどちらでも構わない。


「あははは! ざまぁみろ! ざまぁみろ! お前が! お前が悪いんだよ! お前が俺にさっさと殺されないから!」


 狂ったように笑うダイナント。もはややけくそだろう。爆発は奴隷の数によって比例し、連鎖して規模も大きくなり、その威力はリゼルも含め冒険者全員を巻き込むほどだった。だが......もういいだろう。今回もまた同じだ。


「え、生きてる......」

「俺達助かったのか?」

「ありがとうございます......」


 煙を散らすように風が吹き、その中から冒険者達が姿を現した。全員無事だ。爆発が届く直線にリゼルが防護結界を張り、爆発を防いでいた。レシアも全員冒険者は無事だ。しかし、無事なのは冒険者だけだった。

 爆発に使われた奴隷達のほとんどは死亡していた。


「チッ......おい、聖職者。こいつらに治癒魔法かけてやれ。まだ息がある奴は何人かいる。そいつらは死なせるなよ」

「は、はい! わかりました! 皆さん、手を貸してください!」


 リゼルは軽く見渡し奴隷の生存者を確認してはメイリーを始めとする聖職者達に治癒魔法をかけるよう指示する。それでも助かる確率は低いだろうが、リゼルもそこまでは口に出さない。

 ゆっくりとダイナントの方へ向き直るリゼル。彼の表情と、視線が今までにないほどの殺意がこもっていることをレシアは察した。


「リゼル......」

「ごめんレシア。俺ちょっとあの魔族の事舐めてたよ。助けられる命だったのに」


 殺意は視線だけでなく言葉にも込められている。

 リゼルは高を括っていた。魔神の配下と言えどそう簡単には人間を殺さないだろう。利用価値のある奴隷を爆破させることは無いだろうと。

 だがその予想は違った。その認識は甘かった。ダイナントにそんな優しさや緩さはない。


「最初から、普通に、容赦なく殺しとけば良かった」


 リゼルは後悔し、理解する。この魔族は、恐らく他の魔神の配下も或いは今生きている魔神や大戦時代を生きた魔族は、人間を殺すことに躊躇がないクズなのだと、認識を改める。

 言い終えると同時にリゼルは飛び出した。正面から突っ込んでくるリゼルの速度はレシアより僅かに速い程度。それでもダイナントには対応する事は出来なかった。

 ダイナントが咄嗟に突き出した掌も躱し、リゼルは彼の胸部に突き刺すように手刀をを叩き込む。


 バチンッ!


 刹那、一閃の雷がダイナントの肉体を貫くように爆ぜた。

 声を発する間も無く、ダイナントの意識は暗闇へと落ちていく。二度と上がってくることのない暗闇に。


「はい。お疲れ」

長々と書いてもあれなんで1話で終わらせました。

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