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旅する彼女に一目惚れしたので俺も一緒に旅します。  作者: 論です
冒険者パーティーを組もう!
43/91

3日間。

 ギルドから報酬を受け取ったリゼルは、急ぎ足で馬車乗り場へと向かった。ギルド退出後に来ると予想していた追っ手の冒険者達には引っかかってもらえるようデコイを残して。

 1分も掛からずリゼルは馬車乗り場に到着し、待ち合わせていたレシアから荷物を受け取り、顔を隠すようマントを羽織ってそのまま共に馬車に乗って国を出た。


「上手く行ったんだよね?」

「俺がここに金持って来てるってことはそういう事。追っ手もいないし、完璧かな。幻術はそこまで得意じゃないんだけどね。まあ良かった良かった。しっかり()()しといて」


 準備。彼らがなんの障害も引きずることなく国を出られたのはリゼルの言う準備が良かったからである。それは遡ること2日前、彼らが宿で話し合いをしていた時の事。


-------------------------


「初心者狩り?」

「ざっくり言うと、初心者冒険者をカモにして金を巻き上げること。報酬で出された金をギルドで使えば、ギルド側は損しないし、ベテラン達は豪遊できるからこいつらだけのwin-winの関係が作れる。カモられる初心者は弱いから何も出来ず従うしかありません。ギルドと組んでるから最悪いざこざが起きても国の外で殺せば依頼で死んだことにできるしね」

「......あの冒険者達は、それをしてるの?」


 初心者狩りの考えられる全容を話すと、レシアは静かに怒りを見せていた。彼女的に初心者狩りは許せない行為なのだろう。そもそも許された行為でもないが。レシアの怒りを感じたリゼルは「多分ね」と保険をかける。


「まあ、してなきゃしてないで、win-win-winだから別にいいし、どっちにしろ俺らは普通に、簡単な依頼(クエスト)で割のいい報酬貰って国出れば良いだけだよ」

「そう、だね......」


 まだ納得とまでは行かないものの、レシアは怒りを沈めるように軽く深呼吸をし、息を整えた。落ち着いた様子の彼女を見てリゼルは話を続ける。


「んで、俺らのこれからの行動なんだけど」

「これからの行動? 何をするの?」

「初心者狩りに対する準備」


 そう言ってリゼルは財布を持って立ち上がり、観光に行こうと宿を出た。と言っても、パンフレットにも書かれていたとおり、この国は冒険者が良く利用する国なだけあってこれと言って面白味のあるものはない。国の規模としてもそこまで大きくないため、リゼルの居た国と比べても魔道具店の数も少ない。


「言っちゃ悪いけど、何もない国だよね」

旅人(わたしたち)から見たらそう見えるのかも。でも、お店とかか少ないなら、少ない時間で見て回れるから良いとは思う」

「良く言えばそうかもね」


 レシアはこの規模の国は慣れているのだろう。小さい国なら相応の楽しみ方があると、少し前の怒りを忘れたように楽しんでいた。隣のリゼルは母国が大都市で、これまで通ってきた国もそこそこ規模の大きい国だったため、今回の国の観光には少し物足りなさを感じている。それも隣の少女と居ることでさほど気にしてはいないが。


「それでリゼル、準備って言ってたけど何をするの?」

「ちょくちょく魔道具店よって、使えそうなもの買って、後は普通に観光でいいよ」

「それで準備になるの?」

「なるなる。まあ、最後にどうしても寄らなきゃいけないから所はあるけどね」

「どうしても寄らなきゃ行けない所? それってどこ?」

「後で教えるよ」


 リゼルはキザったらしくウィンクをして答えた。

 1日目は時間が短かったため、魔道具店を中心に周り、2日目から重点的に観光をし始めた。金銭問題も解決しない中、それなりに国の観光を楽しんでいた。そして夕食後、リゼル達はある場所に着いた。性格には、来なければならなかった場所。


「馬車乗り場? ここがどうしても行かなきゃ行けなかった場所?」

「そう。馬車の時間を確認する必要があってね」

「今から乗るの? 明日依頼受けるんじゃないの?」

「今から乗る訳じゃないよ。時間を確認するだけ。金もないしね」

「それなら明日でもいいんじゃないの?」


 わざわざ時間を取って馬車の時間を確認する必要があったのかとレシアは疑問に思う。リゼルが言うにはこれが準備に1番必要だったと言うが、彼女は理解出来なかった。リゼルは携帯のカメラに時間表を収め、近くの職員に支払い方法を聞いた後、宿へ戻るため踵を返した。

 レシアは彼の行動に終始疑問を持ち、何度も理由を聞いたが、リゼルはその場では理由を語らず宿に戻ってきた今ようやく、その理由を話し始めた。


「馬車の時間と支払いの方法を知りたかったのは、明日依頼が終わってすぐに馬車に乗って国を出るためだよ」

「それは、なんとなくわかったけど......えっと、なんで明日すぐに国を出るの? 確かに城門の人には3日って言ったけど、依頼を受けるならもう少し伸ばしても良かったんだよ?」

「それは保険だね」

「保険?」


 レシアの疑問にリゼルは丁寧に答えていく。


「昨日も言った通り、俺の予想だと今回の依頼はベテラン冒険者とギルドが手を組んでやってる初心者狩りだと思うんだ。ギルドが組んでるって事は、普通に依頼を完了してもすんなり報酬を渡してくれない可能性がある。或いは、渡した後に回収しに来るかもしれない」

「回収?」

「そう。ギルドの手が回ってる冒険者が襲って来て報酬の金を奪っていくかもしれないからね」

「冒険者が冒険者を襲うの?」

「金にがめついギルドや国ならそれくらいは普通にあると思うよ。それに、冒険者は自己責任だしね」

「そう......」

「ついで言うと、国に来たばかりの新参者には味方が居ないからね」


 軽い口調では言うが、聞いているレシアには昨日の怒りが少しづつ込み上げてきているようだった。昨日は観光前で気分を害しても悪いと思っていたリゼルも、今回は飲み込んでもらうために、このまま話を続ける。


「俺が馬車今日、あのタイミングで馬車の時間を知りたかったのは、誰かに見られるかもしれないから。この国の冒険者に」

「見られたら困るの? どうして?」

「単純に、カモに逃げられたくないだろうからね」


 この国の冒険者たちから見て、リゼル達は楽して豪遊できるカモでしかない。それを手放すなど彼らはしないだろうと、リゼルは考えていた。だから人目の付きにくく、仮に近くにいても闇に紛れられる夜の時間帯に馬車の確認に来たと彼は言う。また、リゼル達が旅人であることを知られれば、夜であったとしても馬車の時間確認も簡単には行かなかっただろう。


「とりあえず、明日依頼が終わったらレシアだけ先に帰って馬車の予約しといて。終わったタイミングから1番早い時間でいいよ」

「わかった。リゼルは?

「俺は報酬を受け取りに行ってくる。パーティーリーダーじゃなくても依頼完了の報酬は受け取れるからね」

「分業制って事だね」


 ここで使うのは微妙に違う気もするが、理解出来てるなら良いだろうと苦笑する。リゼルの考えにしっかり納得したレシアは頷き、明日の依頼に向けてゆっくり休むとリゼルの部屋を出た。


-------------------------


 そして時は戻り現在。リゼルとレシアは遠のいていく国の城壁を眺めていた。


「なんか悪いことしたような気がするけど」

「別に俺らはなんも悪くないよ。悪者にも出来ないだろうし」


 強いて言うなら最後のリゼルの脅迫は危ないかもしれないが、まあ国を出てしまえば関係ないだろう。ギルドの独断行為なら国に泣き縋ることも叶わない。城門の役員の反応的にもその可能性は高いのかと、リゼルは終わった事に頭を使っていた。やがてどうでもいいと溜め息を吐き、考えるのを止める。


「そう言えば、なんか俺に話したいことあったんじゃないの?」


 リゼルはふと思い出した疑問を投げる。レシアも視線をリゼルの方へ移して答える。


「パーティーのリーダー、リゼルがやった方がいいと思う」

「いえ、レシアに任せます」

「え、でも......」

「レシアに、任せます!」


 強引にレシアにリーダーを任せるリゼル。どちらかと言えば押し付けにも近い。面倒臭いからという彼の性格らしい言い訳も何割かはあるが、それ以上にリゼルの中ではレシアをパーティーリーダーに添えるべき理由は別にあった。


「俺はあくまで君の旅に着いてきてるだけだからね。旅の行先もレシアが決めればいいし、というか決めてるだろうし。俺はそれに着いていくだけだからリーダーはレシアの方がいいよ」


 一目惚れした彼女と旅をすることを選んだのは確かにリゼルの決断だが、そもそもこの旅路はレシアのものであり、自分はただ一緒にいて着いてきているだけだと認識している。ならばパーティーのリーダーは、リゼルよりも前を歩くレシアがやるべきというのがリゼルの考えだった。


「わかった。リゼルが言うなら、そうする」


 リゼルの言い分に納得したレシアは小さな胸を張って強く頷いた。ひとつ話が終わったところで、今度はレシアが聞く。


「リゼル、今回の旅はどうだった?」


 内容は旅の終わりに毎回のように聞いている旅の総評。レシアはどうもリゼルが旅を楽しめたか気になるらしい。

 聞かれたリゼルは若干疲れていたこともあり、思ったことを口に出していた。自虐気味になっていたのが良くなかったのかもしれない。


「どうも何も、とりあえず大変で面倒臭かったよ。死ぬかと思ったし」

「怪我は大丈夫なの?」

無問題(モーマンタイ)。穴は塞がってるし、傷跡も残ってない。完全完治よ。食らった時は痛かったし、脳か心臓だったら死んでたけど」

「そう......」

「レシアは落ち込まなくていいんだよ。君が悪いことは何も無いからね」

「......うん」


 リゼルの回答にレシアは少し暗そうに相槌を打つ。その表情から「やってしまった......」と後悔しつつ、何故レシアがその表情をしていたのか、リゼルには理解出来なかった。

『冒険者パーティーを組もう!』これにて完結です。

次回からまた新章入ります!お楽しみに!

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