表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/91

リックの誘い。

 レシアと別れて以降、リゼルはどうすればいいか分からず立ち尽くしていた。彼女追いかける資格はない。連れ戻すのもありえない。彼女と一緒に戦って2人とも死んだら意味がない。()()()ではない。

 レシアと別れのやり取りをしても尚、彼の頭は未だに合理性を求めていた。彼女と共に戦うための、合理的な理由を。


「あれ、あの......えっと......」

「?」


 ふいに、リゼルに声がかかる。どこかで聞いたことがある声に振り返ると、そこには国王の子供唯一の男子、リックがいた。コミュ障なのか、単に名前が思い出せないのか。知り合いを見つけたものの、なんと話しかければいいか困っている様子だった。


「えっと、ここで何してるんですか......?」


 ようやく言葉を絞り出したリック。そんな彼を見つめ返しながらリゼルは言葉の意味を考える。いや、考えるまでもない。姉達は冒険者を連れてギルドに、或いは魔人の城に行っているはずなのに、何故お前はここにいるんだ? という意味だ。

 リゼルは少し考えた後、「別に......」と面倒くさそうに視線を逸らしながら返した。


「そういうお前は何してんだ?」


 視線を合わせずリゼルは聞き返す。特に話をしたかった訳でもないし、なんならレシアに振られたばかりで憂鬱であまり会話をしたくないよりの気分のリゼルだが『国王の息子が他の姉達と別行動をしている』という純粋な疑問が彼の鬱な口から自然と漏れたていた。


「僕は、その、今は探知用の魔石の確認と起動です」

「探知用の魔石......あの魔法使いの妹の魔力探知か、あの妹は魔力量はそこまで多くないから範囲も広くない、それを広げるための魔石ってところか。となると、入国時に俺の事がわかったのも近くに居たんじゃなくて、魔石で広げた魔力探知でってことか」

「え、あ、はい。そうです。その、なんで......」

「普通に考えればわかる。他に国家級のパーティーや魔法使いが居て、魔石があるって分かれば自然とそういう答えが導かれる。そこまで難しい事じゃない」


 リゼルの推測にリックは「おぉ......」と感嘆の声を漏らす。目が合った時に資料で顔を隠していたような人見知りはどこへ行ったのか、彼は瞳を輝かせていた。


「分かるっても後半の"起動"ってのはわからんがな。なんの事だ?」


 リックの方を見ずに話し続けるリゼルは彼の視線に気づかない。故に、会話から疑問を重ねたリゼルを、リックは話が合う、自分の趣味ややってる事に興味を持ってくれる相手だと認識した。


「それはですね、今姉がギルドの方で準備してて魔力探知をしてる余裕が無いので姉の魔力探知の代わりとなる同じ昨日を持った装置を起動させたんです魔石と同機する事で姉の魔力探知同様範囲を国全体に広げることが出来ます姉が居ない時はこれを起動して国の状況を把握してるんです!」


 早口な喋り加え長い台詞、そこでリゼルはようやく視線を向け、リックが瞳をキラつかせて興奮しているのを理解する。今会話している相手が何かをも。


(ゲームしてる時のエディオと同じ顔してる......めんどくせぇやつだ......)


 お前もだけどな。と親友が聞いていたら言い返してきそうな言葉を何となく耳に感じながら、リゼルは面倒くさそうに目を細める。やがて、疑問という感情に任せて会話を続けてしまったことを失敗したと、どうやって適当にいなそうかとリゼルは考え始める。ただでさえ鬱なので会話ですら面倒なのは避けたいとリゼルは思っていた。


「えっと、旅人さん? ともう少し話したいので、どこか食事でもどうですか?」


 リゼルの思考を邪魔するように食事に誘うリック。女性を誘うかのような言いぶりは父親譲りなのだろうか、嫌な遺伝だな。本人も嫌がりそう。

 眉をしかめ、肩を落として溜息を吐きリゼルは面倒臭いオーラを醸し出す。しかし、興奮状態のリックには伝わっておらず首を傾げるだけだった。諦めて直接言おうかと思った時、リゼルは開いた口を閉じて考える。と言っても難しい事じゃない。単純な事だ。


『レシアに振られて鬱なら、飯にでも食べて気分転換すればいい』


 そんな考えが脳裏に浮かんだだけだ。ついでにリックの話に対して適当に相槌していればタダ飯になる可能性もある。というか誘ってるなら奢れ。ましてや相手は国王の息子で、魔導具を作っているからそれなりに儲けもあるだろう、高い料理も食べれるのかもれしれない。そう考えれば彼の提案に乗るのは合理的ではないか? とリゼルは思った。


「......まあいいぜ。どうせ暇だし」


 悪魔合理な考えは決して口に出さず、あくまでも『面倒臭いけど暇だからいいよ』と、友人に付き合うようなノリで。リゼルはリックの誘いを受けた。


「本当ですか? ありがとうございます! 美味しいお店紹介しますね!!」


 リゼルの返答を聞いてリックはぱぁっと眩しい笑顔を向けた。余程嬉しいのか、リゼルの手を引いて歩き出す。引かれるリゼルは、この手がレシアなら、と邪念を抱きながら彼に合わせて歩き出した。


(レシアの事は後で考えよう。今会っても何も変わらないし、非合理的だ......)


 リックの後を追いながらリゼルは、非合理的だと、言い訳をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ