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旅する彼女に一目惚れしたので俺も一緒に旅します。  作者: 論です
冒険者パーティーを組もう!
44/91

間話-携帯を買おう。

前半に勢いを。後半には趣味を。

最強の布陣だと俺は思います。

「レシア、携帯買わない?」


 そんなことを呟いたのは、初心者狩りを欺き逃げるように国を出て、辿り着いた街の携帯ショップを見つけたからだった。


「携帯?」

「携帯は流石にわかるよね?」

「一応......」


 曖昧そうに答えるレシア。彼女の反応に少し頭を抱えるリゼルだが、使うようになってしまえば関係ないかと、余計な説明はせず彼女の手を引いてショップの中へ入った。


 一応説明しておこう。携帯とは、正式的な名前は『携帯電話』で、文字通り携帯が可能になった電話機のことである。掌サイズの小型端末に電話機能だけでなく、多くの機能も取り入れた機械であり、科学の歴史的に言うのであれば、時代の転換点伴った品物である。

 携帯は冒険者でもそうでない一般職にも関わらず、今を生きる者ならば魔族でも手にする現代の必需品と言っても過言ではない。


 携帯ショップの中には様々な種類の携帯が並んでいる。と言ってもほとんどは、誰もがよく使う掌サイズの液晶端末ばかりで、サイズが少し違うか、メーカーが少し違うか程度。その僅かな差でも()()()()()と言える程には携帯の種類は多い。リゼルは自分が使っているのと同じタイプの携帯の元へ迷わず向かった。

 そもそもリゼルが携帯を買い替えようと思ったのは、前回の初心者狩りの件でゴブリンキングに撃ち抜かれた時、懐に閉まっていた携帯も衝撃で破損してしまったからだ。直後までは僅かに使えていたが、国を出る頃にはお亡くなりになっていたため、買い替えを決断した。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

「今使ってる携帯がぶっ壊れたんで買い替えに」

「よろしければ携帯を見せてもらえまか?」

「はい」


 店員に声をかけられたリゼルは壊れた携帯を見せる。画面が粉々になり、内部の回路が垣間見えては断裂しているのがわかる。それを見て店員は少し引き気味になりながら、何があったのかと問う。


「どうしてこうなったとか、お答えできますか?」

「俺ら冒険者なんで。依頼(クエスト)中に」

「なるほど。確かに冒険者は動きが激しいですからね、依頼によっては破損もありえます。事実、冒険者の携帯の買い替えは......」


 リゼルが冒険者だということを知り、携帯の破損理由を察した店員は冒険者の携帯事情を長々と語り出した。それに関してはこの携帯を買った時に聞いているので右から左へ聞き流す。


「お客様は保険に入っていらっしいますか? 入ってましたら修理も可能ですが、こちらの端末は少し古いこともありまして、最新モデルも出ていますのでそちらへ買い替えた方がよろしいかと......」

「(最初に買い替えに来たって言ったんだよなぁ)買い替えでお願いします」

「では、こちらへどうぞ」


 喉から出そうになった言葉を抑え、リゼルは店員の後に着いて行った。

 一方レシアはリゼルの様子を横目で追いながら、店内に設置されているお試し用の携帯をあれこれ弄っていた。携帯の存在こそ知ってはいたが、実際手に取るのは初めてだ。携帯の便利さに戸惑い、驚きながら操作をしていると、リゼル同様店員に声をかけられる。


「何かお探しでしょうか」

「携帯」

「えっ......と、どのメーカーとかモデルとかはありますか?」

「メーカー? モデル?」

「え?」

「え?」


 レシアの発言と店員の反応にお互い困惑し固まった。それもそうだろう。幼い子供ですら携帯を知っている現代で、携帯を知らないなんて()()居ないと思っていた店員。だが相手は生まれてから旅人をしているレシアだ。旅の流れや年齢的なもので携帯に触れる機会がなかった彼女は携帯に関する知識が全くない。なんならひと昔前の開閉式と目の前の液晶型との違いを見た目以外わかっていない。開閉式に関しては開き方に数秒悩んだほどだ。わかっている訳がない。けれど店員にとってレシアは初対面のお客様だ。こちらもレシアの事をわかっている訳がないのだ。

 ありえない()()の客にレシアは該当するレシアを対応することになった店員は実に困った表情をしていたが、リゼルが仲介に入ろうかと傍から光景を見ていた時、店員の方が動き出した。


「そ、うですね。例えばこちらの商品はOrangeというメーカー、つまり会社様が開発になられた商品でして、モデルはMephone.Ver.27と言うものです。こちらの商品は......」


 店員はメーカーとモデルについてリゼルの時同様長々と話し始めた。店員のプライドだろうか、自分達の売る商品を理解してもらおうとする必死さが遠くからでも伝わってくる。或いは、理解して貰えなくても購入まで道のりさえ出来ればいいと思っているのか、理解してない事を前提に話しているようにも見える。対するレシアは首を傾げながら偶に頷いている。絶対に理解していない。けど可愛い。時折「どうでしょうか?」など店員から質問をされれば、レシアは視線を泳がせながらしどろもどろになっていた。可愛い。

 もう少しこの可愛い光景を眺めていようかとリゼルが思った時、レシアと目が合う。どうやら視線を泳がしていたのはリゼルを探していたからのようだ。レシアが助けを求めるようにリゼルをチラチラと見た。


(どうしよ......可愛いから無視しようかな......)


 意地の悪い発想がリゼルに浮かぶ。なかなか最低ではないだろうか? そもそもレシアを携帯ショップに連れ込んだのはこの男なので、本来なら責任を持って助け舟を出すべきなのだが、この男はこの状況で、この考えが出てしまう悪い性格の持ち合わせているらしい。もう1回胴体を貫かれるべきでは?


「あの、お客様? あちらの方はお連れ様でしょうか?」


 リゼルを対応している店員が心配そうに言う。リゼルの視線の先が気になったのだろう。少し前まで同僚の店員が困っていたから元から意識していたのかもしれない。聞かれたリゼルは知らないフリをしようかと考えたが、入ってくる瞬間を見られていたら嘘がバレるので大人しく肯定した。リゼルの意地悪観戦タイムはここで終了である。


「はい。会計とか諸々あの子と一緒で」


 リゼルからの援護をもらいレシアは安心したような表情をした。店員も良かったと胸を撫で下ろしている。以降、諸々の手続きなどの長い話をリゼルが簡単に捌き、ゴブリン退治で得た資金を使って携帯を購入した。


-------------------------


 初めての携帯だからか、宿に戻った後レシアはリゼルに使い方を聞きながら試すように、ずっと携帯を弄っていた。


「リゼル、この携帯って何ができるの?」

「色々と言えばそれまでなんだけど、とりあえず電話かメールで連絡取り合えるのだけ覚えとけばいいよ。俺もそのつもりで持ってもらったし。後は写真とか撮れるけど、そういうのは色々動かしていくうちに覚えてもらえれば」

「写真撮れるの?」


 興味があるのか、レシアはカメラ機能について興味を示した。詳しく動作をリゼルから聞くと、レンズを彼の方へ向けてパシャリ。不意打ち故の間抜け面が撮られる。


「レシアさん? なんで俺を撮ったんですか?」

「撮りたかったから」


 リゼルの姿を1枚写真に収めると、レシアはなんとなくと曖昧に答えて他の機能についても聞き出した。何故撮られたのか、せめて撮るならもっとかっこいい所を撮って欲しかったなど馬鹿らしい事を考えながら、リゼルはレシアの質問に答えていく。

 次にレシアが興味を持ったのはメールの機能だった。


『りぜるきこえる?』

『届いてるよ』

『よかった』


 メールの送り方を理解すると、レシアは声の届く距離でありながらリゼルにメールを送る。変換や句読点の無さから使い慣れていないのがわかるのがまた可愛い。

 メールと来れば次は電話だ。レシアはリゼルにやり方を聞き、目の前にいる彼へ堂々と電話をかけた。リゼルも今までの流れからそう来るだろうと察しており、着信がきたと同時にリゼルは部屋を出て、外で対応した。


『リゼル、聞こえる?』

『はい』

『なんで外出たの?』

『電話の、機能性を、理解して、貰おうと』

『そうなんだ。確かに外でも聞こえる。凄いね』

『はい』


 電話越しだからかリゼルの耳に届く彼女の声は、普段より甘く聞こえる。電話越しのはずながらレシアの吐息が耳にかかるような感覚を覚えたリゼルの心臓は破裂しそうなほど鼓動していた。

 後にリゼルは語る。腹を貫かれた時よりヤバかったと。レシアASMRは多分犯罪だと。お前が犯罪だよ。

 胸を抑えながら部屋に戻ってきたリゼルを見て、レシアは不思議そうに首を傾げるが、気にせず他の機能もリゼルを相手に試していく彼女は、初めてのプレゼントに心から楽しむ子供のようだった。

 その一つ一つのやり取りに彼女の可愛さを十二分に感じ取っていたリゼルは「可愛い......」と零しながら悶えた。これは多分馬鹿。


 一通り機能を覚えたレシアは1人で携帯を動かし始めた。ようやく開放されたとも言っていいリゼルの方は、壊れた携帯のデータを引き継げないかと色々試していたが、残念ながら出来なかった。とはいえ破損して困るものは特になく、強いて言うなら連絡先くらいだろうと潔く諦める。

 初めての携帯に没頭し始める彼女を横目に、リゼルがアプリで届いたニュースを開く。


「ベテラン冒険者とギルドが手を組み初心者狩り。1組の勇気ある冒険者の告発により、冒険者教会は新たな職員を派遣して再スタート。告発した冒険者は国を救った英雄として称えられた......やれば出来るじゃないか、へっぽこ勇者様」


 そこに書かれていた勇ましい記事にリゼルは軽く微笑んだ。

 データは消えても記憶と結果は残る。リゼルは自分の旅路に自分の記憶以外の結果を残せたのだと、その記録に自分の名前が無くとも誰かに何かを残せたのだと実感し、少し嬉しかった。旅に出て良かったと思っていた。


『なお、今事件発覚の要因となったのは銃を扱うゴブリンの集団であり、魔人大戦以降も化学兵器を利用して、人間を襲う魔物は各地で確認されている。賢者の見解では魔女が関係している可能性があるとの事』

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