利用不可の観光名所。
「なんかあったのかな?」
2日目の夜。レストランで夕食を取りつつ、パンフレットと国の様子を見比べてレシアは疑問を口にした。それもそのはず。パンフレットに書かれていた観光名所のいくつかは現在利用停止となっていたのだ。水性絵の具と水鉄砲を使った塗り絵バトルや、水族館、プール施設など利用可能な施設ももちろん残っており、旅行として楽しむには十分だろう。実際リゼル達もこの2日間は満足行くほど観光を楽しんでいた。だが、観光客の中にはその施設を目的にやってきては、利用停止の看板にがっかりさせられた者もいるかもしれない。
「海鮮料理食べれないしね」
フォークでパスタを巻きながらリゼルも漏らす。観光名所の一部利用停止だけならばまだ良かった者もいるだろう。だが、リゼル達のように食を楽しむ観光客にとっては、半分鎖国中の極東以外で極東と同じ味の海鮮料理を口に出来ないのは、観光名所の利用停止よりも辛いかもしれない。
「それだけじゃなくて......」
「わかるよ。冒険者や魔族が妙に多いことでしょ? 観光にしては多いよね」
「うん」
レシアの感じていた疑問はリゼルも察していた。人気国と言うだけあってリゼル達以外にも観光客も多いのも当然だ。だがリゼル達が国を回っている時ですれ違った人の割合は、冒険者と魔族が大きかった。もちろん彼ら全員が、本当にただ観光に来ているだけという可能性もあるにはある。
魔族が多いのは平和協定もあるため不自然ではない。だが冒険者の多さには前回の国の件もあり、リゼルもレシアも妙な勘ぐりをしてしまう。流石にこの国で初心者狩りのような事はないだろうが。
「なにか、あるのかな?」
最初を繰り返すように、レシアは再び声を漏らした。それはただの疑問というより不安にも近いのかもしれない。そしてそれに首を突っ込もうとしている雰囲気も、リゼルはこれまでの経験から察していた。
「何もない。ってことはないだろうけど、俺らには何もあって欲しくないね」
「リゼル、何か知ってるの?」
「知らない知らない。レシアと同じで何かあるだろうなって思ってるだけ」
何かを悟っているかのような雰囲気を出しつつも、その何かが自分達に降りかからないでくれと言うように、知らない。とリゼルは溜め息を着きながらパスタを食べた。
「そういえば、この国って温泉あるんだって」
「うん」
「あそこは利用可能みたいだし、俺らもここ数日野宿だったし、後で行こうよ」
「うん、わかった」
話題を逸らすようにリゼルはパンフレットに書かれていた観光名所の一つ、温泉の存在を口に出す。決して......恐らく多分混浴というやましい期待をしている訳ではないが、リゼルは温泉に行こうとレシアを誘った。そもそも混浴などないのだが。




